M&Aの日本での実施件数は、2019年には4,000件を超えています。成功事例や失敗事例を確認することで、成功者・失敗者に共通するポイントがわかります。この記事では中小企業M&Aのメリットや流れ、注意点などを事例を交えて解説します。
中小企業M&Aは現代で増加傾向にあり、国としてもガイドラインを2020年に作成してM&Aに対して抵抗感をなくすための働きをしています。
2018年に全国で休業や廃業した企業は4万件を超えていて、前年より10%以上増加しています。休業や廃業した企業の代表者の年齢は60代が8割を超えていて、事業承継が困難であることが一因となっています。
M&Aは、そのような事態から企業を救うために、現在大手企業のみならず中小企業でも広く行われています。
中小企業は、中小企業基本法により定められている企業のことで、その規模の企業のM&Aが「中小企業M&A」です。まずは中小企業M&Aの概要を把握しましょう。
中小企業M&Aは、中小企業基本法に定められる規模の中小企業をM&Aすることです。中小企業とは、中小企業基本法により以下のように定められています。
中小企業のM&Aは年々拡大傾向にあり、現代では日本国内のM&Aの市場規模は20兆円を超えていて、2018年には約29兆8,800億円まで成長しています。
M&Aの実地件数も増加傾向にあり、1990年代は年間700件前後でしたが、2019年には4,000件を超えています。(*レコフデータ グラフで見るM&A動向)
ただし、M&Aを行い、外部の人間が自社の経営に関わることに抵抗感を示す企業が多いのが現状です。この現状に対し、2020年には「中小M&Aガイドライン」が経済産業省・中小企業庁より策定されました。
このガイドラインでは、以下のような内容が記載されています。
国としても、経済活動を活発化させる目的でM&Aの支援をしています。
中小企業がM&Aをする目的はさまざまですが、大きくは「後継者問題の解消」と「事業規模の拡大」、そして「資金調達」に分かれます。
中小企業で抱えている悩みの多くは後継者問題です。超高齢化を迎えている日本で、事業承継がスムーズにいかなく、倒産や廃業している会社があります。倒産や廃業してしまうと、経営者だけでなく働いている従業員や支えてくれた関連企業に影響が出ます。
また、競争が激しい業界の企業であれば、自社の事業規模やシェア拡大が難しい、次の事業への資金調達がうまくいかないなどの悩みがあります。これらの問題を解決する目的で、中小企業M&Aは行われています。
中小企業のM&Aの目的の一つに、後継者不足の解消があります。超高齢化社会を迎えている日本で、多くの中小企業の経営者が高齢となり、後継者不足に悩んでいます。仮に後継者となる人物がいても、株式の承継や各種手続き、税負担が大きいなどの理由で事業継承を断念せざるをえない場合があります。
後継者不足で会社が廃業や倒産をしてしまうと、従業員は職を失ってしまいます。そのため、中小企業は後継者を見つけることが、死活問題になっているのが現状です。
M&Aを行うことで、会社を存続させると同時に従業員の働き口も確保でき、売却金が手元に残るなどのメリットがあります。中小企業経営者にとって、会社事業の存続を指せるための手段としてM&Aに注目が集まっているのです。
売り手ではなく買い手側が事業規模の拡大を狙いM&Aをする場合もあります。買い手として、事業拡大のM&Aをするメリットには以下の点があります。
上記以外でも、ライバル企業を買収し、間接的に市場における自社のシェアを広げる目的で使われたりします。自社だけでは成し遂げられないことでも、他社の協力を得て事業規模の拡大が図れます。
自社に足りない売り手企業の技術や営業力、ブランド力などを活用し、買い手企業の事業拡大が図れるのもM&Aの魅力です。
赤字の事業を抱えている会社でも、資金調達さえうまくいけば業績を立て直せる場合があります。赤字となっている事業でも、他社にとっては魅力的な事業であることは決して珍しいことではありません。その場合、買い手を見つけて売却できると売却金が手元に残り、ほかの事業にお金を充てられます。
このように、売り手企業側が資金調達の目的でM&Aをする企業も存在します。
中小企業がM&Aを活用するメリットは、買い手側と売り手側双方にあります。
