M&Aの市場規模は、後継者問題や事業規模拡大などを理由に、2000年代から現代に至るまで拡大してきました。
2020年は新型コロナウイルスの影響で減少しましたが、2021年には事業承継問題や経営資源を集中するため、M&Aは再び増加しました。上場企業などの大企業による大規模なM&Aは減少しましたが、実際に大きな取引が行われたM&Aの実例もありました。2022年も新型コロナウイルスの感染拡大はとまりませんが、事業承継問題や経営資源集中のため、M&Aは増加すると見込まれます。
この記事では、国内M&A市場の動向と成約件数推移をご紹介します。近年のM&Aの市場規模や動向を把握し、今後の展望について確認しましょう。
M&Aの市場規模は、M&Aの「件数」と「取引総額」で表されます。M&Aの件数は1985年からデータが蓄積され、年を追うごとに増加傾向にあります。M&Aの市場規模を計算するときは、公表されているM&Aのみを考慮します。公表されていない非上場企業などのM&Aを含めると、今後さらに増加すると考えられます。対して、M&Aの取引総額は、1999年に15兆円を超えて以来大きな変動は見られません。「件数」と「取引総額」のそれぞれの観点から、2022年のM&Aの市場規模を想定しましょう。
レコフデータの調査で残っているM&Aの件数のデータは、1985年が一番古く、1985年のM&Aの件数は約260件でしたが、2000年代に近づくにつれ徐々に増加しています。
2000年代には、ライブドアがニッポン放送の株式取得を行うなど、M&Aが一大ブームとなります。その後リーマンショックで景気の低迷が起こり、M&Aの件数は減少に転じましたが、2010年代には再び増加傾向にあります。
2010年代に入ると、国内のM&Aだけでなく海外の企業を買収するM&Aの増加が目立つように。2017年には3,000件、2019年には4,000件を超えるなど、M&Aの件数は年を追うごとに増加しています。
参考:グラフで見るM&A動向「1985年以降のマーケット別M&A件数の推移」
取引総額は、件数が増加していくのに対して大きな変動は見られません。1995年に15兆円を超えたのを境に、5兆から15兆円の間を推移しています。2018年には30兆円近い取引総額となりましたが、これは武田薬品がシャイアー買収を6兆円以上で行い、大型案件が重なったことで金額が跳ね上がりました。
金額が伸びない理由としては、案件規模の小型化があげられます。以前であれば、M&Aは大型のものが多い傾向にありましたが、近年では中小企業や個人の小規模のM&Aの案件は増加していて、取引総額が小さいものが増えています。
参考:グラフで見るM&A動向「1985年以降のマーケット別M&A金額の推移」
2020年に比べ2021年のM&A件数は14.7%増加しています。レフコデータの調べでは、2017年が4,088件に対し、2021年は4,280件となり過去最多となりました。2021年に増加した理由は、コロナ渦によりM&Aが後倒しされたのと、金融緩和が起こったからとされています。日本国内の企業の多くが経営者の高齢化を背景に、事業継承のピークを迎えています。企業の内部留保も豊富で、大きな特殊要因がなければ、後継者問題やコロナ渦の不採算事業の整理など、2022年もM&Aの市場規模は増加することが想定されます。
2020年より世界を震撼させている新型コロナウイルスの影響は、M&Aにも影響を与えています、2020年は、全体的にM&Aの件数は減少傾向になりましたが、2021年は前年比で増加傾向にあります。これは国内企業が業績不振を理由に国内外の企業へ売却するケースや、不採算事業や非中核事業の切り離しによりM&Aが増加したのが理由です、2022年も新型コロナウイルスの影響を受け、2021年と同様の推移になるのではと推測されます。
In-In型のM&Aとは、国内企業同士のM&Aです。国内企業同士のM&Aなので、ほかのM&Aより新型コロナウイルスの影響は少ないですが、2020年はIn-In型のM&Aも減少しました。大企業による大規模なM&Aは減りましたが、事業継承型のM&Aは2019年と同様の水準で推移しています。大型案件が少なかったので、取引総額は前年比で大幅な減少になりました。一方2021年は、全体的にM&Aの市場規模は拡大しています。2022年も新型コロナウイルスの感染拡大が続いていますが、大規模なM&Aは減少してもほかのM&Aと同様に増加傾向になると推測されます。
