自社を売却したい、または他社をM&Aによって吸収し事業規模を拡大したいと考えるとき、もっとも重要な基準の1つが買収価格でしょう。
今回は会社買収・M&Aにおける価格算定方法と相場について詳しく解説します。
会社買収とは、M&Aを希望する買い手の会社が相手の会社が発行している株式を過半数以上買い取ることです。買収された会社自体がなくなるわけではなく、買い取った会社側の子会社やグループ会社という位置づけになります。
広い意味ではM&Aと同意味ですが、M&Aには買収以外に合併も含まれますので、細かく見ていくとM&Aと会社買収には少し違いがあります。今回は会社買収とM&Aを同意味としてみていきましょう。
会社買収価格の相場を調べる前に、まずは日本のM&A市場に関する基礎知識と最近の動向を頭に入れておきましょう。
日本のM&Aの記録で現存するもっとも古いものは1985年の記録です。当時は1年間で約260件の取引が行われました。そこから徐々に増えてきたM&A件数は、2000年代に急増します。
2008年以降はリーマンショックの影響で一時M&A需要が落ち込みますが、海外の会社が日本会社を買収(Out-In)・またはその逆のパターン(In-Out)が増えたことから、2010年代以降さらにその数は増えてきました。現在は年間約3,000件前後の取引が行われています。
M&A取引の総額でみると、1999年以来5兆円から15兆円規模で変動してきました。2018年に約30兆円を達成しましたが一時的なことで、大型案件が多かったことがその理由でした。その後もM&Aの件数自体は増加傾向にありますが、総額はあまり変動していません。大型案件よりは小規模の案件が増加したことがその原因だといわれています。
2019年までは8年連続で増加傾向にあったM&A件数ですが、コロナウイルス感染症の全世界的流行に打撃を受け、2020年には若干の減少傾向を見せました。国内企業間のM&Aはコロナ禍の影響が少なかった半面、コロナ禍の影響が海外企業と日本企業間のM&Aを直撃し、その数が減少したことが原因でした。
しかしわずか1年で、日本企業に関するM&A件数は増加傾向へと転じました。2021年のM&A件数は4,280件で、過去最多水準です。同年のM&A取引の総額は約16兆円でした。コロナワクチンや治療薬の開発、そして近年高まっている健康需要から医薬品関連会社の動きが活発になったことがその一因だといわれています。また、コロナ化で需要が落ち込んでいた旅行・観光業界も生き残る戦略としてM&Aに踏み出すことが多くなりました。ほかにも調剤薬局業界や運送業界の動きも目立ちました。
2021年に行われたM&Aの代表的な事例を2つご紹介します。
2021年の医薬品関係M&Aでもっとも規模が大きかったのは、帝人が武田薬品工業から2型糖尿病治療薬4種類の製造販売権限を買収した件でした。取引額は約1,300億円と大規模のM&Aです。
糖尿病治療薬は過去武田薬品工業における重要事業でしたが、最近はその重要性が落ちていること、また2019年に武田薬品がシャイアー社を買収したことによる負債の負担を減らすことがこのM&Aの目的だったと見られています。
帝人側は認知度ある治療薬を自社製品に取り入れることで、代謝・循環器疾患関連医薬品における事業強化を図っていたため、今回のM&Aが成立しました。
宿泊業のみならず、レジャーや不動産、運輸など幅広く事業を展開している近鉄グループホールディングスが、アメリカの大手投資ファンドであるブラックストーン社に事業の一部を売却しました。都ホテル京都八条、ホテル近鉄ユニバーサル・シティを含め全8物件を売却しており、取引総額は約600億円に上ります。M&Aは2021年10月に成立しました。
新型コロナウイルスの流行で宿泊業に大きく打撃を受けた近鉄グループは事業再編を通じた成長戦略に踏み切ることになりました。一部のホテル資産を現金化することにより、コスト削減を図り、投資ファンドと手を組みホテル事業を黒字へと転換させる狙いを持っています。売却後のホテル運営は近鉄グループに委託されます。
コロナ禍の影響でインバウンドは激減していますが、その分日本国内の宿泊需要が増えている状況を受け、コロナ禍脱却後はインバウンド需要も戻り、業績が大きく伸びることを期待していると見られます。
