廃業とは?メリット・デメリット、倒産・閉店・休業との違い、手続きを解説

廃業とは?メリット・デメリット、倒産・閉店・休業との違い、手続きを解説
この記事の監修:M&A専門家
四辻 弘樹
S M B C日興証券・みずほ証券の投資銀行部においてM&A、ファイナンス、I P O等に携わる。その後は上場企業のテモナにおいてCSOとして事業戦略、M&A、新規事業開発に従事。現在はM&Aアドバイザリーの他、資金調達支援、IPO支援に加えCFOとしての活動。

この記事では、廃業について、メリット・デメリットや倒産・閉店・休業との違いやその手続について詳しく解説します。

また、廃業を回避する方法も合わせて解説してますので、廃業を検討されている方は、ぜひこの記事をご覧ください。

廃業とは

廃業とは

廃業とは広義の意味で、理由や原因は関係なく現在行っている事業を辞めてしまうことをいいます。廃業には、経営が成り立っているのにもかかわらず自分から事業を辞める「自主廃業」と、資金繰りがうまくいかない・債務が超過してしまうなどが理由で「辞めざるを得ない廃業」の2つに分けられます。

廃業といえば突然お店のシャッターが閉まるイメージがありますが、廃業するまでには個人事業主であれば税務署に廃業届を提出し、法人であれば会社の解散や会社の財産をどう清算するか考える必要があるなど、さまざまな手続きが必要です。廃業すると一緒に働いていた従業員が職を失ってしまうこととなり、当然その家族にも負担がかかってしまいます。

しかし経営状況が悪い会社であれば、廃業することで周りへの迷惑を最小限に抑えられますし、自分の精神的負担も減ります。

廃業と休業・破産・倒産の違い

廃業の関連語や類義語に「休業」「破産」「倒産」があります。まず休業とは、事業の臨時休業や中長期の休業の意味としてよく使われます。

しかし法人の場合で法人登記はそのままに、事業活動を完全停止した場合を休業ということがあります。法人登記はそのままに事業活動を完全停止した場合は、税務署と事業所がある自治体に「法人異動届出書(休業届出用)」を提出しなければなりません。

休業すると所得が発生しないので、事業税や法人税はかからなくなります。12年間の間休業し続けた会社は「休眠会社」となり、そのままだと解散したものとみなされてしまいます。

破産とは一般的にすべての財産を失うことを指しますが、廃業の類義語としての意味では、倒産法に基づいて廃業することをいいます。

倒産とは負債が大きくなりすぎて経営破綻するなど、廃業を余儀なくされて廃業することをいいます。

このように「廃業」「休業」「破産」「倒産」はすべて特徴が異なることがわかります。

廃業の理由

廃業の理由

廃業する理由は会社によってそれぞれ異なりますが、ここでは一般的な廃業する3つの理由について解説していきます。

まず1つ目の理由が、経営状態が悪く赤字が続くことで、慢性的に負債が資産を上回る「債務超過」になることです。今後も経営を立て直せる見込みがないのであれば、事業を継続しても負債が増えていく一方なので、廃業することでこれ以上の損失を防げます。

2つ目の理由は少子高齢化などが原因で後継者がいないことです。会社の業績が良くても後継者がいない場合、経営者が引退すると同時に仕方なく廃業することはよくあります。

3つ目の理由は、経営者が自社に対する将来への不安を抱えている場合です。自分の事業がこの先成長しづらい業界や分野である場合、このまま事業を続けたとしても業績が悪くなると考え、経営者が自主廃業するケースがあります。

近年の廃業動向

近年の廃業動向

全国の倒産件数は年々減少傾向にありますが、廃業・休業・解散する企業の数は増加しつつあります。廃業・休業・解散する企業の数が増加している理由には、まず少子高齢化により経営者が高齢になっていることと、後継者がいないことが挙げられます。

少子高齢化により経営者の平均年齢が上がり、2019年には70歳以上の経営者が30%を超え、すべての年代の中で最も多い結果となりました。70代の経営者の40%前後が後継者不在問題を抱えており、やむを得ず廃業せざるを得ない状況になっているのです。

また廃業・休業・解散する企業の増加には、新型コロナウイルス感染症の影響もあります。新型コロナウイルスの影響は飲食店を始めとしてさまざまな分野の企業に影響を与えており、将来を不安視した経営者が自主廃業するケースが増えています。

