コールセンター業界の市場は活性化していて、業務や規模を拡大する企業も少なくありません。また、そんなコールセンター業界内では、M&Aも積極的に行われています。コールセンター業界のM&A動向や事例、売却するときの相場など解説します。
コールセンター業界について詳しく見ていきましょう。電話をかけたり受けたりする業務という認識は多くの人が持っていますが、近年は業務内容が多様化しているところもあるようです。
コールセンター企業とは、電話で顧客に対応する業務を事業にしている企業をいいます。インバウンドとアウトバウンドがあり、インバウンドは顧客からの商品やサービスに対する問い合わせやクレーム、相談などを受ける受信業務です。アウトバウンドは、セールスやアンケート、テレフォンアポイントや勧誘など、コールセンターから顧客に発信する業務を指します。
コールセンター企業は、インバウンドかアウトバウンドどちらか一方を請け負うところもあれば、両方担う企業もあります。また、最近では電話の対応以外にメールや公式サイト、チャットやSNSからの問い合わせやに対応する業務を行っているところもあります。電話以外の対応も行う企業は「コンタクトセンター」と呼ばれる場合もあります。
「コンタクトセンターBPO総市場の現状と展望2021」によると、2019年度の市場規模は9,065億円、2022年度には1兆円を超え、2024年度には1兆1,560億円の市場になると予想されています。右肩上がりですが、その分人材不足によりコールセンター業務を外注する傾向も増えています。
コールセンターは、かつては首都圏に拠点を置く企業が多かったですが、コストを抑えるために地方に拠点を移す企業が増加。また地方自治体も、地域活性化や雇用拡大のために、補助金を出すなどコールセンター誘致に力を入れているところもあり、最近ではコールセンターやコンタクトセンターが地方に設置されている例も少なくありません。業績が好調なコールセンター企業の中には、海外で事業を展開するところも出てきており、今後もますます市場規模が拡大していくことが見込まれています。
昨今のコールセンター業界のビジネスモデルは、地方、または海外に拠点を置くスタイルが主流です。コールセンター業務のコストは、オフィスの賃貸料、そしてオペレーターの人件費、教育費などです。オフィスを構えるときになるべく安い賃料の物件を借りられれば、それだけ経費を抑えられます。首都圏に近い物件よりも、地方都市の方が適しています。
また、地方にコールセンターを構えることで、コストのうちの約7割を占める人件費も抑えられます。札幌市や仙台市、福岡市、那覇市などは、全国賃金の平均値よりも下回っているため、現地でオペレーターを採用すれば、首都圏で人材を確保するよりも安く済ませられます。このような理由により、2000年代からコールセンター業界は地方に拠点を置く企業が増えていったのです。
コールセンター企業の一例を紹介します。
2020の業界第1位になったトランスコスモスは、日本国内の拠点が66、さらに中国、韓国、ASEAN各国、アメリカ、ヨーロッパなどに合計103拠点を持つ業界最大手のコールセンター企業です。M&Aを積極的に行い規模や事業を拡大しています。2015年に東南アジアを拠点とするネット事業を行うメトロディールホールディングスから事業譲渡を受け、2017年にはチャットソフトの会社であるアメリカのリプライ社と資本提携を締結。さらに台湾で子会社を設立し、ベトナム企業への出資なども行っています。
日本でのM&Aは、2015年に日本直販の一部事業を吸収合併、2016年にはLINEと共同出資でトランスコスモスオンラインコミュニケーションズを設立し、コールセンター業務以外の新しいコミュニケーションツールの拡大にも手を広げています。
コールセンター企業の動向を見てもわかるように、コールセンター業界ではM&Aが積極的に行われています。今後もコールセンター業界の市場規模が拡大すると見込まれていることもあり、コールセンター業界以外の業種でも買収を考えている企業が増えています。また、企業がコールセンター業務やコンタクトセンター業務を外注するケースが増えている点もM&Aを加速させています。
自社内で人材を確保しオペレーターの育成や教育を行うのが難しくコストがかかるため、コールセンター業務のノウハウを持っている企業を買収してしまう方が早いのです。また買収すれば、コールセンター企業が抱えている自社のコールセンター業務以外の仕事もそのまま引き継げるため、買収コストも早く回収できます。
また、コロナ禍による働き方の変化や対面から非対面での営業手法への変化なども、売り手にとって追い風になっています。