In-Out型のM&Aとは、国内企業が海外企業を買収するM&Aです。新型コロナウイルスの影響で海外に渡航できず交渉が進められないことが原因で、2020年のIn-Out型のM&Aは取引件数も取引総額も前年と比べて大きく減少しました。
Out-In型のM&Aとは、海外企業が国内企業を買収するM&Aです。Out-In型のM&Aの件数もIn-Out型と同様に2020年は減少しています。ただし、2020年はソフトバンクグループがアーム社の買収など金額が大きい案件があり、取引総額は増額となりました。
2021年の1月から3月までの3カ月間は、過去最高の水準でM&Aの件数が増加し、In-Out型とOut-In型のM&Aの両方増加しました。2022年も新型コロナウイルスの感染拡大が懸念されていますが、国内企業が業績不振を理由に事業整理を行い国内外企業へ売却するケースが起こると考えられ、In-Out型とOut-In型のM&Aの双方ともに、やや増加傾向になるのではと推測されます。
2021年1月~7月のM&Aでは、新型コロナウイルスの影響で、不採算事業や非中核事業の切り離しが目的の売却が増加しています。また、少子化や経営者の高齢化で事業承継型のM&Aの活用する例も増加しています。2022年もこの傾向は変わらず、不採算事業や非中核事業の切り離し、少子化や経営者の高齢化による事業承継型のM&Aは増加すると推測されます。
近年、M&Aが増加していて注目を浴びていますが、実は日本におけるM&Aの歴史は古く、戦前から企業の成長ために行われていました。以前は「事業再編の手段」や「大型企業倒産の処理手段」として活用されてきましたが、現代では事業承継問題の解決や事業規模拡大、国際競争の激化による業界内再編などにより、M&Aを行う企業が増えています。
参考:グラフで見るM&A動向
M&Aが急増している背景には、どのようなものがあるかご存知でしょうか。以前は上場企業のような大企業でしかM&Aが行われていませんでしたが、近年では経営者の後継者不足や公的機関やM&Aアドバイザリー会社の支援充実化によりM&Aは増加しています。また、M&Aがメディアなどで取り上げられ、認知度が向上している点などから、買い手需要が拡大しています。
M&Aが国内で急増している理由として、経営者の高齢化により後継者不足の問題を抱える企業が増加している点があげられます。
近年の日本は経営者の高齢化に加えて少子化も進んでいて、経営者が一線を退こうとしても、後継者がいない事態が増加しています。
また、経営者に子供がいても、子供が親の会社を引き継ぎたくなかったり、経営者が苦しい思いを子供にさせたくないと考えていたりして、事業承継しない場合があります。2025年までに70歳以上の経営者が245万人に達するといわれ、経営者の後継者不足は深刻な問題です。
現代では、各地方の公的機関の事業引継ぎセンターやM&Aアドバイザリー会社によるM&Aの支援が充実していることも、M&A増加の一因です。中小企業のM&Aの案件の増加に伴い、公的機関の事業引継ぎセンターの成約実績も増加しています。事業引継ぎセンターは、2011年には成約実績がありませんでしたが、2018年には900件を超える実績があります。
また、M&Aの件数が増加するのに伴い、M&Aのアドバイザリー会社が増えて、充実したサポートが受けられるようになりました。扱っている案件もさまざまで、手付金をなくし完全報酬型を取り入れるなどして、誰でも気軽に相談しやすくなっています。
以前は大企業がM&Aを実施するのが一般的でしたが、M&Aの認知度があがり、個人や中小企業でもM&Aを実施する時代となりました。その中で、M&A仲介会社や金融機関などだけでなく、M&Aマッチングサイトも登場し、自分の希望する条件で簡単に案件を探せるようになりました。マッチングサイトの登場で、M&Aが以前に比べ簡単にできるようになっています。認知度が向上したことで、買い手企業の需要も拡大し、M&Aは増えています。
2021年に行われた日本国内の大型M&Aを紹介します。2020年から2021年にかけて、新型コロナウイルスの感染拡大、業種を超えた競争激化などにより、多くの業界で経営状況が厳しくなりました。この厳しい経営環境を改善するため、異業種同士や同業同士でのM&Aは増加し、中小企業のM&Aだけでなく、上場企業の大企業同士のM&Aも活発に行われた年でした。
