株式交換とは?株式移転との違いやメリット、手続き・税金を解説

この記事の監修:M&A専門家
四辻 弘樹
S M B C日興証券・みずほ証券の投資銀行部においてM&A、ファイナンス、I P O等に携わる。その後は上場企業のテモナにおいてCSOとして事業戦略、M&A、新規事業開発に従事。現在はM&Aアドバイザリーの他、資金調達支援、IPO支援に加えCFOとしての活動。

相手企業を完全に子会社化する上で、ポピュラーな手法として採用されているのが株式交換です。株式交換が多くの企業に採用されているのは、この手法ならではのさまざまな恩恵が期待されるためです。

今回は株式交換が実施される背景に注目しながら、実施のメリットや具体的な手続きの方法、そして株式交換を実現する際の注意点について、詳しくご紹介します。

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M&Aの分類

M&Aの分類

株式交換はM&A手法の一種とされていますが、そもそもM&Aには大きく分けて、以下の3つの手法に分類できます。それぞれの実施方法について、確認していきましょう。

合併

合併とは、複数の会社を1つの会社にまとめ上げ、単一の法人格として生まれ変わる方法です。合併にもさらに2つの種類に分けることができ、吸収合併と新設合併が挙げられます。

吸収合併は、合併によって消滅してしまう会社の権利や義務を、吸収先の会社が一手に引き受けるというものです。あらゆる権利が承継されますが、吸収された会社の法人格は消滅するため、傍目には会社が丸ごとなくなったような印象を与えます。

新設合併は、新たに会社を設立し、合併を望んでいる企業がまとめて新設会社に取り込まれていく方式を指します。AとBという2社の新設合併が行われる場合、両社の権利や義務は、Cという新設会社にまとめて承継されることとなります。

参考:https://www.ma-cp.com/about-ma/ma-method/

買収

2つ目のM&A手法は、買収です。買収には合併よりも多くの手法が存在し、それぞれの特徴を把握することが大切です。

買収の代名詞ともいえるのが、株式譲渡です。株主が保有する対象会社の株式と引き換えに、他社へ譲渡する方法です。中小企業においてもっとも行われているのが、株式譲渡によるM&Aです。

また、第三者割当増資による買収も、M&Aの代表的な手法です。第三者割当増資は第三者に対して新しく株式を発行し、特定の第三者に対して議決権を与える手法です。あるいは事業譲渡も買収によるM&A手法の1つとして認識されており、買収対象となる会社そのものではなく、事業をほかの会社に移譲するよう促すことで、M&Aを実現します。

今回紹介する株式交換、および株式移転も、買収施策に分類されています。これらの手法については、後ほど詳しくご紹介します。

会社分割

会社分割は、M&Aの対象となる企業が抱える事業に対する権利や責任の、全部または一部を別の会社に承継させる手法です。吸収分割と新設分割という2つの方法がありますが、吸収分割は、既存の会社に対して事業の分割を実施する方法です。対して新設分割は、M&Aにともない新たに設立する企業に対して、事業を承継する手法です。

後者の新設分割は、事業承継の手段としてはもちろん、複数企業がお互いにリソースを出し合ってジョイントベンチャーを立ち上げる際にも用いられます。株式交換と合わせて、会社分割もまたM&Aの手法としてはポピュラーかつ前向きな効果が期待しやすいものと言えます。

M&Aに注目が集まる理由

M&Aに注目が集まる理由

近年、多くの企業がM&Aの実施に踏み切っていますが、そもそもなぜM&Aの実施が増加傾向にあるのでしょうか。ここでは3つの理由をご紹介します。

事業承継問題の深刻化

M&Aが盛んに行われている最大の理由が、中小企業における後継者の不足です。少子高齢化の影響により、日本国内の出生率は減少傾向が強まっており、新しく若い働き手の不足に各企業は悩まされています。また、経営者はもちろん、熟練の従業員も高齢化によって、多くの業界で引退が進んでいます。後継者を見つけることができないまま、引退を余儀なくされているというわけです。

