株式譲渡契約書は株式の譲渡契約を締結する際に必要な書類です。作成するにあたって注意点を抑えておかなければ、契約において効力を発揮できないものになります。
本記事では、株式譲渡契約書の作成方法や注意点などを解説します。
株式譲渡契約書とは、企業の株式を譲渡する際に、譲渡する人(譲渡人)と受け取る人(譲受人)の間で契約する書類です。
企業の買収や売却といったM&Aでは、株式譲渡契約が必要となり、契約書を締結することにより経営権の移転をすることが可能となります。株式譲渡契約書は、エクセルやワードで作成することが可能です。インターネットで検索するとたくさんの雛形があるので、作成時はそれを引用してもよいでしょう。
しかし注意点やポイントを押さえておかないと、効力の発生しない契約書となる可能性があります。
株式譲渡契約書の注意点や作成方法などを紹介していきます。
株式譲渡契約書を作成する際は、次の3点に注意して作成しましょう。この注意点を理解しないまま作成してしまうと、のちのち大きなトラブルにもなりかねません。
1. 株券発行会社であることを確認
2. 譲渡制限株式があるかの確認
3. 株式譲渡目的を確認
株式には「株式発行会社」と「株式不発行会社」の2種類があり、それぞれM&Aにて株式を譲渡する際の手続きが異なります。
株式発行会社とは、会社の定款に「その株式に関わる株券の発行をする旨」が記載されている会社を指します。
一方株式不発行とは株式を発行しない会社を指します。株券は管理や紛失、発行にかかる費用が発生することなどから、リスクとコストが問題視されていました。
しかし2006年5月1日の会社法施行にあたり、株券を発行しない株式会社の設立が可能となり、定款に記載されていない会社も多数あります。それらの株式会社を株式不発行会社といいます。
株式発行会社と株式不発行会社の見分け方として、会社の定款や登記事項証明書で確認ができます。
会社法が施行された2006年5月1日より前に設立された会社の場合、登記事項証明書に「株式不発行会社」と記載がなければ、「株式発行会社」です。一方、2006年5月1日以降に設立された会社の場合、登記事項証明書に「株式発行会社」と記載がなければ「株式不発行会社」となります。
つまり設立された会社が2006年5月1日を境に設立された会社であるかどうかを確認し、その後登記事項証明書の記載内容を確認することで、株式発行会社または株式不発行会社なのかを見分けることが可能です。
譲渡制限株式とは、株式の譲渡を制限することです。中小企業などによく見られる譲渡制限株式は、株式の分散を避けることにつながり、経営参加できる人を制限することが可能となります。
また取締役などの重任登記の費用や工数などを削減できるメリットもあります。そのため株式を非公開にしている中小企業に多く見受けられます。
しかし譲渡制限株式があるかを確認しないまま株式譲渡契約書を締結してしまうと、譲渡した株式の権利が得られない可能性があり、無意味な株式を保有してしまう恐れがあります。そのため譲渡制限の確認が必須となるので、注意しておきましょう。
株式譲渡の目的を確認することが大切です。一般的に株式を譲渡する目的は、会社の規模を拡大させることや組織再編、事業承継などさまざまあります。どのような目的で株式譲渡をするのかを理解しておくことが重要です。
株式を譲渡するということは、経営者だけでなくその企業に勤めている社員や会社に大きく影響します。そのため買収する側と株式を譲渡する側の双方に対してリスクを負うことになるため、目的をはっきりしておきましょう。
また目的の内容によっては株式譲渡契約書に明記しなければならない場合があるため、注意しておく必要があります。
株式譲渡契約書の作成の流れは次の8項目です。
1. 基本合意の内容
2. 支払い方法と期日
3. 株式名簿書き換えについて
4. 表明保証内容
5. 契約解除に関する事項
6. 損害賠償事項
7. 競業阻止義務について
8. 合意管轄について
株式譲渡契約書では、基本合意という条項を設けて作成します。基本合意には次の4項目を記載します。
1. 株式を譲渡する会社名と住所
2. 譲渡株数
3. 譲渡金額
4. 株式の種類(普通株式か譲渡制限株式か)
譲渡金額は会計士に算出してもらうのが一般的です。しかし法律上、金額の制限がなく双方の合意額が優先されます。
支払い方法と期日について記載します。振り込みの場合、振込先口座などを明記することを忘れないように注意しましょう。株券発行会社の場合、支払いの際に買収される企業から、買収する企業へ株券を交付することを記載しておくのがおすすめです。
株主名簿とは、自社の株主を把握するために作成されるものです。株式譲渡をする場合、株主名簿を売主から買主へと名義変更する必要があります。これを株式譲渡契約書に記載しておかなければなりません。
