株式譲渡・事業譲渡の際に株主総会の決議は必要?決議の種類と議事録の書き方も解説

株式譲渡・事業譲渡の際に株主総会の決議は必要?決議の種類と議事録の書き方も解説
この記事の監修:M&A専門家
四辻 弘樹
S M B C日興証券・みずほ証券の投資銀行部においてM&A、ファイナンス、I P O等に携わる。その後は上場企業のテモナにおいてCSOとして事業戦略、M&A、新規事業開発に従事。現在はM&Aアドバイザリーの他、資金調達支援、IPO支援に加えCFOとしての活動。

株式譲渡や事業譲渡の際に株主総会の決議が必要かは、買い手・売り手で異なります。株主総会の決議は「普通決議」と「特別決議」の2種類があります。株式譲渡や事業譲渡では株主総会議事録が必要なケースがあり、雛形に沿って正しく記載する必要があります。

この記事では、株式譲渡・事業譲渡の際に株主総会の決議の必要性や決議の種類と議事録の書き方について解説します。

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株式譲渡や事業譲渡において株主総会の特別決議は必要?

まず株式譲渡における株主総会の特別決議は、売り手と買い手ともに一部で必要となります。

また事業譲渡における株主総会の特別決議は、売り手は原則不要で買い手ともに一部で必要となります。

それぞれ株主総会の特別決議が必要となる条件、不要となる条件をしっかり頭にいれておきましょう。

株式譲渡や事業譲渡において株主総会の特別決議が必要になる条件

事業譲渡する際に譲渡する側の企業は、一部の例外を除くと株主総会を開いて承認を取らなければなりません。

しかし株主総会の特別決議が必要かは条件によって異なってきます。ここでは株主総会の特別決議が必要になる条件と不要な場合の条件に付いて詳しく解説していきます。

株主総会が必要となる場合

株式総会が必要となるのは以下のような場合です。

  • 株式譲渡における売り手で親会社が、重要な子会社の株式の過半数以上を売却するケース
  • 事業譲渡における売り手で事業を他社に譲り渡すケース
  • 事業譲渡における買い手で事業の全部を譲り受けるケース

株主総会が不要となる場合

株式総会が不要となるのは以下のような場合です。

  • 株式譲渡における売り手が株主総会での特別決議は原則不要
  • 株式譲渡における買い手は株主総会での特別決議は不要

株主総会の普通決議と特別決議の違い

ここでは株主総会の「普通決議」と「特別決議」の違いについて詳しく解説していきます。

まず普通決議では、議決権の過半数を有する株主が出席します。決議が承認されるためには、出席する株主の議決権の過半数が必要となります。

一方で特別決議も、議決権の過半数を有する株主が出席します。決議が承認されるためには出席する株主の議決権の2/3以上が必要となります。

このように普通決議と特別決議は出席する株主の条件は同じですが、決議が承認されるために必要な株主の議決権が異なります。

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株式譲渡・事業譲渡の承認手続きの流れ

ここでは株式譲渡と事業譲渡の承認手続きの流れについて解説していきます。まず株式譲渡の承認手続きの流れは以下の通りです。

  • 株式譲渡する当事者が会社に対し株式譲渡の承認を請求する
  • 取締役会が設置されている会社は取締役会、それ以外の会社は株主総会にて会社による承認の決定を行う
  • 会社による承認の決定を株式譲渡する当事者に通知する
  • 譲渡する側と譲受する側とで株式譲渡契約の締結を行う
  • 譲渡する側と譲受する側とが共同して株主名簿の書換請求を行う
  • 株主名簿の写しと株主名簿に記載した事項の証明を行う

次に事業譲渡の承認手続きの流れは以下の通りです。

  • 事業譲渡の決定後に自社分析や今後のプランを検討する
  • 取締役会で承認を得る
  • 買い手を選び交渉を行う
  • 基本合意契約を締結し買いて企業は企業調査を行う
  • 企業調査に問題がなければ取締役会で決議を行い事業譲渡契約の締結を行う
  • 株主総会の特別会議で承認を得る

株主総会の議事録とは?

株主総会の議事録とは、株主総会などで決議した内容を記載する書面のことです。株主総会の議事録は株主や債権者に提示する書類で、裁判が行われた場合には重要な証拠書類となります。

株主総会の議事録には保管する義務期間があり、保存期間内に株主や債権者から株主総会の議事録の提示・閲覧・謄写請求があれば、スムーズに提出しなければなりません。

株主総会の議事録が必要となるケース

株式譲渡や事業譲渡において株主総会議事録が必要になる場面があります。まずは商業登記申請時です。株主総会議事録は登記する際に必要な書類であり、株主総会議事録に記載されている内容が総会の決議と異なる場合、間違った内容で登記がなされる危険性があります。

また株主総会議事録は、決議の内容についての裁判が行われる際の大切な証拠となります。もし株主総会議事録を作成していない場合や、株主総会議事録の内容に不備があると裁判で不利になってしまう可能性があります。

作成した株主総会議事録の原本は本店に10年間保管し、コピーは支店に5年間保管しなければなりません。保管期間の間に株主や債権者から株主総会議事録の閲覧・謄写を請求されたら応じる必要があります。

