M&Aには買収・合併・業務提携などさまざまな種類があり、メリット・デメリットが異なります。特徴をしっかりと理解して、自社の状況に最適な手法を選ぶことが大切です。
この記事では、M&Aスキーム(手法)の種類とその特徴、メリット・デメリットについて解説します。
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M&Aとは自分の企業や事業を他の企業や経営者に譲渡する、もしくは技術提携・晩倍提携など、何らかの形で協力してもらうことです。バブルが崩壊した際に、企業の再編や不良債権の処理が必要となった多くの大企業がM&Aを実行したことで、大きく注目されるようになりました。その当時はM&Aを使い、投資銀行や外資系のファンドが国内に進出してきました。一方現代では、中小企業の後継者不足を解消するためにM&Aがよく使われます。
現代の日本は少子高齢化が進んでおり、その多くで後継者が決まっていないといわれています。このまま将来さらに多くの経営者が70歳以上になると、状況はますます悪化するでしょう。策を講じないまま少子高齢化や中小企業の後継者不足を放置していると日本経済に悪影響を及ぼすため、政府はM&Aを使い後継者不足解消を進めています。後継者がいないことで悩んでいる経営者がM&Aを使うことで、これまで積み重ねてきた企業・事業の経験や知識を絶やさずに、事業を継続させ、さらに拡大していくこともできます。また後継者問題以外にも、事業の拡大や収益増加のためにM&Aを使った技術提携や販売提携などの事業提携を考える企業も増えてきました。
M&A(エムアンドエー)とはMerger And Acquisitionを略した言葉です。Mergersには「合併」・ and Acquisitionsには「買収」という意味があり、Merger And Acquisitionを日本語で訳すと「企業の合併と買収」になります。
M&Aには狭義的な意味と広義的な意味があります。M&Aの狭義的な意味は、合併・事業譲渡・株式譲渡などを通して、自分の会社や事業の経営権を他社に移すことです。一方でM&Aの広義的な意味では、企業や事業の経営権を他に移さないとしても、新たな分野に進出し企業の成長を目指した資本参加や合弁会社設立などの資本提携など、何らかの形で協力関係を築くことをいいます。
昔はM&Aに「外資系の企業に会社が乗っ取られるイメージ」を持つ人も多くいました。しかし最近では後継者不足問題を解決する方法や、企業が成長するために必要な戦略として広く使われるようになりました。
M&Aの主な定義は事業の継承です。M&Aにより事業継承することで、少子高齢化や人材不足による後継者問題の解決や、後継者がいる場合で自社株を継承する際のコスト負担問題を解決できます。M&Aにより事業や企業を買う側は、最初から事業を展開する必要がないため、コストを抑えてスピーディーな事業発展が可能となります。また事業継承を依頼する経営者はM&Aすることで、これまで一緒に働いてくれた従業員の今後の雇用が安定します。
M&Aを実行するための手法にはいくつか種類がありますが、M&Aの手法の中で最もよく使われるのが「株式譲渡」で、次いで「事業譲渡」「会社分割」となっています。M&Aは適当に選んでいいわけではなく、それぞれの手法の特徴をしっかりと理解して自社に最適なものを選ぶ必要があります。
まずM&A選びで大切なポイントは、M&Aにより対価を受ける人・課税される人が誰かを明確にすることです。たとえば株式譲渡では売却する会社側の契約した当事者が株主となり、買収する会社側から株主が対価を受け取ります。課税については、個人株主の場合は譲渡所得に一律で20.315%の税金がかかります。
M&Aを選ぶ際には手続きの方法やスケジュールについても確認しておきましょう。たとえば株式譲渡は株主が変わるだけなので、手続きも簡単でスピーディーに契約が成立します。一方で事業譲渡・会社分割の場合、手続きが複雑で引き継ぎが完了するまでに数週間~数カ月かかるケースもあります。できるだけ早くM&Aを成立させたい人は、手続きが簡単で契約完了までの期間が短い手法を選ぶことをおすすめします。
