SPC(特別目的会社)は企業が保有する不動産などの資産を企業から分離し、その資産を活かした事業だけに特化した会社をいいます。資産の流動化の手法として現在も活用されています。
今回は、そんなSPCの意味や仕組み、メリットやデメリット、事例について紹介します。
特別目的会社といわれるSPCとは「Special Purpose Company」の略称です。企業が保有している不動産などの資産を、企業から分離し、その資産を活かした事業だけに特化した会社を指します。
SPCで立ち上げた会社は、投資家からの資金調達や債券の発行、資金分配などが主な目的です。またM&Aの目的だけに立ち上げられる場合もあります。
SPC法とはSPCによる資産の流動に関する法律です。日本では1998年にSPC法(特定目的会社による特定資産の流動化に関する法律)が成立し、SPC設立が可能となりました。2000年にはSPC法の使い勝手をよりよくするために改正されています。
改正された内容は下記の5項目です。
1. 対象資産の拡大(不動産や債権だけでなく一般の財産権も含む)
2. SPC設立に関する手続きの簡素化
3. SPCが発行する証券の改善
4. SPCの資格取得に関する借入ができるようになった
5. 規制全体を緩和し簡素化した
SPCの会社は、すでに紹介したようにM&Aの目的だけに立ち上げられる特別目的会社です。
一方、会社法で設立できる会社には株式会社や合同会社、合資会社などがあり、SPCの会社と比べると法律や事業範囲、また設立時に必要となる費用も異なります。
SPC設立の代表的なスキームには次の3つが挙げられます。
1. GK-TKスキーム
2. TMKスキーム
3. REIT(投資法人)スキーム
GK-TKスキームは合同会社(Godo Kaisha)の「GK」と、匿名組合(Tokumei Kumiai)の「TK」を組み合わせて名付けられました。会社法で設立できる合同会社と、匿名組合という商法上の組合を活用したスキームです。匿名組合とは事業に対して意思決定権をもつことなく、匿名で投資する組合のことです。
GK-TKスキームは不動産投資や太陽光発電投資に利用されることが多く、証券発行や出資金の受け入れ作業など、さまざまな役割を担っています。
GK-TKスキームで投資した場合、SPCが会社法上の合同会社となって、匿名組合であるTKを通じて投資家が出資することになります。GKから得られる利益はTKの持ち分割合に応じて投資家へ利益配分する仕組みです。
GK-TKスキームの不動産投資は、実物不動産に投資しないのが一般的で、不動産信託受益権に投資します。実物不動産に投資すると、不動産特定共同事業法が適用され、手続きにも負担がかかるためです。
TMKスキームとは特定目的会社ともいい、SPC法に基づいて形成される法人を指します。TMKは「Tokutei Mokuteki Kaisha」の頭文字から名付けられました。
本来不動産の価格は物件により、数億円規模の物件も多数あります。不動産投資を行う際に、銀行からの借り入れや投資家による出資などで資金調達を行います。しかし投資金額が大きいものであれば、回収するまでに時間がかかってしまいます。さらに不動産投資に対する負債が大きくなると、第三者から見れば「倒産リスクがあるのではないか」と思う方が出てしまいます。
不動産投資の問題点を解消するために、TMKを設立し、不動産や負債を動かして本体企業の財務状況を改善します。つまり元々の会社で保有していた不動産や借り入れをTMKに移すことによって、元の企業の安全性を第三者にアピールできます。
SPC(特別目的会社)とTMK(特定目的会社)は似ているような名前で混合しやすいと思ってしまうでしょう。TMKの場合は、不動産のみに限られます。一方、SPCの場合、不動産を含めた資産となるため、SPCを不動産に限定したものがTMKというイメージです。
TMKでは、会社設立の法律がSPC法に基づきます。不動産の流動化に関する事業しか行えず、従業員も雇えないため、TMKスキームを用いる際に注意が必要です。
REIT(リート)は「Real Estate Investment Trust」(不動産投資信託)の頭文字から名付けられています。近年では日本のREITとしてJ-REITが知られており、全国的に投資している方も多くなりました。
REITは投資証券を発行します。その証券を投資家たちが購入し、集まった資金でREITを運用する企業が不動産投資物件を購入する仕組みです。購入した不動産から得た家賃収入や売却利益を投資家達に分配する流れとなります。
ここではSPCを設立するメリット・デメリットを紹介していきます。
SPCを設立は次の3つのメリットがあります。
1. 保有資産を守れる
2. 負債の切り離し
3. 少額資金でのM&A
