社員や従業員への株式譲渡とは?メリット・譲渡方法・注意点を解説

社員や従業員への株式譲渡とは?メリット・譲渡方法・注意点を解説
この記事の監修:M&A専門家
四辻 弘樹
S M B C日興証券・みずほ証券の投資銀行部においてM&A、ファイナンス、I P O等に携わる。その後は上場企業のテモナにおいてCSOとして事業戦略、M&A、新規事業開発に従事。現在はM&Aアドバイザリーの他、資金調達支援、IPO支援に加えCFOとしての活動。

株式譲渡は株式を第三者に譲渡し、会社の経営権を譲り渡すことです。M&Aでよく利用される手法で、社員や従業員に対して行うことも可能です。

今回は社員や従業員へ株式譲渡する目的やメリット・デメリット、自社株を譲渡する方法などを解説します。

IT・ベンチャー特価のM&AならウィルゲートM&A

\成約例や支援の特徴・流れを紹介/

株式譲渡とは

株式譲渡とは

株式譲渡とは、売り手側の株主が保有する株式を第三者に譲渡し、会社の経営権を譲り渡すことです。手続きが簡易のため多くのM&Aで活用されています。中小企業のM&Aのほとんどが株式譲渡によるものです。

社員・従業員への株式譲渡の目的

社員・従業員への株式譲渡の目的

株式譲渡は、自社の社員や従業員へ行うことも可能です。社員や従業員へ株式譲渡を行うのは、次のような目的があります。

1.事業承継のため

近年では、中小企業が事業承継を目的とした株式譲渡を行うケースが増えています。その背景には、多くの中小企業で経営者の高齢化や人手不足が深刻化し、後継者問題を抱えていることがあります。親族関係にある者を後継者にする親族内承継ができない場合、社員や従業員へ事業承継するケースが多くなっています。

信頼できる社員や従業員へ事業承継することで、廃業せず会社が存続できます。長年会社を支えてきた社員や従業員が後継者になれば、安心して会社を任せられるでしょう。

2.会社を成長させる

株式譲渡を行うと、株式の一部を社員・従業員に保有させることが可能です。社員は保有した株式の配当金が得られるので、会社を成長させて配当金を増やしたいという意識が働きます。

会社の利益が増えると配当額も増えるため、社員は積極的に経営に参加するようになり、会社の成長が期待できるでしょう。

3.モチベーションを上げる

社員のモチベーションアップを図るため、株式譲渡を行うケースもあります。給与やボーナスの増額が難しい会社の場合でも、配当金が増えれば社員は満足できる報酬が得られるでしょう。そのため、仕事に対する姿勢も熱心になり、モチベーションを高める効果が期待できます。

また、福利厚生の一環として株式譲渡を行う会社もあります。

社員・従業員への自社株譲渡方法

社員・従業員への自社株譲渡方法

社員や従業員への自社株譲渡には、報酬として譲渡する方法と、従業員持株会により譲渡する方法があります。2種類の方法を解説していきます。

1.報酬として譲渡する

株式報酬制度を利用し、自社株を報酬として社員や従業員に譲渡する方法です。株式報酬制度にはいくつか種類がありますが、代表的な制度には「ストックオプション」があります。ストックオプションとは、事前に定めた価格(権利行使価格)で自社株を社員が将来取得する権利です。

会社の利益が高くなると、株価も向上します。事前に定めた価格よりも株価が上がるため、社員のモチベーションアップにつながるでしょう。

報酬として譲渡する場合の手続きは、次のような流れで行われます。

1.株価算定をする
非上場株式の場合は「原則的評価法」または「配当還元法」で株式算定を行います。原則的評価法は高めに算出され、配当還元法は低めに算出されます。自社株が少ない場合は、配当還元法を利用するとよいでしょう。

2.株式譲渡を行う

2.従業員持株会により譲渡する

従業員持株会とは、会社が持株会を設置し、社員や従業員が毎月一定額を持株会に出資して自社株が取得できる制度です。従業員持株会が社員の給与から天引した費用をまとめ、自社株を購入します。

上場企業では福利厚生として従業員持株会を設置するケースが多く見られます。

従業員持株会により譲渡する場合の手続きは、次のような流れで行われます。

1.株式譲渡を行う範囲を決める

株式譲渡を行う社員・従業員の範囲をどこまでにするのか決めておきます。従業員持株会への参加資格は原則、正社員と子会社の社員のみです。参加資格に、アルバイトやパートなどの非正規社員は含まないと決めておくとトラブルを防げるでしょう。