また事業の継続性も手法を選ぶ際に大切なポイントです。事業譲渡や分割は、自社の事業や経営権が買収する会社側に移ってしまいます。事業譲渡や分割など経営権が自分ではなくなってしまう手法を選ぶ際には、買収する会社が事業を継続し続けられる会社かどうかを見極める必要があります。事業の持続性を見極める自信がないのであれば、事業に与える影響が最もすくない株式譲渡を選ぶといいでしょう。
M&Aを考えているのであれば、このようにすべての手法を一通り理解し、自社の状況に最も合う手法を選ぶようにしてください。
M&Aには「狭義のM&A」と「広義のM&A」の2種類があります。狭義のM&Aと広義のM&Aの違いは、資本異動を伴うかどうかです。狭義のM&Aは合併や買収があり、資本異動や資本関係の変化を伴います。
また、狭義のM&Aの合併は「新設合併」「吸収合併」の2つに分かれ、「買収」は「事業譲渡・資産買収」「株式取得・資本参加」に分かれます。
さらに「事業譲渡・資産買収」は「新設分割」「吸収分割」「事業譲渡」の3つに、「株式取得・資本参加」は「株式移転」「株式交換」「株式譲渡」の3つに分かれます。広義のM&Aは狭義のM&Aにプラスして、技術提携や販売提携などの事業提携や、共同開発研究や販売協力など資本を伴わないものを含めます。
ここではM&Aのスキーム(手法)についてみていきます。
M&Aの手法にはまず他企業の経営権や株式を取得する「買収」があります。買収には「株式取得・資本参加」があり、株式取得・資本参加には以下のようなものがあります。
株式譲渡では自社の株式の50%以上を買収する会社側に譲渡します。
第三者割当増資では自社の新株を第三者に引き受けてもらいます
株式交換は自社を買収会社が100%子会社化します
株式移転では会社を新設して完全親会社となり、他社の株式をすべて受け取って完全子会社化します
TOBでは買収する側が買収予定の企業の株式を持っている株主に対し株式の買収を案内します
MBOは会社の経営者が自社の株式を買収して会社から独立する手法です。
また、買収には「事業譲渡・資産買収」もあり、事業譲渡・資産買収には「一部譲渡」と「全部譲渡」の2種類があります。
次に2つ以上の複数の会社を合併して1つの会社にする手法「合併」には以下の2種類があります。
新設合併では、会社を新設し売却側の会社が持っていた権利・義務を、新しく設立した会社がすべて引き継ぎます
吸収合併では、買収側の会社が売却側の会社をすべて吸収します
さらに事業の一部または全部を分割して、他の会社や新設した会社に引き継いでもらう手法「分割」には「新設分割」と「吸収分割」の2種類があります。
新設分割とは既にある会社の事業の一部または全部を、新しく設立した会社に引き継いでもらう手法のことです
売却する側の会社の権利や義務の一部またはすべてを分割して譲渡し、買収する側の会社に引き継いでもらう手法のことです
上記以外には「合弁会社設立」「資本参加」「技術提携」「販売提携」などのスキームがあります。すべての手法で経営権・対価・手続き・契約成立までの期間など、特徴やメリット・デメリットが異なります。
M&Aにはさまざまな手法があります。すべての手法で特徴が異なり、メリットだけではなくもちろんデメリットもあります。M&Aの手法を選ぶ際には、メリットだけではなくデメリットもしっかり確認しておくことが重要です。そうしておかないと、実際にM&Aを行った際に、得られるメリット以上にデメリットの方を大きく感じてしまう可能性があるからです。M&Aのデメリットをしっかり理解せずに契約を進め、万が一契約が失敗に終わってしまうと、これまでかかった時間とコストが無駄になってしまいます。
ここではM&Aの手法それぞれの特徴と、メリット・デメリットについて詳しく解説していきます。M&Aが気になっている人は、自分にどのM&Aが合っているのか確認していきましょう。