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株主総会の議事録の書き方

ここでは株主総会議事録の書き方・基本項目について解説していきます。株主総会議事録に書くべき基本項目は以下の通りです。

  • 株主総会の実施日時や実施場所
  • 出席株主や議決権の状況について
  • 総会に出席した役員の名前や名称
  • 株主総会の議長の名前と議事録を作成した取締役の名前
  • 株主総会の開始から終わりまでの経過と議事内容について
  • 出席者の発言内容について
  • 株式譲渡承認請求の審議結果について

株主総会の実施日時については開始時間と終了時間まで、開催場所に関しては会議室の部屋名まで明確に記載してください。

株主総会議事録の記載項目と雛形(テンプレート)

以下は株主総会議事録の雛形です。

株主総会議事録

第1 開催日時
令和〇年〇〇月〇〇日 午後〇時〇分

第2 開催場所
〇〇県〇〇〇市〇〇町×××-×

第3 株主の出席および議決権の状況
株主総数 〇〇名
発行済み株式の総数 〇〇株
議決権を行使することができる株主数 〇〇名
その議決権数 〇〇株
委任状による出席を含む出席株主数 〇〇名
その議決権数 〇〇個

第4 出席役員
出席取締役 名前を記入する
出席執行役 名前を記入する
出席会計参与 名前を記入する
出席監査役 名前を記入する
出席会計監査人 名前を記入する

第5 議長
代表取締役 名前を記入する

第6 議事の経過の要領およびその結果
定刻、代表取締役 (名前を記入する)は議長席につき、開会を宣し、上記のとおり定足数を充足すると述べ、議事に入った。

議案 株式譲渡承認の件

議長は、令和〇〇年〇〇月〇〇日、当会社の株主から下記のとおり株式譲渡の承認の請求があった旨を述べ、賛否を議場に諮った。 総会は出席株主の議決権の過半数の賛成をもってこれを承認可決した。


株式譲渡の承認を請求する株主および株式の数を記入する

株式を譲り受ける者および譲り受ける株式の数を記入する

以上をもって本総会のすべての議事が終了したので、議長は午後〇〇時〇〇分閉会を宣した。

令和〇〇年〇〇月〇〇日 〇〇〇〇会社臨時株主総会

本議事録の作成に係る職務を行った取締役
代表取締役 名前を記入する 代表印

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株主総会議事録作成の注意点

株主総会議事録作成する際には以下の項目に注意してください。

  • 記載内容
  • 株主総会の開催日
  • 作成する時期
  • 保管する期間
  • 署名や印鑑の必要性

ここでは株主総会議事録を作成する際の注意点について、それぞれ詳しく解説していきます。

記載内容の不備がないかどうか

株主総会議事録は商業登記や、裁判が行われる際の大切な資料となります。

株主総会で決まったことを実行しても、実行した内容が株主総会議事録の記載内容と異なっていると、株主総会議事録の記載内容の方が正しいとされてしまう可能性があります。

そのため作った株主総会議事録の内容と株主総会の内容があっているかをしっかりと確認し、株主総会議事録の内容に不備がないようにしてください。

株主総会の開催日が間違っていないか

株主総会議事録を作成する際には、株主総会の開催日が間違っていないか確認してください。

開催日が間違っていると一瞬で正確性が失われてしまい、こちらには悪意がないとしても株主総会議事録に虚偽記載があると見なされてしまいます。

開催日以外にも、開催時間や開催場所など基本的な項目は忘れずに正確に記載してください。

作成する時期に注意しよう

株主総会議事録は株主総会の後、迅速に作成しなければなりません。例として登記に関する内容について株式総会で決議されたら、決議から2週間以内に登記申請をする必要があります。

登記を申請するためには株主総会議事録の添付が必須なので、株主総会議事録は株主総会が終わった後にできるだけ早く作成してください。

保管する期間に注意しよう

最初に解説した通り、株主総会議事録は株主や債権者に公開する情報資料となります。

株主総会議事録には保管する期間が定められており、原本を本店に10年・コピーを支店に5年間保管する義務があります。保管期間の間に株主総会議事録の閲覧・謄写の請求をされた場合には、必ず応じなければなりません。

自己判断で株主総会議事録を捨ててしまったり、支店に株主総会議事録のコピーを送らなかったりすると法令違反となります。

署名や印鑑の必要性を理解しよう

会社法では株主総会議事録への署名・印鑑の義務は定められていません。そのため法律的には株主総会議事録に署名・印鑑がなくても株主総会議事録は成り立ちます。

しかし多くの会社が株主総会議事録を作成する人物と印鑑を押す人物について、会社の規約で定めています。会社で株主総会議事録の作成者についての決まりが定められているのであれば、株主総会議事録を作成する際に作成者の署名・印鑑は必須です。

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株式譲渡の株主総会決議 まとめ

株式譲渡には場合によって株主総会の決議が必要となり、大切な資料となる株主総会議事録も正しく作成しなければなりません。

初めて株式譲渡に挑戦する人にとっては、株主総会議事録の作成を含めた手続きが難しいと感じてしまうかもしれません。

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