売り手・買い手それぞれM&Aをする目的があり、双方にとってメリットが期待できるからこそ、数多くの企業がM&Aを行っています。
中小企業M&Aの手法はさまざまで、それぞれメリット・デメリットが存在します。中小企業M&Aには、以下の手法があります。
それぞれのメリット・デメリットを把握し、M&Aを考えている方は、自社にとってどの方法が最適か確認しましょう。M&Aは専門的な知識が必要なので、自社にM&Aに対し専門の知識がある方がいないときはM&Aに詳しい専門家に相談し、最適な手法でM&Aを進めていくのがおすすめです。
株式譲渡は、売り手企業の発行済みの株式を買い手企業が買い取り、経営権を取得することです。数ある中小企業M&Aの方法の中で、一番よく使われている方法です。株式譲渡のメリット・デメリットを把握しましょう。
株式譲渡とは、売り手となる企業が買い手企業に株主を譲渡し、経営を承認させることです。株式譲渡は、株式譲渡契約書を締結後、支払い完了したら株式名簿の書き換えを行うシンプルな方法で、中小企業M&Aで最もよく使われています。
株式譲渡には、「市場買付」「相対取引」「購買買付」の3つの方法が存在します。
市場買付は、証券取引場などで上場企業の株式を購入する方法です。
相対取引は、株式を直接大株主から購入する方法です。
購買買付は、株式買付の募集を不特定多数に行い、株式を市場外で買い集める方法です。
中小企業のM&Aの場合、事業継承目的で行われるケースが多くあります。
株式譲渡のスキームを選択することで、売り手や株主側の利益が最大化できます。
節税の面でも、株式譲渡の対価は分離課税により8割程度売り手の手元に残り、所得に合算され累進課税の対象とならないことがメリットです。
また、買い手側からみても株式を100%保有できれば、M&A成立後に反対株主や少数株主を抱え込む必要がないため、買収後のトラブルを防げます。
株式譲渡のデメリットは、対象会社の帳簿外の株や負債に関する問題を継承してしまうことです。金銭で見積もり可能な場合はM&Aの対価から差し引かれますが、金銭に換算できない問題の場合、100%株式譲渡以外のスキームを選ばないといけなくなります。
事業譲渡と会社分割は、法的には異なるスキームですが、中小企業M&Aにおいて、100%株式譲渡の次の候補として選ばれています。中小企業M&Aを検討している方は、事業譲渡と会社分割のスキームを把握し、M&Aの方法の選択の幅を持つのがよいでしょう。
事業譲渡とは、譲渡会社の事業の一部またはすべてを他社に譲渡するスキームで、特定承継とも呼ばれます。事業譲渡場合、会社分割のように登記手続きや債権者手続きに1カ月以上要するわけではなく、手続きが楽です。そのため、移転する契約が少なかったり、従業員の人数が少なかったりする場合、よく使われるスキームです。
事業譲渡のメリットとして、薄外債務を引き継ぐリスクが少ないことや、買い手企業が必要な資産や負債のみを選べる点があげられます。
また、デメリットとすると、税務上優遇措置がないため税の負担が重くなること、時間や手間がかかる点があげられます。これらのメリット・デメリットを理解し、ほかのM&Aの手法と比較し、事業譲渡をするか検討するとよいでしょう。
会社分割とは、事業の権利義務を一部または全部他者に承認することです。
会社分割のスキームには「吸収分割」と「新設分割」があります。
吸収分割は、既存の会社に権利義務を引き継がせることです。
新設分割は、新たに設立する会社に権利義務を引き継がせることです。
さらに、「分割型分割」と「分社型分割」にスキームが分かれます。
分割型分割は、当該する会社の株主が分割の対価を受け取ります。
分社型分割は、対象となる会社が分割の対価を受け取ります。会社型分割が選ばれるのは、事業譲渡を行うと契約数が多くなり手間がかかる場合です。
会社分割のメリットは、以下の点があげられます。
対して、会社分割のデメリットは以下の点があげられます。
会社分割のメリット・デメリットを把握し、他のM&Aの手法と比較し会社分割の方が良いか確認し、M&Aを検討している方は進めていきましょう。
株式交換とは、100%子会社の完全子会社となる企業の株式と完全親会社の株式を交換するスキームです。
株式移転は、親会社と子会社の関係を作る方法ですが、親会社になるのが新設会社である点が、株式交換と違います。株式交換の仕組みや株式移転との違いを把握しましょう。
