M&Aの税金と節税方法を徹底解説【売り手・買い手別】

M&Aの税金と節税方法を徹底解説【売り手・買い手別】

M&Aは適格要件や手法、法人か個人により行う税務処理が変わり、専門的な知識が必要です。知らずに進めていくと、多額の税金を払わないといけなくなる恐れがあります。この記事ではM&Aに関する税金や節税方法を紹介します。

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M&Aの税務を知っておく必要性

M&Aの税務を知っておく必要性

M&Aと聞くと、以前は外資系企業が会社を乗っ取るというイメージがありました。現代では、企業の成長戦略の手段としての意味合いが強くなっています。

2008年のリーマンショックの影響で一時的に減りましたが、現代では件数も増えています。M&Aを行う場合、さまざまな種類の税金がかかります。M&Aの税務は、適格要件や手法、法人か個人かにより方法が異なります。採用する方法により、最終的にかかる税負担の額に大きな違いが生じ、手取り額が変動します。M&Aをスムーズに行うには、専門知識を要する税務が重要です。これからM&Aを検討している方は、税務手続きや適格要件、税務リスクなどを専門家に相談しながら進めていくのがおすすめです。

M&Aにかかる税金の種類と特徴

M&Aにかかる税金の種類と特徴

M&Aをするときにかかる税金の種類や特徴を把握しておきましょう。M&Aでは、基本は売り手にのみ税金が発生します。また、М&Aが事業譲渡の場合、消費税や、建物や土地の不動産取得税、登録免許税等がかかります。個人株主と法人株主がM&Aをして株式譲渡をする際の大きな違いとして、税率や譲渡時の取得費、相続後3年10カ月以内の特例、繰越欠損金などがあります。M&Aを検討している方は、それぞれの特徴を把握し、かかる費用を計算しておきましょう。

売り手側の税金

M&Aの場合、基本は売り手に税金は発生して、法人株主と個人株主でそれぞれ課税される税金が異なります。株式譲渡によって法人株主にかかる税金は、本業で得た利益と合算した所得金額に対し、法人税実効税率約30%を乗じ計算されます。法人株主にかかる税金の特徴は、本業で稼いだ所得が赤字の場合、株式譲渡益と損益通算できることです。

仮に株式譲渡益が1,000万で、本業で1,000万の赤字がある場合は、所得金額が0円となるので税金がかかりません。個人株主にかかる税金は、株式譲渡収入から株式取得費や委託手数料などを差し引いた金額に。20.315%を乗じ計算されます。個人株主にかかる税金の特徴は、その他の所得として給与所得や事業所得があっても金額が変わらないことです。個人事業主にかかる累進課税のように、所得が大きければ大きいほどかかるものではありません。

また、譲渡時の取得費は、個人株主が譲渡収入×5%が取得費として認められますが、法人株主には認められません。

売り手側の個人株主と法人株主の税金の違い

個人株主では相続後3年10カ月以内の特例があり、株式譲渡所得の計算をする際に、譲渡株式の相続に係る相続税を所得費に加算できます。

また、個人株主が相続後3年10カ月以内であれば、相続した非上場株式を発行会社に譲渡したときにみなし配当課税の適用がなく、通常の株式譲渡課税扱いの特例が認められます。法人ではこの特例はなく、法人株主は譲渡損、譲渡益ともにほかの所得と通算して計算されます。繰越欠損金については、法人株主は欠損金の繰越控除が利用できますが、個人株主の非上場株式の譲渡損失は繰越ができません

このように法人と個人でかかる税金の特例の違いがあるので、M&Aを検討している方は税理士などの専門家に相談して、詳細を確かめるのがおすすめです。

買い手側の税金

М&Aの場合、基本は売り手にしか税金は発生しません。

法人には、株式の適正価格から所得価格を引いた額に法人実効税率がかかります。また、株式譲渡ではなく事業譲渡のМ&Aの場合、買い手に消費税や、不動産の移転にかかる不動産取得税、登録免許税等がかかります。それぞれ概要を把握し、買い手側も税金対策をしておきましょう。

消費税

M&Aで買い手が支払う税金の一つに消費税があります。決算や申告のときに企業が消費税を支払うとイメージする方が多いでしょう。

しかし、消費税は決算や申告時だけでなく、普段から食材や備品の購入などで仕入れ先に消費税の支払いをしています。事業譲渡のM&Aでは、買収する資産の中に消費税を支払わなければいけないものがあります。消費税が発生するものとして、土地や保証金以外の有形固定資産、無形固定資産や棚卸資産、営業権などがあります。買収する金額が大きいほど消費税もかかるので、事前に買収する資産の中に消費税がかかるものがないか確認しておきましょう。

