会社売却の相場はいくら?計算方法や税金、高く売る方法を事例解説

会社売却の相場はいくら?計算方法や税金、高く売る方法を事例解説

会社売却を検討する際にまず気になるのが、売却費用や自社の資産価値でしょう。「高く売るには?」「安く買い取るには?」といった疑問をお持ちの方も多いのではないでしょうか?

この記事では、会社売却をお考えの方へ向けて、会社売却時の相場や計算方法、高く売る方法などについて解説します。

会社売却とは?

会社売却とは?

会社売却は、企業が持つ資産のすべてをほかの企業に売ることです。会社売却に含まれる資産には、以下のものが含まれます。

  • オフィスや工場などの固定資産
  • 現金資産
  • 株式
  • 知的財産
  • マニュアルやノウハウ
  • 人材
  • 取引先や顧客リスト

特に、中小企業の場合だと会社売却の方法として「株式譲渡」をおこなうケースが多いでしょう。株式譲渡は、会社の保有する株式を買収会社に売ることです。株式の50%程度を売却して経営権を譲る方法もありますが、すべての株式を売却してしまうのが一般的です。
また、売却によって発生した対価は株主へと渡ります。そのため、株式の多くを経営者がもともと保有していた場合は、経営者本人に売却額が引き渡されるのです。

会社売却を検討する際に、「事業売却(事業譲渡)」についても知っておきましょう。事業売却は、会社売却のようにすべての資産を売るのではなく、事業だけ(もしくは一部の事業のみ)を別の企業や個人へ移転することをいいます。

対象となる事業には、以下のものが考えられるでしょう。

  • 従業員などの人材
  • 商品や工場などの設備
  • 取引先
  • ノウハウやブランド
  • 著作権などの権利

事業売却と事業譲渡は同義と捉えて問題ありません。また、売却によって発生した対価は売り手企業が受け取り、利益として計上します。

会社売却と事業売却の違い

会社売却と事業売却には、大きくわけて3つの違いがあります。

1.売却する対象物の違い

会社売却では事業や資産・負債などその会社が持つすべての資産が取引対象となります。一方で、事業売却は事業のみや個別の事業や資産のみを対象として、買い手に譲渡するものです。

また、会社売却では株式を売却するのが一般的ですが、事業売却では株式を売りません。代わりに「事業譲渡契約書」と呼ばれる書類に記載し、金銭を支払うことで成立させます。

2.売却によって発生した利益を誰が受け取るかの違い

どちらも買い手に資産を売却することで、利益が発生します。しかし、会社売却の場合は株式を取引するため、売却後の対価は「株主」に還元されるのです。

株主が自分の保有する株を、別の企業へ売却するイメージを持つとわかりやすいでしょう。そのため、対価は売り手企業ではなく、オーナーや経営者なども含む個人株主へ渡されます。

反対に、事業売却では法人同士の取引となるため、利益は売り手企業のものとなるのです。

3.納付する税金の違い

売却する相手が異なると、支払う税金の種類も変わってきます。

会社売却の場合:所得税15%、住民税5%、復興特別所得税(0.315%、令和19年まで)

事業売却の場合:法人税40%、消費税10%(課税対象の資産だった場合)

会社売却であれば「株式譲渡」となるため非課税です。その代わりに、株主個人が支払う所得税や住民税などが発生すると覚えておきましょう。
一方、事業売却では売却する資産が課税対象になっている場合、売却時にも消費税がかかり、法人間取引であるがゆえに法人税もかかります。

比率だけを見ると会社売却のほうが税金が少ないように思えますが、取引額によっては会社売却のほうが大幅に上回ることもあるのです。

会社売却の相場

会社売却の相場

会社売却の相場は、残念ながら明確に金額表示できるものではありません

売却価格は、社会情勢や成長規模、需要があるかなど、さまざまな要素をもとに算出されるものだからです。

今が高くても、1年後には需要がなくなり大幅に価格が下落するケースもあります。そのため、会社売却は「◯◯万円」とかんたんには示せないのです。

会社売却と事業売却では会社売却のほうが売却価格は高めです。会社売却はその企業が持つすべての資産が取引されるため、同規模の事業売却と比べると、相場は高くなります。

それなら、「会社売却のほうが高く売れてよいのでは?」と考える方もいらっしゃるでしょう。しかし、事業売却にもメリットはあります。たとえば、今後も法人を残したい場合には継続できますし、不動産も残せます。
どちらがよいかは今後の経営プランや計画によって異なるため、両方のポイントをよく見極めて選ぶことが大切です。

会社の売却価格を決める要素とは?