株式交換を行う目的は、対象の企業の子会社化です。最終的に対象企業の株を買い手がすべて所有する点では、100%株式譲渡と同じです。
ただし、株式交換は組織再編を行うので、全体のフローが長期間で煩雑になる恐れがあります。
株式移転とは、完全子会社の株式と新たに設立する会社の株式を交換して、持ち株会社を設立するスキームです。
株式交換・株式移転のメリットは、以下の点があげられます。
株式交換・株式移転のデメリットは、以下の点があげられます。
株式交換や株式移転を検討している方は、株式交換・株式移転のメリット・デメリットを把握し、専門家に相談をしましょう。
中小企業M&Aの手続きの流れを確認しましょう。
M&Aを行う上で重要なのは、目的を明確にすることです。
自社の課題を洗い出し、今後の事業計画などを踏まえたうえで、自社の問題を解決する方法は、M&A以外にもある中で、本当にM&Aを行う意味があるのか、M&Aでなければいけない根拠を明確にし、社内で議論しましょう。
目的が明確になったら、どの企業に売却するのか探し、条件があう企業を見つけたら交渉に入ります。交渉を円滑に進めるためには、M&Aに詳しい専門家や仲介サービス業者のサポートを受けるのがおすすめです。
多額の金額が動くM&Aでは、トラブルが起こる恐れがあります。専門家を入れることでトラブルを回避し、スムーズに契約が進むでしょう。
M&Aで売却先の企業を選定する前に、M&Aを行う目的を明確化するのが重要です。自社の課題や今後の事業計画について具体的に策定し、M&Aを行う必要があるのか社内で議論しましょう。M&Aを行わなくても、自社の課題が解決する方法は他にもある中で、なぜM&Aでないといけないか、根拠を明確にすることで、この後の交渉や手続きがスムーズになります。
M&Aの目的を明確にした後、M&Aのスキームを決めますが、自社にM&Aのノウハウがない場合、外部の専門家に相談をしM&A成立後までアドバイスを求めましょう。
M&A仲介会社を通す場合、仲介会社から提供されるノンネーム資料を元に買い手の企業を探します。ノンネーム資料に記載されているのは、業種や事業規模、エリアや買収する理由などで、具体的な企業名は不明です。
資料の情報を元に売却する希望を絞り、秘密保持契約を結んだうえでほかの情報開示を行います。このとき、買い手企業は売り手企業の「登記簿謄本」や「定款」などを取得して企業情報の確認をするので、売り手企業側は事前に準備しておくとよいでしょう。
本格的な契約を行う前に、売り手企業と買い手企業の双方のトップが面談を行います。トップ面談は、売り手と買い手の経営者同士が、お互いの人間性や経営理念などを確認しあう重要なプロセスです。
お互い、大切な従業員や今まで関係を築いてきた企業があります。それらを巻き込むのがM&Aなので、安心して関係を築ける会社同士のM&Aでないといけませんよね。
お互いの経営者としての人間性や経営理念が似通っていれば、M&A後もスムーズに経営ができます。契約面の交渉を行う前に、M&Aを行う目的の確認や双方の企業に関する情報交換を行い、齟齬が生じなければ交渉に入ります。
M&Aで基本合意とは、買収監査の実施前に、売り手と買い手企業の当事者同士で契約内容に合意している状態を指します。基本合意において、以下の内容を定めます。
基本合意のうえ、買収監査を実施します。買収監査とは、基本合意締結後に買い手企業が売り手企業の実態を把握するために行う調査です。買収監査は、外部のM&A専門家が派遣され、売り手企業の設立時まで遡り調査します。買収監査終了後、最終合意に向けて、今後のスケジュールや役員の処遇について決定します。
最終的な売却条件が決定後、お互いに契約内容に相違がなければ最終契約書を締結します。
決済までに売り手側に要求される事項として、「制約事項」と「クロージング条件」があります。
制約事項とは、譲渡日までに行う必要がある事柄です。
クロージング条件とは、決済に関する取り決めが定められます。
クロージング手続きとして、株券や会社代表印の引き渡し、買い手企業から売り手企業に対して譲渡金支払いや、売り手企業経営者の私的資産買い取りなどが行われます。買収後の経営統合の作業を「PMI」と呼び、PMIはM&Aのプロセスで重要な要素です。
PMIは通常クロージング前から始めることが多く、統合方針の決定から始まり、ランディングプランの策定を行います。その後、100日プランの策定を行い、統合実施効果検証を行います。
