割引現在価値とは将来獲得するお金の現時点での価値のことです。M&Aを行うにあたって合併や買収を検討している企業が将来どのくらいの利益を出せるのかを分析や検証する際に活用できます。
この記事では、割引現在価値の意味や計算方法などを紹介します。
M&Aを検討するにあたって、合併や買収を検討している企業が将来どのくらいの利益を出すのかが気になるという方がいるでしょう。また割引現在価値はM&Aだけではなく、不動産投資や会計といった分野でも使われている用語です。割引現在価値を計算することで、物件の収益価格や企業価格を算定できます。ここでは割引現在価値のほか、付随する正味現在価値(NPV)や将来価値についても紹介していきます。
割引現在価値は将来獲得するお金の現時点での価値のことをいいます。例えば金利が10%だとした場合、1年後110万円の割引現在価値は、金利が1年分かかる前の金額、つまり100万円となります。
正味現在価値とはあらゆる投資において、どの程度の利益が得られるのかを示す指標です。投資をすることでどれだけのリターンがあるのかを確認し、意思決定を行うために使用されます。
将来価値とは現時点で保有しているお金について、将来のある時点での価値に変換した金額のことをいいます。例えば年間の金利が10%とした場合、現時点でもっている100万円の1年後の将来価値は、金利が1年間かかった後の金額、つまり110万円となります。
割引現在価値はM&Aの際に使われるのはもちろんのこと、不動産投資や会計といった分野でも利用されています。ここでは各々の割引現在価値の使われ方について解説します。
M&Aを行う際には買い手と売り手がともに対象企業の株価や事業価値を算定しなければなりません。その算定方法として代表的なものが3つあります。
1. インカムアプローチ
2. コストアプローチ
3. マーケットアプローチ
インカムアプローチは将来生み出すとされるキャッシュフローを判断材料として企業価値を算定する方法です。その中で代表的な手法として「DCF法」というものがあります。
DCFというのはDiscount Cash Flowの略称です。企業が生み出す利益と、将来の売却などを行ったときの金額を現在価格に割り引いたものを合計する方法になります。
コストアプローチは資産や負債を新規で調達した場合にどれくらいの費用がかかるのかという観点から企業価値を算出する方法です。
マーケットアプローチは同じ分野または似た分野の事業を展開している上場企業の株価などの数値と比較して、相対的に企業価値を算出する方法です。
インカムアプローチやコストアプローチ、マーケットアプローチの3つの方法が、M&Aを行う際に株価や事業価値を算出する方法として代表的なものです。そしてこれらのうちの1つ目の「インカムアプローチ」に分類される「DCF法」で割引現在価値が使われています。
ちなみに株価や事業価値の算定において、割引現在価値を利用するDCF法が採用されるようになったのは、1980年代後半からだといわれています。
不動産投資において物件の収益価格を算出する方法は2つあります。
1. DCF法
2. 直接還元法
1つ目の「DCF法」はインカムアプローチのところで紹介したものと同じです。将来の利益やリスクを踏まえて割引現在価値を算出し、合算したものを対象企業の価値とするため、割引現在価値が利用されています。不動産投資において、割引現在価値を利用するDCF法が正式に採用されるようになったのは、2002年の不動産鑑定基準の改訂のときです。
2つ目の「直接還元法」は1年を通した賃料収入を利回りで割ることによって物件の収益価格を算出するというものです。DCF法では「家賃の下落率」や「空室リスク」も想定した上で算出が行われていますが、直接還元法では考慮されずに算出が行われています。
企業の財務諸表を作成する際のルールである会計基準において、将来発生するキャッシュフローや債務に対して、「割引現在価値」が利用されています。割引現在価値を使用する際の「割引率」については、監査人など専門的な人と十分に相談して設定しましょう。
割引現在価値の計算方法について紹介していきます。
「n年後の金額」と「n年間の年利」がわかっている場合は、次の式で割引現在価値を算出できます。
割引現在価値=n年後の価値/(1+割引率)n
この式を使って割引現在価値が算出できる例題を3つ出題してみます。
1年後の1,000万円の割引現在価値はいくらでしょうか?割引率は10%とします。
解説:1年後の価値は1,000万円、n=1、割引率0.1なので、
1,000万円/(1+0.1)1 = 1,000万円/1.1 ≒ 909万909円
解答:909万909円
1年後の1,000万円の割引現在価値はいくらでしょうか?