中小規模の企業において、後継者問題を解決するためのM&Aは近年増加傾向を見せてきました。経営者の高齢化は今ピークを迎えているといわれているので、2022年も引き続き事業継承型のM&Aが活発に行われる見込みです。
また、東南アジアの経済成長に伴い、東南アジア企業のM&Aもその数が増えています。今後も東南アジア市場はさたなる成長が予想されるため、日本企業のM&A先として、東南アジアの企業という選択肢が加わるでしょう。
市場状況を総合すると、2022年以降も日本企業に関するM&A件数や規模は増加傾向を見せると予想されます。
「相場」という言葉を聞くと、M&Aを管理する機関などでしるしとなる基準価格を決めているように連想しがちですが、実際はそういったものはありません。会社買収における価格はあくまでも買い手と売り手の交渉によって決定します。
ここでは会社買収市場における相場の定義とそれを決める要素、そして相場を計算することがなぜ重要なのかについて説明していきます。
会社買収市場で相場は、取引を行うための基準額です。相場の計算にはさまざまな要素が働くため、同じ会社の相場でも状況や時期によって変動します。M&A仲介会社で相場を計算する時に用いられる基本的な計算式は下記のとおりです。
時価純資産+営業利益×2~5年分
つまり、現在時点の純資産が5,000万円の会社が、1年に500万円の営業利益を出しているとすると、5,000万円+500万円×3年=6,500万円がその企業の相場になります。
他にも相場の計算にはいろいろな方式があり、それぞれ基準とする価値が異なります。詳しくは「会社の売買価格(企業価値)の算定方法」で説明します。
相場を決める要素には、大きく下記の4つがあります。
上場されている企業は情報開示の義務があるため、公開されている財務諸表を確認すると、誰でもかんたんにその会社の純資産がわかります。貸借対照表の記載されている簿価をそのまま計算に使用するケースと、簿価を時価に直して計算するケースがあります。
売り手の会社や買い手が買収を希望する事業が、将来的にどれほどの収益性を持っているかも相場を決める基準です。過去の営業利益をもとに計算し、会社買収後に見込まれる利益を「のれん代」ともいいます。多くの場合は、過去3年間の営業利益の平均から計算したのれん代を相場に含めて計算します。
売り手の会社が所属している業界での企業価値も相場の基準になります。主に売り手会社の競合他社の営業成績や株式相場との比較で計算されます。
言葉のとおり目には見えない資産で、優秀な従業員・長年のノウハウ・信用できる取引先などがこちらに当てはまります。これらの資産は数値化できない場合もありますが、他社と異なる売り手会社だけの強みであることが多いです。買い手によってはこれらの無形資産を高く評価し、交渉時に相場より高い金額を提示することもあります。
会社買収の金額は結局交渉により決まると述べましたが、まず相場を計算しておかないと、そもそも交渉する判断材料がないため、交渉が不可能でしょう。
また、相場を知っておくことで売り手も買い手も適正価格で取引することが可能となり、どちらかが損をする可能性を下げてくれます。
会社買収の価格を決めるプロセスは多岐にわたりますが、かんたんにまとめると下記の3段階です。
会社の価値を算出する方法には複数の方式があると述べましたが、代表的にはコストアプローチ、インカムアプローチ、マーケットアプローチがあります。これらの方式はそれぞれ基準とする価値が異なるため、より適正な相場を計算するためには、2つ以上の方式を用い、比較の上で相場を計算する必要があります。
適正な相場を計算には複数の要素が働くため、M&A経験のない会社が単独で計算を行うことは困難でしょう。多くの場合、M&A仲介会社や公認会計士などの専門家に依頼して会社買収の相場を計算します。
会社買収価格を計算する3つの方式については次項で詳しく説明します。
こちらは主に買い手の方に求められるステップです。売り手会社が提示する相場をそのまま受け入れるのではなく、買い手の方でも相手会社を調べる必要があります。相手会社の財務状況や人事、法務システムなどを事前に調べることを「デューデリジェンス」といいます。デューデリジェンスで調べた情報が交渉の材料となるので、重要なステップです。