廃業の種類

廃業の種類

廃業は1種類ではありません。廃業には一般的に以下の7種類があります。

  • 通常清算
  • 特別清算
  • 破産
  • 経営者保証債務の整理
  • 私的整理
  • 会社更生
  • 民事再生

それぞれの廃業方法で特徴や手続きの流れ、メリット・デメリットも異なります。

今後廃業を考えている人は廃業の種類とそれぞれの特徴をしっかりと理解して、今の自分の状況に最適なものを選ばなければなりません。ここでは7種類の廃業について、ひとつずつ詳しく見ていきましょう。

通常清算

通常清算とは、資産が負債を超過していて支払い不能な状態ではなく、債務をすべて弁財できる場合に行う廃業のことです。

通常清算は裁判所が関わらないため、手続きはすべて企業側だけで終わらせます。通常清算の流れは以下の通りです。

通常精算の流れ

①株式相会議などで解散・清算人を選ぶ
②解散登記を行う
③債権届出(官報公告)を行う
④解散した時の財産目録を作り株主総会で承認を受ける
⑤残った財産がある場合は株主へ配当する
⑥最終的な決算報告の承認を株主総会で行う
⑦解散結了の陶器を行い会社登記を閉鎖

通常清算は各手続きに非常に時間と手間がかかる廃業方法だといえます。

特別精算

特別精算は債務超過の疑いがあり、通常清算ができない場合に行う廃業のこと/です。債務超過の疑いがあるケースでは清算人だけでなく、監査役・株主・債務者も特別清算の申し立てを行う必要があります。

特別清算には「協定型」と「和解型」の2種類があります。協定型では債権者集会を開いて、決議した協定に沿って債務弁財を行います。和解型では自社の全債務者と個別に和解契約を結び債務弁財を行います。特別清算の流れは以下の通りです。

特別清算の流れ

①株式相会議などで解散・清算人を選ぶ
②解散登記を行う
③債権届出(官報公告)を行う
④解散した時の財産目録を作り株主総会で承認を受ける
⑤資産換価を行う
⑥特別清算の申し立てを行う
⑦和解案もしくは協定案を提示する
⑧和解許可もしくは債権者集会における協定案が可決される
⑨和解もしくは協定に沿った弁済と債放棄を行う
⑩終結決定と登記嘱託
⑪社登記閉鎖

以上の流れで会社が消滅します。

破産

破産とは、債務超過・支払不能などによって債権者の協力も得られなくなった場合や、租税公課などの優先するべき債権を弁済する資産がない場合に行う廃業のことです。

破産手続きを行うと会社の全資産を負債の返済に充填します。仮に全資産で負債を支払って残りの負債を返済できなかったとしても、破産は成立し会社は消滅します。

会社と会社の代表者は別物なので、破産したとしても代表者の資産には影響はありません。ただし会社が銀行からお金を借りる際に、会社の代表者が連帯保証人になっている場合は、破産後に代表者が借金を返済しなければなりません。破産手続きの流れは以下の通りです。

破産手続きの流れ

①地方裁判所に破産申立手続きを行う
②破産手続きの開始が決定し破産管財人が選ばれる
③債権者集会が開かれ破産者の財産が金銭に換えられ、各債権者に配当し終結する

経営者保証債務の整理

会社の代表者や経営者が会社の債務の連帯保証人になっている場合、会社が倒産したら連帯保証人となった代表者や経営者が債務を支払うことになります。

しかし代表者や経営者の個人的な資産で返済できなかった場合、何らかの債務整理を行わなければなりません。これを「経営者保証債務の整理」といいます。

このようなケースでは中小企業団体・金融機関団体共通の自主的なルール「経営者保証ガイドライン」が適用されます。経営者保証ガイドラインに沿って債務整理が完了したら、「90日~330日の生活費に値する預金」「華美過ぎない自宅不動産」「破産手続の自由財産に該当する財産」は代表者や経営者の資産として残ります。

私的整理

私的整理は会社が経営破綻した、もしくは経営破綻しそうな場合に行う手続きのことです。私的整理では裁判所が関わらないため民事再生法など債務整理の法律には従わず、会社の債務者と金融機関などの債権者との和解契約に沿って支払猶予や債務免除の手続きを進めます。

とはいえ会社の債務者と債権者が意見を言い合うだけでは、なかなか和解は成立しないでしょう。そこで全国の銀行協会・日本経団連が策定した「私的整理に関するガイドライン」を活用すると、スムーズに私的整理を進めやすくなります。