2.規約を作成する

規約を作成し、従業員持株会を設立します。規約には入退会について、種類株式の発行、拠出金や奨励金について、株式の引き出し・名義書換、退会時の買取方法などを記載して条件を決めます。

3.社員・従業員への説明会を開く

社員・従業員への説明会を開き、従業員持株会に関する内容などを説明します。このとき、従業員持株会へ参加する社員・従業員を募集します。

4.株式譲渡を行う

社員・従業員に株式譲渡する際のメリット

社員・従業員に株式譲渡する際のメリット

社員や従業員に株式譲渡する場合、会社と社員、双方でメリットがあります。どのようなメリットがあるのか紹介します。

1.会社を存続できる

会社譲渡を行うと、今まで通り会社を存続できます。会社の経営権が移るだけなので、会社は残ります。

また、多くの中小企業が抱えている後継者問題も解決できます。経営者の高齢化や人手不足などで、後継者がいないと廃業に追い込まれてしまいます。会社譲渡を行うことで会社が存続でき、事業を継続していけるのも、大きなメリットです。

2.手続きがかんたんに行える

株式譲渡は他のM&Aと比べ、手続きがかんたんに行えます。取締役会や株主総会で株式譲渡の承認を得て、株主名簿の書き換えを行えば手続きが完了します。社員や取引先と再契約する必要がないので、短期間でM&Aが完了できるでしょう。

3.社員・従業員の雇用が維持される

株式譲渡すると会社は存続され、社員や従業員の雇用も引き継がれます。廃業により、社員が職を失うことはありません。基本的に社員はこれまでと同じ条件で雇用されます。

社員・従業員に株式譲渡する際のデメリット

社員・従業員に株式譲渡する際のデメリット

社員や従業員へ株式譲渡するには、デメリットもあります。デメリットもしっかり把握しておきましょう。

1.シナジー効果が期待できない

社員や従業員への株式譲渡の場合、シナジー効果が期待できないデメリットがあります。他社とのM&Aであれば、事業を引き継ぐことによってシナジー効果が期待できます。しかし、社員への株式譲渡では、シナジー効果による事業の成長は期待できないでしょう。

2.配当金が経営を圧迫する可能性がある

社員や従業員へ株式譲渡すると、配当金の分配を行わなくてはなりません。通常の給与に加えて、配当金も分配するので、会社の経営が圧迫される可能性があります。

3.後継者にふさわしい人材がいない可能性もある

事業承継を目的に株式譲渡を行う場合、経営者として能力を発揮できる人材がいない可能性があります。経営者になるには、対人関係能力や経営スキルなどを必要とします。社員として優れた人材であっても、経営に向いているとは限りません。また、後継者としてふさわしい人材でも、経営者になりたがらないケースもあります。

社員・従業員に株式譲渡する方法

社員・従業員に株式譲渡する方法

株式譲渡の手続き方法は会社法で定められているので、手続きに不備があると社員や従業員に権利が譲渡されない可能性があります。そのため、手続方法をしっかり確認して、譲渡を進めなくてはなりません。

株式譲渡は基本的に自由に行なえますが、株式の譲渡制限がある場合があります。このような株式を「譲渡制限株式」といい、会社にとってふさわしくない人物への株式取得を防ぐために設けられています。多くの中小企業は、譲渡制限株式を発行しています。

