会社分割は、組織再編一環として採用されることの多い手法です。会社分割にはいくつかの方法が挙げられますが、中でも選ばれやすいのが、新設分割と吸収分割の2種類です。
今回はこの2つの会社分割方法に焦点を当てながら、会社分割において発生する手続きや、必要期間などについてご紹介します。
会社分割は、企業が抱えている事業を外部の会社に対して分割したり、新たに設立する会社に承継したりする、企業再編手法の一種です。自社で扱っている事業の中で、採算が合わなくなっている事業や、別企業で扱った方がお互いのためになるというメリットが期待される場合、選ばれるケースの多い手法です。
既存子会社や新設する会社に事業を分割して、本社を持株会社化する手段としても採用されています。会社分割は80年代よりヨーロッパ地域で法整備が行われてきましたが、日本において会社分割の法整備が進んだのは2001年ごろからです。会社分割の制度導入前から存在していた営業譲渡(現在の事業譲渡)と差別化して運用されており、法改正が進んだ現在でも存続している制度です。
ちなみに、グローバルビジネスの本拠地でもあるアメリカにおいては、会社分割の制度は存在しません。資産や事業の譲渡は可能なので、移転先の会社に事業を譲り渡してから、独立した会社として切り離すという手法が用いられています。
この方法はスピンオフやスピンアウトとして知られており、日本でも実施されるケースは少なくありません。
上述では、会社分割は事業譲渡と差別化する形で運用されているとしましたが、それではこの2つの制度にはどのような違いがあるのでしょうか。そもそも事業譲渡ですが、これは平たくいえば事業売買の取引を指す言葉です。主力事業へ集中したい、採算の取れない事業を手放したいという売り手に対して、既存事業をさらに育てたい、自社の弱みを補いたいなどの場合に、買い手が現金を用意して売り手と取引を行います。
1つ目の違いとして、資産及び権利、義務の引き継ぎの違いが挙げられます。事業譲渡の場合、どれくらいの資産や権利、義務を引き継ぐのかについては、売り手と買い手の取引の中でコントロールすることができます。ただ、従業員との雇用契約なども事業譲渡の場合はもう一度結び直しになってしまうため、譲渡の際の手続きは非常に多くなってしまうのがネックです。
一方で会社分割の場合、資産と権利義務を含め、包括的に引き継ぎを行える制度になっています。分割の際の手続きの負担は事業譲渡と比較してシンプルなので、手早く承継を進めるのに適した手段です。ただ、会社分割の場合は不要な債務や資産も自動的に引き継がれるため、その点を踏まえて選択する必要があります。
2つ目の違いとなるのが、債権者保護の手続き、及び特別決議の有無についてです。債権者の利益を守るべく、M&Aを遂行する際にはその旨を債権者に通知したり、異議を申し立てられるようにしたりする義務が会社にはありますが、事業譲渡の際には保護の手続きは発生しません。また、M&Aの際には株主総会において、株主の真を問う特別決議の実施も必要になりますが、事業譲渡の際にはこちらも一部のケース、事業の全部譲渡・重要な一部の譲渡などに触れない場合には必要ありません。
一方で会社分割の場合は、これら債権者保護の手続き、及び特別決議の実施は原則上必須です。株主や債権者向けの手続きを考えた場合、事業譲渡の方が負担は小さいといえるでしょう。
3つ目の違いは、支払う税金についてです。事業譲渡を実施する場合、主に課税されるのが法人税と消費税です。税率については会社の規模によってさまざまですが、法人税は譲渡の際に発生した利益(譲渡益)に対して課税され、消費税は譲渡する資産から非課税資産を差し引いた金額に課税されます。事業譲渡の場合は税の支払いが比較的シンプルに進められるのが特徴といえるでしょう。
一方の会社分割ですが、まず消費税については非課税となるため、支払いの必要はありません。法人税については、適格要件を満たした適格会社分割の場合、新たに課税が行われることはありません。
ただし適格要件を満たさない会社分割の場合、譲渡によって生じた損益に対して課税が行われるため、法人税の支払いが発生します。具体的にどのような要件満たさなければいけないのかについては、事業承継の専門家に相談してみることをおすすめします。
会社分割とは一言でいっても、実際には多くのアプローチが存在します。ここでは、会社分割にどのような方法があるのかについて、新設分割と吸収分割というポピュラーな手法に加え、その他の分割方法についても詳しくご紹介します。
会社分割における最もポピュラーな方法が、新設分割です。既存会社の分割したい事業を、新たに設立する会社に対して分割することで、事業の移転を実現します。事業分割の際、新設会社は新たな事業を既存会社から手に入れ、新設会社はその対価として自社の株式を既存会社に配布します。新設会社は既存会社に100%の株式を譲渡することが一般的で、新設会社は分割元の完全子会社となるのが特徴です。
新設分割は、分割事業を新設会社に分割し、その運営を新設会社に任せるという手法です。親会社が組織の再編を進めたい場合はもちろん、企業再生を促進する上で新設分割は多用されています。
親会社が組織の再編を進めるために新設分割を行う場合、概ね分割される事業は採算が取れており、事業が肥大化しているケースが多いです。その事業を1つの会社として運営を進めるべく、新設分割が行われます。対して企業再生のために新設分割を進める場合、会社が正しく収益を生むことができず、債務超過に陥っている場合に実施されます。収益を生み出している事業を新設会社に分割し、そうでない事業と切り離すことで、企業再生を進めます。