ご参考までですが、入札で複数会社と買収の交渉をするときなど、売り手側もデューデリジェンスを行うことがあります。
M&Aスキームといわれる会社買収の形態を決めることも重要です。会社買収には株式売買を通じて行われる株式譲渡や株式交換など、さまざまな形態がありますが、それぞれ税金などの影響でかかる費用が変わってくるためです。
全段階で調査した情報をもとに、買い手と売り手間の最終交渉を行います。交渉方法には個別交渉方式とオークション方式があります。詳細は「会社買収の価格交渉方法」で説明します。
会社の買収価格を決める要素には純資産や将来の利益、市場価値などがあると述べました。これらの要素を基準にそれぞれコストアプローチ、インカムアプローチ、マーケットアプローチと呼ばれる企業価値の計算方式があります。それぞれの方式にはメリットもデメリットも存在するので、それらを補うために複数の算定方法を交えて比較の上で企業価値を計算することが一般的です。
ここではそれぞれの計算方式の特徴やメリット・デメリットについて詳しく説明します。
コストアプローチとは、企業の純資産を基準に企業価値を計算する方法です。貸借対照表に明記されている簿価の純資産をそのまま計算に用いるケースもありますが、純資産の時価評価額を使用することがより一般的です。主に中小規模の企業のM&A時に使用されることが多い計算方法です。
コストアプローチの手法をまとめると、下記の3つです。
貸借対照表上の簿価をそのまま基準にして企業価値を計算する方法です。台帳上の数字をそのまま使うので、企業に対する評価や分析はほぼ省略されます。純資産は資産から負債を差し引くだけでかんたんに計算できます。
簿価の純資産が時価とあまりにもかけ離れている場合、適正な企業価値の算出が難しいというデメリットがあり、実際の会社買収にはあまり使われない方法です。簿価と時価にあまり差がない場合や、時価の計算に費用をかけられない場合など、限定的に使われます。
簿価の純資産を時価評価額に変換して企業価値を計算する方法です。資産の時価から負債の時価を引く方法で計算します。
実際はすべての資産に対して時価計算を行うことは難しく、有価証券や土地、不動産などの一部が時価計算の対象になるため、修正簿価純資産法とも呼ばれます。評価日を基準とした正確な時価の算出が難しい場合は直近の四半期決算時の時価を使用する場合もあります。
簿価純資産法より適正な企業価値計算ができる利点があります。
上記でも説明していますが、のれん代は会社買収後に見込まれる利益のことで、会社の「1年間の利益額×継続見込み年数(1~5年)」で計算します。事業の将来性があるほど、継続見込み年数も長くなります。
コストアプローチは事業の将来性を反映しにくいというデメリットがありますが、この時価純資産+のれん代方式を使用すると、そのデメリットを補えます。
コストアプローチの一番のメリットは、計算された企業価値が客観的で信頼性が高いことです。純資産という明確な数字が基準ですので、計算する人によって誤差が生じる可能性も少ないです。
このように客観性の高い数字を持ってM&A交渉に臨むことで、売り手も買い手も納得できる結果を導きやすくなるでしょう。
そして貸借対照表以外の財務指標を追加で調べることが求められないため、比較的にコストも安く抑えられます。ほかの計算方法に比べて、計算がかんたんなこともメリットです。特に企業価値算出に大きく資金を出せない小中規模の事業主によく使われる計算方法です。
コストアプローチでよくいわれるデメリットは、会社買収後の事業の将来性が反映されにくいことです。すべての資産を処分して負債をなくす清算に近い考え方であるためです。会社がM&Aによって合併されるケースでなく、M&A後の継続される形なら、ベストな計算法とはいえないでしょう。
特に簿価純資産法で計算したときは、不動産など変動しやすい会社の資産価値が大幅に上がっていたとしても、簿価に反映されていないと大きく損をする可能性もあります。企業価値を計算する際は企業の将来性もあわせて評価すべきという考え方が一般的ですので、簿価純資産をそのまま計算に用いるケースは少ないです。そして時価純資産法+のれん代方式を使うことで、コストアプローチが持っている弱点を補うこともできるでしょう。