中小企業M&Aにおいて、売却される企業価値の算出は、売り手にも買い手にも公平な取引をするための重要な要素です。
中小企業M&Aの売却価値算出方法として用いられるのは、「コストアプローチ」「インカムアプローチ」「マーケットアプローチ」の3つです。それぞれの算出方法の概要を把握しましょう。
中小企業の売却価値の算出方法として、コストアプローチと評価対象会社の純資産から算出する方法があります。負債の時価や貸借対照表に記載されている資産などから、企業価値を算出します。
コストアプローチの評価方法は以下の通りです。
簿価純資産法 | 貸借対照表に記載されている純資産を評価 |
時価純資産法 | 企業が保有する資産の時価から、負債の時価を差し引きし価値を評価 |
貸借対照表に記載される企業の情報は、過去から現在の収益の情報のみで、将来どの程度収益をあげられる企業なのかわからず、単独で判断するには材料不足です。そのため、時価純資産法を用いコストアプローチを算出することが一般的です。
インカムアプローチは、対象企業の収益力をベースに評価して、DCFと呼ばれる評価方法を用いて算出されるのが一般的です
DCF法とは、評価対象の企業が将来獲得するキャッシュフローを予測し、各種リスクを織り込み算出した現在価値を差し引き、株価を算出します。
DCF法は、対象企業のキャッシュフロー計画を元にシミュレーションして評価できますが、主観的な予測も交じってしまいます。
そのため、交渉材料とする場合は、合理的な論理展開を意識しないといけません。インカムアプローチでDCF法以外に用いられている企業評価方法は以下の通りです。
モンテカルロDCF法 | モンテカルロシミュレーションを使い、不確定要素を織り込み予測 |
APV法 | キャッシュフローの現在価値に資本構成の変化や割引率を織り込み企業価値を評価 |
配当割引モデル | 将来的な一株ごとの配当金を予測し、そこから予測費用を差し引き利益を出し、割引率を算出し現在の企業価値を評価 |
マーケットアプローチは、株式市場の市場価格をベースに企業価値を評価します。評価対象が上場企業の場合、そのまま対象会社の市場株価をベースに企業価値を算出できますが、中小企業の場合、類似の上場企業の市場株価を参考にしないといけません。
そのため、中小企業M&Aで用いることが可能なマーケットアプローチの評価方法は以下の通りです。
類似取引比較法 | 過去の類似しているM&Aの取引価格を参考に企業価値を算出 |
類似会社比較法 | 類似している上場企業の株価倍率を元に企業価値を算出 |
中小企業のM&Aを成功させるためのポイントを把握しましょう。中小企業M&Aを行う上で重要なのが、まずがM&Aを行う目的を明確にすることです。
M&A以外で良い方法がないかを考え、M&Aでなければいけない理由が見つかると、その後の買収企業を選んだり交渉したりするのもスムーズに進みます。M&Aは多くの方を巻き込み行うので、自社だけでなく相手企業に関わる方への配慮を持ち、事前にM&Aに強い人材を社内だけでなく社外からも招くのがおすすめです。
また、M&Aは最初の時点では株主の情報が不明な部分があるので、交渉を進めるうえで情報開示を求め、相手企業の情報を明確にしましょう。交渉を進める前に、事前に買収価格の上限価格と下限価格を決めたうえで交渉に入るのも、その後の交渉を有利に進めるポイントです。
M&Aを行う企業の目的は、事業継承や事業拡大などさまざまです。M&Aを成功させるにあたり、M&Aを行う目的を明確にすることが重要です。
たとえば、事業継承においては、親族や社内役員へ承継させるなど、方法はM&A以外にもあります。
M&Aを行う目的が不明確だと、取引相手の企業を選ぶ基準も明確化できず、交渉がうまくいきません。最初からM&Aを前提とせず、目的を明確にしたうえで他の方法と比較し、しっかりと検討しましょう。
売り手企業の社員や取引先などの関係者に与える影響を考慮することも大切です、買収を行うことで対象企業の顧客やと取引先、従業員に大きな影響を与えます。
M&Aは身売り行為というイメージがある方が多いので、PMI後も滞りなく経営を行うために、今まで対象企業に関わった方への説明責任を果たし、信頼関係を築きましょう。