割引率は20%とします。
解説:1年後の価値は1,000万円、n=1、割引率0.2なので、
1,000万円/(1+0.2)1 = 1,000万円/1.2 = 833万3,333円
解答:833万3,333円
2年後の1,000万円の割引現在価値はいくらでしょうか?割引率は20%とします。
解説:1年後の価値は1,000万円、n=2、割引率0.2なので、
1,000万円/(1+0.2)2 = 1,000万円/1.22 ≒694万4,444円
解答:694万4,444円
実際の計算は例題より複雑になるかと思われますが、割引現在価値の算出については以上の計算方法で行うため覚えておくとよいでしょう。
割引現在価値についての理解が深まったところで、割引現在価値の計算をする上で非常に便利なサイトを3つ紹介します。
「miniwebtool」は会計や統計などでよく使われるツールと計算機が用意されているサイトです。複利計算機や償却計算機といった会計で役に立つものから、標準偏差計算機といった統計で必要とされる計算を行うツールまで掲載されています。
参考
https://miniwebtool.com/ja/present-value-calculator/
「BLUEINSIGHT OFFICIAL SITE」はブルーインサイト株式会社の公式サイトです。マーケティングに必要な「リサーチ」や「Eコマース」に関する依頼も可能となっています。
参考
https://blueinsight.co.jp/tool-present-value
「Keisan」は人気の電子辞書や電子機器などを販売している「CASIO」が運営しているポータルサイトです。計算ツールだけでなく計算に関するコラムなどが発信されており、知識の幅を広げたり情報を収集したりできるサイトになっています。
以上が割引現在価値の計算ができるサイトの紹介でした。インターネット上に便利なツールがたくさん用意されているので、うまく活用していきましょう。
参考
https://keisan.casio.jp/exec/system/1565074654
企業の価値算定などにおいて割引現在価値が重宝されるのは、明確なメリットがあるからです。ここでは割引現在価値のメリットとして代表的なところを2つ紹介していきます。
1. 将来の利益も踏まえて評価ができる
2. 各々の企業に対して個別に評価ができる
とくに持続可能性が重要視されている現代社会においては、会社の現状だけでなく将来の状況も踏まえた評価が必要とされています。もちろん大震災などの自然災害や、疫病のパンデミックといった予測不可能な事態によって、状況が一変する可能性はゼロではありません。可能な範囲でできるだけ正しく予測することによって、よりよい判断材料を作れます。
会社ごとに割引率を設けて評価することになるため、柔軟な評価方法の採用ができます。つまりその会社固有のリスクなどを評価に反映でき、結果的に現実的な評価につながります。
割引現在価値は企業や事業を評価する上で重宝されるものですが、割引現在価値を使用するにあたってデメリットもあります。ここでは代表的なものを2つ紹介していきます。
1. 可視化されたリスクを割引率に反映させることが難しい
2. どうしても「割引率」の設定のところで主観が混じってしまう
割引現在価値を用いる場合、すでに把握しているリスクを割引率に反映させて計算することが難しくなります。過去の実績などによって割引率を設定しても、何をもってリスクと判定するのか、どの程度のリスクと捉えるのかは専門性が問われるところです。
割引率の設定は100人が行うと100とおりできてしまうものです。そのため誰が割引率を設定するのかどうかで割引率が大きく異なってしまい、その結果、割引現在価値の計算結果まで変わってしまうことが起こりえます。
そのため割引現在価値を用いた評価方法の場合、M&Aの交渉などにおいて「譲受会社」と「譲渡会社」の双方が納得するような企業評価が得られる確率は下がってしまいます。
企業価値や事業価値は、実態に合った算定を行うことによって初めて判断材料として利用できます。リスクを割引率に反映させたり客観的な計算結果を出したりすることが難しいとしても、M&Aが譲受会社や譲渡会社の両方にとって社運を左右するものである以上、より現実に根付いた算定を行う必要があります。そういった経緯や背景から割引現在価値が求められています。
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割引率現在価値とは、将来獲得するお金の現時点での価値のことです。実際にM&Aで活用する場合、買収企業が将来どのくらいの利益を出せるのかの検証ができます。本記事では実際の計算例も紹介しているため、参考にしながら実際に計算してみてください。
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