まず買収とは、他企業の経営権や株式を取得することです。一般的な買収はシンプルに企業や事業を買うことで、M&Aにおける買収とは意味が異なります。
M&Aにおける買収とは単に企業や事業を買うだけではなく、他企業の吸収や業務提携も含めます。M&Aにおける買収には「株式取得・資本参加」と「事業譲渡・資産買収」があり、株式取得・資本参加はさらに「株式譲渡」「第三者割当増資」「株式交換」「株式移転」「TOB」「MBO」に分かれます。また事業譲渡・資産買収は「一部譲渡」と「全部譲渡」に分かれます。
ここではM&Aにおける買収の「株式取得・資本参加」と「事業譲渡・資産買収」について、それぞれ詳しく解説していきます。特徴に加えてメリット・デメリットについても解説していくので参考にしてくださいね。
株式取得・資本参加では、自分の企業を売却・譲渡する側の株式を、買収・譲受する側が譲り受けます。株式取得とは、相手企業の株式を取得して経営権を手に入れる手法のことです。株式取得は他の手法と比べてコストが安く、手続きも簡単というメリットがあります。
資本参加とは相手企業の株式を取得・保有することで、相手企業との関係性を強める手法のことです。資本参加と株式取得の違いは、相手企業の経営を動かすほどの株式数を求めないことです。資本参加であれば自社の独立性は確保されます。
株式取得・資本参加には、さらに以下の6つの手法があります。
ここからは、株式取得・資本参加のそれぞれの手法について詳しく見ていきます。
株式譲渡では自分の企業を売却する経営者が自社の発行済株式の50%以上(一般的には100%)を、買収する経営者に譲渡します。譲渡する際には、買収する側が売却する側に対価を払うことで事業継承が完了します。株式譲渡はとてもシンプルなので、数あるM&A手法の中で最も使われている手法です。
株式譲渡のメリットは、後継者問題の解決ができることです。株式譲渡することで経営権は新しい会社に完全に移ってしまいますが、従業員の雇用は守られます。また事業売却では法人税がかかりますし、事業売却により受け取ったお金に対して最大55%の税金がかかることがあります。それが株式譲渡で相手に株式を売却することで、税率は20%となり税負担を抑えることが可能です。株式譲渡は自社の株式を他社に売却するだけなので手続きがシンプルで、早くて1カ月とスピーディーに事業の譲渡が完了するケースもあります。さらに株式譲渡では資産だけでなく負債もすべて他社に譲渡できるので、現時点で発生している負債も解消できます。
一方で株式譲渡のデメリットとしては、株式譲渡により経営権が完全に新会社に移るため、株式譲渡後は経営に経営に関われない可能性がある点が挙げられます。また事業売却よりも税負担が抑えられるものの、税金は発生することは頭に入れておきましょう。また株式譲渡は資産だけでなく負債も譲渡するため、買収する会社側に負債が引き継がれてしまう可能性があり、買収する会社側にとってはデメリットだといえます。
株式譲渡のメリット・デメリットから考えると、このように株式譲渡は経営権を手放したくない人にはおすすめしません。しかし従業員の雇用を守りたい人や税負担をできるだけ抑えたい人、できるだけ手間をかけずに後継者問題を解消したい人にはおすすめできる手法です。
第三者割当増資とは第三者に対して、自社の新株を引き受けさせる手法のことです。第三者割当増資は、自社の役職をもつ職員や取引先、取引金融機関などに発行することが一般的です。そのため第三者割当増資は「縁故募集」とも呼ばれます。第三者割当増資は、自社の経営が悪化して株価が下がり通常の増資ができないときや、取引先との関係を安定化する際に使われることが多くあります。
第三者割当増資のメリットは、資本提携と業務提携を同時に行えて、事業の拡大や多角化が可能となることです。また第三者割当増資ではあらかじめ出資者が決まっているので、ほかの手法よりも短期間で資金を入手できます。そのため第三者割当増資は、事業拡大したい人やできるだけ早めに資金を得たい人におすすめです。また第三者割当増資では出資者(株主)を指定できるので、経営に注文や意見を付けてくる株主を避けることもできます。さらに第三者割当増資を引き受けてくれる会社との関係も強化されます。