会社の売却価格を決める要素とは?

会社売却の相場は一概には示せないとお伝えしました。では、どんなものが価格の決め手となるのでしょうか?ここでは、売却価格を決める代表的な要素を5つお伝えします。

売り手企業が持つ市場シェアや売上高は、客観的に会社の評価をつける要素として有効です。仮に買い手企業が別の業界に参入しようと思った場合、その業界の市場規模などを把握してすぐに結果を出すのは難しいでしょう。

しかし、売り手企業が十分な市場シェアを保有し売上高も高かった場合には、買収することで売り手企業の強みを活かせます。

経験値のある人材

会社売却では、人材も売却資産に含まれています。どんなに条件が整った会社でも、働く人のスキルが低ければ成功は難しいかもしれません。そのため、売り手企業が持つ人材も重要な要素なのです。

たとえば、専門的なスキルや難しい国家資格を持った人材が多いと企業価値は高まります。なぜなら、専門性がある人を新規に探して採用するには、追加費用も時間もかかり大変だからです。

また、長年その会社に勤めている人は経験値も高く、育成能力があることも見込まれます。人材をゼロから育てるより、スキルを持った既存の従業員にノウハウなどを指導してもらったほうが、事業をスムーズに拡大していける可能性も高まるでしょう。

専門的な技術やノウハウ

企業が独自に開発研究して作り上げたオリジナルのノウハウや技術があるかどうかも、売却価格に大きな影響を与えます。特に、その企業にしか作れない技術があったり、売上をたてるには何年もかかるようなノウハウを持っていたりすると、企業価値は高まるでしょう。

業界の異なる企業から見ても希少性が高く将来性が見込まれるノウハウであれば、事業拡大に役立つことが見えているため、相場価格も格段に引き上がるのです。

既存の取引先や顧客

買収後の利益を継続できるかは、取引先や顧客の多さによっても左右されるでしょう。

江戸時代でも、商人は火事の際は顧客名簿だけは必ず持って逃げたといいます。そのくらい企業が持つ既存の顧客は大事なものとして現代でも認識されているのです。実際に、売り手企業が取引額の多い取引先や大手企業、大口注文がある顧客を持っていたなら、売却後も十分な利益が見込めるかもしれません。

一方で、取引先も少なく、取引高も低かった場合には企業価値も下がります。ゆえに、買い手企業から見て、売り手の顧客リストや取引先一覧が会社によい影響を与えると判断されると、売却価格はぐっと上がっていくでしょう。

会社の理念や社風

企業風土も売却価格に影響を及ぼします。風通しの悪い社風であったり、共感性の低い理念があったりすると、どんなに優れた人材がいても売却時にほかの企業へ移ってしまうかもしれないからです。売り手企業での働き方と買い手企業での働き方の不一致は、その後の経営に大きく響きます。

会社が持つ価値観については、ほかの要素と比べると重要視しない企業もなかにはあるかもしれません。
しかし、売却後の経営を考えると切っても切り離せない重要な要素なため、売却価格にも影響を与えると知っておきましょう。

会社の売却価格の計算(算出)方法

会社の売却価格の計算(算出)方法

会社売却における、売却価格の計算方法を見てみましょう。ここでは、代表的な3種類を紹介します。

時価純資産法(のれん代付き)

時価純資産法は、もっともわかりやすく算出できる方法のため、比較的規模の小さい中小企業の売却で使用されています。計算方法は以下です。

時価純資産+のれん代(営業権)=売却評価額

時価純資産は、会社の資産と負債を時価評価し、資産から負債を差し引いたものです。

のれん代(営業権)は、営業利益の平均値に持続が見込まれる年数を掛けて計算し、基本的には黒字経営の企業に限定されます。また、持続が見込まれる年数は、3〜5年程度で算出されることが多いでしょう。
例を見てみます。