コールセンター企業を買収するメリットは、顧客と接する第一線の人材を確保できる点です。インバウンドやアウトバウンドどちらにおいても、コールセンターのオペレーターは、顧客と直接接する業務ですので、会社の顔ともいえるセクションで、オペレーターの対応でリピーターが増えたり購入につながったりすることも少なくありません。コールセンターを買収すれば質の高い即戦力として使える人材を確保できます。
コールセンターを売却するメリットは、現在売り手市場のため、相場より高く売れる可能性が高い点です。オーナーがコールセンター企業を手放して新しい分野のビジネスを始めたいと思っている場合などは、ベストな売却のタイミングといえるでしょう。
コールセンター企業の売却価格の相場は、企業の規模や売却時の条件などによってそれぞれ異なるので、一概にはいえませんが、一般的には、時価純資産に3〜5年の実態営業利益をプラスしたものが相場といわれています。
M&Aで売却価格を決めるときは、公認会計士やM&A仲介会社などの専門家が詳しく調査して適切な金額を算出してくれます。売却を考えているならば、一度M&A仲介会社へ相談してみるといいでしょう。
コールセンター企業の買収を成功させるポイントは、どのくらいの規模のコールセンター企業を買い取るかしっかりシミュレーションしておくことです。
人材確保も目的としているM&Aであれば、どのくらいの従業員がいれば人員確保に足りるのか、また、コールセンターの拠点を増やしたいのであれば、幾つの拠点を持っている企業ならいいのか、現在どのくらいの顧客やコールセンター業務を請け負っているのかもしっかりチェックしてください。M&Aで人材と拠点を引き継げれば、自社で0からコールセンター業務を立ち上げるよりも低コストで事業の拡大が狙えます。
コールセンター企業の売却を成功させるためには、売却によって何を手に入れたいのか明確にしておくことです。
株式譲渡や事業譲渡によって資金を調達したいのか、後継者が決まっていないのでコールセンター業務をそのまま引き継いで欲しいのか、または大手企業に買収してもらって知名度と競争力を上げて業界内で生き残りを図りたいのか、なぜ売却するのか理由が明確であれば、ベストなマッチング相手を見つけられるでしょう。
コールセンター企業をM&Aするときの注意点は、契約や労務の管理などの引き継ぎをしっかり行うことです。コールセンター業務はさまざまな顧客の個人情報を抱えているため、秘密保持契約が必要です。コールセンター企業全体を買収または売却する場合は、契約内容や従業員などもそのまま移行できるので比較的問題は少ないですが、部分的な事業譲渡を行う場合は契約内容が変わることもあり得るうえ、M&Aのタイミングで退職する従業員なども考えられます。
情報が漏洩しないよう契約関係をもう一度見直し、辞める従業員も想定して、残業代の未払いといった金銭面のトラブルがないかも確認しておきましょう。
2020年〜2021年にかけて行われたコールセンター業界のM&A事例をいくつか紹介します。
パソコンやIT関連機器の駆けつけサポート「ドクター・ホームネット」の運営、IT機器の総合サポートや定額サポートサービス、コールセンター業務、ビジネスソリューション事業などを行う日本PCサービスは、法人事業及びコールセンター事業を行うミナソルの全株式を取得し完全子会社化しました。
人材派遣紹介事業、IT ソリューションサービス事業などを展開するCRGホールディングスの子会社でM&A・投資事業を展開するCRGインベストメントは、キッズスペースを設置したコールセンターの運営や各種BPOサービスを展開するママスクエアと資本業務提携しました。
ファイナンシャルアドバイザリーや監査・保証などのサービスを展開するデロイトトーマツファイナンシャルアドバイザリーは、いわきテレワークセンターを株式譲渡で取得しました。
マルチリンガルCRM事業、セールスアウトソーシング事業を行うインバウンドテックは、コールセンター事業を行うCYサポートの全株式取得、子会社化しました。
防犯システムの企画・開発事業を展開するスリーSは、同じサンネクスタグループの完全子会社のコールセンター事業を運営する日本社宅サービスを事業譲渡によりM&Aを行いました。
コールセンター企業を売買する方法は、金融機関や公的機関に相談する方法、M&A仲介会社に依頼する方法などがあります。コストはかかりますが、スムーズにM&Aを行うなら、事例が豊富で専門的知識のあるM&A仲介会社を利用するのがおすすめです。
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コールセンター業界は、これからも活況が見込め、M&Aでも売り手市場といわれています。なるべく理想の条件でコールセンター企業をM&Aしたい方は、まずはウィルゲートM&Aまでお気軽にご相談ください。
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