一方で第三者割当増資することで、会社に対する権限の強さが低下し、会社の意思決定が順調に進まなくなるデメリットがあります。さらに第三者割当増資を行ったことにより買収する会社側の発行株式数が増加すると、1株あたりの価値が下がり、既存株主の利益が減るリスクも考えられます。第三者割当増資では資本金が1,000万を超えると消費税の納税が必要になるなど税負担が増えますし、資本金の増額により変更登記をしなければなりません。
株式交換ではまず、売却する予定の会社の発行済株式を、買収する経営者側にすべて集めます。売却する経営者はその対価として、買収してくれる会社の現金や株式を取得できるようになります。つまり株式交換とは、売却会社を買収会社が100%子会社化するための手法です。
株式交換が完了すると売却会社は完全子会社となり、買収した会社が完全親会社となります。株式交換では売却する側の株主が、買収する側の株式を得られるメリットがあります。株式交換で買収する側の株式を得ることで、会社が統合した後の経営に関わることが可能です。
一方で買収する側も株式交換の対価としてお金ではなく株式を渡すことで、買収資金を支払う必要がないメリットがあります。株式交換は、自社が消滅してしまう合併とは違い売却した会社がこれまでの組織や事業内容を残しつつ別会社として続いていくため、働いていた従業員が抵抗を感じにくいことも魅力です。また株式譲渡の場合は譲渡についての合意をすべての株式から得るか、合意が得られなかった場合は合意しなかった株式を排除する手続きが必要となり、大きな労力がかかってしまいます。これが株式交換であれば、すべての株式から合意を得ずとも株主総会で承認を受けるだけでよく、合意しなかった株主の株式は強制的に買収する会社側に移ります。
一方で株式交換のデメリットとしては株式交換が成立するための手続きが複雑で時間がかかることです。また株式交換する対価として売却する会社側に株式を発行すると買収する会社側の株式数が増えるため、株主が持っている1株の価値が低くなり株価が下がる危険性があります。
株式移転は株式移転とは、既に存在している株式会社Aが新たに株式会社を設立して完全親会社となり、既に存在している株式会社B社の株式をすべて引き受けて買収し完全子会社化します。株式交換と株式移転とは言葉が似ていますが、株式交換は新たに会社を設立するのではなく、既にある株式会社を完全親会社します。さらに株式移転であれば自社は完全子会社になるため合併のように消滅しません。
株式移転の大きなメリットは、事業譲渡や株式譲渡と異なり株式移転の対価として新設した会社の株式を発行でき、資金を準備する必要がないことです。
また株式譲渡とは違って売却する会社側の負債は引き継ぎません。また合併を行った場合は組織内容の違う会社が一つに統合されるので、合併された側の従業員のやる気が低下してしまい、合併後に従業員同士の意見の食い違いなどが発生する可能性があります。しかし株式移転であれば売却する会社は完全子会社として続いていくので、従業員への負担も抑えられます。
一方で株式移転することで会社数が増え、買収する会社側の管理コストが上がる可能性があります。また株式移転により買収する会社側の1株の価値が下がってしまう恐れがあり、買収する会社側が上場している企業の場合は株価が下がるリスクもあります。さらに株式移転は事務手続きに時間と手間が必要となり、手続きが完了し効力が発生するまで数カ月かかるケースもあります。
TOBとは「Take-Over Bid」を略した言葉で、日本語では「株式公開買付」といいます。TOBでは買収する側が予め買い付け期間や買取株数、広告などを公示し、買収予定の企業の株式を持っている株主に対し株式の買収を案内します。一般的に株式の買い付けは取引市場で行われますが、TBOは取引市場外で行われます。買収予定の企業の株式を持っている株主はTBOへの応募ができますが、TBOへの応募せずに株式を保有し続けることもできますし、売却することもできます。