  • 時価純資産=1億円
  • 過去3年分から算出する営業利益の平均値=1,000万円
  • 3年の持続年数で計算されるのれん代=1億円+1,000万円×3=3,000万円

    時価純資産法による算出価格は、1億3,000万円

のれん代部分は営業利益で算出するものの、目には見えない将来性を評価するのは難しく、数値では算出できない会社の評価を反映させにくいのがマイナスな部分です。
ただし、簡易的で客観的に評価しやすい点から、中小企業の売却では広く使われている方法です。

類似会社比較法(マルチプル)

類似会社比較法は、売り手企業と事業や規模が似ている上場企業の株価を比較して算出する方法です。

比較するときに使われる株価と、経営指標となる倍率をかけることで、売却価格を出します。経営指標となる倍率は「EBITDA倍率」「PBR」「営業利益倍率」などが挙げられ、特にEBITDAが多く利用されています。EBITDAは、税引前の利益に、減価償却費と支払利息を足して計算されるものです。

具体例をひとつ見てみましょう。

  • 売り手企業のEBITADA=3億円
  • 比較企業5社のEBITDA倍率=3倍

    類似会社比較法による算出価格は、3億円×3=9億円

上場企業と比べてどのくらいの会社規模になるのかが把握できます。

ただし、比較できる企業が少ない場合にはこの方法は利用できません。反対に似ている企業が多い場合には、わかりやすく算出できるのが特徴です。

DCF(ディスカウントキャッシュフロー)

DCF法は、大企業を中心によく活用されている方法です。企業が今後生み出すであろうと思われるキャッシュフロー(お金の流れ)を現在の価値に置き換えて割り引きながら算出します。

これから得られる予測収益から、未来がどうなるかわからないリスクの分を減らして今の価値を出すと考えればイメージしやすいかもしれません。DCF法は最も正確に算出できる方法ではあるものの、複雑な処理が必要です。

例として5年分の事業計画をもとに、複雑な会計を加えない状態で現在の価値を求めてみます。

  • 毎年100万円の利益を生み、割引率は10%と仮定
  • 1年目の事業価値=100万円÷(1+10%)=91万円
  • 2年目の事業価値=100万円÷(1+10%)の2乗=83万円
  • 3年目の事業価値=100万円÷(1+10%)の3乗=75万円
  • 4年目の事業価値=100万円÷(1+10%)の4乗=68万円
  • 5年目の事業価値=100万円÷(1+10%)の5乗=62万円
  • 現在の事業価値=1〜5年目の事業価値合計+(5年目の事業価値÷10%)

    =91+83+75+68+62+621=1,000万円

この場合は、1,000万円が売却価格と算定できます。ただし、あくまでも現在の価値にもとづいて将来の収益性を予測するものです。そのため、事業計画が正確に作成されていない場合は、現実とのギャップが大きくなってしまう可能性もあるので注意しましょう。

会社の売却価格は計算方法で変わってくる

会社の売却価格は計算方法で変わってくる

売り手側企業が採用する計算方法と、買い手側企業が採用する計算方法が異なると当然のことながら評価額も変わってきます。

たとえば、売り手側が純資産法で5億と算定し、買い手側企業では類似会社比較法を利用して10億円と計算した場合には5億円もの差額が発生するのです。これでは、買い手企業が見込んだ価格よりも安い価格設定が売り手企業でされている状態となり、売り手企業の視点では大幅に損するかもしれません。

どの計算方法で売却価格を算出するかは、とても重要です。

会社売却にかかる費用・税金とは?

会社売却にかかる費用・税金とは?

会社売却でかかる費用には、M&A会社の仲介手数料や登記費用、監査費用、売却によって発生する税金が含まれます。

M&A仲介手数料は、どの会社に依頼するかによって大きく異なるため明確な金額は提示できません。一般的には売却額に対して1〜5%程度の金額を取るところが多いでしょう。事業規模によっては痛い損失となり得るものの、専門家のアドバイスに従って複雑な手続きを円滑に進められるため、M&A成功のためには必要な出費です。

また、登記費用や監査費用は全体の中では低い割合を占める費用のため、そこまで心配する必要はないでしょう。

一方で、大きなウェイトを占めるのが税金です。そして、会社売却か事業売却かで払うべき税金が異なります。会社の株式を売却する会社売却では、所得税・住民税・復興特別所得税(令和19年まで)の支払いが求められ、事業売却では法人税が発生するのです。各割合をチェックしておきます。

