会社譲渡とは株式を売却することによって、第三者に会社の経営権を譲り渡すことです。M&Aでよく利用されている手法で、株式譲渡と同じ意味で使われています。
この記事では、会社譲渡の手続きやメリット・デメリット、成功させるポイントなどを詳しく解説します。
会社譲渡とは、会社を第三者に譲渡し、経営権を譲り渡すことです。具体的には会社の保有する株式を売却して、経営権を譲渡します。所有権や経営権の他にも、資産や負債などもすべて譲渡されます。会社譲渡は、中小企業のM&Aでよく利用されている手法です。一般的に、株式を他の会社に譲渡する「株式譲渡」と同じ意味で使われています。
会社譲渡は会社全体を譲渡することですが、事業譲渡は会社の事業の一部またはすべてを譲渡することです。会社譲渡は株式が売買の対象で、事業譲渡は事業が売買の対象になります。会社の中の事業全体を譲渡する方法もありますが、事業譲渡は一部の事業だけを選んで譲渡できるのが特徴。事業に関わる従業員、工場、商品、取引先などを定めて売却することが可能です。また、株式を売買するわけではないので、譲渡の対象となる事業以外は会社に残ります。
事業譲渡の買い手からのメリットは、必ずしも負債や債務を引き継がなくてもいいことです。会社譲渡は負債を含めすべてが譲渡対象ですが、事業譲渡は将来性のある事業だけを選んで譲り受けることが可能。ただし、商号を引き続き利用する場合は、受け継ぐ事業によって債務を引き継ぐ可能性があります。
事業譲渡は、手続きに時間がかかることも会社譲渡と違う点です。事業譲渡は譲渡に関わるすべての契約(従業員や取引先など)に対して、相手側の同意を得なければいけません。そのため、会社譲渡に比べて時間やコストがかかります。
会社譲渡も事業譲渡もよく利用されるM&Aの手法で、事業承継でも多く活用されています。では、会社譲渡と事業譲渡は、どのようなケースで選択したらいいでしょうか?
ファンドによる買収の場合は、会社譲渡を選んだほうがよいでしょう。買い手がPE(プライベート・エクイティ)などのファンドの場合は、買収した会社を成長させたあとに売却し利益を得ることが目的です。そのため、会社全体を維持した状態での買収が求められるので、会社譲渡が選ばれる傾向があります。
従業員が多い会社も、会社譲渡を選んだほうがよいでしょう。事業譲渡の場合、すべての従業員と新しい労働契約の手続きが必要です。従業員が多い場合はその分コストも増えるため、事業譲渡よりも会社譲渡が選ばれています。
経営破綻や負債が多い会社を買収する場合は、事業譲渡を選んだほうがよいでしょう。会社譲渡は会社全体を買収するため、債務も引き継がれます。そのため負債が多い会社を買収する場合は会社譲渡ではなく、利益が見込める事業だけを買収できる事業譲渡が選ばれています。
近年は中小企業のM&Aが増えてきています。事業承継税制や中小企業のM&Aマーケットの整備などが進んだため、M&Aによる会社譲渡も頻繁に行われるようになりました。
その背景には、中小企業の抱えている後継者不足や人手不足が影響しています。後継者や人手が不足している中小企業は多く、後継者がいないと廃業に追い込まれます。廃業を避けるため、中小企業の会社譲渡が増加しているのです。
事業承継を目的としたM&Aは、2020年に過去最多となりました。さらに、2021年はM&Aの件数が過去最多のペースで進んでいます。
近年のM&Aによる会社譲渡の件数は増加しています。それだけ会社譲渡にはメリットがあるといえるでしょう。会社譲渡を行った場合のメリットを5つ紹介します。
経営者の高齢化や人手不足などで、後継者問題が深刻化している中小企業が増えています。後継者がいなければ、廃業は避けられません。会社譲渡を行えば事業承継がスムーズに行われ、後継者問題が解決できるでしょう。
後継者のいない会社では廃業に追い込まれ、従業員も解雇されてしまいます。会社譲渡を行えば、会社は存続できるので従業員の雇用も維持できます。