また、複数の企業がお互いに設備や資金、人材を出し合い、ジョイントベンチャーとして新しく事業を展開したいという場合にも新設分割が行われる傾向にあります。ジョイントベンチャーとなる場合には、リソースを提供した複数の企業が株主となるため、新設会社は子会社であっても、完全親会社を持つわけではありません。新設会社から各企業に交付される株式は、それぞれの提供したリソースの割合に応じて分配されることとなります。
事業承継において得られる対価を、譲渡会社の株主が多く受け取れるよう手続きを行うのが、分割型新設分割です。新設分割にも具体的にはいくつかの手法が用意されていますが、こちらの分割手法の場合は分割された承継会社から承継の対価を、株主が株式で受け取れる仕組みになっています。
新設会社から株式が発行された際、株主は分割会社の株式比率に応じて対価が分配されます。分割会社の株式を20%有している場合、新設会社から新規株式を20%、30%保有している場合には新規株式も30%という割合です。人的新設分割とも呼ばれ、グループ会社が再編を進める際に利用されることのある手法です。
事業承継によって得られる対価を、譲渡会社が最大化する上で役に立つのが、分社型新設分割です。新設会社の設立に合わせて、分割会社は新設会社の新規株式を受け取り、新設会社を子会社化します。
物的新設分割とも呼ばれ、分割会社をホールディングカンパニーへ鞍替えする際に利用されることの多い手法です。
共同新設分割は、2社以上の複数の企業が合同で新設会社を設立し、事業分割を進める際の手法です。前述のジョイントベンチャー立ち上げを進める際、採用されているのが共同新設分割です。
分割事業を渡された新設会社は複数企業を株主としても有し、どこかの企業の完全子会社となるわけではありません。お互いにリソースを出し合い、共同で強みを発揮できる事業を展開していきたい場合に採用されている新設分割方式です。
続いて、吸収分割の方法についてみていきましょう。吸収分割は会社法第2条29項に定められている事業承継方法の一種で、株式会社または合同会社が、その事業に関して有する権利や義務の全部、または一部を分割することを指します。新設分割の場合、分割先の会社は新たに設立することで承継先を確保していました。しかし吸収分割の場合、承継先は既に設立されている点が最大の特徴です。
新設会社を設立するにあたっては、分割する事業がその新設会社の基軸事業となることも珍しくありません。しかし吸収分割の場合、既存会社への分割を実施するため、既に承継先が何らかの事業を有しており、分割事業はその一部として組み込まれることとなります。
吸収分割を実施すると、分割会社は組織の規模が縮小し、人材の流出も進んでしまうため、その対応に追われるリスクも抱えています。しかしその一方で、高度に複雑化した事業群を整理し、本来の経営方針に則った事業への集中が進むため、スマートな組織経営を実現可能です。また、事業を一本化できるため、総売り上げとしては縮小しても、収益性は改善することが見込まれます。
現金を対価として実施するグループ会社再編を回避したい場合や、グループ内で役割が重なってしまっている事業を仕分けたい際に選ばれることの多い手法です。
新設分割同様、吸収分割にも分割型と呼ばれる分割手法が用意されています。吸収分割における分割型も、分割会社の株主にとってありがたい制度で、分割会社ではなく、承継した事業の対価が株主に対して支払われる仕組みです。事業対価として分割先の会社の株式が株主に支払われた場合、その株主は分割会社の株式と、分割先の株式の両方を所有することとなります。
例えば、Aという会社がBという会社へ事業を分割型吸収分割で承継するとします。この場合、会社Aの株主A’は、事業承継先の会社Bから金銭、あるいは株式を受け取ることができます。この際に会社Bが株式を支払った場合、株主A’は会社Aと会社Bの株主となるわけです。
分社型吸収分割も、おおむね新設分割のそれと仕組みは変わりません。分社型分割の場合、分割会社が事業承継先から事業分割の対価を受け取り、金銭や株式のやり取りが会社間でのみ行われる方式です。株主ではなく、事業を分割する会社の利益を優先する際に選ばれる分割方式といえるでしょう。
また、会社Aと会社B、そして株主A’の例を考えてみましょう。会社Aから会社Bに対して分社型吸収分割が行われた場合、事業分割の対価は会社Bから会社Aに対して行われ、この取引の中で株主A’から直接対価を得ることはありません。会社分割における株主A’の利益は、会社Aを経由して何らかの形で支払われることになります。
会社分割は、基本的に新設分割と吸収分割の2種類の方法のどちらかによって実施されるケースがほとんどです。しかし実際には、新設分割と吸収分割の両方に属さない分割方法も存在します。
例えば、交付金分割です。交付金分割は、会社分割の際に分割事業を引き受けることになった会社が、対価として株式の代わりに、金銭のみを交付するやり方です。ただ、金銭のみで交付を完了させる方法には大したメリットがなく、適用分割の要件からも外れてしまうため、会社分割は基本的に株式のみで実施する方が良いと考えられています。適用分割の要件については、後ほど解説します。
三角分割は、承継先の会社が分割会社の株主に対して、承継会社の親会社の株式を対価として与える取引のことを指します。
通常の会社分割の場合、分割会社、あるいは分割会社の株主が、分割の対価として承継会社の株式を手に入れることとなります。しかし三角分割の場合、承継会社の親会社の株式が、分割の対価として分割会社、あるいはその株主の手に渡ります。
頻繁に行われる手法ではありませんが、制度上はこういった分割手法も可能であることを覚えておくと便利です。
無対価分割は、本来であれば分割会社に対して支払われるべき事業承継会社からの対価が、発生しない会社分割です。会社分割は必ずしも対価を支払わなければならないわけではなく、ときに承継会社からの対価が支払う必要のないケースも存在します。