インカムアプローチは企業価値の計算方法の中でももっとも一般的に使われる計算法です。企業が現在稼いでいる収入をもとに計算する方法で、キャッシュフローや利益などの指標を使います。
キャッシュフローとは文字どおり現金の流れを言い、収入から支出を差し引いて計算します。キャッシュフローを計算するため、インカムアプローチでは損益計算書やキャッシュフロー計算書が使われます。
インカムアプローチには下記の3つの種類があります。
DCF法はディスカウンテッド・キャッシュフロー法の略で、将来予想されるフリーキャッシュフロー(会社が自由に運用できる現金)から現在の価値を差し引いて企業価値を計算する方法です。企業の運営目的の一つは、事業などに投資した金額より多くの現金を回収することにありますので、合理的な計算法とされており、インカムアプローチの中でももっともポピュラーな計算法です。
まず、フリーキャッシュフローは以下の計算式で算出します。DCF法ではまず将来約5年分のフリーキャッシュフローを計算します。
税引後営業利益+減価償却費-設備投資-運転資金増加額
DCF法の計算式をかんたんに表すと、下記のとおりです。
フリーキャッシュフロー÷割引率
ここで使う割引率は、一般的に加重平均資本コストという指数を使用します。資本コストは企業が資金調達をする際に発生した費用のことで、加重平均資金コストは株主資本の総額に負債の総額を足して計算します。
将来予想される収益を基準に、それを時価に換算して企業価値を計算する方法です。営業利益の平均値で将来の利益を固定値で決めたうえで、それを資本還元率で割り引きます。DCF法に比べると計算がかんたんで、試算などで使われることがあります。しかし利益は毎年同じではないので、正確度が落ちるという弱点があります。
将来予定される配当金を基準に計算する方法です。配当金は会社によって異なり、また実際の利益によって大きく変動するので、正確な計算が難しいとされます。
収益還元法と配当還元法は、DCF法に比べると現実が反映されにくく、合理性に欠けるとされているため、あまり多くは使われていません。
インカムアプローチの最大のメリットは、会社の将来性を反映した企業価値を計算できることです。フリーキャッシュフローを計算する際、将来の事業計画なども加味されるので、過去の業績や現在の業績が少し落ちていたとしても、将来収益が見込まれる会社なら高い評価額が付く可能性があります。駆け出しのベンチャー企業などに有利な計算法ともいえます。
また、売り手と買い手のM&Aによってさらに事業の収益性が増加すると見込まれるケースもそれが企業価値として加算されます。
現在の数字だけでは一目で把握できない事業の将来性、そして売り手と買い手間のシナジーまで企業価値計算に反映されることがインカムアプローチの魅力でしょう。
インカムアプローチは事業の将来性を反映しているというメリットがある反面、事業計画をベースにしているため、まだ実現するかどうかわからない部分を企業価値として算出するというリスクを持っています。
事業計画を甘く設定している場合、見込まれていた収益を達成できず、最終的に企業価値が下がる恐れがあります。また、逆に厳しすぎる事業計画をもとにすると、会社買収のために計算する企業価値が低く設定される可能性もあります。
そして、インカムアプローチの計算に用いられる指数があまりにも多く、計算が非常に複雑であることもデメリットです。各指数に関係する専門家の力を要するので、ほかの計算方式に比べると算出までのコストも多く掛かるでしょう。
マーケットアプローチとは、売り手企業を市場取引の観点から評価する方法です。類似する企業や過去の類似したM&A事例など、評価対象を基準にして係数を算出し、売り手企業の決算書上の数字とかけて計算します。
マーケットアプローチは大きく分けて上場されている類似企業との比較を行う類似会社比較法と、売り手の株価を市場価格または過去の類似した取引案件を基準に算出する市場株価法があります。
売り手企業と同業界にあり、上場されている企業を選定し、類似会社の財務状況を基準に売り手企業の企業価値を計算する方法です。類似企業の純資産や利益、EBITDAなどの財務指標から倍数(マルチプル)を算出して計算するので、「マルチプル法」と呼ばれることもあります。