会社更生

会社更生は経済状況の悪い株式会社に対し、裁判所が選んだ更生管財人や債権者などの同意を受け会社の更生計画を策定するものです。

会社更生では更生計画を実施し、会社の利害県警者の利害を上手に調整しながら会社の再建に臨みます。会社更生の流れは以下の通りです。

会社更生の流れ

①会社更生の申立てを行う
②保全措置を行う
③会社更生の開始が決定する
④債権の届け出と調査、確定を行う
⑤財産評定を行う
⑥更生計画案を提出し決議、認可を受ける
⑦更生計画を実行する

会社更生は担保権者・株主の権利も制約できる強力な手続きですが、会社更生を行うと自社の株式は無価値となり、資金協力をしてくれた人が会社の新しい株主になります。

民事再生

民事再生は民事再生法に基づいて進められ、会社更生とは違い個人企業から大企業にまで広く活用されています。

民事再生の流れは以下の通りです。

①民事再生手続き開始の申立てを行う
②再生計画案を作成する
③再生計画案に対する決議・認可を受ける

民事再生の再生毛各案が裁判所や関係者から認められれば事業継続ができますが、もし再建が見込めないと判断された場合は破産手続きに進むことになります。

廃業のメリット・デメリット

廃業のメリット・デメリット

廃業にはメリットだけでなくデメリットもあります。ここでは廃業するメリットとデメリットについて詳しく見ていきましょう。

まず廃業するメリットについてです。赤字が原因ではない廃業の場合は、廃業後の資金を確保できるので各種支払いも行えますし、自分の廃業後の生活費も確保できます。赤字が原因で廃業する場合は従業員や取引先などに支払いできなくなっている可能性が高いため、廃業することで周りにかかる迷惑を最小限にできます。

また経営者自身も赤字経営が続いていると非常にストレスを感じるので、廃業することでストレスから解放されることもメリットといえるでしょう。

廃業するデメリットは、まずこれまで一緒に働いてくれた従業員が仕事を失ってしまうことです。再就職すればよいと思うかもしれませんが、新型コロナウイルスが流行している現代では再就職までに時間がかかる可能性が高い状況です。

また仕入れ先の会社にとっては大切な取引先がなくなるわけですから、これまで大きな取引をしていた場合は仕入れ先の経営状況にも多大な影響を与えてしまいます。

また廃業すると会社が消滅してしまうので、これまで頑張って積み重ねてきた経験や技術がすべて途絶えてしまうことになります。

廃業手続きの手順

廃業手続きの手順

廃業手続きはかんたんなものではありません。事前準備から始まって清算人の選出や各種届出の提出、資産の現金化や債務弁済など、やることはたくさんあります。

ここでは「通常清算」「特別清算」「破産」の3つの廃業における手続きの流れについて、それぞれ詳しく解説していきます。会社の廃業を考えている人はスムーズに廃業できるように、廃業手続きの流れについてある程度理解しておきましょう。

通常清算の流れ

通常清算の流れは以下の通りです。

①事前準備
②解散決議、清算人登記
③廃止届の提出
④債権取立て、現務完了
⑤公告・個別催告
⑥会社財産の調査、株主総会による承認
⑦資産の現金化、債務弁済、残余財産分配
⑧確定申告
⑨決算報告作成、株主総会による承認
⑩清算結了登記

ここでは通常清算の流れについて、ひとつずつ詳しく解説していきます。

①事前準備

通常清算を行うためには事前準備が必要です。事前準備では、まず会社の取締役会などで解散することを決めて解散予定日を定めます。

解散予定日を定めたら、会社の従業員・取引先・顧客に廃業に関する説明を行い、今後の対応に関する協議を行います。解散広告手続きをすると債権者申出期間が終わるまで債務の弁済ができなくなります。

そうなると取引先に影響が出てしまうので、取引に関わる債務は広告までに弁済するようにしましょう。これについてはこの事前準備の段階でしっかり協議・検討することが大切です。

②解散決議、清算人登記

事前準備が完了したら臨時株主総会を開き会社の解散決議を行います。会社の解散決議を行うと、会社は清算に関する事務だけを行う「清算株式会社」となり、清算が終わるまで存続します。

清算株式会社には清算事務の管理者である清算人が必要です。また、解散決議後は2週間以内に清算人登記を行います。清算人は解散時点ですでに行っていた仕事を完了させるだけでなく、債権の取り立て・残余財産の分配・債務の弁済を行う義務があります。