典型的なのが、グループ内での会社分割を実行するときです。他社が関与しない、グループ内での再編成のための会社分割を実行する際、無対価分割で行われています。
また、無対価分割の場合は非適格分割となるため、その点には注意が必要です。
ここまで、会社分割の主な方法についてご紹介してきました。ここで気になるのが、果たしてどの分割方式で会社分割を進めていけば良いのか、という選び方の問題です。
どの分割方式においてもメリット・デメリットがありますが、一般的な新設分割、および吸収分割の2種類が選ばれる傾向にあります。というのも、税制面で優遇を受けやすい適格分割を当てはめるためには、この2つの分割方式を採用するのが最も優れているためです。
そして新設分割と吸収分割のどちらを選ぶべきかについてですが、目的に応じて適切な手段を選ぶことが大切です。新設分割を選ぶべきパターンとしては、ジョイントベンチャーを立ち上げたい場合に適しています。協力関係にある企業同士がフラットな立場でリソースを投入できるため、円滑なプロジェクトの遂行が期待できます。
また、企業再生を検討している場合にも、新設分割は適切です。収支の悪化や債務超過によって、既存の事業を維持できなくなった場合、採算の見込みがある事業を新設企業に分割し、こちらの会社を存続させ、分割会社を倒産させることで、立て直しを図ります。これは第二会社方式として知られる手法です。
一方の吸収分割ですが、こちらは経営効率を改善する上で選ばれるケースの多い手法です。組織がむやみに巨大化し、複雑化してしまうと採算の合わない事業も出てくる恐れがあり、企業の成長を遅れさせる可能性もあります。こういった事態を回避すべく、不採算な事業やある程度採算の見込みがある事業も、吸収分割によって他者に承継し、身軽な組織経営を実現します。
上記の会社分割方法の使い分けは、あくまでも一例です。自社にとって最適な会社分割アプローチを検討したい場合は、事業承継のプロフェッショナルへの相談をおすすめします。
会社分割には上記のような分類のほかに、適格分割と不適格分割という2つの区分が存在します。適格分割とは財務省があらかじめ定めた要件に当てはまる会社分割を指し、非適格分割はその要件に当てはまらない会社分割を指します。
財務省によると、資産が移転する際にはその移転された資産に対して譲渡損益に課税するのが原則としています。今回ご紹介している会社分割といった組織再編成を目的とした資産の移転に対しても当てはまり、吸収合併や現物出資、および現物分配に対しても課税することが原則です。
しかし、資産の移転が行われたとしても、移転会社の経済実態に実質的な変更がない場合は、移転する資産の譲渡損益を繰り延べても良い、ということになっています。移転資産に対する分割会社の支配が、再編成の後でも継続していると認められるためです。この、経済実態に変更がない会社分割が適格分割と定義されています。
適格分割として認められるためには、会社分割の際に金銭のやり取りがあったか、従業員の引き継ぎ規定に抵触していないか、といった要件を満たす必要があるだけでなく、継続的に承継事業を承継会社が営んでいることも条件です。詳しい要件については後ほどご紹介します。
適格分割でも非適格分割でも、会社分割という取引そのものは実現することができ、適格分割でなければ分割が行えない、ということはありません。しかしそれでも適格分割にこだわるべき理由としては、税負担の問題が挙げられます。
適格分割の要件に収まる形で会社分割を進めた場合、分割会社や承継会社、そして分割会社の株主は、税制面で優遇を受けられます。例えば分割会社は適格分割を実施した場合、分割の際の譲渡損益は計上する必要がなくなります。また承継会社の場合、簿価で資産や負債を計上できるようになりますが、これが非適格となると時価での計上が必要になるのです。
あるいは株主についても、適格分割であれば課税は発生しなくなりますが、非適格分割であればみなし配当の計上が求められます。
無対価分割を行うときのように、会社分割の都合上、どうしても適格分割にすることができないケースもありますが、基本的には適格分割として会社分割を処理できるよう実行すべきです。
適格分割の要件としては、まず金銭や資産の支払いに関する要件が挙げられます。事業承継の対価として株式ではなく、金銭などの資産によって支払われた場合、非適格分割とみなされます。
2つ目の要件は、移転する事業の引き継ぎについてです。分割会社から承継される事業には、移転事業の主要資産、及び負債が含まれていることが求められます。3つ目の要件は、従業員の引き継ぎです。会社分割時に承継会社が、80%以上の従業員を引き継がなければ適格分割として認められません。
4つ目の要件は、事業の継続見込みです。適格分割として継続的に認められるためには、承継後も分割事業が引き続き行われていなければなりません。
5つ目の要件は、事業の関連性です。分割事業を承継する際、承継先は分割事業と関連のある事業を展開している必要があり、これを満たしていなければ非適格とみなされます。
6つ目の要件は、株式の継続的な保有見込みがあるかどうかです。分割側の株主が、50%を超える株式を保有し続けることが要件となります。
また、さらに1つの要件として、以下の2つのどちらかを満たす必要があります。
選択要件のうち1つ目が、規模の制限です。分割事業と承継会社の事業を比較して、売上高や従業員数などの規模が5倍を超えてはいけないという決まりがあります。
選択要件の2つ目は、両社役員の経営参画に関する制限です。分割会社と承継会社の役員は、共同事業の経営に参画しなければならないという決まりがあります。