会社譲渡を行うと、売り手側には売却益・譲渡益が得られます。株式を譲渡する対価として、現金で受け取ることが可能です。この利益は「創業者利益」とも呼ばれます。
会社譲渡を行うことで、売り手側は大手企業の傘下に入ります。そのため、大手企業の経営リソースを活用して会社の利益を伸ばし、発展させることも期待できるでしょう。
会社譲渡をした場合、資産や負債などすべて買い手側に引き継ぎます。そのため、会社や経営者の抱える負債や個人保証、担保も解消されます。
会社譲渡にはデメリットもあります。しかし、事前にデメリットを把握しておけば、リスクを回避できたり、デメリットに対して心構えができたりと、対策を講じることが可能です。会社譲渡を行う際に問題になりやすいデメリットを3つ紹介します。
簿外債務とは、帳簿上に記載されていない債務のことです。会社譲渡では債務も引き継ぐため、簿外債務が発覚すると買い手側がその債務を抱えることになります。また、情報漏えいにも注意が必要です。情報が漏れてしまうと、交渉が破談してしまうリスクがあります。
このしたリスクを防ぐには、売り手企業に対する事前調査(デューデリジェンス)を徹底的に行う必要があります。
会社譲渡を行った後、売り手企業の旧経営者が一定期間会社に残り経営に携わる「ロックアップ」が定められる場合があります。ロックアップは会社の事業や運営の引き継ぎのために定められており、「キーマン条項」とも呼ばれます。
会社譲渡後、今までの経営者が抜けてしまうと会社の経営がうまくできなくなり、業績に影響するケースがあります。このような買い手側のリスクを避けるためにも、ロックアップの設定は必要です。
ロックアップで定められた期間内は、旧経営者は会社を離れられません。ロックアップの期間は2~3年程度で、会社の規模などにより設定期間は変わります。期間が短すぎると引き継ぎがうまくいかず、期間が長すぎると旧経営者のモチベーションが維持できなくて効率が悪くなる可能性があります。ロックアップは、必要最低限の期間に設定するようにしましょう。
会社譲渡を行う際に、希望にあった売却先が見つからないこともあります。募集しても買い手が見つからないケースや、経営方針の違い、売却価格の交渉がうまくいかないケースもあります。廃業を避けるため、希望条件を諦めて譲渡する選択も必要になるでしょう。
会社譲渡の流れや手続きを解説します。会社譲渡の手続き前から、会社の引き継ぎまで、大まかに分けて6つの手順があります。会社譲渡をスムーズに行うために、事前にしっかり把握しておきましょう。
会社譲渡の手続きをする前に、M&A仲介会社へ相談しましょう。M&A仲介会社とは会社譲渡をはじめとした、M&A取引をサポートする会社です。会社譲渡の手続きには、税務や財務などの専門的な知識が必要です。個人だけで手続きをするのはとても難しく、失敗する危険性も高いでしょう。
そのため、会社譲渡に関する知識や経験が豊富なM&A仲介会社に依頼することをおすすめします。M&A仲介会社なら専門的な知識がなくても、安心して会社譲渡が進められるでしょう。
会社譲渡を成功させるためには、自社の価値や譲渡金額の相場を把握しておくことが重要です。自社の価値や譲渡金額の相場を把握しておかないと、相場より安い価格で会社譲渡が進んでしまう可能性があります。
自社の価値や譲渡金額などを知るためには、企業価値評価を算定します。企業価値評価とは「バリュエーション」とも呼ばれ、会社自体の価値を算定する方法です。しかし、企業価値評価を算定するには専門知識が必要ですので、自分で算定するのは難しいです。企業価値評価を算定するサービスを行っている、M&A仲介会社に依頼するのがよいでしょう。
次に、会社を譲渡する買い手企業を募集します。近年では後継者問題などで、募集しても買い手企業が見つからないケースが多くなっています。個人で買い手企業を見つけるのは困難でしょう。
M&A仲介会社は幅広いネットワークを展開しているため、自社の条件にあう企業を探し出してくれます。早めにM&A仲介会社へ相談して、買い手企業を探しましょう。