Eコマースをはじめ70を超えるサービスを運営している「楽天」と、郵便事業を全国に展開する「日本郵政」が、2021年にDXや物流などの領域における連携強化を目的にM&Aしました。両社のM&Aで、楽天が持つ物流領域における受注データの運用ノウハウと日本郵政が持つ物流網や荷量データの相互活用によるシナジー効果が期待されます。両社のM&Aでは、第三者割当増資の手法が活用されました。日本郵政が買い手、楽天が売り手企業となり、出資額はおよそ1,499億円、出資比率は8,32%の取引でした。具体的には、以下の内容の業務形態が想定されています。
ECサイトや広告サービスなどの200を超えるサービスを展開する「Zホールディングス」と、メッセージの送受信アプリで有名な「LINE」が、既存の事業強化と新規事業への投資を目的にM&Aしました。このM&Aにより、マーケティング事業とフィンテック事業、新規事業とシステム開発、集客という部分でシナジー効果が期待されます。両社は以下の流れでM&Aしました。
上記のように、複数の企業が絡み、さまざまなスキームが行われた複雑なM&Aでした。
日本全国の1,444店舗のドラッグストアや調剤薬局を展開する「ココカラファイン」と、日本全国1,755店舗のドラッグストアや調剤薬局を展開する「マツモトキヨシ」が経営統合しました。ドラッグストア市場は、業種を超えた競合企業の新規参入や競争激化、商圏の狭小化などで厳しい経営環境が続いています。この中、両社はさらなる事業の成長を目的にM&Aを行いました。両社の経営統合により、商品の共同開発や販促戦略のデジタル化を実現し、連結ベースで営業利益約200億円のシナジー効果を得られると期待されています。両社の経営統合では、株式交換や吸収分割、新設分割などの複数のスキームが活用されます。この経営統合で、ココカラファインはマツモトキヨシホールディングスの子会社となります。
売り手の「ながの東急百貨店」と買い手の「東急」が、中長期的な視点で事業構造の改革と安定した収益構造の転換を目的にM&Aしました。百貨店業界は、消費税増税や少子化によるマーケット縮小、新型コロナウイルスの感染拡大などにより厳しい経営環境になっています。このような状況で、売り手企業の「ながの東急百貨店」は、経営資源の適切な配分と事業構造の改革が必要と考え、M&Aにより「東急」の完全子会社となりました。このM&Aでは、株式譲渡と株式交換のスキームが使われ、譲渡株式の却金額は8億6,900万円となりました。
「プレティア・テクノロジーズ」が売り手、「アダストリア」が買い手企業となったM&Aです。売り手の「プレティア・テクノロジーズ」は、ARクラウドをはじめ、アルゴリズムの研究や開発を手掛けている会社です。買い手の「アダストリア」は、衣料品や雑貨の企画や小売を手掛ける会社です。新型コロナウイルスの感染拡大により、アパレル小売業界は「オンラインの情報収集」と「実店舗の試着や販売員への相談」を併用した購買行動が流行しています。この状況下で両社は、プレティア・テクノロジーズの最先端のARテクノロジーと、アダストリアの流通から小売までのバリューチェーンの融合を図りました。交渉を重ね、両社はアパレル小売領域のDXを推進し、顧客に新しい体験を提供するために資本提携を結びました。
スーパーマーケットを展開する企業同士が、営業基盤と企業体質の強化を目的にM&Aをした事例があります。売り手は栃木県を中心にスーパーマーケットを31店舗を展開している「オータニ」、北海道や東北地方でスーパーマーケット事業の子会社9社を持つ「アークス」です。2021年、新型コロナウイルス感染症の拡大や業種を超えた競争の激化により、スーパーマーケットは厳しい経営環境にあります。この状況下で、両社は営業基盤と企業体質の強化を目的にM&Aを実施しました。オータニは会社売却に伴いアークスの傘下に入り、アークスが有する商品調達力や店舗運営力、情報システムの経営インフラが活用できるようになりました。