上記のような要件を満たして初めて、適格分割として認めてもらうことができます。
それではここから、会社分割を進めていく際の具体的な手続きについてご紹介します。新設分割の場合、以下の手続きに則って事業承継を進めていきます。
新設分割を実施する場合、前提条件として法人形態の制限があります。新設分割を行える法人は、分割会社側は株式会社および合同会社に限られています。設立会社は、株式会社や合同会社はもちろん、合資会社、合名会社のどれでも選ぶことが可能です。
また、特例有限会社については2018年以降、新たに設立することができなくなっているため、必然的に新規設立を行うことはできない点にも注意しましょう。もちろん、既存の特例有限会社が分割会社となることは可能です。
法人に問題がない場合、新設分割に関する計画書の作成を開始します。新設分割計画書は、新設分割に関する計画の概観を紹介し、取引先や債権者に新設分割の中身を伝える上で役立てる書類です。新設分割計画書を通じて、株主は承認したり、反対したりといった意見を表明します。
この時点で新設会社は出来上がっていないため、新設分割計画書を作成するのは分割会社です。分割の手続きも計画書に則って行われるため、時間をかけて作成を行うことが大切です。
分割契約書に盛り込まなければならない条項は、あらかじめ最低限決まっています。まず、設立会社の所在についてです。設立会社の商号に本店所在地、設立会社の目的、設立会社の発行可能株式総数などを記入します。また、設立会社の定款で定めている事項についても記述が求められており、役員指名も忘れずに記入しなければなりません。
新設分割にあたって、分割会社から設立会社へ承継する資産や債務、その他の権利義務に関する事項を盛り込むことも必要です。分割対価や資本金、資本準備金に関しても記述が求められます。分割型新設分割を実行する場合は、それにかかる一定の事項も記入しましょう。
より具体的な記入事項について知りたい場合は、以下のサイトから参考にすることができます。会社法第763条を参考にしながら、確認を進めましょう。
会社法 | e-Gov法令検索
計画書を作成した後は、本店への書面の備置きを進めます。分割会社は分割手続きを始めるその日から、事業を承継する新たに設立する会社の設立後6カ月が経過するまで、特定事項を記載した書面を発行の上、本店に備え置いておきます。
記載内容としては、まず新設分割計画の内容について触れておく必要があります。書面の備置きが求められる理由として、債権者や株主に対して確実に新設分割の周知を徹底するためというのが挙げられます。どのような事業を、どんな会社に分割し、その結果どのような対価が分割会社に支払われるのか、株主や債権者にどんな影響を及ぼすのか、といったことを記載するのが適当です。
また、分割によって受け取る対価がどのようなものかを明らかにした上で、分割した事業に相当するものであるかどうかにも触れる必要があります。分割事業がどれくらいの採算があったのか、あるいはどれくらい分割会社にとって負担となっていたのかを説明しつつ、その対価としてどのようなものを受け取り、回収を図るか、ということが説明されているべきでしょう。
分割型新設分割の場合には、その旨を記載しておくことも忘れずに行います。分割型新設分割の場合、譲渡された株式は分割会社の株主に渡されることになりますから、譲渡株式がどのようなものか、また、どれくらいの割合で株主の手に渡るのか、記載しておきましょう。
あるいは、新設分割の効力発生日以降、債務の履行見込みについて記載することもあります。新設分割の結果、債務の履行見込みに変化はあるのかどうか、なんらかの変更事項がある場合、どのように対処するのかといった旨を記載し、責任の所在を明確にします。
基本的に本店に備え置く書面については義務的な要件を満たす必要性は小さいため、基本的なポイントを抑えておけば問題ありません。
本店に備え置くための書面の例としては、株式会社KADOKAWAの「新設分割にかかる事前備置書類」が参考になるでしょう。当書面においては、上記で紹介した多くの要件に当てはまる文章が記載されています。
参考:新設分割にかかる事前備置書類|株式会社KADOKAWA
こちらの書面は、2020年にKADOKAWAが扱っていたゲーム事業推進室における一部権利業務を新たに設立する株式会社、Gotcha Gotcha Gamesに分割する際に作成されました。
書面を読んでいくと、
1.新設分割計画の内容
2.新設分割の対価に関する定めの相当性に関する事項
3.最終年度の末日後に生じた当社の重要な後発事象等の内容
4.効力発生日以後における債務の履行の見込みに関する事項
という、4点に触れられています。
新設分割計画の内容については、詳細を書き始めると非常に長くなってしまうため、こちらの書類においては「新設分割計画書の内容は、別紙1のとおりです。」というような省略が行われています。まとまった計画書を発行しておけば、書面として公開する分についてはこのような文章でまとめてしまっても問題はありません。
2つ目の新設分割の対価に関する相当性については、交付する株式数の相当性、資本金および準備金の額の相当性の二項について、具体的に触れています。次のように、ある程度納得感のある文言を持って発表しています。
3つ目の最終年度の末日後に生じた当社の重要な後発事象等の内容については、特に該当すべき事項はないとしています。特に書くべきことはなくとも、この件について疑問を抱いている人にとって懸念事項とならないよう、「事項はありません」と丁寧に記している点は参考になります。
4つ目の効力発生日以後における債務の履行の見込みについても、以前の履行見込みと変更がないことをきちんと伝えています。履行見込みに変更がない場合でも、備置書類で丁寧に明記することは重要です。読み手にとって極力懸念事項を減らし、簡潔に情報を伝えられる書面を意識しましょう。