中小企業は株主名簿が存在しなかったり、株主の所在がはっきりしなかったりする場合があります。中小企業M&Aで株式譲渡を選択する場合、買い手企業は株式に対し対価を支払います。
そのため、株主を把握しておかないと、まったく関係ない第三者に多額の支払いをすることになる恐れがあります。
また、株式名簿が作成されていても、そこに記載されている株式譲渡が株主の承認を得ているか不明な場合があります。買収監査の際に資料と照らし合わせ、矛盾がないか確認する必要があります。
買い手企業がM&Aを行うときには、社内でチームを形成して進めていきます。
M&Aは秘匿性の高い案件で、専門的な知識が要求されます。社内の人間だけでM&Aを進めるのではなく、社外でM&Aに詳しい専門家を招くことがおすすめです。
M&Aには多額の費用が発生し、税金も課せられるので、自社だけで完結せず社外の方の意見も聞き入れて進めていきましょう。
M&Aにおける重要なポイントとして、買取価格があります。M&Aにおいて、買い手企業は買収企業に対し価値算定をしますが、その際に買収価格の上限と下減を設定するのがおすすめです。
この場合、上限価格は買い手企業の留保価格とし、対象企業の時価にPMI後に得られる自社の収益を足した値段にします。下限価格は、売り手企業に対し最初に掲示する価格で、対象企業の現時点での清算価値の値段にします。
M&Aの交渉において、最初に下限価格を掲示し、それが売り手企業の想定の価格に近ければ、その後の交渉もスムーズに有利に進められます。金額を掲示するときに、価格を算定した根拠をプラスで掲示すると説得力が増します。
中小企業M&Aで起こる問題を把握しましょう。中小企業は上場企業や大企業と違い、株式譲渡の制限があったり、コンプライアンスがゆるかったりします。
問題を知らずに契約を進め、株式売買実行するときに問題が起こる恐れがあります。事前に起こる問題を想定し、専門家に相談するなどして事前に準備しておくとよいでしょう。
上場企業の場合、株式は市場で自由に売買を行えます。これに対し、中小企業の場合、株式に譲渡制限がある「譲渡制限会社」のケースが多くあります。
譲渡制限の株式を譲渡するには、定款に定められた譲渡承認機関の承認が必要で、上場企業のように自由に株式売買ができません。
また、中小企業の株はもともと売買を予定していなく、下部の管理に証券取引所や証券会社が介入しない株主の個人管理であるので、紛失率が高い傾向にあります。
中小企業M&Aで株式に関する問題が発生した場合、株主喪失の手続きをしたうえで株券の再発行、株券不所持の申し出、株券不発行会社への移行などの対応が必要です。
中小企業では、M&Aにおける必要な資料がすべて揃わない場合があり、資料以外にも収集が困難なものがあります。収集困難なものには以下のものがあげられます。
中小企業M&Aを行う場合、上記の資料がすべて揃わないことも想定しないといけません。その場合、資料作成は可能か、ほかの補足資料の準備は可能かなどについて取引先に事前に確認しましょう。
中小企業の場合、上場企業や大企業よりもコンプライアンス面においてゆるい場合があると覚悟する必要があります。
たとえば、株式会社には定時株主総会終結後の決算公告が義務付けられていますが、決算公告を行っていない中小企業は数多く存在します。
その場合、中小企業M&Aでは組織再編や会社分割後のスケジュールで歪みが生じる恐れがあります。スムーズに進まない可能性があることを想定して、事前に準備しておきましょう。
中小企業M&Aは近年増加の一途をたどっています。中小企業M&Aの成功事例も数多くあり、中小企業M&A仲介会社のホームページに具体的な実例が紹介されていることもあります。
成功事例を確認すると、M&Aを成功させるためのポイントが確認できます。成功者に通じているのは、M&Aをする目的を明確にし、経営理念と想いが相手企業とマッチングしたうえで契約を締結していることです。成功事例を確認し、M&Aを成功させる秘訣を確認しましょう。
千葉県の金属加工メーカーA社が今後の事業拡大のためにM&Aを検討し、M&Aプラットフォームに登録して、同業の金属加工メーカーB社に巡り合いました。
B社の代表は引退を考えていて、その中で代表者の「雇用と技術を守りたい」という熱い思いからM&Aを検討していました。A社は技術力の育成が課題でM&Aを検討していました。
