吸収合併契約書の作り方|記載事項とひな形と注意点を解説

吸収合併契約書の作り方|記載事項とひな形と注意点を解説

吸収分割契約書には、必ず記載しなければいけない事項が存在します。それを記載しないと、吸収分割の契約が無効となる恐れがあります。

そこで今回は、吸収合併契約書の作り方について解説します。

ミスが起こらないよう、事前に記載事項を確認し、ひな形を活用して契約書を作成しましょう。

吸収合併契約書とは

吸収合併契約書とは

吸収合併契約書とは、吸収合併の際に必ず作成しなければならない契約書です。吸収合併契約において、株主や債権者保護のために備置することが義務付けられています。吸収合併契約書は、存続会社の場合は会社の本店に吸収合併効力発生日より6カ月間備置しなければいけません。

消滅会社の場合、吸収合併の効力発生日まで本店に備置する必要があります。なお、株主総会を開催する場合は、吸収合併契約書を株主総会開催の2週間前までに備置しなければいけません。

吸収合併契約とは?

吸収合併契約とは?

吸収合併契約締結の必要性やメリット、タイミングを把握しましょう。

吸収合併契約締結の必要性

吸収合併契約の締結を行う際には、取締役会が設置されているか設置されていないかで方法が変動します。取締役会設置会社は取締役会の決議が必要です。取締役会非設置会社の場合は、取締役の頭数の過半数の決定を基準に代表取締役や代表執行役の決議が必要です。その後、株主総会の特別決議を得る必要があります。

吸収合併契約締結のメリット

吸収合併契約締結をするメリットはさまざまありますが、代表的なものは人件費や設備コストの削減です。新たな事業を展開していくのに技術力や設備が必要な場合、それらを自社で賄っていくには時間も費用もかかります。吸収分割により技術力や設備を手に入れることで、人件費や設備コストの大幅な削減につながります。

吸収合併契約締結のタイミング

吸収合併契約締結は、株主総会より前に行う必要があります。

吸収合併契約書の法定記載事項

吸収合併契約書の法定記載事項

吸収合併契約を行う存続会社と消滅会社が両方株式会社の場合、吸収合併契約書に法定記載事項を明記する必要があります。法定記載事項が抜けた吸収合併契約書は違法な契約となり、原則無効となるので注意しましょう。

また、法定記載事項に誤りがある吸収合併契約では、株主より効力発生日前であれば吸収合併の差止め請求、効力発生後は吸収合併無効の提起を起こされる恐れがあります。

合併当事者の情報

吸収合併契約書には、会社法に則り存続会社と消滅会社の商号や住所を記載します。

存続会社の商号と住所

吸収合併契約書に、存続会社の商号と本店の住所を記載します。

消滅会社の商号と住所

吸収合併契約書に、消滅会社の商号と本店の住所を記載します。

合併条件

吸収合併条件は、消滅会社の株主が消滅会社の株式と引き換えに交付されるものを定めるものです。合併条件は、各会社の株主間に経済利益や損失が生じないように公平に定められています。

交付される対価の種類・総額など

吸収合併条件には、消滅会社の株主が消滅会社の株式と引き換えに存続会社が交付する対価の種類や総額などが含まれます。対価には、株式や社債、新株予約権付社債などがあります。それらの額や数、算定方法について吸収合併契約書に記載します。

消滅会社が新株予約権を発行している場合は、新株予約権者に対して存続会社が交付する新株予約権や新株予約権付社債、金銭の内容や数、算定方法について明記します。また、これらに対し、価値の相当性に関する事項を開示する必要があります。

割当てに関する事項

存続会社が消滅会社の株主に対し交付する金銭などを、どのように割当てるか吸収合併契約書に明記します。

合併後の資本金と準備金に関する情報

吸収合併において、存続会社が消滅会社より承継する権利義務の対価を、存続会社から消滅会社の株主に支払います。そのため、会社法では吸収合併後の資本金と準備金に関する情報の明記が義務付けられています。

合併対価の支払いに関する取り決め

吸収合併では存続会社は消滅会社の株主に対し、吸収合併対価を交付するケースがあります。そのときは、消滅会社の株主に対し新株の交付があるのか、または対価の割り当てがあるのかにより記載する内容が変動します。それぞれ確認をしましょう。

消滅会社の株主に対する新株の交付がある場合

消滅会社が株主に対し新株予約権を発行している場合、存続会社が消滅会社の新株予約権保有株主に対価を交付する必要があります。その場合、存続会社は新株予約権の数や金額、算定方法などを記載しないといけません。

消滅会社の株主に対する対価の割り当てがある場合

消滅会社の株主への対価が株式の場合、株式数や算定方法の記載が必要です。吸収合併の際に普通株をどれくらいの数を発行しているか、消滅会社の株式1株に対し、存続会社の株式を何株の割合で交付するか明記します。