新設分割を実施する際、優先事項となるのが債権者の保護です。分割会社は債権者保護の一環として、官報広告でその旨を伝える必要があります。主な掲載事項としては、設立会社の商号と住所、貸借対照表の要旨、そして債権者に対して一定期間、意義を申し立てることができる旨が挙げられます。
貸借対照表の要旨は原則的に掲載する必要がありますが、掲載しないという選択肢もあります。貸借対照表の要旨を掲載する場合、広告の掲載まで1週間強かかる一方、貸借対照表を掲載しない場合には、1週間以内で掲載することができます。
債権者への催告は、官報広告の掲載とは別途行う必要があります。具体的には、債権者に対して個別に官報広告に掲載したものと同様の文章を送り、債権者に異議申し立ての機会を提供することが必要です。これも、債権者の保護の一環として実施するものです。
債権者への催告は、例外的に省略することも可能です。定款において、公告方法を日刊新聞し、あるいは電子公告としている場合、債権者への個別の催告は必要ありません。ただ、官報を広告手段として採用している場合、債権者への催告は必ず対応しなければなりません。
また、新設分割において債権者保護の手続きが不要なケースに当てはまる場合は、この限りではありません。具体的には、分社型新設分割に当てはまる会社分割を実施し、その上で分割会社に債権者が権利を行使することができるケースです。
通常、債権者の保護手続きが新設分割において必要なのは、債権者の権利が新設分割によって失われてしまう可能性があるためです。これは逆をい言うと、新設分割後も彼らの権利が守られるのであれば、保護の手続きは必要ないということです。
ただし、新設分割後に分割会社が債権者にとって何らかの不利益がもたらされかねないことを知っていた場合には、債権者は分割後に分割会社に権利を行使できるだけでなく、承継先にも債務の履行を請求できる権利が与えられます。これらの条件を踏まえ、債権者保護の手続きを進めましょう。
新設分割の場合、労働及び雇用契約の承継が必要になります。分割会社から新設会社へと承継される事業に属する従業員は、契約の更新を行わなければなりません。
その際、従業員は新設分割の通知を事前に受けるとともに、自身が承継先の会社へ移籍することを知る権利が与えられているだけでなく、自身の契約の承継に対して、分割会社に異議を申し立てる権利が与えられます。
分割会社もまた、従業員に対して手続きを施す義務が与えられるため、適切な対処が求められます。新設分割には株主総会にて決議が求められますが、決議を行う株主総会の2週間前の日の前日までに、新設分割の事項を書面で通達しなければなりません。
新設分割の決議を採択する株主総会は、基本的に総会の日の1週間前に通知、公開会社については2週間前の通知が求められています。取締役会を設置していない会社や、非公開の会社については、1週間前よりも短い期間に設定することが可能ですが、これについてはあらかじめ定款で定めておかなければなりません。
なお、分割会社は新設分割の効力が発生する20日前までに、株主への通知が必要になりますが、株主総会の通知とまとめたり、官報広告と合わせて実施したりするということでも構いません。
株主総会決議において、新設分割の承認を得るためには、議決権を持つ株主の半数以上の出席、及び2/3の承認を得る必要があります。株主総会の決議は、新設分割の効力が発生する前日までに承認を得る必要があるため、確実な総会の実施、及び承認の獲得を進めましょう。
ただし、実施する分割が簡易新設分割と認められる場合には、株主総会における承認は必須というわけではありません。簡易新設分割は、新設する会社に承継する資産が、分割会社の総資産の1/5以下である場合に認められる分割方式です。
そもそも、株主総会の開催や承認作業というものは、組織が大きくなればなるほど、そのコストが大きくなるものです。簡易新設分割は、そんな株主総会のコストを踏まえて制定された制度で、分割会社にとって影響力の少ない分割手続きの場合、そのコストを解消するために実施することができます。
中小企業にとっては適用要件に当てはまるケースは稀ですが、事業分割や事業承継が頻繁に行われる大企業においては、重宝されている制度です。
株主総会で承認が下った後は、効力の発生日を迎えるための備えを進めます。新設分割においては、登記申請を行なったその日が効力の発生日と定められています。登記申請を完了するためには法務省の認可が求められるため、必然的に効力発生は平日となる点に注意しましょう。
また、新設分割における登記申請は、設立会社の設立登記に加え、分割会社の変更登記も同時に進めなければなりません。設立会社の登記には、複数の添付書類が求められます。新設分割の計画書や、定款、役員の就任承諾書や印鑑証明書、債権者保護手続き関係書面などです。
また、分割会社の変更申請についても、必要書類が発生します。会社の印鑑証明書や、司法書士への委任状などが必要となるため、登記申請前の準備を忘れずに進めておきましょう。
最新の登記書類の必要状況については、以下の法務局のサイトより確認をおすすめします。
新たに設立する会社、および分割会社が株式会社であるときは、新設分割の効力発生日以降、事後書面を発行の上、本店に備えおいておく必要があります。備置期間は効力発生日から6カ月間とされており、新設分割の効力発生日や、分割によって承継された権利、および義務などの記載が求められます。
続いて、吸収分割の手続きについてみていきましょう。基本的なステップについては新設分割の手続きと大差はありませんが、細かな要件の違いをチェックしておくことが大切です。