TOBはあらかじめ公開した価格・買取期間・買取株数で株式を買い付けるので、株価変動の影響を受けませんし、買収が成立するまでの費用の見通しが立ちやすいメリットがあります。
一方でTOBのデメリットは、買収する会社側に経営権がすべて移ってしまうことです。また取引市場で株式を買い付けるより費用が高くなってしまうこともデメリットといえるでしょう。
MBOとは「Management Buyout」を略した言葉で、会社の経営者が自社の株式を買収して会社から独立するM&A手法のひとつです。MBOは一般的に、グループ会社を持つ企業が、第三者に売却せずに親会社と子会社を分ける際に使われます。先ほど開設したTBOとの違いは、株式を買い取るのが誰なのかということです。TBOでは第三者が株式を買い取りますが、MBOでは会社の経営者など内部の人間が自社の株式を買収します。株主が多い企業は意思決定を行う際に株主からの承認を得るまでに時間がかかります。
MBOを行うことで経営権が集中し、長い目で見て経営戦略を立てられ、企業の成長が期待できるメリットがあります。またMBOは買収後も経営陣が変わらないため、従業員の不満も少なくモチベーションも下がらない点も挙げられます。
一方でMBOは経営陣が変わらないので、経営に関する大きな変革が起きづらいデメリットがあります。また上場企業がMBOを行うと上場廃止となり、取引市場から資金が調達できなくなるので注意が必要です。
事業譲渡は売却する側の会社の事業を、買収する側の会社に譲渡する手法です。事業譲渡は譲渡する事業、資産や負債も契約によっては自由に選びやすいのが特徴です。しかし事業譲渡は手続きが複雑でコストもかかります。
事業譲渡には「一部譲渡」と「全体譲渡」があり、事業の一部を譲渡するか全部を譲渡するか自由に選べるメリットがあります。また買収する会社側と話し合うことで、残したい従業員や資産を確保できます。株式譲渡では相手会社の資産だけでなく負債も引き継がれますが、事業譲渡では負債・債務を引き継ぐ必要がないこともメリットだといえるでしょう。
一方で事業譲渡のデメリットとしては、今まで取引先や従業員を結んでいた契約を結び直さなければならないので、手間とコストがかかることです。また事業譲渡を行うと20年間は同じ事業を行えません。さらに事業譲渡を行った際に受け取った譲渡代金に対して、法人税や住民税などの各種税金がかかってしまいます。
一部譲渡とは、譲渡する側の会社の資産・負債・契約などを含むすべての事業の中から、一部だけを選んで譲渡することをいいます。一部譲渡は、たとえば日本の高齢化や日本市場の縮縮小から海外進出を考える会社が、自社の一部事業を海外事業を得意とする会社へ一部譲渡し、自分は日本で継続して事業を行う場合などに使われます。または年齢を重ねるにつれて引退を考え始めた経営者が主な事業だけを一部譲渡し、自分は不動産管理などを行い、自分の自由な時間を確保する際にも使われます。
全部譲渡とは、譲渡する側の会社の事業を譲渡される側の会社にすべて譲渡する手法のことです。全部譲渡は、たとえば法人格を手放せない事情がある経営者がよく使う手法です。自分の事業のすべてを第三者に譲渡し、残った法人格を使って新事業を始めることが可能となります。
経営状況が厳しく負債が多い企業は、他社に買収してもらいにくくなります。なぜなら企業を買収する株式譲渡の場合は、資産だけでなく負債や債務も引き継がなければならないためです。経営状態が悪く負債や債務のある企業を買収したところで、メリットを感じられませんよね。そのため経営状況が悪く負債や債務のある企業は、全部譲渡を選択することで自社を他社に売却できる可能性が高まります。
合併とは、2つ以上の複数の会社を合併して1つの会社にする手法です。合併すると合併される側の法人格は消滅し、持っていたすべての権利や義務が合併する側の会社に引き継がれます。一般的に合併は、グループ会社内の組織を再編するために使われます。または合併の対価を株式として、他会社を完全子会社化する際にも合併が使われます。