期日

吸収合併契約書を作成した後は、株主総会で吸収合併契約書の了承を得ます。吸収合併の効力発生日に吸収合併契約書の提出が必要です。

合併契約書を承認する株主総会の期日

吸収合併契約の効力発生日前日までに、株主総会で株主に吸収合併契約書の内容の承認を得る必要があります。株主総会の通知は、株主総会が開催される1週間前までに株主に通知します。上場企業の場合、または非上場企業でも書面投票や電子投票により承認を得る場合、2週間前までに通知を行う必要があります。

合併契約の効力発生日

吸収合併契約書には、吸収合併契約の効力発生日を記載しなければいけません。吸収合併の効力発生日は、存続会社が消滅会社より権利義務を承継し、消滅会社の株主が存続会社の株主となる日です。

吸収合併契約書の作り方

吸収合併契約書の作り方

吸収合併契約書の作り方を確認しましょう。

タイトル

吸収合併契約書のタイトルは、会社法で定められていなく、一般的には「吸収合併契約書」や「合併契約書」と明記することが多数です。

契約者を明確にする全文

吸収合併契約書の前文では、合併契約を結ぶ存続会社と消滅会社の社名を両方明記します。通常は存続会社を「甲」、消滅会社を「乙」として記載します。

契約内容の定義

吸収合併契約書には、会社法で定められた事項を定義して記載します。定義には、必ず記載しなければいけないものと、必要に応じて記載するものがあります。定義は条文形式で記載するのが一般的で、以下のような内容が記載されます。

  • 吸収合併の形式
  • 吸収合併効力発生日
  • 財産の管理や引継ぎ
  • 従業員の処遇や引継ぎ
  • 契約内容の変更や解除
  • 吸収合併契約書に定めのない取り決めについて

結び

吸収合併契約書の締結を証明するために、契約書には吸収合併契約書の作成数や保管場所、日付や両社の捺印や署名を結びに記載します。

契約書の部数

吸収合併契約書は、吸収合併に関わる会社が2社であれば2通作成し、その旨を明記します。

保管場所

吸収合併契約書は存続会社と消滅会社で1部ずつ保管するので、その旨を吸収合併契約書に明記します。

作成日

吸収合併契約書の作成日を吸収合併契約書に記載し、記名捺印します。

記名捺印

吸収合併契約書の最後に、存続会社と消滅会社の住所や会社名、代表者名を記載し、捺印をします。これらは手書きの必要はなく、印刷されたもので問題ありません。

添付書類

吸収合併契約書は、吸収合併登記申請の際に提出しなければいけません。提出時には印紙が必要で、吸収合併契約書と一緒に提出する書類があります。

印紙

吸収合併契約書を提出するときに、契約書1枚につき4万円の収入印紙が必要です。収入印紙は、吸収合併契約書の枚数が1枚増えるごとに4万円かかります。吸収合併契約書は、原本が1枚あればほかは写しでもよいので、印紙代は1枚に抑えられます。

ただし、存続会社と消滅会社がグループ企業でなければ、両社が原本を保有しておいた方がよい場合があるので、その際は2枚分印紙代がかかります。

株式会社合併による変更登記申請書

株式会社合併による変更同期申請書を、吸収合併の効力発生後に法務局に提出しなければいけません。この際に、吸収合併契約書以外にも、各種書類を提出する必要があります。必要書類の数が多いので、準備忘れや記入漏れに注意が必要です。

吸収合併契約書のひな形

吸収合併契約書のひな形

吸収合併契約書は、会社法により定められた記載事項すべてを明記することで効力を発揮します。記載例やひな形を活用すると、記入漏れや記載ミスを防げるのでおすすめです。

以下、吸収合併契約書のひな形を紹介するので、作成時の参考にしてください。

吸収合併契約書のひな形

合併契約書

 株式会社A(以下「甲」という)と株式会社B(以下「乙」という)は、次のとおり合併の契約(以下「本契約」という)を締結する。

(合併)
第1条 甲および乙は、合併し、甲は存続し、乙は解散する(以下「本件合併」という)。

吸収存続会社  ○○県○○市○○町○丁目○番○号
        株式会社 A

被吸収会社   ○○県○○市○○町○丁目○番○号
        株式会社 B

(商号)
第2条 甲は、前条の合併期日をもって次のとおり商号を変更する。
  商号:株式会社 C

(合併に際して発行する株式および割当)
第3条 甲は、本件合併に際して、普通株式○○株を発行し、合併期日における乙の株主名簿記載の株主に対し、その所有する乙の普通株式○○株につき、甲の普通株式○○株の割合をもって割りあて交付する。

(合併により増加すべき資本金等)
第4条 甲が合併により増加すべき資本金、資本準備金、利益準備金、任意積立金そのほかの留保利益の額は、次のとおりとする。
(1)資本金 金○○円
(2)資本準備金 金○○円
(3)利益準備金 金○○円
(4)任意積立金その他の留保利益の額 金○○円
ただし、積み立てるべき項目は、甲乙協議の上、決定する。
2 前項各号の金額は、甲乙協議の上、合併期日の乙の資産状況を考慮して変更することができる。