株式譲渡を行う場合は、譲渡制限株式であるかの確認が必要です。譲渡制限株式の場合は、会社に承認を求める手続きを行います。

社員・従業員に株式譲渡する手続きの流れ

社員・従業員に株式譲渡する手続きの流れ

社員や従業員に株式譲渡する手続きの流れを紹介します。

1.株式譲渡の承認請求

譲渡制限株式を譲渡する場合は、会社から承認を得るための手続きが必要です。会社へ「株式譲渡承認請求書」を提出し、承認の請求を行います。

2.取締役会・株主総会での承認

株式譲渡の承認請求を行ったら、取締役会または株主総会を開催し、譲渡の承認を求めます。

承認が得られた場合、社員に決定内容を通知します。通知は決議から2週間以内に行う必要があります。

3.株式譲渡契約の締結

社員が承認通知を受け取った後に、株式譲渡契約を締結します。契約をする際には、株式数や表明保証事項、誓約事項などを記載した「株式譲渡契約書」を作成します。

その後、株式譲渡契約を交わし、代金決済を進めます。

4.株主名簿の書き換え

ほとんどの企業では株券を発行しないため、株主名簿への記載が株主であることの証明になります。株式譲渡の承認を得ても、株主名簿を書き換えないと手続きは完了しません。

譲渡人と譲受人の双方で、株主名簿の書き換えを会社へ請求します。株主名簿の書き換えが終わったら登記申請を行い、株式譲渡は完了です。

株式譲渡による社員・従業員への影響

株式譲渡による社員・従業員への影響

株式譲渡は事業譲渡と違い、雇用契約などもすべて引き継ぐため、社員や従業員の同意は不要です。給与などはどうなるのか、解雇されることはあるのかと不安に思う方も多いでしょう。株式譲渡による社員や従業員への影響を解説します。

給与や退職金について

株式譲渡は、雇用条件が同じように引き継がれるのを前提で進められます。したがって雇用契約は引き継がれるため、給与などの待遇は今まで通りで変わりません。

また、退職金も同様にすべて引き継がれるので今まで通りです。

解雇について

労働法により社員や従業員をかんたんに解雇することはできません。そのため、株式譲渡後に社員が不当に解雇されることは、ほとんどないでしょう。

社員・従業員に株式譲渡の注意点

社員・従業員に株式譲渡の注意点

社員や従業員へ株式譲渡する際の注意点を見ていきましょう。

譲渡する株式の割合に注意する

社員を後継者にする場合は株式を100%譲渡しますが、社員を後継者にしない場合は譲渡する株式の割合に注意が必要です。

株主総会で重要な事項を決める場合は、過半数または3分の2以上の議決権により決まります。反感を持つ社員が、多くの議決権を持ってしまったら、会社経営に影響が出る可能性があります。このような事態を防ぐために「議決制限株式」を発行するとよいでしょう。議決制限株式は、株式を譲渡する社員の議決権を制限できます。

社員・従業員へしっかり説明する

株式譲渡は経営者が変わるだけで、他の要素はすべて引き継がれます。しかし株式譲渡で、自分の待遇などに不安を感じる社員や従業員は多いでしょう。経営者が変わるので、会社の雰囲気や経営方針が変わるのも不安要素です。

不安要素があると、社員が退職してしまう可能性があります。社員が退職しないように、丁寧に説明し、不安を取り除くことが重要です。

サイト売買・M&A相談ならウィルゲートM&A

サイト売買・M&A相談ならウィルゲートM&A

社員や従業員への株式譲渡を検討しているなら、ウィルゲートM&Aへ相談しましょう。

ウィルゲートM&Aでは、15,100社を超える経営者ネットワークを活用し、ベストマッチングを提案します。Web・IT領域を中心に、幅広い業種のM&Aに対応しているのがウィルゲートM&Aの強みです。M&A成立までのサポートが手厚く、条件交渉の際にもアドバイスを受けられます。

一般的にM&Aの成約までは6ヶ月〜1年ほどの期間を要しますが、ウィルゲートでは平均で4ヶ月、最短1.5ヶ月での成約実績、40億円以上での成約実績もあります。完全成功報酬型で着手金無料なので、お気軽にご相談ください。

無料相談・お問い合わせはこちらから ※ご相談・着手金無料

株式譲渡 社員 まとめ

株式譲渡 社員 まとめ

社員や従業員への株式譲渡は、後継者問題の解消や、社員のモチベーションアップなどのメリットがあります。他のM&Aと比べて手続きはかんたんですが、不備がないように手続きを進める必要があります。株式譲渡は税務や法務など、専門的な知識が求められるため、M&A仲介会社へ相談するとよいでしょう。

『ウィルゲートM&A』にお気軽にご相談ください!

ウィルゲートが目指すのは、売り手様、買い手様、双方に納得感のあるM&Aです。M&Aがお客様の目的やご希望に合致しない場合、無理にM&Aをすすめることは絶対にありません。

M&Aで思わぬ失敗をしないためにも、まずは一度、ウィルゲートM&Aにご相談いただければ幸いです。
M&Aが解決策として見込める場合、15,100社以上の経営者とのネットワークから、最適なマッチングを迅速にご提示させていただきます。

成約実績は2年で50件以上、完全成功報酬型で着手金無料ですので、まずはお気軽にご相談ください!

無料相談・お問い合わせは
こちらから

ご相談・着手金は無料です。
売却(譲渡)をお考えの際はお気軽にご相談ください

お電話からのお問い合わせはこちら

050-3187-7449

受付時間:平日 9:00 ~ 17:00