買主側の企業は譲渡代金の支払いをした際、捺印した株主名簿書換請求書を交付する旨を株式譲渡契約書に記載するのがよいでしょう。万が一、株式名簿書換請求書の件で売主の同意が得られない場合、買主側は売主側に訴訟して株式名簿書換請求書を求めなければならなくなります。時間と労力を費やしてしまうため注意が必要です。
表明保証内容とは、売主側の企業が買主側の企業に対して、保証する内容を明記したものです。明記する内容は主に次の8項目を記載します。
1. 売主が譲渡株式の保有者であること
2. 譲渡する株式に対し、第三者などの権利が設定されていないこと
3. 株式発行会社の財務状況が、直近会計年度の決算書類通りであること
4. 発行会社の決算書に記載のない負債がないこと
5. 発行会社が適切な税務申告をしており、課税処分の恐れがないこと
6. 発行会社が行っている事業に対し、法的な違反がないこと
7. 発行会社が従業員の雇用に関して違反をしていないこと
8. 発行会社の発行した株数を明記すること
何かの原因によって株式譲渡契約を解除するには、株式譲渡契約書に記載される処理方法によって行います。ここでは契約解除となる要因の一例を紹介します。
1. 売主もしくは買主の破産
2. 会社内で株式譲渡が否認された場合
3. 買主が譲渡代金を支払わない
4. 売主が株券を譲渡しない
5. 表明保証の内容と事実が異なる場合
他にも契約を解除する理由はあるものの、株式譲渡契約を解除した場合に、代金の返還や損害賠償が生じることがあるため注意しましょう。
損害賠償は、売主側と買主側、双方で請求できることを覚えておきましょう。買主は売主の表明保証の内容と異なる事実が発覚した場合、損害賠償を請求することが可能です。損害賠償に関する内容を、株式譲渡契約書に記載しておくことが大切です。
競業避止義務とは、株式譲渡を行った後に、買主と同じ業務を売主がしてはいけないということです。株式譲渡契約書には、一定期間売主が同業、もしくは類似した事業を禁止する旨を記載しておくことが大切です。
株式譲渡契約書の締結後にトラブルがあった場合、どこの裁判所で審議するかを決めておく必要があります。一般的には「専属的合意管轄」といって、あらかじめ契約条項に記載した裁判所のみに限定する方法を選択するようにしましょう。
株式譲渡契約書には印紙を貼る必要はありません。ただし株式譲渡契約書に譲渡代金受領の記載がある場合は、印紙が必要です。用意する印紙代金は、譲渡代金によって異なるため、次の金額を参考にしてください。
5万円未満 | 非課税 |
5万円から100万円未満 | 200円 |
100万円から200万円未満 | 400円 |
200万円から300万円未満 | 600円 |
300万円から500万円未満 | 1000円 |
500万円から1000万円未満 | 2000円 |
1000万円から2000万円未満 | 4000円 |
2000万円から3000万円未満 | 6000円 |
3000万円から5000万円未満 | 1万円 |
5000万円から1億円以下 | 2万円 |
株式譲渡契約書の雛形には、次の2種類があります。
1. 有償取引の株式譲渡契約書
2. 無償取引の株式譲渡契約書
株式譲渡契約書の多くは、譲渡による契約書のため、通常「有償取引の株式譲渡契約書」になります。この場合、契約書には譲渡代金の支払いと引き換えに、株式を譲渡する旨を明記しなければなりません。
一方、親族間の事業継承や無償で譲渡する場合、「無償取引の株式譲渡契約書」になります。「無償取引の株式譲渡契約書」には金銭の取引がないことを証明します。
上記の2つの契約書はエクセルやワードで作成できます。またインターネットで「株式譲渡契約」を検索すれば、テンプレートが存在しています。作成する際は、テンプレートを用いることをおすすめします。
株式譲渡契約書はM&Aによる企業買収をする際にとても重要な書類となります。売却する企業側にとっても同様です。
株式譲渡契約書はエクセルやワードで作成できますが、契約条項など細かな詳細までは作成が難しいでしょう。作成した際には必ずチェックしなければなりません。
万が一、間違えたまま契約した場合、のちのち取り返しのつかないことになりかねません。そのため契約書を作成する際や、契約書の作成が完了した後は、専門家にチェックしてもらった方がよいでしょう。
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株式譲渡契約書はM&Aや事業継承をする際にとても重要な書類です。内容を理解しないまま契約を締結してしまうと、トラブルの原因や契約したことの後悔があるかもしれません。そのため必ず契約書の内容と締結するまでの確認事項を理解するようにしましょう。
契約書の内容が難しくて理解ができないという方は、M&Aの仲介業者に確認してもらうのがおすすめです。
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