不動産所得税

不動産取得税とは、土地や建物などを取得する際に発生する税金です。各都道府県に収める税金で、事業譲渡や営業譲渡のM&Aの対象に不動産が含まれていると発生します。

原則、事業用の不動産に対する不動産取得税は4%です。不動産取得税は、不動産の購入価格ではなく、各自治体が決めた固定資産税評価額に対して課税されます。固定資産評価額は、各地自体の固定資産課台帳や、毎年固定資産税納付書と共に送付される固定資産税課税明細書に記載されています。

登録免許税

M&Aで買い手が不動産を取得すると、法務局で所有権の移転登記を行わなければいけません。所有権移転登記を行う場合、国に治める税金が登録免許税です。登録免許税は、土地・建物の固定資産税評価額の原則2%です。

M&A手法別の税金と計算方法

M&A手法別の税金と計算方法

M&Aは、会社売却の中でも株式譲渡や事業譲渡、組織再編、第三者割当増資など、さまざまな方法があります。選択する手法により課される税金が異なります。

一般的に、会社全体を売却する「株式譲渡」は、売却高の相場が高くなっています。各手法を把握し、課される税金の違いを把握しておかないと、M&Aを行うときに、多額の税金を支払う恐れがあります。各手法にかかる税金や計算方法を把握し、M&Aを検討している方は、自社に合う方法を選択できるように知識を深めましょう。

M&A(株式譲渡・会社売却)にかかる税金と計算方法

株式譲渡は、会社全体を売却するM&Aで、会社売却の中で最も代表的な方法です。株式譲渡によりM&Aを行う場合、売り手側の法人又は個人株主に譲渡所得が生じます。譲渡側の株主が個人の場合、株式譲渡で獲得した所得に所得税がかかります。この所得税は、別の所得と分けて計算される「分離課税方式」であるのが特徴です。

株主が法人の場合は、法人税などがかかります。売り手側が法人か個人かで、税率は10%近く変わります。М&Aで株式譲渡をする際、多額の税金がかかる場合があります。

10%近く税率が違うと税金の負担が変わるので、М&Aで株式譲渡をするときは、事前にどれくらいの税金がかかるか専門家に確認をしましょう。

M&A(事業譲渡)にかかる税金と計算方法

事業譲渡は、売却企業が主体で、売却事業のうち特定の事業のみ切り出し、ほかの企業に売却する方法です。事業譲渡でかかる税金は、事業売却損益とほかの所得と合わせたうえで計算されます。

事業売却損益は、事業譲渡金額から譲渡する負債や資産の薄価を差し引き、法人実効税率約30%を乗じ計算されます。

例えば、事業譲渡金額が2億円で譲渡する資産や負債の簿価が1億円の場合、事業売却益として1億円が計上されます。ほかの所得がない場合、事業売却益1億円に法人実効税率約30%が乗じて法人税が計算されます。

また、事業譲渡の場合、譲渡対象資産に課税対象のものが含まれていた場合、買い手には消費税や登録免許税、不動産取得税等がかかります。売り手だけでなく、買い手側も税金について把握しましょう。

M&A(組織再編)にかかる税金と計算方法

合併や会社分割による組織再編をする場合、税制適格か否かに分けられます。税制適格要件を満たす場合、資産や負債を「帳簿価額」で引き継ぐ税務処理がなされるので、売却損益が発生せず課税が生じません。税制適格要件を満たす組織再編の種類は主に以下の通りです。

  • 適格新設合併
  • 適格吸収合併
  • 適格吸収分割
  • 適格新設分割
  • 適格株式交換
  • 適格株式移転

適格要件をすべて満たせば、税制適格となり課税が生じません。一つでも要件を満たしていない場合、すべて税制非適格となり課税されます。

税制適格要件を満たさない組織再編には、資産や負債を「時価」で引き継ぐ税務処理がされて売却損益が発生し課税が生じます。税制適格要件には、対価要件や事業継続要件、従業者引き継ぎ要件などの要件があります。