双方の思いがM&Aを成立させてシナジーを生み出し、現在は収益も増加しています。両社のM&Aをする目的が明確であったため、契約後も業績があがった事例です。
IT系コンテンツを配信するオウンドメディアを他社に売却し、その資金をもとにホームページ制作やWeb集客コンサルティングなどの新規事業に着手し、成功した事例です。
売り手企業はもともと経営状態は順調でしたが新しい事業に挑戦したいと考え、事業資金を確保するためM&Aプラットフォームに登録しました。
その後、十分な資金と希望する運営体制が整っている会社と出会い、M&Aが成立しました。銀行融資などを受けず、ノーリスクで新規事業を立ち上げ、今では順調に新規事業が進んでいます。
東京都内で美容室を3店舗経営する売り手企業が、東証一部上場企業へM&Aを成功させた事例があります。
家庭の事情で事業承継をすることになり、美容室業界の働き方に改善が必要と考えていた売り手企業の代表が、業界の常識にこだわらず、事業を成長させられるプロの経営者を求め、M&Aプラットフォームに登録しました。
買い手企業は東証一部上場の大企業で、買い手企業以外にも上場企業数社からM&Aの話がありました。売り手企業の経営者の思いが、東証一部上場企業の代表を動かし、M&Aを成立させた事例です。
中小企業M&Aにおいて、交渉がうまくいかなかったり、最終段階で交渉打ち切りになったりした事例があります。
M&Aがうまくいかなかった事例は数多くあり、失敗事例には共通事項があります。失敗事例を確認することで、M&Aを進めるうえで気を付けないといけないポイントがわかります。
M&Aを検討している方は失敗事例を確認し、同じ過ちをおかさないようにしましょう。
売り手企業のA社が、代表の高齢化による後継者不足を理由にM&Aを検討していました。
A社は、日々の業務に追われ後継者問題について考える余裕がなく、金融機関からの借り入れなどで事業は継続してきましたが、徐々に業績が悪化してきました。資金繰りが悪化する中でA社代表は弁護士に相談し、弁護士は買い手企業を探しました。
しかし、すでにA社の活気は失われていて、M&Aは不成立に終わりました。日々の業務に追われ、M&A着手が遅れたため失敗した事例です。
後継者不足によりM&Aを探していたB社が、M&A専門業者に相談を行いました。
仲介業者が迅速に動いたため、M&A着手から4カ月で買い手企業とのマッチングが実現し、基本契約に合意し最終契約に向けて動いていました。
しかし、B社の代表者が情報漏洩をしていたことが発覚し、その後再三に渡り警告を受ける事態になりました。最終契約前に従業員が一部取引先や関係者に買い手企業の名前を明かし、M&Aを行うことを公表したところ、情報漏洩に激怒した買い手企業が激怒し、信頼関係を理由に交渉を打ち切りました。
売り手企業が情報漏洩をしたため、M&Aが不成立になった事例です。
A社は地域密着型で運送業を営んでいましたが、代表の高齢化で事業継承問題に直面し、M&Aを決意。すぐに同地域の買い手企業とマッチングが成立しました。
しかし、だんだんと会社を手放すのが惜しくなったD社が、譲渡条件を急に変更しました。買い手企業はD社の不誠実な対応に嫌気がさし、信頼関係が損なわれ交渉を中止しました。
基本合意締結に至った後、売り手企業の不誠実な対応により交渉が決裂した実例です。
中小企業M&Aにおいて、企業をマッチングし契約を進めていくうえで、専門知識を持った仲介会社を利用するのがおすすめです。
M&Aの仲介会社の中には、中小企業のM&Aを専門に取り扱っている企業があります。仲介会社を挟むことで、売り手にとっても買い手にとっても最適な相手探しを行えます。
仲介会社を選ぶ際には、自分で探すだけでなく、地域で開設されているM&Aの相談窓口も利用できます。仲介会社選びも含め、M&Aについて気軽に相談してみましょう。
中小企業向けのM&A仲介会社を選ぶときは、仲介会社の過去の実績や在籍するスタッフのキャリアを確認しましょう。
仲介会社を選ぶときは、自社のM&Aをする目的を果たせる会社を選ぶのが重要です。
M&Aをする目的は事業承継や資金調達、企業規模拡大などさまざまです。仲介会社によって、得意な分野が違います。
仲介会社の公式ホームページで、M&Aの実績や在籍するスタッフのキャリアや保有資格などが掲載されているケースが多くあるので事前に確認し、自社の悩み解決の実績がある仲介会社を選びましょう。
