株式分割は企業から見ても、投資家や株主から見ても知っておくべき仕組みのひとつです。
本記事では、株式分割の概要やメリット・デメリットを詳しく解説します。また、株式分割の手順や非上場企業でも可能なのか、実例なども紹介しますのでお役立てください。
株式分割は、企業が自社で発行した株式を分割して全体数を増やすことです。
もともとあった株式をこまかくするイメージを持つとわかりやすいでしょう。例としてAさんが保有していた株式が分割された場合を見てみます。
Aさんの保有株式:1株1,000円を10株=10,000円分の価値
株式分割後の保有株式:1株500円を20株=10,000円分の価値
もともとの価値が半分に分割されているのがわかります。
しかし、全体としての価値は10,000円のままで変わっていません。株主の視点でいえば、保有株数が無償で増えて、企業の視点では1株あたりの株価が下がっています。
そのため、株式分割は「株式無償割当て」「無償交付」「無償増資」などと呼ばれることもあります。
また、一般的に整数で分割されることが多いものの、企業によっては「0.5」などの少数単位で分割することもあるでしょう。
株式分割は、もともとあった株式の数を分けて、1株の価格を下げることで成立させるものです。つまり、総額は同じのままで株式数だけを増やせます。
例を見てみましょう。
分割前の株価:1,000円
分割前の株単位:10株
分割後の株価:250円
分割後の株単位:40株
両方とも同じ10,000円分の価値ではありますが、持てる株数は4倍に変わっています。ゆえに、企業側は資本金を新たに投入する必要もなく、発行株数を増やせるのです。
株式分割は、株主総会で決議してから数値や日程を制定し、最後に登記申請をおこないます。株式分割の詳細な手順については後ほど解説しますが、ここでは、株式分割の手続きをする方法を見てみましょう。
株式分割の手続きには、登記申請が必要です。
登記申請は、法務局へ書類を持参か郵送することで完了します。必要書類を自社で用意し、記入や提出も自社でおこなうことも可能です。
ただし、知識のない状態で実施するには難しい作業のため、何度か法務局からの修正依頼が発生することもあるでしょう。
オンラインでも株式分割の登記申請は可能です。
専門のサービスでは、必要事項を入力するだけで書類が自動作成できるものも多いでしょう。入力後は、完成した書類を印刷・郵送すれば完了です。
時間や曜日を問わず作業できるため、近年ではよく活用されています。
一番利用されているのが、プロへの依頼です。
司法書士は、登記申請に必要な書類作成をすべて代行してくれます。そして、経験が豊富なプロに依頼すれば、自社に手続きの経験がなくても安心して進められるでしょう。
ただし、費用や話し合いなどの時間はかかります。費用は、数万円程度が一般的です。
ここからは、株式分割のメリットを「企業視点」「株主視点」にわけて見てみましょう。
企業視点でのメリットは4つあります。
「株式を流動化させる」とは、株価を下げることで株総数を増やし、株主や投資家が売買しやすい環境を作ることです。
たとえば、有名企業の株価が高額だと、購入するハードルが上がります。そうなると、新規株主は増えにくく、既存株主も手放すのが惜しくなり流動性が下がってしまうでしょう。
しかし株式分割すれば、売買を活発化させられます。1株あたりの価格が下がれば、株式を買いたい人も売りたい人も増えて、企業の注目度も高まるでしょう。
多くの資産家に株式を保有してもらうことで、資金調達額や時価総額も向上させられます。
資金調達は、多くの株主に出資してもらうことで成り立つものです。そのため、株式分割によって発行株数が増えれば、その分株主も増えます。
時価総額は、発行株式数と株価から計算されるものです。株式分割によって両方を増加できれば、時価総額も上がっていき、企業価値が高まるでしょう。
また、「株主が多い=多くの意見を幅広く取り入れる企業」などのイメージも与えられて、企業アピールにもなります。
株式分割で、保有資産に損失が生まれないのもメリットです。発行株式数は増えるものの、新たに資金を投入する必要がない点は大きいでしょう。
たとえば、100株を1,000株に分割しても、株価が10分の1になるだけで、全体の保有資産はそのままです。
つまり、資産を守ったまま、ほかのメリットの恩恵を受けられます。
所属する市場を移動したい場合に、株式分割が役立ちます。
各取引所には条件があり、それを満たすために株式を分割して調整することがあるのです。
たとえば、東証一部では以下の要素で判断されます。
株式分割すれば、これらの条件を満たせるケースもあるでしょう。
一方で、株主や投資家から見たメリットは2つあります。
株式分割によって、これまで高額で買えなかった株式を買えるようになるでしょう。
また、売却についても株価が下がることで売り手が見つかりやすく、売却益を伸ばせる可能性があります。つまり、株式分割で流動性が上がると、投資家の資産も増えるメリットがあるのです。
配当金や株主優待の点でも、メリットがあります。
株式分割をしても、企業は配当金が変わらないように調整するのが一般的です。その場合は、株主が持てる株式数も配当金も増えるため、資産形成につながります。
また、株式分割によってそれまで購入を控えていた企業の株を買えた場合、株主優待もそれまでより低い投資額でもらえるかもしれません。
反対に株式分割のデメリットはどうでしょうか。こちらも「企業」「株主」の視点にわけて見てみましょう。
企業視点のデメリットは2つです。