会社売却の場合:所得税(15%)+住民税(5%)+復興特別所得税(0.315%)=約20%

事業売却の場合:法人税(30%)+消費税(10%、課税対象の売却資産があった場合のみ)=40%

比率では会社売却のほうが少ないものの、会社売却のほうが相場が大きくなるため、どちらが高いかは売却価格次第です。ゆえに費用や税金の支払いも含めて、会社売却は慎重に検討する必要があります。

会社売却のメリット・デメリット

会社売却のメリット・デメリット

では、会社売却にはどんなメリットやデメリットがあるでしょうか。それぞれの項目にわけて、売り手視点でのポイントを見てみましょう。

会社売却のメリットとして、まず挙げられるのが倒産や廃業のリスクをなくせることです。株式を譲渡する会社売却の場合、負債も買い手企業に譲渡されます。赤字企業であっても買い手がつけば、倒産せずに事業を別の企業へ継承できるのです。

また、売却することで利益を増やせます。将来性が評価されて、現在の資産よりも大幅に高い売却価格が設定されれば、大きな利益となりますし、違うビジネスが始められるかもしれません。

後継者がおらず今後の経営について悩んでいる状態であれば、会社売却によって継ぎ手が見つかり、事業をたたまずに済みます。大切な従業員やノウハウもそのまま譲渡されるため、会社を守ることにもつながるでしょう。

そして、会社売却の成立により、経営者の個人保証が解除されるのもメリットのひとつです。

デメリット

一方、デメリットは、会社を失ってしまう喪失感が発生してしまうことです。売り手企業の経営者は、ビジネスの第一線で経営者として頑張ってきました。しかし、会社売却で事業から手を引くと、それまでのやりがいややる気を失ってしまう可能性もあるのです。

また、競業避止義務により同業他社への転職や同業界でのビジネスが6カ月間禁止されることも、さらに喪失感を加速させるかもしれません。事業譲渡の場合でいえば、売却後は20年間同じ事業を立ち上げることが法律で禁止されています。売却額を使って同じ業界でのビジネス展開を考えている場合は、計画が崩れてしまうかもしれません。

さらに、売却時の契約によっては、会社に数年とどまって事業の引き継ぎをおこなうケースもあります。そのため、引退を予定していた場合であっても、まだ企業に在籍する可能性もあると覚えておきましょう。

会社売却を行う手続き方法と流れ

会社売却を行う手続き方法と流れ

ここからは、会社を売却するときの手順を見ていきましょう。以下7つのステップで売却まで進みます。

会社売却を検討し始めたら、まずはM&A会社に相談することからです。また、必要な書類を仲介会社に依頼して取り寄せることも同時におこないます。自社では、決算資料を過去三期分は用意しておきましょう。

2.相手企業とのマッチングと秘密保持契約

仲介会社に依頼している場合は、そのまま相手企業を探してもらいましょう。自力で探す場合は、金融機関や支援センター、オンラインのサービスを利用して募集をかけます。

候補が見つかった後は、接触を試みる前に秘密保持契約(NDA)を結ぶのが原則です。契約を結ばずに交渉フェーズに入ると、相手から自社の情報を漏らされたときに対処が難しくなるため、互いのリスク回避のためにも締結しておきます。

3.相手企業との交渉

ここから交渉作業に入ります。

交渉の第一ステップとしては、企業概要書の提示が必要です。企業概要書は、マッチングの段階では得られなかった財務状況や沿革などの詳細な情報が記載されたものをいいます。この書面をもとに、売却時の条件や価格を決めていくのです。

企業概要書を確認して、交渉する気持ちが変わらなければ、経営者同士の面談に入ります。対面での交渉ですので、疑問点や聞いておきたいことの解消、価値観の共有などはこのタイミングでしっかりとおこなうのが望ましいでしょう。
社風や経営方針などをこまかく確認しあって、このまま売却に向けて進めてよいかを話し合います。

4.合意契約

トップ面談の結果、このまま交渉を続けてもよいと感じたら基本合意書を締結します。基本合意書は、面談で合意した条件などを書面に起こしてあるものです。

ただし、法的な拘束力はないため、記載された条件や売却価格はそのまま実現するわけではありません。一部項目には、法的な拘束がついている場合もあります。

5.買収監査(デューデリジェンス)

