業務移管とは、企業の業務の管轄を他の部署や事業体に移すことで、事業移管とも呼ばれます。業務移管では、権限や財源などを移すことになります。似た言葉に事業譲渡がありますが、事業譲渡と業務移管の意味は異なるため、混同しないように注意が必要です。
この記事では、事業移管・業務移管の概要やそのメリット、進め方、事業譲渡との違いなどについて解説します。
事業移管や業務移管という言葉の意味を知っているでしょうか。事業譲渡と同じ意味だと思っている方もいるかもしれませんが、事業移管・業務移管と事業譲渡では言葉の意味が違います。正しい意味を知り、誤った使い方をしないようにしましょう。
経営者やビジネスパーソンなら、事業移管や業務移管という言葉を聞く機会があることでしょう。この2つの言葉の意味に違いがあるのか疑問に思っている方もいるかもしれませんが、事業移管と業務移管は基本的には同じ意味の言葉です。事業移管・業務移管とは、企業が手掛けている事業や業務を、他の部署や企業に移す行為のことを指します。
事業移管・業務移管に似た言葉として、事業譲渡という言葉があります。事業譲渡は、事業移管・業務移管とは意味が違うので、誤った使い方をしないように注意しましょう。事業譲渡とは、会社が手掛けている事業を売買することで、M&Aを行う手法の1つです。
事業移管・業務移管と事業譲渡の正しい使い方としては、例えば「事業譲渡によって、企業AのSES事業が会社Bに事業移管(業務移管)した」などと使います。つまり、事業譲渡・業務移管とは、事業譲渡を行った結果として、その事業を譲渡先の企業に移すことを指します。
さらに、事業譲渡に似た言葉に営業譲渡という言葉もありますが、この2つは同じ意味を持つ言葉です。ただし、細かな違いではあるものの、事業譲渡は会社法で使われる用語で、営業譲渡は商法で使われる用語いう差があります。
どれもM&Aなどの場面で使われる言葉ではありますが、意味を混同しやすいので注意しましょう。
事業移管・業務移管は、事業の一元化や効率化、コストの削減、適切な人員配置を行うためなど、幅広い目的が考えられます。不採算事業などについて、事業譲渡を行わず、関連企業に事業移管を行うケースも見られます。日本国内外を問わず事業の移管先を持つ企業もあり、海外に事業を移管するオフショアリングも増えています。
近年では、政府により進められている働き方改革の一環として、事業移管・業務移管を進める企業も増えています。社内の業務をコア業務とノンコア業務に仕分け、ノンコア業務を事業移管することで、社員の負担を軽減できます。
例えば、厚生労働省による医師の働き方改革であるタスク・シフティングでは、医師の労働時間を短縮する目的で、医師でなくてもできる業務は医師以外の医療職に業務移管することが検討されています。
事業移管・業務移管を行う場合には、どのようなメリットが考えられるでしょうか。ここでは、売り手側、買い手側それぞれが事業移管・業務移管によって得られるメリットを紹介します。
事業移管・業務移管による売り手側のメリットとしては、以下のようなことが考えられます。
それぞれのメリットについて詳しく説明します。
売り手側の企業が事業移管を行う場合、事業を継続できるという点がメリットとして代表的なものとなります。特に中小企業などでは、経営自体はうまくいっていて利益が出ているにもかかわらず、後継者不足が原因で、経営者の高齢化に伴って廃業せざるを得なくなるケースも増えています。
しかし、事業移管を行い、事業を他の企業に移せば、廃業せずに事業を継続できます。事業移管ができれば、これまで培ってきたノウハウや設備はもちろん、従業員の雇用も維持できます。また、債務超過などで廃業も視野に入れなければならないような企業であっても、残したい事業だけでも他の企業に移管できれば、その事業の存続が可能となります。
事業移管のために事業譲渡を行う際、事業譲渡の売却利益として現金を得られます。合併や株式交換などでは、対価として株式で取引をするケースも多く見られます。一方事業譲渡では、株式ではなく現金で対価を支払うことが多いとされています。
資金面から考えても、特に中小企業においては現金をある程度手元に置いておくことは重要なので、対価として得られるものが現金だという点はメリットといえます。
事業移管によって、経営状態を悪化させている不採算事業や、ノンコア事業を他の企業に移管し、採算事業やコア事業に絞って事業を行うこともできます。このような事業移管による組織再編により、会社として抱えていた無駄なコストを削減することもできます。
事業移管のための事業譲渡では、会社自体の支配権は移りません。事業移管による組織再編を行うと同時に、事業の売却利益を得られるというのはメリットといえるでしょう。
事業移管による買い手側のメリットとしては、主に以下のようなことが考えられます。
それぞれのメリットについて、詳しく解説します。
新規事業を1から始めるためには、設備投資や従業員確保、開発にかかるプロセスにおいて、時間や資金面でのコストがかかります。しかし、新規事業に関連する事業を事業移管によって獲得できれば、既存の設備や従業員のほか、これまでのノウハウもそのまま活用できるため、新規事業立ち上げにかかるさまざまなコストを下げられます。
新規事業を始めるために事業譲渡を行う場合には、自社の条件に合った売り手企業を探すことが重要です。
