近年M&Aが活発に行われるようになったこともあり、MBOの関心が高まっています。ここでは、M&AにおけるMBOの意味や目的、MBOを実施するメリット・デメリット、参考となるMBOの事例について紹介します。
MBOは、企業戦略として目的を持って行われるM&Aです。
MBOは2000年台後半から急増し始め、2020年には上場企業のMBOが10件と、9年ぶりに2桁に到達しました。買収防衛策といわれるMBOが増えた背景には、先行きの見えない社会情勢もあいまって、中長期的な視点で経営改革を進めようとする動きが勢いを増した可能性があります。MBOの意味や種類、TOBやMBIとの違いを見ていきましょう。
MBO(マネジメントバイアウト)とは、M&Aの手法のひとつで、経営陣が自社企業の株式や一部の事業を買い取って、独立した経営権を取得することを指します。オーナーではない経営者が、企業継承を前提に、オーナーや親会社から株式を買収します。M&AにおけるMBOのほかにも、MBOには経営戦略として「目標管理制度(マネジメント・バイ・オブジェクティブズ)」を指すこともあります。
MBOと同じような意味合いで用いられるM&Aの手法には、外部の経営陣が企業を買収する「MBI(マネジメント・バイ・イン)」や経営陣と社員が出資して企業を買収する「MEBO(マネジメント・エンプロイー・バイアウト)」、社員が企業を買収する「EBO(エンプロイー・バイアウト)」があります。
M&Aの手法のひとつであるTOBは、株式公開買付のこと指し、MBOと同様に対象企業の株式を買い取って経営権を取得します。MBOとTOBの違いは、TOBは上場企業の買収を行うのに対し、MBOは中小企業の事業系所にも用いられる手法であることです。また、買収が行われるのが経営陣か法人かという点においても、MBOとTOBは異なります。
MBOは現在の経営陣が指揮をとりますが、MBIは外部の経営陣が指揮をとるため、経営権を有する者が異なります。MBIではMBOのように、子会社による独立を目的とした取り組みもありますが、多くは会社の資産価値を向上させて、利益を得る目的で取り組まれます。MBIには3つ種類があり、経営者とファンドと共同出資するMBI、買収先が主体となり経営陣を招き入れるMBI、全くの外部から経営者を招くMBIがあります。
MBOを実施する主な目的は、自社株を買い取り独立することで、経営上の目的を果たすことにあります。MBOを実施して上場を廃止すると、株主は経営陣と投資ファンドのみになるため、より自由で機動性の高い経営が可能になります。事業承継や事業譲渡といった中小企業の後継者問題を解決するうえでも、MBOは活用されています。また、資金効率向上のために経営体制の見直しが必要な場合も、MBOが実施されます。
MBOにはメリットだけでなく、デメリットが生じる可能性があるため、MBOを実施する際には、事前にどんなメリット・デメリットがあるのか確認しておきましょう。
MBOを実施するメリットとして、自社に自社株が集中することで、他社が経営に関わることがなくなる点が挙げられます。ほかのM&Aの手法と比べても、買収後の経営がスムーズに進みやすくなる利点があるわけです。経営陣が変わらないことで経営環境に大きな変化が生じにくいこともあり、従業員からの理解が得られやすく、敵対的買収のような不信感を与えるリスクが少なくすみます。ほかにも事業継承にも活用しやすく、オーナー株主は後継者に株を買い取ってもらうため、手元に売却益を残して引退できます。MBOにより株式のやり取りが企業内でのみ行われるので、情報漏洩や風評リスクが軽減されます。
MBOには多数のメリットがある反面、既存株主から自社株を買い取る行為のため、両者の利益が相反して対立が生じる可能性もあります。できるだけ安値で買い取りたい経営陣と高値で売却したい既存株主の間で対立が起これば、最悪MBOの実行は不可能となり、株式の売買が成立しない場合もあります。また、MBOによって経営権が集中する結果、経営体質が変えにくい、変化が起きにくいデメリットもあります。経営層が変わらず経営体質が変化しなければ、市場の変化についていけずに経営が悪化する恐れもあるでしょう。MBOで上場廃止になると、市場から資金調達もできなくなるため、経営陣はできる限り資金を保有しておくことが重要になります。
MBOを成立させるには、しっかりと綿密な計画を立て、目的に見合った適切なプロセスを踏んでいくことが重要です。MBOの具体的な実施方法とプロセスを見ていきましょう。
MBOを実施するうえで、事業を移転するための受け皿となる新会社を設立しておく必要があります。受け皿となる新会社をSPC(特別目的会社)といい、会社を買収する経営陣らが取得した株式を新会社に移してMBOを進めていきます。MBOの実施で対象企業を子会社化した後、SPCと対象企業が合併して新会社となります。
新会社を設立したら、株式の買い取りを行うために、事前に企業価値を評価していきます。客観的に企業価値を見極めるには、経営陣だけでなく、弁護士やコンサルタントといった外部の専門家による評価も必要になります。上場会社であれば、1株あたりの株価と株式数をもとに株式の時価総額がわかります。非上場会社の場合、基準にすべき市場価格がないので、財産評価基本通達という算出方法で評価しなければなりません。さまざまな算出方法がありますが、目的に応じて複数の方法を用いたり、最適な方法で評価したりする必要があります。