まず、吸収分割ができる法人の条件についてですが、新設会社と同様です。分割会社は株式会社、あるいは合同会社に限定されており、承継会社は株式会社と合同会社、そして合資会社や合名会社から選ぶことができます。
特例有限会社の扱いにおいても同様です。特例有限会社は吸収分割における承継会社と定めることはできず、承継会社として選びたい場合には、まず特例有限会社を株式会社へ移行する必要があります。特例有限会社の扱いが発生する場合には、同会社の移行作業が発生するため、通常の吸収分割よりも多くの日程を必要とする点に注意しましょう。
続いて、吸収分割の契約締結を承継会社と進めます。新設分割とは違い、吸収分割を進める際にはあらかじめ分割契約書の締結が求められます。
分割契約書においては、まず承継会社と分割会社の商号、および住所が求められます。また、吸収分割の対象となる資産や、吸収資産の対価としてどのようなものが与えられるかを、具体的に明記することも必要です。そして、吸収分割の効力発生日をいつにするかを設定することも契約の中で定めます。新設分割とは異なり、吸収先の会社との擦り合わせも求められるため、時間をかけて取り組む可能性のあるステップといえます。
本店への書面の備置きは、新設分割同様実施しなければならないステップです。具体的な手続きを進める前に、一定の事項を記載した書面を効力発生日から6カ月が経過するまで実施する必要があります。
また、書面の備置きは、分割会社はもちろんのこと、承継会社も本店にて実施しなければなりません。新設分割の場合では分割会社のみでしたが、承継会社においても適用される決まりです。
具体的な文面の規定は、新設分割同様細かく存在しません。分割契約の内容について、分割対価の相当性について、分割型分割の事項について、債務の履行見込みについてなどが掲載されます。
新設分割同様、具体的な本店に備え置く書面の例についてみていきましょう。株式会社ポプラは、2020年9月に承継会社を株式会社ポプラリテールに選定し、吸収分割契約を結びました。今回行われた吸収分割は簡易分割となるため、多くの手続きが通常の分割契約と比べて省略されています。
参考:会社分割に関する事前備置書類 |株式会社ポプラ/株式会社ポプラリテール
同社の発表した書面では、
1.吸収分割契約の内容
2.分割対価の定めの相当性等に関する事項
3.株式を分割会社の株主に交付する旨の決議に関する事項
4.新株予約権の定めの相当性に関する事項
5.分割会社について掲げる事項
が掲載されています。
今回の分割契約は簡易分割ということもあり、株式を分割会社の株主に交付する旨の決議、および新株予約権の定めの相当性に関する事項については該当事項なしとされています。吸収分割契約の内容についても、別紙の計画書を参考とのこととなっているのに加え、今回の契約が略式分割であることにも触れられています。
分割対価の定めの相当性については、株式その他の金銭等を交付しないこと、および承継会社において資本金および備金の額は変動しないとしていますが、これは分割によって不利益が生じないことを明らかにするものです。
分割会社について掲げる事項は、最終事業年度に係る計算書類、臨時計算書類等があるときの計算書類、会社財産の状況に重要な影響を与える事象が生じているかについて、触れられています。いずれについても該当事項はなく、最終事業年度に係る計算書類のみ、別紙資料が用意されています。
こういった書面は、必ず株主や関係者が目を通すとは限らないため、詳細に全てを記す必要はありません。会社分割によってどのような手続きが行われるのか、分割によってどんな結果が得られるのか、株主や債権者に何らかの利益・不利益があるのかを簡潔に明らかにすることが大切です。
新設分割同様、分割会社は債権者の保護に向けた手続きの開始が必要になります。官報広告の掲載によって、吸収分割をする旨や、吸収分割相手の商号に住所、貸借対照表の要旨に、債権者が一定期間は異議を申し立てることができる旨を伝えなければいけません。
期間についても新設分割同様で、貸借対照表を掲載する場合には1週間強、貸借対照表を掲載しない場合には1週間以内で掲載が行われます。
官報広告だけでなく、債権者への催告を個別に行うことも、新設分割と同様です。債権者への広告は、定款において公告方法を日刊新聞紙、あるいは電子公告と定めている場合のみ、省略できる点も新設分割と同じです。
債権者への催告は基本的に必要と考え、彼らに不利益な情報を隠匿することについても問題の種となるため、できる限り債権者の保護に努め、責任を真っ当しなければなりません。
労働・雇用契約の承継も、新設分割と同様に進めます。承継事業を担当している従業員は、承継分割が行われる2週間前の日の前日までに、書面で通知を受ける権利があります。また、通知の権利と共に従業員は分割の実施に対して意義を申し立てる権利が付与されており、仮に行使された場合には、分割会社がその行使に対処する必要があります。
株主総会の招集、及び反対株主への通知も、新設分割と同様です。1週間前までに開催の通知を送り、反対株主への通知も送ります。吸収分割の通知については単独で行わなければならないという決まりはなく、株主総会の招集通知などと併せての通知が可能です。
株主総会決議においては、議決権を持つ株主の2/3を超える承認が求められます。また、簡易吸収分割の場合には基本的に承認を得る必要はありませんが、分割によって会社に損失や差が発生するときには、簡易吸収分割の場合でも承認を得る必要があります。
吸収分割の効力発生日の前日までに、株主総会の承認が必要です。
吸収分割の効力発生日については、新設分割と微妙な相違点を有しています。吸収分割の効力発生日は、あらかじめ分割会社と承継会社が契約を締結した際に決定した日程に準じて定められることとなっています。