M&A(第三者割当増資)にかかる税金と計算方法

第三者割当増資をM&Aで利用する場合、会社から新株を発行し、引受先が資金を拠出して発行会社に払い込みをします。

第三者割当増資を実施することで、議決権の過半数または3分の2以上を取得でき、この流れの中で株式の譲渡をするわけではないので、原則として税金は発生はしません。

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税制適格・非適格とは

税制適格・非適格とは

M&Aにおける税務処理関係の組織再編税制に、「税制適格」と「税制非適格」があります。

M&Aにおいて株式譲渡をするときには、「税制適格」と「税制非適格」を理解しておくのが、税金対策や税務処理をスムーズに行う上で重要です。

税金面でメリットが得られるものがあるので、税制適格と税制非適格の概要を理解しておきましょう。

税制適格・非適格の意味

適格要件を満たす場合、資産や負債を帳簿価額で移転できて、移転時に課税関係が発生せず、税金対策として有効です。

対して、税制非適格の定義は、M&Aで適格要件を満たさない会社分割、株式移転や合併などの組織再編です。

原則として、M&Aの組織再編は譲渡損益が認識されるので課税対象となり、税金対策としては有効でない場合が多いです。

税制適格とは

M&Aにより資産を移転する前後で実質的に経済状態に変更がなく、課税関係を継続することが適当だと認められた場合、税制適格が適用されます。M&Aにおける税制適格が認められる場合は以下の通りです。

  • 100%支配関係のあるグループ内でM&Aや組織再編
  • 50%越えの支配関係があるグループ内でM&Aや組織再編
  • 共同で事業を行っているグループ外企業のM&Aや組織再編

これらの分類の中でもそれぞれ要件が異なり、要件を満たせば税制適格となります。

100%支配関係のあるグループ内でM&Aや組織再編

税制適格が認められる要件として、100%支配関係のあるグループ内でM&Aや組織再編があります。100%支配関係のあるグループ内でM&Aや組織再編の場合、金銭などの授受がなく、組織再編後も100%支配関係が続く場合、税制適格となります。

たとえば、株式交換で100%完全子会社とする場合、交換の対価が株式などの金銭以外であり、株式交換後も子会社株式を継続して保有すると、税制適格が認められます。

50%を超える支配関係があるグループ内で組織再編

50%を超える支配関係があるグループ内で組織再編がある場合も、税制適格が認められます。税制適格が認められる条件として、金銭等の授受がなく組織再編後も50%を超える支配関係が続くこと、主要な資産や負債を引き継ぐこと、おおむね80%の従業員を引き継ぎ移転事業を継続することなどがあります。

50%超えのグループ内組織再編では、株主以外の第三者も自社や関連会社の株主になります。

共同で事業を行っているグループ外企業のM&Aや組織再編

共同で事業を行うグループ同士の組織再編も、税制適格の適用が可能となっています。税制適格の条件はほかの要件よりも厳しく、以下の条件をすべて満たさないと認められません。

  • 金銭等の授受がない
  • 主要な資産や負債は引き継ぐ
  • おおむね80%以上の従業員を引き継ぐ
  • 移転事業を継続する
  • 移転事業に関連性がある
  • 事業規模と売り上げがおおむね5倍以内または双方役員が組織再編後も継続して就任する
  • 発行株式総数の80%以上を継続保有することが見込まれている

税制適格のメリット

組織再編をして税制適格となった場合は、合併消滅会社等の時価評価が不要となります。合併の場合、それにより、消滅会社の青色欠損金を存続会社に引き継げて、税金対策のメリットが生じる場合があります。

また、組織再編当事者にもメリットがあります。消滅会社の株主が存続会社の株式のみを交付されていれば、簿価を引き継ぎ課税されないため、税金対策のメリットが大きいといえます。

税制非適格とは

基本的に、M&Aの組織再編行為は税制非適格が定められています。

合併などのM&Aでは、合併する際に消滅する会社の資産や負債を時価評価して、合併する処理規定を定めています。

M&Aにおける税金対策

M&Aにおける税金対策

M&Aでは多額の金額が動くため、かかる税金も大きくなります。

M&Aを検討している方は、M&Aにおける税金対策を把握し、有効活用しましょう。M&Aで節税する方法には、役員退職金を活用する方法や、株式譲渡の代わりに第三者割当増資を活用する方法があります。

また、買い手のニーズを絞り資産を売却したり、多額の経費を出す時期に売却時期を合わせたりするのも税金を抑えるのに有効な方法です。各種方法を活用するときの注意点があるので、事前に確認し、税理士などの専門家に相談するのがおすすめです。

役員退職金を活用しM&A

M&Aにおける税金対策の1つに、役員退職金を活用し株式譲渡を行う方法があります。売り手が対象会社の株式を保有していて、対象会社の役員を務めている場合、役員退職金を活用することで所得税を減額できる場合があります。

株式譲渡所得の20.315%と比較し、安い税額になるよう退職金を設計することで売り手の節税対策になります。ただし役員退職金を多額にすると、累進課税の影響で株式譲渡所得の税よりも高い税率となるので注意が必要です。税理士などの専門家に相談したうえで、活用するとよいでしょう。