加えて、若い世代においては働き方の多様化が進んでいることも、事業承継が今ひとつ進んでいない理由といえるでしょう。たとえ出生率が低くとも、子どもや親族に事業を承継する選択肢を選ぶことはできるはずですが、自分の意志で就職先を選んだり、職業を選んだりしたいという若者が増えています。そのため、事業の承継先が見つからず、会社を畳んでしまうというケースも見られます。

このような状況下では、長い時間をかけて各社で継承されてきた文化やノウハウが、残念ながら失われてしまう会社も少なくありません。しかしM&Aは、そんな後継者不足を解消する施策として、多くの中小企業に選ばれている事業承継手法です。

最近では行政が仲介となって地方産業を支える中小企業のM&Aを支援する動きも見られ、日本の産業を維持するうえで重要な取り組みとして注目を集めています。

参考:https://masouken.com/%E4%BA%8B%E6%A5%AD%E6%89%BF%E7%B6%99%E3%81%A8%E3%81%AF

クロスボーダーM&Aへの注目

日本の少子高齢化と産業の縮小とは裏腹に、活況を迎えているのが周辺諸国です。かつては後進国といわれた中国や東南アジアでは、日本よりも勢いのある経済成長を迎え、優秀な人材が次々と登場しているのはもちろん、少子化の心配もなく、優れたマーケットも育ちつつあります。

そこで日本企業が進めているのがクロスボーダーM&Aと呼ばれる施策です。これは海外企業の買収を進めることで、新しい販路の拡大を進めたり、優秀人材の獲得、および社内のグローバル化を推進したりするものです。日本国内の市場や労働人口に期待が持てない今、発展性のある海外の新興企業を日本企業として吸収し、成長を続けることが求められています。

イグジット戦略としてのM&Aへの注目

3つ目の理由が、イグジット戦略としてのM&Aという考え方が浸透している点です。投資した分の利益を回収するべく投資家が採用するイグジット戦略は、これまでベンチャー企業による新規株式公開(IPO)が戦略の基点として注目されてきました。

しかし近年はベンチャー企業の登場が鈍化していることや、そもそも株式の公開や上場には大きな負担もかかるということで、IPOよりも手間のかからないM&Aをイグジット戦略として捉えている傾向が強まっています。株式の売却益で資本を回収するM&Aによるイグジット戦略は、企業価値が当初よりも大きく膨らむ可能性もあるため、収益性の高い手段として期待されています。

参考:https://masouken.com/%E3%82%A4%E3%82%B0%E3%82%B8%E3%83%83%E3%83%88%E3%81%A8%E3%81%AF/?permalink=M&A%E3%81%AE%E8%AA%B2%E9%A1%8C

株式交換とは

株式交換とは

株式交換は、交換先の会社の株式を全て取得して自社株を相手企業に引き渡すことで、交換先の会社を株式保有率100%の完全子会社できる、会社法に則った子会社化の手続きの1つです。

英語では「シェアエクスチェンジ(Share Exchange)」「ストックスワップ(Stock Swap)」とも呼ばれ、グループ会社の形成を検討している、あるいはグループ会社の再編を検討している企業が盛んに選んでいる手法です。

株式交換の目的

株式交換の目的として最も多いのは、子会社として他社を傘下に収めるというものです。一般的なイメージでいう親会社と子会社は、親会社のもとで新規事業に参入するため、枝分かれするような形で子会社が誕生し、親子関係を構築するというものです。

しかし近年では少子高齢化による労働者の不足や、後継者の不足、経営者の引退などによって中小企業の廃業が進んでおり、長年培われてきたノウハウやビジネスモデルが失われるだけでなく、地域の雇用縮小に悪影響を及ぼしています。そんな中で積極的に行われているのが、より大きな企業による吸収合併やM&Aといった選択です。

株式交換はそんなM&A手法の1つとして広く知られており、現金での買取ではなく株式を交換することで、100%子会社化し、事業の継続を実現するケースが相次いでいます。具体的な株式交換のメリットについては後述しますが、いずれにせよ株式交換は中小企業経営者にとって魅力的なメリットが目立つ方法であるため、選ばれる傾向にあります。

吸収合併の場合、親会社に自社が統合される形になりますが、株式交換などによるM&Aの場合、子会社として自社の存在を引き続きキープできます。経営責任が合併によって曖昧になる心配はなく、これまで培ってきたブランドを存続できるため、会社に愛着のある人にとってはありがたい選択肢です。