清算人は会社の基本原則で定めた人か、株式総会決議で選ばれた人が就任します。しかし会社の基本原則で清算人の定めがなく、清算人の選任決議も行わない場合は、会社の取締役が就任します。会社に取締役がいないのであれば利害関係者の申立てにより、裁判所が清算人を選びます。

③廃止届の提出

解散が決定し清算人登記も完了したら、3種類の廃止届を提出します。

まずは「事業廃止の届出」です。事業廃止の届出は、税務署と都道府県税事務所・市区町村役場へ提出してください。

次に「健康保険・厚生年金の適用事業所全喪届」です。健康保険・厚生年金の適用事業所全喪届は年金事務所へ提出します。

最後に「雇用保険適用事業所廃止届」です。雇用保険適用事業所廃止届はハローワークに提出しましょう。

④債権取立て、現務完了

廃止届の提出が完了したらようやく清算手続きに入ります。清算手続きと並行して現に取り扱っている事務を完了させ、会社が保有する債権の取り立ても行います。

基本的に清算株式会社は清算に関する事務しか行えません。しかし現に取り扱っている事務を完了させるために必要であれば、仕入れや棚卸資産の売却などの新規取引も行えます。

⑤公告・個別催告

会社を解散した後は遅れることなく、日本国の機関紙である「官報」で会社が解散した事実と、債権申出に関する公告を行います。

債権申出に関する公告では、会社の帳簿上で氏名や住所が確認できるなど、会社が認識している債権者に対して個別で催告します。もし会社が認識していない債権者が、会社で決めた最低2カ月間の申出期間の間に債権を申出しなかった場合は、その債権者は清算対象から外れます。

清算対象から外された債権者は、清算後の残余財産に対してしか弁済を請求できなくなってしまいます。清算人は申出された債権についての調査を行い、その金額と存否を確定しますが、この段階で債権者との言い争いがあった場合は、訴訟などを行い決定します。

⑥会社財産の調査、株主総会による承認

清算人は清算人に選出された後、遅れることなく会社の財産の状況を調査し、会社が解散した時点での財産目録と賃借対照表を作る必要があります。

作成した財産目録と賃借対照表は、株主総会に提出して承認を受け、清算結了登記が終わるまで保存しておかなければなりません。

⑦資産の現金化、債務弁済、残余財産分配

会社財産の調査、株主総会による承認が完了したら、会社に現在残っている資産を売却して現金化します。

そしてそのお金から、申出のあった債務をすべて弁済することになります。弁済後に残余財産があれば、清算人の決定に沿って株主に分配します。

⑧確定申告

会社が解散した年度は、その開始日から解散日までを1つの年度「解散事業年度」とし、解散した翌日から2カ月以内に確定申告を行います。

それ以降は解散した翌日から1年ごとに年度を「清算事業年度」として区切り、年度が終了した日の翌日から2カ月以内に確定申告書を提出します。

また残余財産が確定した日で、最後の事業年度「残余財産確定事業年度」が終わります。残余財産が確定した日の翌日から1カ月以内に残余財産確定事業年度の確定申告書を提出してください。

もしその期間内に残余財産の分配が完了するのであれば、完了日の前日までに残余財産確定事業年度の確定申告書を提出します。

⑨決算報告作成、株主総会による承認

確定申告まで完了したら、遅れることなく決算報告を作成します。決算報告を作成したら株主総会に提出し、承認を受けなけばなりません。

⑩清算結了登記

作成した決算報告が株主総会で承認されたら、2週間以内に清算結了の登記を行います。これで通常清算の手続きはすべて完了します。

特別清算の流れ

特別清算の流れは以下の通りです。

①特別清算開始の申立て
②財産目録、貸借対照表の作成・提出・報告
③資産の現金化・債務弁済
④協定案作成・申出
⑤債権者集会で協定案決議
⑥協定認可申出・協定実行
⑦特別清算終結

ここでは特別清算の流れについて詳しく解説していきます。

①特別清算開始の申立て

特別清算を行うためには、まず裁判所に特別清算の申立てを行います。裁判所に特別清算の申立てをする際には、解散時点での財産目録・損益計算書・賃借対照表・債権者名簿・株主名簿に加えて、債権者が特別清算の申立てに同意していることがわかる書類を提出します。

さらに手続き費用として、申立手数料や切手代、今後かかる費用を予め納付する現金「予納金」を納めます。しかし特別清算申立てに同意する債権者が少なかった場合は、特別清算が成立せず破産手続きに移行する可能性があります。