DCF法に比べて客観性があるといわれていますが、類似企業の財務指数が適正かを見極めないと、正しい企業価値の計算が難しい場合があります。
さらに細かく分けていくとEBITDA法、PBR法、PER法があり、これらは使用する倍数による区分です。
売り手企業と比較を行う類似企業どちらも上場企業である場合のみ使用できる計算方式です。直近1~6カ月の平均株価を計算し、比較を行います。市場価値によって決められた株価を基準とするので、客観性が高いといえます。
しかし、企業買収に伴うシナジー効果や事業の将来性などは反映されにくい弱点も持っています。
マーケットアプローチは市場の需要などから評価された株価をメインに、EBITDAなどの公表された指数を用いて計算を行う方式ですので、客観性に優れていることが何よりもメリットです。
また、株価は市場価値が反映されている指数でもありますので、対象企業が置かれた市場の状況を価値計算に織り込みやすこともマーケットアプローチの利点だといえます。
市場価格としての株価は主に少数株主のためのものであり、通常時に少数の株式を取引する際に使う指標です。しかし、実際会社買収における株価とはかけ離れていることがマーケットアプローチの弱点です。
会社買収を通じて経営権を移すためには、発行されている株式のうち、半数以上を買い占める必要があります。多くの場合、そこまで多くの株式を一度に購入するためには市場価格より上乗せされた金額を支払いことが一般的です。この市場価値にさらに上乗せされた部分を「コントロール・プレミアム」と呼びます。通常、コントロール・プレミアムは市場株価の20~40%です。
また、株式市場はさまざまな要因で変動が激しいことも不安要素です。対象企業の風評被害やインサイダー取引などの直接的な要因もあり得ますが、世界情勢の変化や物価の上昇など、株式市場自体を変動させる要因にも各株価は大きく影響を受けるので注意が必要です。
会社買収の最終価格を決める交渉法には個別交渉方式とオークション方式があります。それぞれの特徴や注意点についてみていきましょう。
個別交渉方式は相対方式とも呼び、売り手と買い手が1対1で取引内容を交渉する方法です。売り手は事前に複数ある候補から自社の条件に合う1社のみを選定するわけですので、お互いの条件が一致すれば交渉成立まで短期間でプロセスが進むという利点があります。
しかし、売り手と買い手はまったく異なる目的でM&Aに臨んでいます。売り手はできるだけ高く自社を売却したいでしょうし、買い手はできるだけ安い値で相手会社を買収したいでしょう。そのため、交渉がずれ込み、挙句の果てには決裂してしまうこともあります。
個別交渉方式を取るときは、売り手と買い手の間で中立的な役割を担ってくれる仲介会社などを介した方が、交渉がスムーズに進む可能性を高めます。
オークション方式とは、売り手が会社買収の相手を探すために入札に参加し、複数の買い手会社と交渉を行うことを言います。複数の中でもっともいい条件を提示した会社と会社買収の契約を結ぶことが多く、入札方式、またはコンペ・ビット方式とも呼びます。
オークション方式では買い手の間で競争心理が働くため、売り手側としては高い買収価格で交渉が成立する可能性が高いという利点があります。しかし、複数の会社が売り手の会社価値試算や交渉を同時に行うので、個別交渉方式に比べると長い時間がかかることがデメリットです。
自社だけの優れた技術や高い収益性を持っている会社など、複数の買い手からの需要がある企業ならとても有利な交渉方式ですが、あまり一般的ではありません。
売り手側からすると、現在の企業価値を最大限に認めてくれる買い手への買収を望むでしょう。また、そのときの対価はできるだけ相場より高値を希望するはずです。
相場より高い金額でM&Aを実現するためにはいろいろな方法がありますが、代表的な方法を3つまとめてみました。自社の売却を検討している方など、売り手側の心得として参考にしてください。
いくら将来性がある事業でも、現在の業績が落ち込んでいると高い企業価値評価を受けることは難しいでしょう。当然業績がいいほど高い金額で会社買収が成立します。