株式分割によって、株式の流動性が増すのはメリットではあるものの、反対に株価の変動が大きくなる点も考慮しなくてはなりません。
株式分割をおこなうと、短期売買目的の投資家が増えます。そうなると、急激な株価の上昇や下落が発生する可能性もあるのです。成長が見込まれる企業であれば分割後も株価は上昇していきますが、そうでない場合は変動が激しくなったあとに下落するケースもあるでしょう。
株式分割では、悪質な株主が増える可能性もあります。
株式分割では、株主を増やし資金調達ができるメリットがありました。しかしその一方で、企業の方針を理解しない株主も増えてしまうのが懸念されるのです。
株主総会では、そういった株主の意見にも耳を傾けなくてはなりません。
悪質な株主の間違った意見を取り入れて経営に悪影響が出たり、配当金や株主優待でコストがかかったりするだけで、株式分割をする前より経営状態が悪化してしまうこともあるのです。
株主や投資家視点でのデメリットは、株価が下落するリスクも生じることです。
株式分割をおこなうと、取引数が増加します。その際に、短期売買を狙うトレーダーが一気に株式を売却すると、株価が下落することもあるのです。
そのため、もし中長期トレード目当てで株式を購入するのであれば、損失するデメリットがあることも意識しておく必要があるでしょう。
株式分割の手順は、5つです。
1.株主から賛同を得る
2.定款を変更する
3.いつから株式が変わるのかを公告する
4.端数の処理
5.登記申請
まずは、株主総会で株主から分割の比率や効力が発生する日について、賛同をもらいます。
次に、発行可能な株式数の変更を定款に定め、いつから株式が変更するのかを株主に伝えます。これは基準日の公告といって、基準日の2週間前に公告をすると決められており、官報を通じておこなうものです。
公告が終わったら、株主の株数を増加させます。ただし、株式分割の比率を整数で設定していない場合には、端数を自社で処理する必要があるでしょう。処理方法としては、1株未満を会社が買い取り、その分の端数を株主に還元するのが一般的です。
そして、最後に法務局へ登記申請をおこないます。登記は、基準日から2週間以内に実施する決まりで、申請後1〜2週間で完了します。
いずれの手続きも複雑なため、専門家へ依頼してサポートしてもらうのがよいでしょう。
株式分割は、株式の流動性を高めるのがメリットです。しかし、株価によい影響をもたらす場合もあれば、悪い影響を与える場合もあります。
株式分割をすれば投資家が購入しやすくなるため、株価も上昇するでしょう。ただし、デイトレーダーなど短期売買目的の人が多く買った場合には、急激に上昇したり、下落したりすることもあります。
ゆえに、株式分割では必ずしも株価の上昇は保証されていません。株式分割後には株価が下落することもあるため、リスクもあることを知っておきましょう。
株式分割は、非上場企業でも可能です。ただし、非上場企業の手順とは異なる点があります。
上場企業の場合は、株主総会で決議を取るのが一般的です。
一方で、非上場企業はオーナーが多くの権限を持っていることもあるでしょう。あるいは、取締役会を設置しているかもしれません。
そのため、決議は株主総会ではなく、オーナー経営者の意向や取締役会でおこなわれるのが上場企業の手順とは異なる点です。
最後に、実際に株式分割をおこなった企業の事例を5つ紹介します。
1999年から、ヤフーは14回も株式分割をおこなっています。
そのため、上場時代に1株を持っていた人は、2017年の段階で約80万株にも保有株が増えており、資産も億単位になったとされています。
2020年には、Appleも1:4の分割比率で株式分割をおこなっています。
時価総額で世界1位を誇るAppleの株が購入しやすくなるとあり、当時は話題になりました。ちなみに、分割前は約473ドルだった株価が、分割時には約118ドルまで下がりました。
セブン&アイ・ホールディングスも、1979年から16回株式分割をおこなっています。
企業の特徴として、株価が1万円を超えると分割を実施することが多いようです。そのため、上場時に100株を保有していた人は、3,800株に変わっています。
また、同社はコンビニ事業以外が株価を圧迫している状態であるため、今後も株式分割がおこなわれる可能性があるでしょう。
回転寿司チェーン店の展開で知られるスシローグローバルホールディングスも、2020年に株式分割を実施しています。
1株を4株に分割し、株主優待の区分も合わせて変更されました。株主優待券は、株主への利便性が高まったため、この分割を機に購入を検討する投資家も大幅に増えたといわれています。
2022年2月には、洋菓子メーカーのモロゾフが株式分割を実施しています。
株式比率は1:2で、株主優待や株主の配当利回りも変更されました。具体的には、株主への利回りは2倍で必要資金は半額となり、さらに流動性が増すと期待されています。
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本記事では、株式分割のメリットやデメリットを中心に概要をお伝えしました。
株式分割は、企業にとっても株主にとっても魅力的な施策です。しかし、当然ながら株価が変動するリスクや悪質な株主が増える可能性もあります。また、手続きは非常に複雑で企業だけで進めるのは困難ともいえるでしょう。
そこで、株式分割をおこなわず別の方法で資金調達することも可能です。
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