そのため破産手続きになった場合の予納金も併せて納付します。特別清算申立てに問題なければ、特別清算の手続きが開始します。通常清算では清算人による手続きが必要でしたが、特別清算開始の登記は裁判所が行うので、清算人がするべき手続きはありません。

②財産目録、貸借対照表の作成・提出・報告

特別清算でも通常清算と同じように、会社の財産を調査し財産目録と賃借対照表を作ります。作成した財産目録と賃借対照表を株主総会に提出して承認を受けたら、遅れることなく財産目録と貸借対照表を裁判所に提出します。

さらに債権者集会を開いて会社の財産を調査した結果・財産目録・貸借対照表の重要な部分を報告し、特別清算を実行する方針と見込みについても説明します。

債権者集会でなくても、書面交付などで債権者に上記同様の報告ができるのであれば、債権者集会を開く必要はありません。

③資産の現金化・債務弁済

財産目録と貸借対照表の作成と提出・報告が完了したら、会社の財産を現金化して債務弁済費用を捻出します。しかし特別清算においては財産処分に制限があり、100万円以上の価値がある財産を処分する場合は裁判所の許可がいります。

債務弁済は、基本的には債権者との協定に従い進めますが、たとえば少額の債券といった他の債権者を害さないものについては、裁判所が許可をすれば協定外で弁済することが可能です。

④協定案作成・申出

協定案作成・申出では、まず清算人が債権者と個別に交渉を行い、債権の変更を定めた協定案を作成していきます。

協定による権利の変更は、原則的に債権者間で平等でなければなりません。作成した協定案は裁判所に提出します。もし提出した作成案に対して問題点を指摘された場合は適切に修正します。

⑤債権者集会で協定案決議

債権者集会を開いて協定案の採決を行います。債権者集会は裁判所が指揮をとって行いますが、こちらで債権者集会の開催日時・開催場所・議案内容を予め裁判所に提出し、債権者に対し開催の通知をしなければなりません。

債権者は、以下のいずれかの方法で協定案に対するい意思表示を行います。

  • 債権者集会に出席して票を投じる
  • 書面もしくは電磁的方法で議決権を行使する
  • 委任状を元に代理人に議決権行使を委ねる

協定案が可決するには、出席した債権者の過半数が同意することと、協定案に同意する債権者の債権額合計が債権総額の3分の2以上になるという2つの条件を満たす必要があります。

⑥協定認可申出・協定実行

債権者集会を開いて協定案が可決されたら、遅れることなく裁判所に協定を許可してもらうための申立てを行います。

申立てをされた裁判所は特別清算の手続きと協定内容の合法性、協定が実行できる見込みなどを細かく確認し、問題なければ協定を許可します。協定が許可されたら、会社と債権者との間で協定が実行されます。

⑦特別清算終結

会社と債権者との間で協定内容が成立したら、裁判所に対して特別清算終結決定の申立てを行います。申立てを受けた裁判所はただちにその旨を官報に広告します。

特別清算の終結決定登記は裁判所が担当するので、清算人の手続きは必要ありません。特別清算には「和解型」と「協定型」の2種類がありますが、特別清算終結までの流れは同じです。

2つの違いとしては債権者集会を開催した際に、協定型では集会で決議した協定に沿って債務弁済を行い、和解型では会社がすべての債権者と個別で和解契約を結び、契約に沿って債務弁済を行います。

破産手続きの流れ

破産手続きの流れは以下の通りです。

①弁護士への相談・依頼、申立てに向けた準備
②破産手続開始の申立て~手続開始決定
③破産手続開始の公告、債権届出
④破産管財人との打ち合わせ、財産の引き継ぎ
⑤破産管財人による管財業務執行
⑥債権者集会での財産状況報告
⑦債権者への配当
⑧破産手続きの終結

ここでは破産手続きの流れについて詳しく解説していきます。

①弁護士への相談・依頼、申立てに向けた準備

破産手続きでは弁護士に申立代理を依頼します。弁護士に申立代理を依頼できたら一般的に、破産の事前準備・申立書の提出・事前準備や申立書提出、破産管財人や債権者集会への対応などに関するサポートを受けます。

事前準備ではまず、申立てに必要な書類を用意します。申立てに必要な書類には、破産手続きをすることになった事情・申立ての主旨・資産や負債の状況・債権者の一覧・財産目録などを記載します。