買い手企業が決定したら、会社譲渡の手続きを行います。会社が発行する株式には、譲渡制限が設定されているものがあります。株式を自由に売買できないようにする制限です。譲渡制限がある場合は、譲渡制限のない場合の会社譲渡の手続きと少し異なります。
上場会社の場合は、公開市場で自由に株式の売買ができます。非上場会社の場合は、公開市場で自由に株式の売買ができないため、売り手と買い手の当事者同士で取引を行う「相対取引」が利用されます。非上場会社の多くは、会社の乗っ取りや、会社にとって望ましくない人物へ株式が渡るのを防ぐため、譲渡制限を設けています。
譲渡制限が設定された際の会社譲渡の場合は「株式譲渡の承認請求」などの手続きが必要です。譲渡制限が設定された場合の会社譲渡の手続きの流れを詳しく紹介します。
譲渡制限が設定された株式を譲渡する場合、会社の承認が必要です。株式を譲渡する人物が会社に譲渡の承認を請求し、承認の可否を決定します。中小企業の場合、会社の経営者と株式を譲渡する人物が同じであるケースが多いです。そのため、譲渡承認請求の手続きの前に合意に至る場合があります。
会社譲渡の承認請求を行うには「株式譲渡請求書」を株式を発行している会社へ提出します。書類には、譲渡する株式の種類と株式数、譲り受ける側の氏名または名称を記載します。
譲渡承認請求の後、承認決議を行うため取締役会や株主総会を招集します。取締役設置会社であれば取締役会を、取締役会非設置会社であれば臨時株主総会を開き、承認決議を行います。取締役会では出席した取締役の過半数による決議、株主総会では普通決議によって決定されます。
臨時株主総会を招集する場合は「臨時株主総会招集通知」を開催の1週間前までに送付します。また、議事経過を記録する「臨時株主総会議事録」の作成も必要です。
取締役会や株主総会で承認決議が行われ、譲渡が承認された場合「株式譲渡承認通知書」を会社側から受け取ります。承認の決定内容は、会社から譲渡する人物に通知しなければいけません。譲渡承認請求の日から2週間以内に通知しない場合は、承認したとみなされます。
株式譲渡承認通知書を受け取った後「株式譲渡契約書」を作成して会社譲渡契約を締結します。株式譲渡契約書の項目には、次のようなものがあります。
契約書は株式の売り手と買い手の双方によって、項目に記入する必要があります。
会社譲渡契約を結んだら、株主名簿の名義書き換え請求を行います。株式名簿とは会社が作成し、管理している株主の名簿です。
会社譲渡契約を結んだだけでは会社譲渡は成立しません。株主名簿を書き換えることで、株主が誰であるかが主張できます。株主名簿は自動的に変更されるわけではないので、株主名簿の名義書き換え請求を行う必要があります。
株式の譲渡人と譲受人が連名で「株式名義書換請求書」を作成して会社へ提出。会社が株主名簿の書き換えを行います。
株式の譲受人は「株主名簿記載事項証明書」の交付を請求し株主名簿が書き換えられているか確認しましょう。証明書には株主の氏名や住所、株式の数、株式の取得日などが記載されています。この証明書により、株主であることが証明できます。証明書を発行してもらうために必要な書類は「株主名簿記載事項証明書交付請求書」で、会社へ提出します。
5つの項目がすべて終わると、譲渡制限が設定された場合の会社譲渡の手続きは完了です。
会社譲渡の手続きが終了すると、取引が成立します。このときに譲渡金額の受け渡しが行われます。取引が完了した後に、会社譲渡が実行されたことを公表しましょう。中小企業では従業員や取締役に説明し、大企業ではマスコミへ発表します。
ただし、会社譲渡が確実に決定されてから公表するようにしてください。適切なタイミングで公表しないと、従業員や取引先からの信用を失う恐れがあるので注意が必要です。
最後に会社の引き継ぎを行います。引き継ぎ作業を慎重に行わないと、従業員が辞めてしまったり、経営が失敗したりすることがあります。そうなると、買い手企業に損失を与えかねません。最後だからと手を抜かず、引き継ぎ作業を丁寧に行うよう心がけましょう。