買収する企業の規模にもよりますが、株式の買取を行うには、多額の資金が必要になるため、経営陣はMBO実施までに資金調達を行います。買取資金が不足している場合は、金融機関や関連会社、投資ファンド、証券会社、ビジネスローン、日本政策金融公庫などから資金調達を行うのが一般的です。近年では、国内外の投資ファンドと組んでMBOを実施する事例が増えていますが、どの方法でも問題はなく、できるだけスムーズにタイミングを逃さずに行える調達方法を選択するとよいでしょう。
MBOを成功させるといっても、MBOの目的によって成功の意義は変わってきます。また想定していなかったような細かい対処が求められる状況が発生することもあるので、MBOを検討している方は、事前に生じやすいリスクを確認しておきましょう。決断が正しかったと思えるMBOにするために、把握しておくべきポイントを紹介します。
上場企業の非上場化が目的のMBOでは、経営陣と株主との間で、利益相反が生じやすいため、徹底した防止体制を構築する必要があります。少数株主を保護する対策としては、第三者委員会の設定や、独立した第三者機関による評価を行います。経営権の強化を目指してMBOを実施する際には、できる限り安く株式を取得することだけに着眼するのではなく、利益相反が回避できる適正価格を意識して、買取価格を決定することが大切です。
MBOは実施して終わりではなく、MBO後の活動についても計画しておかなければなりません。MBOで上場廃止となると、会社の信用力の低下が生じるだけでなく、株式からの資金調達を行えなくなります。また買収後に残った債務は収益から返済していく必要があることから、資金調達や買取金額に関する取引は、将来の財務状況を念頭に置いて実施するようにしましょう。ほかにも既存株主がいなくなることで、監視機能が甘くなるリスクが発生します。
具体的なMBOの事例を4つ紹介します。MBOをスムーズに進めていくためにも、MBOのさまざまな事例をぜひ参考にしてください。
TSUTAYAを運営することで知られるカルチュア・コンビニエンス・クラブ(CCC)株式会社は、2011年にMBOによる上場廃止を行うと発表しました。買付金額は約700億円となり、CCCの増田宗昭社長が全額出資したMMホールディングスを通じて、CCCの公開買付けを実施。インターネットコンテンツ配信の普及や他社競合の激化による利用人口の減少など、経営環境の悪化を受けて、経営戦略の見直しが必要になったことが背景としてあります。非上場化によって経営の自由度を高め、事業の再構築を目指しました。
株式会社幻冬舎は、2011年にMBOによって上場廃止を実施しました。ケイマン諸島に設立された投資ファンド「イザベル・リミテッド」が敵対的買収を仕掛けてきたため、防御策としてもMBOは活用されました。イザベル・リミテッドは、TOB期間中に幻冬舎株の3割を取得していましたが、現物株ではなく、信用取引で株を買い集めていました。総会での議決権を決める際には、仲介業者が35%の議決権を持つ異例の状況となり、賛否の議決権行使もせずに欠席したことで、結果的に58%の議決権を持つ見城徹社長側の圧勝となりました。
照明機器メーカーのオーデリック株式会社は、2020年2月に経営陣によるMBOを実施し、株式の非公開化を発表しました。同社社長の伊藤雅人氏が代表取締役を務めるアマセクリエートがTOBを行い、2020年6月に非上場化されています。MBOによる非公開化を通じて、より柔軟で機動的な意思決定を可能にする経営体制を構築し、海外への事業展開も含めて、中長期な視野で企業価値の向上を目指しています。
ガストやジョナサンといったレストランチェーン店を運営するすかいらーくは、2006年に業績悪化の影響を受けて、MBOによる上場廃止を決断します。株式を非公開化して経営改革を行う準備を整え、野村ホールディングスがSPCを設立してTOBの実施を発表しました。しかし、MBO後に経営陣である創業者らが解任され、莫大な負債を残したため、利益の多くを借り入れ金の返済とのれん代償却に充てることになります。非上場化で大幅な経営改革を行って、企業価値を向上させて再上場を目指すのが目的でしたが、2014年に再上場を果たしたものの、利益のほとんどを失うこととなったため、成功事例とは言い難い結果となりました。
ウィルゲートM&Aでは、15,100社を超える経営者ネットワークを活用し、ベストマッチングを提案します。Web・IT領域を中心に、幅広い業種のM&Aに対応しているのがウィルゲートM&Aの強みです。M&A成立までのサポートが手厚く、条件交渉の際にもアドバイスを受けられます。
一般的にM&Aの成約までは6ヶ月〜1年ほどの期間を要しますが、ウィルゲートでは平均で4ヶ月、最短1.5ヶ月での成約実績、40億円以上での成約実績もあります。完全成功報酬型で着手金無料なので、お気軽にご相談ください。
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M&AにおけるMBOの概要とMBOを実施するメリット・デメリット、また具体的なMBOの事例を3つ紹介しました。
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