SPCの仕組みは倒産することがありません。本体企業から資産を切り離したことで、もし本体企業が倒産しても資産は守られます。これにより投資家や債権者などへの影響が生じないようにすることが可能です。ただしSPCの持ち分について、倒産した場合には差し押さえなどの対象となるため注意しましょう。
SPCは資産を流動化するための会社です。本体企業から資産をSPCに移行した場合、負債も移行されます。もし本体企業に借入がある場合、財務状況がプラスになりません。そこでSPCの会社に資産を移すことで、本体企業の負債を減らすことが可能です。
つまり本体企業の負債をSPCに移行させることで財務状況を改善できるため、新たに金融機関から資金を融資してもらえる可能性も高くなるメリットがあります。
企業がM&Aによる買収を行う場合、その買収する企業に合わせた資金が必要です。レバレッジド・バイアウト(LBO)を利用し、買収する企業が買収しようとしている企業の資産などを担保にして、金融機関から借り入れすることで少額資金でM&Aを行えます。
ただし金融機関にとってレバレッジド・バイアウト(LBO)はリスクが高く、高利率になるか融資を拒否する可能性もあるため注意が必要です。SPCを設立することで、倒産リスクがなくなるため、金融機関も融資しやすくなるメリットがあります。
SPCを設立する次の3つのメリットがあります。
1. 設立費用や時間がかかる
2. 粉飾決算をする企業もある
3. 買収される企業も負債を抱える
一般的な合同会社であれば、資本金は1円から設立可能です。しかしSPCの設立にあたって資本金が10万円以上と定められています。その他に3万円の登録免許税や、4万円の定款作成にかかる印紙代なども必要です。
設立費用のほかに、内閣総理大臣への届け出や資産流動化計画書なども必要となるため、時間なども要することになるため注意しましょう。
SPCは資産の他に負債も本体から切り離しすることが可能です。これを利用し、粉飾決算をする企業が過去に何社かありました。今では本体の会社とSPCの会社は連結子会社にするルールが定められているため、安易に粉飾決算はできなくなったものの、今後も100%起こらないということはいえないでしょう。
仮に粉飾決算があった場合、投資家だけでなく、企業の社会的信用度もなくなるので、今後企業活動するのが難しくなってしまいます。
SPCでレバレッジド・バイアウト(LBO)を利用して企業の買収をした場合、買収された企業も負債を抱えることになります。
本来M&Aは買収する企業側が資金を用意します。しかし、買収された企業が負債を返済できなくなった場合、その企業は倒産となるでしょう。そのことを踏まえてM&Aをする必要があるため、計画的に行い、M&Aの専門会社に相談などをして行うとよいでしょう。
2006年に当時通信会社として、日本で多くの携帯電話を普及していたボーダフォンが、ソフトバンクに買収されました。買収に際してSPCを設立させて、レバレッジド・バイアウト(LBO)を利用しました。
ソフトバンクが設立したSPC会社を通じてボーダフォンの親会社から株式を取得します。買収価格のうち約70%近くは借り入れで資金調達をしています。その借入はノンリコースローン(非遡及型融資)で実行されました。
ノンリコースローンによってソフトバンクは、ボーダフォンの売却か収益からしか返済する方法がなかったものの、企業は成長を遂げ、今では日本一の時価総額企業となっています。
参考
https://paradigm-shift.co.jp/column/156/detail
紹介した事例のように、M&Aは企業を更に躍進させるきっかけになります。成功させるためには、どの企業を買収するかも大切ですが、仲介業者の選定も重要です。
仲介会社は買収する企業を徹底的に調べ、どのような経営状況を判断し、アドバイスをしてくれます。しかしM&Aを仲介する企業はたくさんあるので、どの会社に依頼すればよいかわからない方もいるのではないでしょうか。
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SPCは企業の資産や負債を動かすだけでなく、M&Aを目的として設立する企業も多く見られます。企業規模が拡大すれば、さらなる躍進が見込めるだけでなく、会社決済などにも大きく影響することでしょう。
近年ではM&Aをする企業が増えてきており、今後ますます成長産業とも読み取れます。しかしM&Aを行ったことのない経営者は、買収に対して不安がある方が多いものです。
ウィルゲートが目指すのは、売り手様、買い手様、双方に納得感のあるM&Aです。M&Aがお客様の目的やご希望に合致しない場合、無理にM&Aをすすめることは絶対にありません。
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