会社譲渡価格を決める際には自社の譲渡価格がいくらになるのか、相場を把握しておきましょう。相場より安い価格で取り引きが行われるのを防ぐために、譲渡価格の相場を知っておくことは重要です。譲渡価格の基準となる企業価値を算定すると、おおよその相場がわかります。
企業価値を算定するには、大きく分けて3つの方法があります。マーケット・アプローチ、インカム・アプローチ、コスト・アプローチがあり、どれか1つの方法だけで評価するのではなく、複数の方法を用いるのが一般的です。それぞれの算定方法を解説します。
マーケット・アプローチとは、類似の会社と比較して企業価値を算定する方法です。株価などを参考に評価するので客観性の高い評価ができます。算定方法には、市場株価法と類似会社法があります。
市場株価法とは、会社譲渡の対象が上場会社の場合に用いられる方法で、同業他社の上場会社の株価を元に算定する手法です。過去1~6カ月の平均株価を元に、株式価格を算定します。市場株価法は、上場会社のみが利用できます。
非上場会社の場合は、市場株価がないため類似会社法が用いられます。類似会社法とは、会社譲渡の対象会社に類似している上場会社の株価や、財務指標などを元に算定する手法です。
インカム・アプローチとは、将来期待される利益やキャッシュフローを元に企業価値を算定する方法です。将来のキャッシュフローなどを要素に加えて計算できるので、柔軟な評価ができます。代表的な算定方法にはDCF法があります。
DCF(ディスカウンテッド・キャッシュフロー)法とは、将来に予測されるキャッシュフローから見込まれるリスクを割り引き、現在価値として算出する手法です。成長企業などを評価する場合によく利用されています。
コスト・アプローチとは、会社の純資産を元に企業価値を算定する方法です。帳簿上にある明確な基準を元に算定するため、客観性の高い評価ができます。算定方法には時価純資産法や、簿価純資産法などがあります。
時価純資産法とは、資産の時価から負債の時価を引いて企業価値を算定する方法です。中小企業のM&Aでよく利用されています。
簿価純資産法とは、帳簿上の純資産を企業価値として算定する方法です。
会社譲渡を行う場合には、さまざまな費用が発生します。主な費用はM&A仲介会社への手数料や、会社譲渡にかかる税金などです。会社譲渡を行う前に、費用がどのくらいかかるか把握してきましょう。
相談料は、M&A仲介会社に会社譲渡の相談をしたときにかかる費用です。多くのM&A仲介会社では、相談料を無料に設定しています。相談料がかかるところもあるので、事前に相談料の有無を確認しておくとよいでしょう。
着手金とは、M&A仲介業者へ正式に依頼した際に支払う費用です。着手金は会社の規模などによって算出されます。特に相場の基準はありませんが、数十万円から数百万円かかる場合もあります。会社譲渡が成立しなくても、着手金は返金されません。着手金が無料のM&A仲介会社もあります。
中間金は、基本合意が成立した際にM&A仲介会社に支払う費用です。基本合意とは、売り手側と買い手側の両方が会社譲渡に合意したことです。中間金は、合意まで交渉を進めたM&A仲介会社に対する成功報酬の意味があります。相場は成功報酬の10~30%程度です。
基本合意が成立しても、会社譲渡が成立したわけではありません。合意した後に破談するケースもあります。しかし、破談になっても中間金は返金されません。中間金が無料のM&A仲介会社もあるので、事前に確認しておくとよいでしょう。
また、中間金は、定額制やパーセンテージ制で取るところや無料のところもあるため、事前に確認しておくとよいでしょう。
成功報酬は、会社譲渡が成立した際にM&A仲介会社に支払う費用です。成功報酬の費用は一般的に「レーマン方式」と呼ばれる計算方法で算出します。レーマン方式は、譲渡価格によって手数料率が変わります。