売り手側はまず自社の直近数年の営業利益などを検討すべきでしょう。そして将来の事業計画や見込まれる利益を見据えて、会社売却のタイミングを逃さないことが大事です。業績が落ち込んでいる時に急いでM&Aの交渉に出ると、買い手から不利な条件を提示されてしまう可能性もあります。
M&Aの準備はあくまでも慎重に、中長期的な目線を持って臨みましょう。
自社がどれほどの強みや魅力を持っていても、買い手にうまくプレゼンテーションできないと、なかなか相手に伝えられません。特に数値では表現しにくい無形資産をアピールしたいときこそ、うまい見せ方を工夫すべきです。
相手にうまくアピールするためには、相手のM&A目的も把握しておいた方がいいでしょう。自社が持っている強みの中でも特に相手に求められる特徴を集中的にアピールすることで、企業価値が高く評価される可能性が上がることはもちろん、M&Aの成立可能性も上がります。
買い手に他にも競争相手がいることを意識させることも、いい戦略になり得ます。買い手を求めるオークションなら、複数の買い手と交渉することで買い手の競争心理を刺激し、相手に負けないためにより高い対価を提示するでしょう。売り手からすると、結果的に有利な条件で交渉が成立する可能性を高められます。
複数の買い手と交渉していく中でより高く評価してくれる企業や社風がマッチする企業など、自社の条件に合致する企業に出会える可能性も高くなるはずです。誰にも負けない自社だけの事業ノウハウや技術など、たくさんアピールポイントをお持ちの場合は、オークションで買い手を探してみることをおすすめします。
M&Aの形態によっては相手の買収金額がそのまま負債に転じることもあるので、買い手側は相場より少しでも買収価格を安くしたいはずです。
どうすれば買い手が少しでも有利に交渉を進められるか、3つのポイントをまとめてみました。これから事業拡大などのために会社買収を検討する方は、買い手の心得としてぜひお読みください。
交渉に進むために、まずは交渉の判断材料が必要でしょう。相手会社の財務状況や事業の将来性などを前もって詳しく調べることで、成功的な会社買収に導けるはずです。費用が許す中で綿密なデューデリジェンスを行っておくといいでしょう。
これらのステップを怠ると、実際会社買収が成立した後に大きな失敗が発生するかもしれません。たとえば、事業拡大のために自社と違う業種の会社を買収しても、収益性を見間違えていると、結果予定ほどの利益を達成できない可能性があります。
買収価格を安くするだけために交渉に乗り出ることはしない方がいいでしょう。相手に事業の価値を認めているという印象を与えにくく、よりいい買い手を求めて交渉が決裂する可能性があるためです。
交渉の結果、相場より安い対価で会社買収が成立することは買い手にとって嬉しいことです。しかし無理して値引き交渉をすると、会社買収成立後にトラブルを引き起こす可能性が高まります。事業の引継ぎ時に売り手側の経営陣が非協力的な態度を取ったり、売り手側から移籍した従業員がやる気を失ったりなどもあり得ます。結果的に両方の調和を妨げ、買収後の業績にも影響を与えるでしょう。
買い手は費用削減のために揺れることなく、M&Aの目的をしっかり持っておくべきです。事業を現段階からさらに発展された形にしたいのであれば、それに見合った対価を支払うことが当然でしょう。買収価格を極限に抑えて交渉が決裂するよりは、適正価格で買収した方が将来的には事業利益につながるはずです。
企業買収だとしても結局は人と人のつながりです。専門家との協力で売り手に対する適正な評価を行う、そして売り手の経営陣や従業員と良好な関係を構築することに集中すると、結果的にいい条件で交渉が成立するでしょう。
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会社買収の価格を計算するためには、複数の計算方式を使い純資産や将来の収益性など、さまざまな観点から評価を行うことが一般的です。また、計算された評価額どおりM&Aが成立することはほとんどなく、最終的には買い手と売り手間の交渉で価格が決まります。
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