基本合意が終わったら、買収監査がおこなわれます。これは、財務や法務、税務、人事など各視点から、提示情報の正確性やリスクの有無を監査法人がチェックするものです。買い手企業が売り手企業の会計、法務、税務情報が正しいかを確認するために実施します。

買収監査で問題が見つかった場合には、売却価格の引き下げや条件の変更などを実施するケースが多いでしょう。なかには、これまでの交渉がすべて白紙になってしまった事例もありますので、今後を左右する重要なステップだと認識しておきましょう。

6.最終取引交渉と契約の締結

買収監査の後は、最終取引交渉と本契約の締結です。

買収価格希望や条件に対して、詳細な話し合いをおこないながら決定します。双方が最終決定にも合意したら、法的な拘束力を持つ契約を結んで会社売却を実行する段階へと進むのです。

7.資産の引き渡しと対価の支払い

そして、契約内容の作業を実行して終了です。売り手企業が持つ資産は、取引条件をもとに買い手企業に譲渡され、売り手企業には売却対価が渡されます。

ちなみに、決済することはクロージングと呼ばれ、契約の締結後1、2カ月以内に決済期限や一定の条件完遂日を設定するのが一般的です。

会社を相場よりも高く売る4つのポイント

会社を相場よりも高く売る4つのポイント

会社を売却するなら少しでも価格を引き上げてから売りたいと誰しも願うものでしょう。相場価格よりも高く売るコツがあります。ここでは4つのポイントを見てみましょう。

1.自社の分析をしてアピールポイントを明確にする

売却するにあたって、強みとなるポイントをきちんと把握しておくことは重要です。

社内では「どこの企業でもやっている基本的なもの」であっても、他社から見たら魅力的な要素かもしれません。自社の「当たりまえ」を強みと捉えず、アピールせずにいるのはもったいないことです。そのため、社内の人間だけでなく、取引先や顧客、経営者仲間などにも強みを聞いておくのがおすすめです。

反対に、弱みについてもきちんと把握しておきましょう。売却価格が下げられるリスクから、自社の弱みをあいまいにしておくと、買収監査の際に指摘されて交渉が破談するケースもあります。買収先から信頼してもらうためにも、弱みもしっかりと分析して強みに変える構想を練っておきましょう。強みや弱みの把握には、SWOT分析などのフレームワークを使って分析するのも有効です。

2.会社の成長速度を加速する効果がいくつも見込めること

買収によって複数の効果が見込めるとわかれば、売り手企業の魅力は増します。相乗効果はシナジー効果ともいわれ、新たな領域や事業にも積極的に参入できるかもしれません。

買い手企業の力だけでは実現できなかったことが買収することで可能となるでしょう。さらに、期待以上の効果を発揮してくれるとわかったら、売却価格はその分上乗せされる可能性もあります

3.同じ業界の企業を相手に選ぶこと

同業者にとって、ライバルである売り手企業が魅力的であった場合、その技術やノウハウ、人材、ブランド力を取り入れたいと思うかもしれません。

同業者を買収すると事業拡大もスムーズですし、優秀な人材もそのまま譲渡される可能性もあります。ゆえに、事業内容に知識があることを評価して売却価格が上がることもあるでしょう。
同じ業界の企業が買収を検討している際には、アピールしてみるのもひとつの手です。

4.特定の分野で大きなシェアを持っていること

特定の市場で十分なシェアを持っているなら、それも強みになるでしょう。

市場シェアが大きいときに、売却を検討するのは早いと感じる人もいるかもしれません。しかし、市場シェアが小さくなってきたときには、買い手企業も買収に対してうしろ向きになるかもしれません。そのため、大きなシェアを持っていて、波に乗っているタイミングで売却するのも価格を上げるためには大切な考え方です。

売却価格が上がれば、その後のビジネスや引退後の生活も大きく変わるかもしれません。

会社売却の成功事例5選

会社売却の成功事例5選

ここからは、会社売却の成功事例を5例紹介します。

1.ロート製薬がオリンパスの子会社を買収

2021年3月に、ロート製薬がオリンパスの子会社「オリンパスRMS」を買収しています。再生医療技術開発をおこなうオリンパスRMSを買収したことで、ロート製薬は同事業の発展を可能としました。