レーマン方式による手数料率は次のとおりです。
譲渡企業の時価総資産額 | 料率 |
---|---|
5億円以下の部分 | 5% |
5億円超 10億円以下の部分 | 4% |
10億円超 50億円以下の部分 | 3% |
50億円超 100億円以下の部分 | 2% |
100億円超の部分 | 1% |
上記のとおり、売却価格が大きくなるにつれて、料率が下がっていきます。
つぎにレーマン方式の具体的な計算例を紹介します。
譲渡価格が1億円の場合
1億円×5%(5億円以下の部分)=500万円
譲渡価格が15億円の場合
これをすべて足した、6,000万円が成功報酬になります。
成功報酬は会社譲渡が成立した場合に発生しますが、成立しなかった場合は支払う必要はありません。
※上記はあくまでM&Aにおける手数料の参考数値になります。
実際に支払う手数料は、成功報酬に最低保証額を設けていたり、レーマン方式の計算テーブルにアレンジを加えていたりして、各M&A仲介会社ごとに異なるため、注意しましょう。
会社譲渡側が個人の場合は、譲渡所得税がかかります。株式を売却して得た金額から手続きにかかった費用を差し引き、利益が出た場合に課税されるのが譲渡所得です。譲渡所得税は、譲渡所得に所得税15.315%(所得税15%+復興特別所得税0.315%)に住民税5%を足した20.315%が課税されます。
譲渡所得税の計算方法は次のとおりです。
譲渡所得税=譲渡価格-必要経費(取得費用+仲介手数料など)×20.315%
譲渡所得税の計算例を紹介します。
譲渡価格が1,000万円、必要経費が200万円の場合
1,000万円-200万円×20.315%=162万5,200円
会社譲渡側が法人の場合は、法人税がかかります。譲渡で得た利益が課税対象になり、法人税の計算式は次のとおりです。
法人税=譲渡益×法人税率(29~42%)
会社譲渡は株式が買い手側に移るので、売り手側の株主は立場を失います。では、代表者や社員たちの処遇はどうなるのでしょうか?会社譲渡した後の処遇がどう変わるのか見ていきましょう。
会社譲渡を行うと、経営権は買い手企業に移ります。今までの代表取締役は退任し、買い手企業から新しく代表取締役や役員などが就任するケースが多いようです。会社譲渡が完了すると代表者は退任する場合もありますが、次の2通りの処遇になる場合もあります。
①代表権のない会長や相談役、顧問などの役職で一定期間会社にとどまり、引き継ぎ作業を行う。引き継ぎが終わった後に退任する。
②買い手が大手企業でその傘下に入った後、代表者の地位にとどまり、経営資源を活用し手腕を発揮する。
代表者の処遇をどうするかは、会社譲渡を進める中で話し合って決めます。一定期間会社にとどまり、引き継ぎが完了してから退任するパターンが多く選ばれているようです。
会社譲渡によりすべての資産や負債は買い手企業に引き継がれます。中小企業の場合、オーナー社長が会社の借入金などの債務を個人保証している場合が多く、また個人資産を借入金の担保にしているケースがよくあります。経営権が第三者によって移動する場合は、オーナー社長が抱える借入金の連帯保証や個人資産の担保提供、個人保証は解除されます。
社員や従業員は全員、買い手側企業に引き継がれます。処遇や給与などもこれまでと同じ条件となるケースがほとんどです。退職金についても変わりません。会社譲渡のすぐ後に、大幅なリストラや給与の引き下げなどが起こるケースもほぼないので、社員や従業員は基本的に今まで通りです。
取引先とも今まで通り関係は引き継がれます。契約の更新手続きを行う必要もありません。オーナー社長との信頼関係で仕事が成立している取引先も多いため、引き継ぎなどはしっかり行いましょう。
会社名は変わらず、そのまま継続するケースがほとんどです。社員や取引先が困惑しないように、また取引がスムーズに行えるようにするには、会社名を変えないほうが効果的と考えられます。