新型コロナウイルスの感染拡大や高齢化・少子化によるマーケットの縮小により、小売業の経営環境は厳しくなっています。2020年はM&Aの件数は新型コロナウイルスの影響で減少しましたが、2011年より続くM&Aの増加の流れは大きく変わらないと推測されます。自社のみで現状を打破するのが難しく、小売業の買収や売却を検討する業者が増えるでしょう。他業種だけでなく、近年では同業種同士のM&Aも増加しています。市場シェアの拡大を図る企業が増えていることから、2022年も同業種同士のM&Aの増加傾向は変わらないと推測されます。また、大規模なM&Aは減少するかもしれませんが、事業承継関連のM&Aや経営資源を集中するためのM&Aは増加すると考えられます。M&Aの件数は増加し、規模が小さいものは増えて取引総額は横ばいもしくは少しずつ成長していくと見込まれます。
2022年がM&Aが好調であると見込まれる理由があります。現代の日本では、経営者の高齢化に伴い後継者不在問題が深刻化しています。また、2020年より流行した新型コロナウイルスの影響で、経営資源を集中し、業務効率化を図る企業が増加しています。
近年は経営者の高齢化、少子化により後継者不在問題が中小企業で大きな課題となっています。M&Aにより会社を事業承継してもらい、さらに企業の成長の可能性も見込めるので、事業承継型のM&Aは増加しています。2022年も変わらず事業承継型のM&Aは増加が見込まれます。
新型コロナウイルスの影響で業績不振を理由に、不採算事業や非中核事業の整理が必要となる企業が増加しています。経営資源は限られているので、業績不振になれば経営資源を集中する必要があります。2022年も新型コロナウイルスの感染拡大はとまらないので、業績不振を理由に経営資源を集中する企業が増加すると見込まれます。
また、小売業の収益アップには、経営資源の量だけでなく質が求められます。優れた販売や経営運営のノウハウなどを取引先が持っていれば、経営資源の量が少なくても売上増加が見込める可能性があります。自社だけで優れた人材やノウハウを獲得するのに時間も労力もかかりますが、M&Aを行うことで事業成長を短時間で行えます。経営の質を効果的に向上できるのも、M&Aの魅力です。
業績悪化により、販売や仕入れ、その他の業務の余計なものの整理を行い、効率化する企業が増加しています。M&Aにより業務を他企業と一体化することで業務の効率化を図り、企業運営の課題を解決できます。新型コロナウイルスで業績の悪化の影響を受けている企業が増えているので、財務や業務効率化を目的にM&Aをする企業が2022年も増加すると推測されます。
財務・業務効率化をさらに追い求めた形が業界再編です。業界の中には、原材料を納品している企業や加工している企業、販売を行っている企業などさまざまな企業があります。それぞれの企業に役割がありますが、分かれていると非効率な場合があります。これらを集約し、業界再編を行い業務の効率化を図ることで、余計な設備や資源を省き有効活用できます。
同業種同士がM&Aを行うことで、競合の会社を減らし、市場シェアの向上を図れます。実際に、近年では同業種同士でのM&Aが増加しています。同業種同士のM&Aを行うことで相対的に市場シェアの向上を実現し、買収した企業の売上高も取り込めます。
M&Aが活発に行われている現代では、M&A仲介会社が増えています。数あるM&A仲介会社の中で、IT・Web事業領域のM&Aを得意としているのがウィルゲートM&Aです 。Web・IT業界に関するノウハウを熟知し、9,100社以上社以上の経営者ネットワークを活かしたベストマッチングで利用者数は1,400社を超えています。
完全成果報酬制で相談・着手金は無料ですので、M&Aをご検討の方はぜひお気軽に下記からご相談・お問い合わせください。
M&Aが活発に行われるようになり、M&Aの仲介会社は近年増加しています。M&Aを成功させるには、相手企業の選定や法務的な手続きや税務処理など、幅広い経験が必要です。
そのような中で、個人でM&Aを成功させることは難しく、M&Aに詳しい専門家の協力は必須といえるでしょう。M&A仲介会社は、会社ごとに手法が異なり、かかる費用も違います。
M&A仲介会社を選ぶときは、M&Aの仲介実績が豊富で、着手金が不要な完全報酬型の会社を選ぶのがポイントです。ウィルゲートM&Aは、利用者が1,400社以上を超えるなど実績が豊富で、着手金や中間手数料は一切発生しない完全成功報酬型のM&A仲介会社ですので、M&Aを検討されている方は、お気軽にご相談ください。
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