株式譲渡や合併では、会社丸ごとを承継する際に使われるM&Aの手法で、売り手企業が負債を抱えていた場合には、その負債も含めて承継する必要があります。そのため、簿外債務や海外債務などが後から発覚し、M&A後の経営に悪影響を及ぼしたり、トラブルの原因となったりする可能性もあります。
しかし、事業譲渡では承継する事業を選べるため、不要な資産がある事業については承継しないという選択も可能で、買い手がほしい部分だけを承継できます。
事業移管のデメリットとしては、売り手側、買い手側ともに以下のようなものが挙げられます。
以上2点について詳しく説明します。
最も代表的なデメリットとしては、手続きが大変であることが挙げられます。事業譲渡は承継する事業を選べるというメリットを持つ反面、どの資産や従業員を承継するのか、その範囲を決めるために協議が必要となります。また、企業丸ごとではなく、企業内の事業のみを移管するので、事業の認可やさまざまな契約が一旦白紙に戻る点も覚えておきましょう。
実際に事業移管を行う際には、事業に必要な許認可の再取得や、取引先企業との再契約、不動産を持っている場合には移転登記手続きなど、多数の手続きが必要となります。不動産の移転登記手続きを行う場合には、税金が発生するなど、注意すべき点も多数あります。
株式譲渡や合併とは違い、事業譲渡では事業一つひとつが手続きの対象となるため、手続きが煩雑になりやすいのです。
このような複雑な手続きを行う知識や自信がなければ、M&A仲介会社などの専門家に依頼するのも1つの方法です。
事業譲渡だけでなく、M&A全般にいえることですが、M&Aでは元々在籍していた社員が流出する可能性が高まるデメリットがあります。M&Aでは、複数の企業が経営統合を行う必要があり、それぞれ違う企業の文化や価値観がうまく融合せず、社員同士で軋轢が生じるというリスクがあります。
また、売り手側の社員が買い手側の社員に比べて不当な扱いを受けるケースもあり、それがさまざまなトラブルに発展する可能性もあります。
出身企業による派閥ができて、業務が円滑に進まなくなるなどのトラブルも考えられ、その結果として、社員が流出するリスクが高まります。事業譲渡においては契約関係は一度白紙に戻りますが、雇用契約も例外ではなく、改めて社員と雇用契約を結ぶ必要があります。これも、社員流出のリスクを高める要因となっています。
移管する事業の中で、重要なポストに立っている社員が流出すれば、事業自体の価値が下がってしまいますし、その社員が持っていたノウハウなどが競合他社に移ってしまう可能性もあります。そのため、事業譲渡を含むM&Aを行う際には、企業の財産である社員をどうやって引き留めるかということをあらかじめ考えておく必要があるでしょう。
事業移管・業務移管には、定型業務や単純なデスクワークのほか、専門的な業務などが向いているとされています。定型業務の中でも、生産性の高い事業が移管対象に選ばれやすい傾向があります。単純なデスクワーク業務とは、伝票の整理やデータ入力などを指し、これらは比較的スムーズに事業移管できます。
近年では、単純作業だけでなく、専門的な業務を事業移管するケースも増えてきました。専門的な業務は、より専門性の高い海外の企業に移管されることもあります。
事業移管・業務移管は、事業譲渡の実行に伴い発生するものです。事業譲渡には、主に以下のようなプロセスがあります。
上記以外にも、各プロセスの前には相手企業との条件交渉などが必要となります。これらの手続きを踏んで、事業譲渡を行った後、対象の事業に対して事業移管が行われます。
これまでにも説明してきた通り、事業移管・業務移管は事業譲渡の実行に伴って発生します。そのため、事業移管では事業譲渡契約書が必要となります。この契約書には、事業譲渡の内容や承継する資産のほか、禁止事項などについても記載されています。
事業譲渡契約書は、インターネットで公開されている雛形もあるため、作成のハードル自体は下がっています。しかし、実際の事業譲渡契約書は、自社の状況に合ったものでなければならないため、専門家である弁護士などに指導してもらうのがおすすめです。実情と合わない契約書を使用していた場合、事業移管がスムーズに進まず、トラブルになりかねません。
事業移管・業務移管を行う際には、PMIと呼ばれるプロセスが重要です。PMIは、M&A実行後に経営統合を行うプロセスのことです。M&Aの実行に注力しすぎてしまい、M&A後のPMIに力を注がない企業も多いですが、十分なシナジー効果を得るためにも、この経営統合のプロセスは非常に重要です。
PMIを丁寧に行わなければ、事業同士の連携が取れず、事業移管の実行自体がマイナス効果となってしまう可能性もあるという点に注意しましょう。
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事業移管・業務移管とは、企業が手掛けている事業や業務を他の部署や企業に移すことを意味し、M&Aの手法の1つである事業譲渡の実行に伴って行われます。
事業の効率化やコスト削減のために行われ、売り手側は事業譲渡の対価として現金を得られます。また、買い手側は事業譲渡を行うことで、コストを抑えて新規事業を立ち上げられるなどのメリットがあります。
事業移管を実行するまでには、専門的な知識が必要となるプロセスが多数存在します。トラブルが起きるリスクを下げるためにも、M&A仲介会社の利用がおすすめです。
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