(合併承認の株主総会)
第5条 甲および乙は、平成○○年○○月○○日までに、それぞれ臨時株主総会を開催し、本契約の承認および必要な事項の決議を行う。ただし、本件合併の進捗状況により、必要がある場合は、甲乙協議のうえ、臨時株主総会の期日を変更することができる。

(合併期日および合併の効力発生日)
第6条 合併期日および合併の効力発生日は、平成○○年○○月○○日とする。ただし、本件合併の進捗状況により、甲乙協議の上、変更することができる。

(財産の承継)
第7条 甲は、乙から平成○○年○○月○○日現在における貸借対照表・財産目録などを基礎とし、これに合併期日の前日までの増減を加除した資産・負債・権利義務一切を合併期日において承継する。
2 乙は、平成○○年○○月○○日から合併期日に至る間の資産および負債の変動につき、計算書を添付して、その内容を甲に明示する。

(善管注意義務)
第8条 甲および乙は、本契約締結後合併期日前日まで、善良な管理者の注意をもって業務を執行し、それぞれの保有する一切の財産の管理、運営をする。その財産および権利義務に多大な影響を与える行為については、あらかじめ相手方に報告し、その同意を得て行う。

(役員および従業員)
第9条 本件合併により、新たに甲の取締役および監査役となる者については、第5条の甲の合併承認株主総会において選任するものとする。それぞれの任期などの詳細は、合併後の株主総会で決議するものとする。
2 甲は、合併期日における乙の従業員を甲の従業員として引き継ぐものとする。なお、退職金および勤続年数については、乙における基準に基づいて通算し、そのほかの細部については、甲乙協議して定める。

(合併条件の変更および契約の解除)
第10条 甲および乙は、本契約締結後合併期日前日までの間、天変地異そのほか双方当事者の責に帰さない事情により、甲または乙の資産・負債・経営状態などに大幅な変動があった場合、甲乙協議の上、合併条件を変更または本契約を解除することができる。

(本契約の効力)
第11条 本契約は、第5条に定める甲および乙の株主総会の承認が得られないとき、または法令に定められた関係官庁の承認が得られないときは、効力を失う。

(管轄)
第12条 甲および乙は、本契約に関し裁判上の紛争が生じたときは、○○地方裁判所を第一審の専属的合意管轄裁判所とすることに合意する。

(協議事項)
第13条 本契約に定めのない事項については、甲乙誠意をもって協議し、決定するものとする。

 本契約締結の証として、本書2通を作成し、甲乙記名押印のうえ、各1通を保有する。

平成○○年○○月○○日

甲  ○○県○○市○○町○丁目○番○号
  株式会社 A
    代表取締役  ○○ ○○

乙  ○○県○○市○○町○丁目○番○号
  株式会社 B
    代表取締役  ○○ ○○

吸収合併契約書の注意点

吸収合併契約書の注意点

吸収合併契約の内容により記載内容が変動します。吸収合併契約書を作成する際はひな形を活用しつつ、専門家の協力を受けるのがおすすめです。

MAC条項が定められているか

MACとは、「Material Adverse Change(重大な悪影響)」の略。MAC条項とは、吸収合併契約からクロージングまでの間に一定の事由が生じた場合に契約解除できるなど、リスクを売り手と買い手で配分する取り決めのことです。MAC条項が定められていないと、思わぬリスクを負う可能性があるため、必ず確認しておきましょう。

届け出義務が発生しないか

吸収合併契約を締結する際には、届け出が必要になる場合があるので、注意しましょう。ここでは、独占禁止法に基づき届け出が必要になるケースを紹介します。

  • 吸収分割で全部承継の場合、分割する会社のいずれかの「国内売上高合計額」が200億円を超え、かつ承継する会社の「国内売上高合計額」が50億円を超える場合
  • 吸収分割で全部承継の場合、分割する会社のいずれかの「国内売上高合計額」が50億円を超え、かつ承継する会社の「国内売上高合計額」が200億円を超える場合
  • 吸収分割で、重要部分の承継の場合、分割する会社のいずれかの当該分割の対象部分に関わる国内の売上高が100億円を超え、かつ承継する会社の「国内売上高合計額」が50億円を超える場合
  • 吸収分割で、重要部分の承継の場合、分割する会社のいずれかの当該分割の対象部分に関わる国内の売上高が30億円を超え、かつ承継する会社の「国内売上合計額」が200億円を超える場合

企業買収・M&A相談ならウィルゲートM&A

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吸収分割を検討している方は、吸収合併契約書の作成をM&A仲介会社に依頼しましょう。現在数多くのM&A仲介会社が存在しますが、その中でも特にウィルゲートM&Aがおすすめです。ウィルゲートM&Aは、着手金や相談料無料で、吸収分割の仲介実績が豊富です。まずは気軽に相談してみるとよいでしょう。

吸収合併契約書 まとめ

吸収合併契約書 まとめ

吸収合併契約書には、記載しないといけない事項が会社法により決められています。その記載事項を明記しないと、吸収合併の契約が無効となるケースがあるので注意しましょう。

吸収合併契約書の作成には、専門家によるサポートを受けるのがおすすめです。

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