のれんとは合併時に発生する金額で、会社のブランド力や顧客との関係性など、目には見えない評価を表します。
この記事では、合併時に発生するのれんの概要について、償却や減損処理、仕訳・会計処理を解説します。
のれんの会計処理や仕訳にはルールがあるので、これから会社の合併を考えている人はルールや税務上の扱いについて理解しておきましょう。
合併時に発生する「のれん」とは、事業を取得する「合併会社」が支払った対価と、事業を受け渡す「被合併会社」の時価純資産との間の差額のことです。
時価純資産とは会社を処分した場合の時価金額であり、時価純資産の金額を上回る金額がのれんとなります。のれんの金額は、買収金額に比例して大きくなっていきます。
ではなぜ「のれん」という言葉が使われるのか、その由来について見ていきます。のれんはお店に掲げる暖簾が由来していて、企業におけるブランド力など目には見えない価値を表しています。
最近では、のれんの価値に対する注目度が高まっています。目には見えない価値を表すのれんの中身がわかるように、技術・商標権・顧客との関係などの無形資産の価値評価も積極的に行われています。
のれんの処理は「日本会計基準」と「国際会計基準(IFRS)」で異なります。ここでは日本会計基準と国際会計基準(IFRS)の違いについて詳しく見ていきましょう。
まず日本会計基準では、のれんがある一定期間で規則に沿って償却されます。またのれんの収益性が下がり減損しそうになった場合には、のれんを減損するかを判定します。
日本会計基準を導入するメリットとしては、減損しそうにならない限りは規則に沿って償却されるので、実務上の負担が小さいことです。
一方でデメリットとしては、のれんが超過収益力を表していたとしても規則に沿って償却されるので、営業利益にマイナスの影響が出ることです。
次に国際会計基準(IFRS)では、のれんは償却されません。その代わりに国際会計基準においては、日本の会計基準と比較して2つの特徴があります。
日本の会計基準ではのれんは規則的に償却されることになっていますが、国際会計基準ではのれんは償却されません。償却されない代わりに、回収可能価額と帳簿価額を比較する減損テストを毎年実施しなければなりません。
国際会計基準を導入するメリットは、償却されないことから損益計算書上は利益がマイナスにならないことです。
一方でデメリットには、減損テストを毎期実施するので実務上の負担が大きくなることが挙げられます。
「被合併会社」の純資産を上回る金額で取得した際に発生するのが「のれん」です。一方で「負ののれん」は、「被合併会社」の純資産を下回る金額で取得した場合に発生します。
一般的に会社を買収する際には、将来想定される収益力に対する評価も考慮して買収金額が決まるので、買収する会社の純資産を上回る金額で取得することが多くなります。
しかし過去の業績が良くても、最近の業績が悪く将来の収益力も評価できない場合、もしくは簿外債務などがある場合には、純資産を下回り、負ののれんが発生するケースがあります。
「のれん」とは、合併を行う際に、事業継承する「合併会社」が、「被合併会社」の純資産を上回って支払う金額を指すと説明しましたが、その差額は何に対して支払われたものでしょうか?
それは、単純に帳簿価値では計れない、被合併会社の「ブランド力」や「技術力」、「人的資源」などの無形固定資産に対して「合併会社」が吸収合併によりシナジーを期待して加味した価値になります。そのため、のれんは超過収益力とも説明されます。
のれんとして計上される項目は明確に決められているものではありませんが、ここでは、一般的にのれんとはどのような項目を対象とするのかについて紹介します。
ブランド力 | 会社の知名度や社会的信頼などを有するブランド力に対する評価 |
技術力・独自性・優位性 | 会社の有する技術力やノウハウ、独自性、優位性に対する評価 |
人的資源 | 所属する従業員の質に対する評価 |
取引先・営業力 | 取引先・営業力・営業チャネルに対する評価 |
その他 | 営業所や支店、立地などに対する評価 |
企業合併には「吸収合併」と「新設合併」の2つがあります。それぞれ仕訳方法が異なりますが、実務においては、新設合併は手続きが複雑になるため、吸収合併が多く活用されています。
ここでは吸収合併における、日本会計基準を導入した場合の、のれんの会計処理について解説していきます。
まず日本会計基準ではのれんの償却を行いますが、のれんの償却は20年以内の償却期間で行います。のれんの償却は資産に計上してから20年以内の効果が及ぶ期間で、定額法やその他の合理的な方法により規則的に償却すると、企業結合に関する会計基準で定められています。
効果の及ぶ期間とは、実務上では一般的に投資の回収期間に基づいて償却期間を決めます。また合理的な方法とは、定額法で償却されることをいいます。
負ののれんは償却する必要がありませんので、一括して特別利益に計上します。
\成約例や支援の特徴・流れを紹介/
日本会計基準ではのれんは定期的に償却され、減損会計の対象となります。しかし国際会計基準(IFRS)では日本会計基準のように償却されない代わりに、毎期「減損テスト」が実施されます。
国際会計基準(IFRS)は償却されませんが、減損が生じると日本会計基準よりも期間損益に与える影響が大きくなりやすいです。
また日本会計基準ではのれんだけでなくその他の無形資産も償却されるため、時間が経つほどに簿価が減ります。
しかし国際会計基準(IFRS)では、のれんは償却されませんが無形資産は償却されます。そのため期間損益への影響から考えると、会計処理の過程で償却できる無形資産を正しく識別することは、日本会計基準よりも国際会計基準(IFRS)の方が重要だといえます。
ここでは合併時ののれんに関する留意事項について見ていきます。まず1つ目の留意事項が「のれんを配分する事業の単位」です。のれんは「資産グループ」もしくは「CGU(グループ)」に配分されます。
のれんの配分のされ方により、のれんの減損リスクも変化します。のれんの効果がどの範囲まで及ぶのかをしっかりと見極め、のれんを適切に配分することが大切です。
2つ目の留意事項は日本会計基準における、のれんの一括償却に関する規定です。日本会計基準では、のれんを相当額まで一括償却しなければならない条件が規定に書かれています。
そのため、もし規定に書かれた条件を満たす場合には、のれんの一括償却を行う必要があります。
ここでは合併時の「のれん」の税務について見ていきます。まず基本的に法人税は個別決算に対して税金が計算され税額が決まります。株式譲渡などは連結財務諸表上でのれんが計上されるため、税務上の「のれん」は無関係です。
一方で単体財務諸表でのれんが計上される合併では、税務上の「のれん」が計上されるケースがあります。
また日本会計基準では、のれんの償却期間が20年以内とされていましたが、税務上の「のれん」は5年間と決められています。負ののれんに関しては、会計上は一括利益として計上されますが、税務上は5年間で償却されます。
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今回は、合併時に発生するのれんについて解説してきました。
合併を考える機会がなかった人にとっては、そもそも「のれん」についてなかなか理解が難しい部分があったかもしれません。
しかし、これから合併を考えているのであれば、あらかじめ今回ご紹介した「のれん」についての理解を深めることで専門家に相談する際にもスムーズなやり取りができるようになるでしょう。
合併を成功するためにはさまざまな手続きが必要ですし、費用も発生します。合併に失敗してしまうと、手続きにかけてきた時間もお金も無駄になってしまいますし、合併後に期待していたシナジーも得ることができない場合もあります。
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