また管財人に引き継ぎするまでに財産や管財業務に必要な書類や帳簿・データを保全し、流出を防がなければなりません。さらに破産することについて従業員に説明・釈明を行い、管財業務への協力を依頼します。

裁判所に納めるべき予納金を確保したら、破産申立に関する意思決定を行います。

②破産手続開始の申立て~手続開始決定

事前準備が終わったら、準備した必要書類を持って裁判所に破産手続き開始の申立てを行い、申立手数料と裁判所に予納金を納付します。

破産手続きの予納金には、管財事務の費用で破産管財人に納付する「引継予納金」もあります。引継予納金の金額は裁判所によって異なり、負債総額や債権者数に応じて変動し約70~500万円ほどで、負債が大きい場合はそれ以上必要となります。

しかし申立代理人に弁護士がなっていて管財事務が素早く完了できそうであれば、少額管財事件扱いとなることがあり、20万円程度の引継予納金で済みます。

申立ての後は申立代理人である弁護士と裁判官とで面接が実施され、破産手続きに関する打ち合わせが行われます。少額管財事件扱いとなった場合は素早く手続きを行うため、この時点で破産管財人候補者との打ち合わせを行うこともあります。

裁判所に予納金を納付し、さらに引継予納金を支払う財力があり書類審査も問題なく通過すれば、裁判所は破産手続き開始を決定し破産管財人を選びます。破産手続きの費用を支払う財力がないと見なされると、破産手続きが開始すると同時に破産手続きは廃止します。

③破産手続開始の公告、債権届出

破産手続きが開始されると、裁判所は破産手続きを開始した事実・財産状況を報告するための債権者集会の開催日時・債権届出期間などを、官報にて公告します。

破産する会社から債権を回収したいと考える債権者は、官報に書かれた期間内に債権の届出を行います。もし債権届出期間が過ぎてしまったとしても、債権者が調査費用を支払うことで債権の届出を行えます。

破産管財人は一定の調査期間内に、債権者が提出した債権の届出内容を調査し、債権額などについての認否書を作ります。破産管財人の認否書に関して意見があれば、調査期間中であれば債権者・破産者は意義を述べられます。

異議を述べた債権者は、債権を確定するための査定を裁判所に求められます。異議が出なかった場合は債権が確定します。

④破産管財人との打ち合わせ、財産の引き継ぎ

管財業務が開始する前に、破産管財人・破産申立代理人の弁護士・破産会社の代表者の3者で打ち合わせを行い、破産手続きの事前準備の状況や管財業務の今後の見通し、引継予納金の納付方法について議論します。

打ち合わせが終わると破産管財人へ、会社の財産・帳簿・用納金・書類などが引き継がれ、管財業務が開始されます。

⑤破産管財人による管財業務執行

破産管財人は就任したらすぐに管財業務に取り掛かり、破産法第85条に応じて「善良な管理者の注意をもって」その職務を実行しなければなりません。

破産管財人は申立代理人弁護士などにサポートしてもらいながら必要な調査を行い、破産手続きが開始された時点での会社財産の価値を決定します。

その後、財産の価値の劣化を考慮しながら裁判所の許可と民事執行法などの規定に沿って、素早く財産を処分・現金化します。

⑥債権者集会での財産状況報告

破産手続を開始した時の公告に書かれた期日に債権者集会が開催され、破産手続きをすることになった理由・経緯や、会社の財産教協について、破産管財人から債権者に向けて説明を行います。

破産管財人や債権者で構成される委員会による請求、もしくは債権者集会の決議に基づいた請求があった際には、会社の取締役・監査役・執行人・清算人や清算人代理人も説明を行わなければなりません。

債権者集会では上記以外にも、決議が必要だと判断した事項が発生した場合には、破産管財人や債権者委員会などによって随時招集され、票決で採否を決めることになります。

⑦債権者への配当

会社のすべての対象財産処分が終わると、法律が定めている優先順位の通りに債権者へ配当が行われます。

しかし資産を処分したとしても破産手続きに関する費用が支払えないとわかった場合は、その時点で破産手続きは廃止され債権者に配当が行われなくなります。

⑧破産手続きの終結

債権者への配当が終わると破産管財人は任務を終了します。破産管財人の任務終了時には債権者集会を開き、最終的な計算に関する報告を行います。

債権者集会が終わると破産手続き終結の決定が裁判所から下され、破産決定についての公告と破産者について通知を行います。

廃業手続きにかかる期間

廃業手続きにかかる期間

ここでは廃業が完了するまでにかかる期間について「通常清算」「特別清算」「破産」の3つを例にして詳しく見ていきます。

通常精算にかかる期間

まず通常清算の場合は、会社を解散したらすぐに官報で公告します。官報に公告を掲載すると、2カ月間は清算結了できません。そのため通常清算が完了するまでには最低2カ月以上の期間がかかります。