新設分割の場合は登記申請を行なった日に限定されているため、法務局の開いている平日にしか効力を発生させることはできませんでした。しかし吸収分割の場合は契約書に準拠するため、法務局の開いていない土日祝を選んだ場合でも、問題なく発生が可能です。
ただ、吸収分割の場合でも登記申請を行う必要があります。効力発生日から2週間以内に、申請を済ませましょう。
登記申請時には、吸収分割契約書、分割契約を承認した株主総会の議事録、債権者保護の手続きに関係する書面などが求められます。具体的に必要な書類については、法務省のサイトを参考に、最新情報を知っておきましょう。
事後書面は、法務省令によって求められている情報を記載した書面を、紙媒体あるいは電子媒体で用意しなければなりません。効力発生日から6カ月間、分割会社本店に備え置いておきましょう。
この辺りのルールも、新設分割とほぼ同様となります。吸収分割の方が手続きが少ない、新設分割の方が負荷が大きい、といった差分はほぼないので、ルールさえ遵守しておけばどちらを選んでも損があることはないでしょう。
それでは、ここで、会社分割の手続きに必要なスケジュール、及びどれくらいの期間が必要になってくるのかを確認しておきましょう。
会社分割の手続きには、新設分割と吸収分割の2種類が存在しますが、それぞれで極端に日程が変わってくる、ということはありません。また、契約によって実際の日数が変わってくることがあるため、あくまでも参考にしながら役立ててください。
会社分割のスケジュールは、分割の準備、会社間の合意形成、取締役会の承認、契約締結、書類作成と備置、債権者保護に向けた手続き、株主総会、登記申請というフローで行われます。
各段階で異なる期間を必要とするため、それぞれに対して均等に日程を割り振るのではなく、必要に応じて配分を考えることが大切です。
会社分割において最も時間がかかる手続きとされているのが、会社同士の合意形成、株主の承認、債権者保護の手続き、登記手続きの4つです。
会社分割のスケジュールを検討する際、これらのステップについては特に時間を多めに確保することが賢明な判断です。まして初めての会社分割という場合には、あらかじめそのスケールを予測することが困難であるため、早期の専門家への相談もおすすめします。
まず会社同士の合意形成についてですが、これは会社間の関係値によって、合意形成までにかかる時間が大きく変動します。付き合いが長く、お互いの利益をよく理解している場合には短期間での合意形成を進められますが、あまり付き合いが長いわけでもなく、吸収分割のためだけに関係を保っているという場合には、必然的にすり合わせに時間がかかってしまいます。
具体的にこれくらいかかる、ということを断定するのは難しいですが、小規模かつお互いの関係値が高い場合には数日から1週間、スケールが大きく、お互いの関係が深まっていない場合には、数カ単位で合意形成に時間をかけなければならない場合もあるでしょう。
続いて、株主の承認です。株主の承認で時間がかかってしまう理由として、やはり株主総会の存在が挙げられます。株主総会を開くにあたって、会場のセッティングや総会の周知と招待を行わなければならず、多くの人員と時間がかかります。また、株主からの承認を得るためには、時として根気よく説得を続けなければならないケースも考えられます。
会社同士の合意形成同様、お互いの関係性の深さや利益の方向性によって時間は大きく変動する点は押さえておきましょう。
また、会社分割の方法によっては株主の承認を得ることなく通過させることができるケースもあります。これが先ほどご紹介した簡易会社分割で、分割会社が承継会社に資産の1/5以下しか引き渡さない場合、株主総会の開催、及び株主の承認を得ることなく実施できます。
場合によっては制度をフル活用して時間を短縮できる、という知識があると有効です。
会社分割のスケジュールの中で、最も時間を取ってしまいやすいとされているのが、債権者保護の手続きです。債権者保護には官報広告の発布や、債権者への個別の催告が必要になりますが、これらの実施要項は日数ルールが明確に法律で明文化されているため、この通りに手続きを進めなければいけません。
やることが決められているというのは、大企業にとってはありがたいことですが、中小企業についてはあまり恩恵のない制度であるともいえます。スケーラブルな手続きではないので、どれだけ小規模な事業でも必要時間が固定化されており、リソースを圧迫してしまう可能性があります。
具体的には、債権者が異議申し立てを行うための期間が圧迫の要因です。債権者が異議申し立てを行える十分な時間を確保すべく、公告されてから1カ月以内という期間が定められているためです。
また、官報広告の掲載にも最低1週間から2週間は見込んでおいた方が安全ということもあり、その分の時間も考えると、1〜2カの期間は確実に要すると考えておきましょう。
債権者保護の手続きの必要のない要件に当てはまる場合、この手続きを丸ごとスキップすることもできます。分割手続きを悠長に進めている時間がない、効率良く手続きを進めたいという場合は、自社が適用要件に当てはまるかどうか、一度専門家に相談してみることをおすすめします。
会社分割の登記手続きは、上記の手続きと比べるとそこまで多くの時間は必要としません。必要書類をあらかじめ用意しておき、その上で法務省に届け出るだけで完了なので、即日手続きを完結できます。
その分空いた期間を、合意形成や株主の承認を得るのに費やすという考え方が有効です。
このような手続きを丁寧にこなしていった場合、どれくらいの時間が会社分割にかかるのでしょうか。
結論からいえば、どのような条件下においても3カ月前後が必要になると考えておくのが適当でしょう。当該企業が初めての会社分割であったり、承認作業が難航してしまったりした場合は、3カ月以上の期間を要することもあります。