ロート製薬の細胞製造技術と合わさり、コスト削減や新たなパイプラインの創出といったシナジー効果が見込まれています。

2.味の素がトルコの食品会社2社を買収・統合

2017〜2018年には、味の素がトルコの大手食品会社2つを完全子会社化し、イスタンブール味の素食品販売社と合わせて3社を統合しました。買収した2社は、トルコで調味料やピクルスの製造販売をおこなう「キュクレ食品」と粉末調味料やデザートなどの製造販売を手掛ける「オルゲン食品社」です。

トルコ企業の持つ販路や技術、商品に味の素が保有するブランド力が加わったことで、トルコから中東・アジア圏にも販路を拡大することがかないました。

3.マイナビがインドネシアのクラウドソーシング運営企業を買収

2021年12月には、マイナビが、インドネシアでクラウドソーシングサイトを運営する「Sribu(スリブ)」を買収しました。インドネシアは、アジア圏でも高い水準の経済発展が見込まれる人口の多い市場です。そのため、マイナビの持つ求人採用・就業ノウハウを、インドネシアのクラウドソーシングシステムを活用して拡大することが期待されています。

4.ソフトバンクグループがボーダフォンを買収

ソフトバンクグループは、国内でも数多くの大きなM&Aをおこなう企業として知られています。なかでも、2006年にイギリスのボーダフォン日本法人を買収したことは有名といえるでしょう。ボーダフォン買収により携帯電話の普及拡大を加速させ、当時は1,500万ものユーザーを獲得しました。

5.ナルミヤ・インターナショナルがLOVSTを買収

2020年12月に、子ども服販売事業で知られるナルミヤ・インターナショナルが、子ども向け写真事業をおこなう「LOVST(ラブスト)」を買収しました。LOVSTは子ども写真スタジオを展開している企業です。買収により、ナルミヤ・インターナショナルは既存の最新キッズファッション事業と写真スタジオ事業をかけ合わせたシナジー効果を得られています。

会社売却の相場に関してよくある質問

会社売却の相場に関してよくある質問

ここからは、会社売却に関するよくある質問を紹介します。

赤字の会社は売却できないの?

赤字経営の会社でも売却は可能です。ただし、買い手企業から見て魅力的な資産を持っていたり、市場拡大が見込める業界や事業内容であったりした場合など、利益を生み出せると判断された場合のみです。負債が多く経営不振であっても、それをこえる強みがあれば売却は十分に可能でしょう。

また、強みをしっかりとアピールすることで、売却価格を想定上に引き上げられるかもしれません。

会社売却にかかる期間はどのくらい?

企業の規模や交渉の進捗によって大きく異なるため、売却にかかる期間をはっきりとは提示できません。しかし、6カ月〜1年半程度が一般的といわれています。

会社売却後の経営者・従業員・株主・会社への処遇や影響は?

経営者は、本人の意向により引退か在籍のどちらかを選べるケースが多いでしょう。ただし、引き継ぎなどを求められた場合は数年程度在籍する必要があるかもしれません。

従業員は、基本的に買収先企業で雇用継続となるでしょう。しかし、労働環境の変化によって転職や辞職する従業員が出てくることも想定しておきます。また、経営方針や業務内容も変わるため、従業員への処遇や働き方にも大きく影響が出るといえるでしょう。

いずれの場合も事前に買収先企業としっかりと話し合って、トラブルが起きないようにすり合わせておくことが重要です。

事業譲渡・M&A相談ならウィルゲートM&A

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会社売却 まとめ

会社売却 まとめ

会社売却の相場や手順、売却のメリット・デメリットなどを詳しく解説しました。会社売却には、売り手側にも買い手側にも注意すべきポイントが多くあります。そのため、失敗を招かないよう入念な準備やリサーチが不可欠です。

ウィルゲートM&Aでは、9,100社を超える経営者ネットワークを活用し、ベストマッチングを提案します。Web・IT領域を中心に、幅広い業種のM&Aに対応しているのがウィルゲートM&Aの強みです。M&A成立までのサポートが手厚く、条件交渉の際にもアドバイスを受けられます。

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