大手企業の傘下に入った場合は、グループ企業であることがわかる会社名にしたほうが、会社の発展に繋がる場合があります。会社名をどうするかは、M&Aの契約時に検討しておきましょう。決定権は買い手企業にありますが、売り手側から希望を伝えることも可能です。
会社譲渡を成功させる5つのポイントを紹介します。会社譲渡を行う前の事前準備、手続きを進めている際の条件交渉など、会社譲渡を成功させるために知っておきたいポイントを見ていきましょう。
始めに、会社譲渡の意思をしっかりと固めるのが重要です。どういう目的で会社譲渡するのか、譲渡の条件はどうしたいのか、あらかじめ決まっていないと買い手企業は検討しにくいため、候補がなかなか見つかりません。まずは、会社譲渡の意思や譲渡条件を十分に考える必要があります。
会社譲渡の意思がまとまったら、早めにM&A仲介会社へ相談しましょう。よい条件で買い手企業の候補を見つけるには、タイミングが重要です。
M&Aは経済動向などに影響されやすいため、業界の動向によって買い手先が見つからない、悪い条件で交渉が進んでしまうなどの可能性があります。決断が遅くなると、買い手先を見つけるタイミングを逃してしまいます。ベストタイミングを逃さないために、M&A仲介会社へ早めに相談しておくとよいでしょう。
売り手側は自社の実態を正確に把握しておく必要があります。会社譲渡の際には、買い手側から会社についてさまざまな質問を受けることが予想されます。部門別の売上や利益、採算性、技術、従業員・社員の状況など、多くの回答が求められますので、説明できるように自社への理解を深めておきましょう。
またマイナス面を隠さずに説明しておくことも大切です。交渉を進める中で、買い手側が売り手側の調査を行うため、マイナス面を含めた会社の実態が把握されます。マイナス面を隠しておくと後で心証が悪くなりますので、すべて開示しましょう。
さらに、会社譲渡を成功させるためには他にはない強みや長所を明確にし、アピールすることも重要です。他社とは違うアピールポイントがあると、買い手先がスムーズに見つかるでしょう。
デューデリジェンスとは、買い手側が売り手側に対して行う調査のことです。調査は売り手企業の価値や、リスクなどを確認するために行われます。
デューデリジェンスは売り手側から提供された資料や情報を元に、多方面から調査を行います。調査により、売り手側も把握していなかった簿外債務が発覚するケースもあるため、デューデリジェンスは徹底しましょう。
デューデリジェンスには事業、財務、法務、税務、不動産などさまざまな種類があります。すべての種類を実施するわけではなく、買い手企業に必要な調査を実施します。調査には専門性が求められるため、弁護士や公認会計士などの各分野に精通した専門家に依頼しましょう。
自社の譲渡価格の相場を把握するため、企業価値評価を実施しましょう。適正な価格を把握していないと、相場より低い価格で交渉が進むおそれがあります。過小評価されるのを防ぐためにも、企業価値評価は重要な役割があります。
会社譲渡を成功させるには、M&Aの専門家へ相談することをおすすめします。会社譲渡を行うには買い手の募集や、会社譲渡に関するさまざまな手続きが必要です。これらの手続きなどは専門的な知識が不可欠ですので、個人だけで行うのは難しいでしょう。M&Aに関する知識や経験が豊富な専門家へ依頼すれば、企業価値評価やデューデリジェンスなどもすべて任せられます。
近年実施された、会社譲渡(株式譲渡)の成功事例を5件紹介します。
2017年9月、DDTが全株式をサイバーエージェントに譲り渡し、会社譲渡が成立しています。会社譲渡により、DDTはサイバーエージェントの完全子会社になりました。
DDTは、特徴的な「路上プロレス」などを開催し、魅力的なレスラーが所属するプロレス団体です。サイバーエージェントは、メディア事業やゲーム事業などを展開し、インターネットテレビ局の「AbemaTV」の運営も手掛けています。