会社分割はどんな手段で実施するか、どんな適用要件が当てはまるかによって、手続きにかかる日数が変動します。あらかじめ十分な期間を設けた上で、会社分割の手続きを進めることが大切です。あるいは、会社分割のプロフェッショナルへ相談の上、最短ルートで分割を進められるようサポートを受けることがベターな選択だといえるでしょう。
会社分割の際には、主に登録免許税、官報公告費、司法書士報酬といった費用が発生します。それぞれにどれくらいのお金がかかるのか、順にみていきましょう。
会社の登記の際に忘れてはならないのが、登録免許税の発生です。具体的には税金として処理するべきですが、料金体系が一律をベースとしているため、ここで先にご紹介しておきます。
登録免許税は、分割会社の場合一律で3万円が発生します。吸収分割の承継会社の場合、会社分割で資本金が増加しない場合には分割会社と同じ3万円、資本金が増加する場合には、資本金の増加分に0.7%をかけたものとなります。
また、新設分割の場合には一律で資本金の増加分に0.7%をかけたものが税金として徴収されます。計算結果が3万円に満たない場合、一律で3万円が発生するため、3万円未満の数字になることはないと考えておくと良いでしょう。
官報広告費は、官報広告内容の文字数、および行数によって設定されます。会社分割の広告の場合、一般的には8万円程度が発生します。
ただ、会社分割のための官報広告を掲載する場合、会社分割の広告に加え、決算公告も行うこととなります。これらの費用を合算すると、20万円弱となるため、実質金額としてこの額が発生する想定で検討するのが妥当です。
会社分割は会社単体で実行することは極めて難しく、M&A仲介会社や、司法書士といったスペシャリストのサポートが必要となります。この場合、司法書士報酬が別途発生するため、あらかじめその分の予算も計上しておかなければなりません。
どれくらいの報酬金額になるかは契約内容にもよりますが、おおむね30万円前後になるケースが多い傾向にあります。
それでは、会社分割の手続きにはどのような税金が発生するのでしょうか。支払い費用とは別に発生する税コストも確認しておきましょう。
会社分割の手続きにかかる税金を考える場合、重要になってくるのが適格分割かどうかです。適格分割の場合、会社分割に際して支払う税金は大幅に免除されることとなります。
消費税や所得税の課税は一切免除されますし、移転資産や負債も簿価で処理されることとなります。会社分割に伴う税負担を最小限に抑えたい場合、適格分割をまずは目指すことが大切になるでしょう。
一方で、非適格分割の場合はどうでしょうか。
的確要件を満たさない会社分割を実行した際、税の支払い義務が生じるのは分割会社です。消費税や所得税が課税され、大きなコストを負うこととなります。
また、移転資産や負債も時間で計算されるだけでなく、譲渡損益の発生や、みなし配当も発生することとなります。承継会社、及び株主もこの負担を被ることとなるケースもあり、できる限り回避したいのが現状です。
会社分割の手続きを進める場合には以上のような要件を検討しつつ、注意点を踏まえて実行に踏み切ることが大切です。重要なポイントを確認し、会社分割を円滑に進めましょう。
まず、会社分割には非常に複雑な財務手続きが発生するため、プロフェッショナルのサポートが必ず必要になります。税務・財務手続きに卓越したスタッフを抱えているのであれば問題ありませんが、そうでなければ早いうちから専門家に相談し、準備を進めておきましょう。
例え分割事業を承継先で同じように運営しようとしても、代表者や運営者が変わってしまうと、期待していた通りのパフォーマンスを維持できない可能性があります。
承継を通じて、社内のモチベーションが低下してしまったり、意思疎通の意識が低下したりする可能性もあるため、事前に経営方針のすり合わせを徹底して進めておくことが大切です。
会社分割を通じて、自社の技術力が他社へ流出してしまう可能性もあるでしょう。競合企業の競争力が改善されたり、優秀人材が他社へ引き抜かれたりして、競合のさらなる強化につながる可能性も懸念されます。
事業譲渡の際は、このようなリスクが発生しないよう、技術と人材の囲い込みにも力を入れることが大切です。
会社分割を実行する際、資産や債務の承継は行えますが、会社が獲得している各種許認可については承継ができない点にも注意が必要です。業種によっては業務の遂行に許認可が必要となるため、あらかじめ取得しておくのを忘れないようにしましょう。
新規に許認可を取得するのは時間もかかってしまうので、会社分割に必要な期間を余裕を持って設定する必要があります。
会社分割の遂行は、必ずといっていいほどスペシャリストの手を借りる必要があるため、適切な選択が求められます。そんなときにぜひ利用していただきたいのがウィルゲートのM&Aサービスです。ご相談および着手金は無料での対応となり、完全成果報酬でクライアントの課題解決に努められるため、高いコストパフォーマンスを実現します。
多大な実績に基づくノウハウを最大限に活かし、相談者の方の課題に向き合います。会社分割でお悩みの際には、以下のページよりお気軽にウィルゲートまでご相談ください。
今回は、会社分割の手続きについて、細かな要件と併せてご紹介しました。会社分割には主に新設分割と吸収分割の2種類が存在し、うまく制度を活用することで、会社のさらなる利益の獲得や成長が期待できます。
ただ、会社分割をうまく進めるためには適用要件を満たし、税制を回避するなどのテクニックも必要になります。
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