特別精算にかかる期間

特別清算には「協定型」と「和解型」の2種類がありますが、協定型の特別清算が完了するまでには3カ月~3年ほどの期間がかかり、和解型では2カ月~1年ほどの期間がかかります。

破産にかかる期間

破産には「少額管財事件」「通常管財事件」「同時廃止事件」の3種類の手続き方法があり、それぞれ完了までにかかる期間が異なります。

少額管財事件

まず少額管財事件とは、債権者に一定の資産がある場合の破産手続きで、裁判所に支払う予納金が少額で済みます。少額管財事件が完了するまでには6カ月ほどの期間がかかります。

通常管財事件

次に通常管財事件とは、債権者に一定の資産がある場合の破産手続きです。通常管財事件では破産管財人が選出されるので、他の破産手続きと比べて費用が高くなります。通常管財事件が完了するまでには、6カ月〜1年程度ほどの期間がかかります。

同時廃止事件

最後に同時廃止事件とは。債務者に一定の資産がない場合に行う破産手続きのことで、破産手続きが開始すると共に破産手続きが廃止されます。同時廃止事件が完了するまでには3〜4カ月ほどの期間がかかり、最も素早く完了する手続きとなっています。

廃業に必要な書類と費用

廃業に必要な書類と費用

廃業するためにはさまざまな書類を提出しなければなりません。廃業で提出するべき書類は、個人事業主か法人か、廃業の種類によって異なります。

また廃業するには費用もかかります。廃業にかかる費用も、個人事業主か法人かによって異なります。ここでは廃業にかかる書類や費用について詳しく解説していきます。

特に費用については、いざ廃業してみると思っていたよりもお金がかかったということがないように、しっかり確認しておきましょう。

廃業に必要な書類

ここでは廃業するのに必要な書類について解説していきます。

まず個人事業主が廃業する場合は、以下のような書類が必要となります。

  • 個人事業の開業・廃業等届出書
  • 青色申告の取りやめ届出書
  • 給与支払事務所等の開設・移転・廃止の届出書
  • 事業廃止届出書
  • 所得税及び復興特別所得税の予定納税額の減額申請書

次に法人で通常清算する場合に必要な書類について見ていきます。通常解散では解散が決まって清算人登記も完了すると、以下の3種類の廃止届を廃止することになっています。

  • 事業廃止の届出を税務署と都道府県税事務所・市区町村役場へ提出する
  • 健康保険・厚生年金の適用事業所全喪届を年金事務所へ提出する
  • 雇用保険適用事業所廃止届をハローワークに提出する

最後に自己破産する際に必要な書類について見ていきます。自己破産する際に必要な書類は以下の通りです。

  • 自己破産申立書
  • 陳述書
  • 債権者一覧表
  • 住民票
  • 住所が証明できる書類
  • 給与明細
  • 源泉徴収票
  • 資産目録
  • 預金通帳の写し

廃業する際は手続き方法によって必要書類が異なります。自分が行う廃業手続きに応じて必要な書類をしっかりと確認し、漏れがないように準備しましょう。

費用の目安

ここでは廃業にかかる費用の目安について見ていきます。まず個人事業主の廃業にかかる費用についてです。個人事業主が廃業する際には税務署や所轄の都道府県税事務所などに各種書類を提出しますが、これに費用はかかりません。個人事業主であれば人によっては0円で廃業できるケースもあるでしょう。しかし個人事業主であっても、従業員の退職金制度を採用している場合は退職金を支払わなければなりません。

2019年中小企業白書による個人事業主の廃業費用は、1万円~50万円で収まっている人が37.3%、100万円以上かかっている人が36.2%となっています。

次に法人の廃業費用について見ていきます。法人の廃業では以下のような費用がかかります。

  • 解散登記する際の登録免許税が30,000円
  • 清算人の選任登記する際の登録免許税が9,000円
  • 清算結了登記する際の登録免許税が2,000円
  • 官報による公告で1行につき3,589円
  • 専門家への依頼費用に約数十万円