売り手側のDDTは、10代から20代の視聴者が多いAbemaTVでプロレスを配信することで、若い世代や女性のファンを獲得するのが目的です。買い手側のサイバーエージェントは、AbemaTVでも人気があるプロレスを幅広い世代に伝えてさらなる発展を目指す目的があり、DDTとのシナジー効果を見込んでいます。
2018年10月、東洋造機が全株式をヨネックスに譲り渡し、会社譲渡が成立しています。会社譲渡により、東洋造機はヨネックスの完全子会社になりました。
東洋造機は、テニスやバドミントンのガット張り機を製造している会社です。ヨネックスはテニスやバドミントンのラケットを中心に、スポーツ用品の製造・販売を手掛けています。
買い手側のヨネックスは、双方の持つ技術力を活かして製品開発を高めることで、世界一のラケット製造を目指す目的があります。またスポーツ用品全体の販売拡大も狙いです。
2021年6月、プロトメディカルケアが全株式をベネッセホールディングスへ譲り渡し、会社譲渡が成立しています。会社譲渡によりプロトメディカルケアは、ベネッセホールディングスの完全子会社となりました。
プロトメディカルケアは、介護や医療に関する情報サービス事業や人材派遣事業、福祉用品レンタル事業などを手掛けています。ベネッセホールディングスは、教育事業や介護事業などを手掛けるグループ会社の持株会社です。
買い手側のベネッセホールディングスの目的は、介護領域の事業拡大です。プロトメディカルケアを子会社にすることで、介護業界のリーディングカンパニーとして介護事業の拡大スピードを高める狙いがあります。
2021年6月、GENIC LABが全株式をガイアックスに譲り渡し、会社譲渡が成立しています。会社譲渡により、GENIC LABはガイアックスの完全子会社になりました。
GENIC LABは、インスタグラマーによる撮影サービスを中心に、SNSコンサルティングなどを展開している会社です。ガイアックスは、ソーシャルメディアサービス事業や、シェアリングエコノミー事業などを展開しています。
売り手側のGENIC LABは会社譲渡することで、誠実なソリューションの提供を目指し、経営強化を図るのが目的です。買い手側のガイアックスは、GENIC LABの持つクリエイティブ制作を高く評価していており、子会社にすることで、双方のシナジー効果によるSNSマーケティングの事業拡大を見込んでいます。
2021年11月、ルナパス合同会社が全株式をトランスジェニックに譲り渡し、会社譲渡が成立しています。会社譲渡により、ルナパス合同会社はトランスジェニックの完全子会社になりました。
ルナパス合同会社は、病理ピアレビューサービスなどを行う会社です。トランスジェニックは創薬支援事業や投資・コンサルティング事業を手掛けるグループ会社の持株会社で、双方とも同じ医療業界です。
買い手側のトランスジェニックの目的は、創薬支援サービスを補いさらに強化するためです。専門性が高い病理ピアレビューを行うルナパス合同会社を子会社にすることで、創薬支援事業のブランド力の向上、医薬品開発の試験データの質や信頼性を維持できることを見込んでいます。
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会社譲渡は株式を第三者に売却し、会社の経営権を譲り渡すことです。近年では中小企業の後継者問題が深刻化しているため、事業承継を目的とした会社譲渡が増えています。会社譲渡後は今までの従業員や社員はそのまま引き継がれ、また会社の発展が期待できるメリットもあります。しかしデメリットもあるので、注意しながら交渉を進めましょう。
会社譲渡に関する手続きは素人には難しく、専門的な知識が必要です。買い手先を募集しても、条件に合う企業はなかなか見つからないでしょう。買い手の候補先を見つけるにはタイミングも大切なので、会社譲渡を決めたら早く行動することが重要です。
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