合併には会社を新設し自社の権利や義務を引き継がせる「新設合併」と、自社の権利や義務などのすべてを他社が吸収する「吸収合併」の2種類があります。新設合併は事業規模の拡大や収益の増加をスムーズに行えますが、手続きに非常に時間がかかるデメリットもあります。吸収合併は新設合併と同じく事業規模の拡大や収益の増加をスムーズに行え、さらに新設合併より手続きが簡単です。しかし吸収合併は自社が完全に吸収されてしまうため、経営権を失ってしまうデメリットがあります。新設合併と吸収合併それぞれの特徴やメリット・デメリットについて詳しく解説していきます。
新設合併とは、売却側と買収側の2つ以上の会社が行う合併のことです。新設合併ではまず新しく会社を設立し、売却側の会社が持っていた権利・義務を、新しく設立した会社がすべて引き継ぎます。新会社が引き継ぐものは株式や事業用資産だけでなく、仕事の技術や技能に加えて、取引先や従業員との雇用契約なども含まれます。
新設合併のメリットは、複数の会社を1つに統合することで事業の規模が拡大する、収益の増加や技術力の向上など、大きな成果が期待できることです。また新設合併では対価として株式を使えるので、買収するために現金を準備する必要がありません。一方で新設合併のデメリットは、手続きに非常に手間と時間がかかることです。新設合併は完了するまでに数カ月~1年ほどかかることもあり、できるだけ早く組織再編や事業継承したい人にはおすすめできません。
吸収合併とは、買収側の会社が売却側の会社をすべて吸収する手法のことです。吸収合併により消滅した売却側の会社が持っていたすべての権利や義務を、買収側の会社が継承します。吸収合併のメリットは新設合併よりも手続きがかんたんなことです。また新設合併と同じく、複数の会社を1つに統合することで事業の規模が拡大する、収益の増加や技術力の向上など、大きな成果が期待できるメリットがあります。
一方で吸収合併は、売却する会社が買収する会社に完全に吸収されてしまうため、合併後は買収する会社の理念や方針に従わなければなりません。そのため合併後の統合プロセスをできるだけ早く提示してあげないと、従業員は困惑してしまいます。また吸収する会社と吸収した会社の分野が近い場合、顧客が重複するケースがあります。
分割とは事業の一部または全部を分割して、ほかの会社や新設した会社に引き継いでもらう手法のことです。会社分割には事業を既に存在している会社に引き継いでもらう「吸収分割」と、新しく設立した会社に引き継いでもらう「新設分割」の2種類があります。新設分割とは新しく会社を設立し、すでにある会社の一部もしくは全部を引き継いでもらうものです。新設分割は細かい手続きが不要ですが、税務上の取扱いが複雑です。
一方で吸収分割とは、自社の権利や義務の一部または全部を、他社に引き継いでもらうことです。吸収分割は新設分割と同じく手続きが簡単ですが、現場や従業員が混乱する恐れがあります。吸収分割と新設分割の特徴やメリット・デメリットについて詳しく解説していきます。
新設分割とは既にある会社の事業の一部または全部を、新しく設立した会社に引き継いでもらう手法のことです。新設分割には「物的新設分割」と「人的新設分割」の2種類があります。物的新設分割では事業継承の対価を会社に対して交付し、人的新設分割では株主に対して交付します。
新設分割のメリットは、分割した事業の権利や義務がまとめて新しく設立した会社に引き継がれるため、事業譲渡のような細かい移転手続きが不要です。また一定の適用要件を満たして新設分割を行うことで、会社所有の証券や不動産資産の価格変動で生まれる利益は課税されないこともメリットだといえます。
一方で新設分割のデメリットとしては手続き自体は簡単なのですが、税務上の取扱いが非常に複雑なことです。さらに新設分割を受ける会社が上場していない企業の場合は、新設分割した対価として株式を売却する機会を失い、現金化できなくなります。