官報による公告費用は1行につき3,589円ですが一般的に公告は9~11行必要となるため、約32,300円~39,500円かかります。この他にも設備や仕入れの処分費用、営業所が賃貸物件であれば原状回復費用などもかかります。

廃業を回避する方法

廃業を回避する方法

会社を廃業すると会社は完全になくなってしまいます。会社が完全になくなると、これまで積み上げてきた経験も知識も無駄になりますし、一緒に働いていた従業員も職を失うことになります。

自分の知識や経験を引き継いで活かしてもらいたい場合やこれまで一緒に働いてきた従業員の雇用を守りたい場合は、廃業ではなくそれ以外の方法を考えなければなりません。

廃業を回避する方法には「会社を休眠会社にする」「M&Aを行い自社を買収・合併してもらう」の2つの方法があります。ここでは廃業を回避する2つの方法について詳しく解説していきます。

休眠会社にする

休眠会社とは長期間運営を行っていないものの、会社としての登記はされている会社のことをいいます。長期間運営しなければ勝手に休眠会社になるというわけではなく、休眠会社になるためには登録が必要です。

休眠会社の登録はまず事業の運営を止めて、税務署や都道府県・市区町村へ届出を行う必要があります。休眠会社の届出は高額な費用もかかりませんし手続きも簡単で、税金も安く抑えることができます。

会社を清算するのは手続きが面倒だと考える人や、現在事業が不調なのでチャンスが来たら事業を再開しようと考える人が休眠会社の手続きを行います。

しかし休眠会社にしたからといって現状が良くなるわけではなく、問題を先延ばしにすることになり、廃業を必ず回避できる方法とは言えません。

M&Aを行う

廃業を回避する最適な方法として考えられるのがM&Aです。M&Aとは企業の買収や合併のことを言います。昔はM&Aに対して「会社を乗っ取る」イメージが強くありました。

しかし少子高齢化が進むことで企業の後継者不足が問題になっている現代では、M&Aは後継者不足を解消してくれる心強いものとなりました。また経営状況が悪く資金が不足している会社もM&Aを行うことで、事業の立て直しが可能となるケースがあります。

廃業してしまうと会社が消滅してしまうため、これまで培ってきた知識やノウハウがすべて無駄になってしまいます。しかしM&Aを行うことで、知識やノウハウも新しい会社に引き継がれていきます。

メリットが多く感じられるM&Aですが、M&Aは必ず成功するものではありません。できるだけM&Aの成功率を上げてスムーズに進めるためには、M&Aの仲介を行う会社にサポートを依頼することをおすすめします。

M&A相談ならウィルゲートM&A

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M&Aの成功率を高めたいのであれば、M&A仲介サービスの利用がおすすめです。M&A仲介サービス会社にはさまざまな種類があるので、どこを利用するべきか悩んでしまうでしょう。

ウィルゲートM&Aでは、15,100社を超える経営者ネットワークを活用し、ベストマッチングを提案します。Web・IT領域を中心に、幅広い業種のM&Aに対応しているのがウィルゲートM&Aの強みです。M&A成立までのサポートが手厚く、条件交渉の際にもアドバイスを受けられます。

一般的にM&Aの成約までは6ヶ月〜1年ほどの期間を要しますが、ウィルゲートでは平均で4ヶ月、最短1.5ヶ月での成約実績、40億円以上での成約実績もあります。完全成功報酬型で着手金無料なので、お気軽にご相談ください。

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まとめ

まとめ

廃業すると周りへの迷惑を最小限に抑えられますし、経営者自身の精神的な負担も軽減できます。しかし廃業してしまうと、これまで積み上げてきた技術・知識・経験がすべて無駄になってしまい、非常にもったいないといえます。もし廃業したいけれど自分の技術や知識は引き継いでいきたいと考えているのであれば、M&Aによる事業継承を検討してみましょう。

M&Aにはいくつか種類があり、特徴やかかる期間と費用、メリットデメリットが異なります。自分の現在の状況や今後の希望に合ったM&Aを選んで実行できれば、廃業よりもきっと良い結果になるはずです。

とはいえM&Aは必ず成功するものではありませんので、何の準備もなくM&Aを行うと失敗してしまい、時間もお金も無駄にしてしまう可能性があります。

できるだけM&Aを成功させたいと考えるのであれば、ウィルゲートM&Aを始めとしたM&A仲介サービスの利用を検討してくださいね。

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