株式譲渡の代わりに第三者割当増資を活用しM&A

株式譲渡ではなく、第三者割当増資を活用することで税金の発生を抑えることが可能です。

対象会社が買い手に対し50%超えの議決権を所得させる第三者割当増資を実施すると、買い手側に経営権を渡せます。

この場合、売り手株主はキャッシュを得られず、対象会社の資金が増資により増加します。そのため、売り手株主に課税は生じず、対象会社に損益が発生しません。

第三者割当増資は課税は発生しませんが、M&A後も少数株主として売り手側が残ったり、増資後に登記手続が必要となったりするなど、株式譲渡と異なる点が生じるので注意しましょう。

買い手のニーズがある資産のみに絞り売却する

株式譲渡によるM&Aをする場合、買い手にとっては不必要な資産を引き継がなければいけない場合があります

不必要な資産を別会社に売却後、買い手にとってニーズがある資産のみ残った対象会社の株式を譲渡することが多いです。また、必要資産のみ買い手に事業譲渡したり、会社分割により必要な資産のみ買い手に承継させたりする場合もあります。

多額の売却益を多額の経費により相殺

法人株主のみ活用できる方法ですが、子会社株式などを法人株主が売却する場合、多額の経費を計上する時期と売却時期を合わせることで、法人税などを節税できます。

ただし、経費による節税を行う場合、最終的に手元に残るキャッシュが少なくなります。不必要な経費を計上するのでなく、経営上必要な費用を計上するようにしましょう。

M&Aで発生した税金の申告時期

M&Aで発生した税金の申告時期

M&Aで発生した税金の申告時期は個人と法人で違うので、それぞれ把握しておきましょう。

個人に課税された税金は、株式を譲渡した翌年2月中旬から3月中旬にかけて行われる確定申告で納税する必要があります。法人に課税された税金は、事業年度終了の翌日から2カ月以内に納税しなければいけません。

海外M&A(クロスボーダー)の税務について

海外M&A(クロスボーダー)の税務について

海外企業とM&Aを行うときには、国により税法や処理の方法が違います。海外企業とM&Aを成功するには、適切な税務の処理が不可欠です。

各国の税法は、それぞれの国の課税権にもとづき定められていて、国境を越えた取引を行うときは、双方の国から課税を受けない二重非課税や、課税を受ける二重課税など税務上の問題が起きます。これらの問題の対策として公平性を保つため、租税契約や外国税額控除の制度が設けられています。

M&Aで注意すべき税務リスク

M&Aで注意すべき税務リスク

M&Aにおける税務リスクは、買収対象となる企業の過去の税務処理内容に誤りがあり、買収後の税務調査でそれが発覚するとデメリットを負うことがあげられます。

企業の存続を脅かすような重大なリスクとなる可能性は高くないですが、税務調査は定期的に行われていて、高確率で発覚します。それがメディアにより報道されると、レピュテーションリスクが生じ、企業の信用が落ちます。

そのほか、M&A後に顕在化する税務リスクには、法人税や消費税、源泉所得税等があります。税率が高く、経営に大きく負担がかかるものがあるので、税理士などの専門家に相談し、税対策をしていきましょう。

M&A相談ならウィルゲートM&A

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M&Aを検討している方は、ウィルゲートM&Aに相談をしましょう。

ウィルゲートM&Aでは、15,100社を超える経営者ネットワークを活用し、ベストマッチングを提案します。Web・IT領域を中心に、幅広い業種のM&Aに対応しているのがウィルゲートM&Aの強みです。M&A成立までのサポートが手厚く、条件交渉の際にもアドバイスを受けられます。

一般的にM&Aの成約までは6ヶ月〜1年ほどの期間を要しますが、ウィルゲートでは平均で4ヶ月、最短1.5ヶ月での成約実績、40億円以上での成約実績もあります。完全成功報酬型で着手金無料なので、お気軽にご相談ください。

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M&Aの税金と節税方法まとめ

M&Aの税金と節税方法まとめ

近年ではオンラインにM&Aのマッチングサービスが登場し、件数が増えています。M&Aは、選択する手法や法人か個人かなどにより税務が異なります。それぞれの概要を理解したうえでM&Aを進めていかないと、莫大な税金がかかり、経営を圧迫する恐れがあります。

M&Aにおける税務タスクは複雑なものがあるので、M&Aに詳しい税理士などに相談し、損をせずなるべくリスクを避けるようにM&Aを進めていくのがおすすめです。

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ウィルゲートが目指すのは、売り手様、買い手様、双方に納得感のあるM&Aです。M&Aがお客様の目的やご希望に合致しない場合、無理にM&Aをすすめることは絶対にありません。

M&Aで思わぬ失敗をしないためにも、まずは一度、ウィルゲートM&Aにご相談いただければ幸いです。
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