吸収分割とは、売却する側の会社の権利や義務の一部またはすべてを分割して譲渡し、買収する側の会社に引き継いでもらう手法のことです。吸収分割には「分社型吸収分割(物的分割)」と「分割型吸収分割(人的分割)」の2つがあります。
分社型吸収分割では事業を分割した会社がその対価として、買収する側の会社の株式を受け取ります。分割型吸収分割では事業を分割した会社がその対価として、買収する側の会社の株式以外の金銭などの財産を受け取ります。
吸収分割も新設分割と同じく、分割した事業の権利や義務がまとめて新しく設立した会社に引き継がれるため、事業譲渡のような細かい移転手続きが不要です。また吸収分割の対価で株式を発行すると、買収する側の会社は多額の現金準備は不要で、少ない資金で事業継承が可能となっています。さらに吸収分割、買収する側の会社が必要と考える事業だけを引き継げるなど、買収する側の会社にとってもメリットがあります。
一方で吸収分割のデメリットは、吸収分割の対価として株式を発行することで1株あたりの利益が減ってしまい、買収する側の会社の株価が下がる可能性があることです。またスムーズに吸収分割が進まないと現場や従業員が混乱してしまいます。
合弁会社とは、2つ以上の会社が共同で設立した会社もしくは取得した会社のことで「共同出資会社」とも呼ばれます。合弁会社は、共同事業のコストやリスク分散や特定事業をスムーズに行うためなどを目的として設立されます。2社で株式会社として合弁会社を新設するのであれば、基本的に株式の持分比率は50%ずつです。
合弁会社を設立するメリットは、合弁会社を一緒に設立した会社のノウハウや技術を活かせることです。たとえば自社が持つ特許と相手会社が持つ技術を上手に活用することで、自社だけで開発するよりも素早い開発が可能になります。また合弁会社は2つ以上の複数の会社が出資するので、1社ごとの出資金を安く抑えることが可能です。そのため合弁会社が経営できなくなった場合に、失う出資金も抑えられます。さらに外資企業だけでの会社設立ができない国に進出する場合には、合弁会社を通すことで海外進出がしやすくなるメリットもあります。
一方で合弁会社には、会社の方針や理念に関するトラブルが発生すると、解決までに時間がかかるデメリットもあります。またお互いの技術やノウハウを活かせるのは良いことですが、流出させたくない情報まで相手企業に流出する可能性もあります。合弁会社を設立する際には事前に企業理念や方針をしっかりと話し合い、本当に信頼できる相手かどうかを見極めることが大切になります。
資本参加とは、協調関係にある他社の株式を取得または保有することで資金援助を行い、他社との関係性を高める手法のことです。資本参加では取得する株式の比率を3分の1未満に抑えるので、対象となる会社の経営権には影響を与えません。資本参加は一般的に、資本参加する会社の方が資本参加される会社よりも大きく資金も豊富です。もし資本参加する会社とされる会社の規模が同じであれば、資本提携や経営統合に進展する可能性もあります。
しかし資本参加は永遠に続くものとは限りません。たとえば契約をして資本参加が行われた場合、契約が満了した時に契約更新されず、資本参加が終わり資本が撤収されることがあります。資本参加が解約になると資本参加した会社が株式を買い取る、もしくは株式を転売する可能性があります。
このように資本参加を解消・解約する際のルールを決めなかった場合、資本参加した会社の意思で株式の買取や転売ができるので、契約をして資本参加を行う場合は、契約を更新せず資本参加を解約する際の対応について事前にしっかりと話し合うことが大切です。資本参加が解約されないようにするためには、相手企業と良い関係を保ち続けなければなりません。
業務提携とは、資本の移動は行わず、共同で事業を行うことをいいます。業務提携には「生産提携」「販売提携」「技術提携」の3種類があり、それぞれ目的が異なります。中でも技術提供とは2つ以上の複数の会社が提携し、それぞれの技術を活かしあうことをいいます。技術提携は参加するすべての会社の立場は平等で、それぞれの経営方針が変わることはありません。