中小企業向けのM&A仲介会社を選ぶときには、地域の機関に相談しながら選んでいくのがよいでしょう。
日本ではM&Aが活発に行われていて、国としてM&Aを支援する動きがあります。
各都道府県で、事業引き継ぎセンターや金融機関、商工団体や士業専門家などに相談できます。各機関で専門とする分野や支援サービス内容が違うので、事前に確認しましょう。
また、M&A仲介サービス(M&Aプラットフォーム)とよばれる、オンライン上で企業のマッチングできるサービスがあります。低コストで利用できるサービスがあるので、M&Aを検討している方はまずは登録だけしてみてもよいでしょう。
事業引継ぎ支援センターとは、中小企業M&Aの支援を目的に平成23年に設置された国の機関です。
令和2年時点ですべての47都道府県に設置されていて、M&Aのみでなく従業員承継など事業承継に関する幅広い相談が可能です。事業引継ぎセンダーは、経済産業省の委託を受け、各都道府県の財団や商工会議所などが運営する事業で、地元の各士業専門家や金融機関OBが常駐しています。
事業引継ぎセンターで可能なM&A支援は以下の通りです。
金融機関でも、貸付を行っている顧客に対しM&A支援を行う場合があります。
金融機関による中小企業M&A支援の場合、M&Aを検討している企業同士のマッチングをしたり、金融機関が持つ顧客の中で候補者を絞ったりすることが可能です。
ただし、都市銀行や地域銀行、信用金庫により、M&Aに対する取り組みが違います。
金融機関で受けられるM&A支援は以下の通りです。
中小企業団体や商工会議所、商工会や中央会商店街振興組合連合会などの商工団体が、地域発展のために中小企業M&Aの支援を行う場合があります。
商工団体は地域に根差している特性があり、中小企業が受けられる公的な支援制度についても熟知していて、中小企業にとって身近な相談窓口です。
商工団体は、税務や法務の祖団よりは経営に関する相談が多く、地域の中小企業の経営状況などを認識しています。
商工団体で受けられるM&A支援は以下の通りです。
弁護士や税理士、公認会計士などの士業専門家から、中小企業M&Aの支援を受けられます。
弁護士は、法律の専門家の立場でM&Aに関する相談にのってくれます。
中小企業M&Aで弁護士から受けられる支援内容の一部は以下の通りです。
税理士は、税務会計に精通しているので、M&Aにおいて経営支援や金融支援の立場からサポートしてもらえます。
税理士が支援できる範囲の一部は以下の通りです。
公認会計士は、会計の専門家の立場から税務に関する情報の整理をして、売り手企業の信頼性の向上においてM&Aのサポートをしています。
公認会計士によりM&Aの支援内容の一部は以下の通りです。
M&A仲介サービス(M&Aプラットフォーム)は、インターネット上で売り手企業と買い手企業のマッチングを支援するサービスです。サービスごとに利用可能な対象者や利用方法が異なりますが、売り手企業も買い手企業も登録可能で、低コストでかんたんに利用できます。成果報酬型のサービスも多く、まずは相談だけするのも可能です。M&Aで多額のコストを投入できない企業にとって、おすすめのサービスです。
M&A仲介会社は、M&Aの仲介業務やファイナンシャルアドバイザー業務に従事する専門家で、M&Aにおいて重要な存在です。
M&A仲介会社には、マッチングから交渉に関するまで幅広い支援が可能です。
ただし、士業専門家と違い、資格が必要でない業種でもあるので、選ぶときは注意が必要です。
事前にM&A仲介会社のホームページなどを確認し、士業専門家の資格があるスタッフが在籍しているか、今までのM&Aのサポート実績などを確認してからサポートを依頼しましょう。
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中小企業M&Aは、現代日本でも実施件数が増加しています。
M&Aをする目的は各社さまざまで、成功している例もあれば失敗している例もあります。これからM&Aを検討している方は、そうした成功例・失敗例から学び、自社でM&Aをするときは必ず成功させましょう。
中小企業M&Aを行うときは、中小企業M&Aの実績が豊富な仲介会社にサポートしてもらうのがおすすめです。
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