技術提携のメリットは複数企業の技術力やライセンスを合わせるため、自社だけで技術開発するよりも開発にかかる時間とコストを大きく抑えられることです。また技術提携では、たとえば技術力はあるが資金力がない企業と資金力はあるが技術力が低い企業が提携し合うというように、それぞての企業のメリットを活かしあえます。さらに自社だけで製品開発した場合、製品開発に失敗したときの負担はすべて自社で担います。万が一製品開発に失敗してしまったとしても、失敗のリスクを提携企業と負担できるので開発時のリスクを半減できます。
一方で技術提携する際のデメリットと注意点としては、技術提携で技術や製品開発を行った際に、その技術や製品に対しての権利を誰が持ってどう活用するのかをしっかりと決めておく必要があることです。協力関係を維持する必要がある技術提携ですから、会社同士でトラブルが起きないようにするためにも契約時に細かい「技術提携契約書」を必ず作成するようにしましょう。
また技術提携では、お互いの技術・ノウハウ・知識・特許などを提携先の会社とシェアします。そのため自社しか知りえない大切な情報が外部に漏洩してしまう危険性はゼロではありません。技術提携する際には自社の情報を漏らされることがないように、事前に「秘密保持契約(NDA)」を結び、信頼できる会社かどうかをしっかりとリサーチすることが大切です。
販売提携とは自社で開発した商品などを、販売に関するノウハウ・技術を持っている会社に手数料を払って委託する手法です。販売提携は主に、開発を中心として行っており営業に関する知識・人脈を持っていない会社や、新たに事業参入したばかりで販売経路や技術を持っていない会社が行います。
販売提携のメリットはコストが安く手間がかからないことです。他のM&Aを使う場合、実施するためにはさまざまな手続きが必要で時間もコストもかかります。もしM&Aが成功しなかった場合、かかった時間やお金は当然返ってきません。それと比べて販売提携であれば、相手会社と契約するだけで簡単に実行できますしコストも安く抑えられます。
また販売提携は他のM&Aにように、経営権や資本に関して影響が出るものではありません。販売提携する際には契約を行うので、契約内容以外のことで販売提携を受けてくれた会社から、経営などに関して意見を言われる心配がなく、自社の独立性はしっかり守られます。
販売提携では、販売提携を受けてくれた会社に対して不満や不信感が出てきた場合、契約を解消することも可能です。販売提携を行わないとしたら、足りない経営資源を自分たちの力だけで作ることから始めなければなりません。そこで販売提携を活用して必要な経営資源を持っている会社と提携することで、時間もコストもかけずに素早く目標達成できるようになります。メリットの多い販売提携ですがもちろんデメリットもあります。
販売提携のデメリットとしては、まず自社の技術やノウハウが相手企業に盗まれる可能性があることです。それと加えて情報漏洩のリスクもあります。販売提携する際は契約書を作りますが、必ず守秘義務について明記します。しかし販売提携する会社によっては情報を管理する体制が整っていないこともあり、情報漏洩する可能性はゼロではありません。販売提携する際には本当に信頼できる会社かどうか事前にリサーチするようにしましょう。
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今回は自社の事業や経営権を他社に引き継いでもらうM&Aについて詳しく解説してきました。M&Aには買収や合併などさまざまな手法があり、それぞれの手法ごとに特徴やメリット・デメリットが異なります。M&Aを行うためには、まずM&Aに応じてくれる相手会社を見つけることから始めます。しかし他社とのつながりが薄い会社では、なかなか相手会社を探せないでしょう。また知識もないままM&Aを進めてしまうと、余計なコストと時間がかかり、場合よっては悪意ある企業に騙される可能性もゼロではありません。
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