また、株式の交換によって親会社に支配権を与え、その会社にとって不利益をもたらすかもしれない株主を排除するために実行されることもあります。会社へ口出しができる株主が複数いると、その会社は当初想定していたような事業の展開を、株主の一声によって阻まれてしまう可能性があります。円滑な事業展開を目指すためには、自社の経営方針と相性の良い株主を探す必要がありますが、会社を乗っ取られるリスクを回避するため、株主交換による子会社化を望む経営者が増えてきています。

株主総会において、株主の2/3以上の承認が得られれば、株式交換による子会社化を進められます。親会社が確実に子会社を手中に収めておきたい場合に有効な選択肢でもあります。

株式交換と株式移転の違い

株式交換と似たような手続きの1つに、株式移転と呼ばれるものがあります。株式移転は、主に持株会社を設立する際に実施される手続きで、新設する持株会社によって、既存の会社の株式を管理します。会社の名称に「ホールディングス」とついている会社の多くは、持株会社を指しています。

食料品や生活用品の販売でお馴染みのセブン&アイ・ホールディングスは、持株会社の代表例といえるでしょう。持株会社の特徴となるのが、その会社が直接事業を行うわけではなく、あくまで株式の管理に努めるだけであり、事業そのものはその傘下の企業に任せるという点です。グループ全体の動向を持株会社が管理し、個々の企業の成長を見守るのはもちろん、グループ全体の成長を促進するためのマネジメントに努めます。

そんな持株会社化にともなう株式移転も、M&A手法の一環として広く認知されています。株式移転を実施する場合、大きな目的となるのが複数社間の経営統合です。例え異業種同士であっても、お互いの強みを提供しあい、相乗効果を発揮できれば、更なる成長をお互いに見込むことができます。

また、吸収合併や株式交換とは違い、2社が対等の立場で、それぞれのオリジナリティを保持したまま経営を統合できるので、経営統合の成功率を高めたい場合にも選ばれる傾向の強い手法です。大手企業が株式移転によるホールディングス化しているのは、このようなメリットを期待してのこともあります。

株式移転による持株会社の設立は、単一の組織が実践するケースもあります。これは、新規で設立した持株会社の傘下に完全子会社として、グループ企業が入るために行われます。グループでの経営を強固なものとして発展させるうえで有効なため、強力な共同体をグループ内に形成できます。

株式交換と株式移転の違いを一言で説明すると、株式交換は既存会社が親会社と子会社に分かれる方法で、株式移転は親会社を新しく新設し、M&Aを実施する企業が対等な子会社としてその傘下に入る方法です。既存の会社に株式を取得させるのか、新しく設立する会社に株式を取得させるのか、という違いも見られます。

株式がどのような動きを見せ、誰が保有するのかを追いかけることで、両者の違いをより深く理解できます。

三角株式交換とは

株式交換の手法の1つとして、三角株式交換と呼ばれる方法が存在します。三角株式交換は、子会社に編入予定の会社に対して、親会社の株式を対価として交換するのではなく、親会社のさらに親会社、いわゆる祖父会社や親会社の株主の株式を対価として交換するという方法です。この方法は親会社となる会社の100%の支配権を握っている場合に採用される株式交換方法の1つで、日本企業が海外の企業を株式交換によって傘下に収める際に用いられるM&A手法でもあります。

また、三角株式交換と似たような合併方法として、三角合併と呼ばれる手法が存在します。こちらは吸収合併によって親会社に吸収される非合併会社(消滅会社)の株主に対して、親会社となる会社の株式を交付することで取引を成立させる合併方法です。

日本の会社法において、三角合併を行う際には親会社の国籍が問われることはなく、海外の企業が日本企業を吸収合併する際、三角合併によって実施されるケースが多く、吸収された会社は事実上消滅するため、マスメディアなどでは日本産業の破壊と称することもあります。三角株式交換もまた、国家を跨いで会社の統合や子会社化を進める際に行われますが、三角合併との相違点として、子会社化される会社は法人格が残されるという点です。

三角合併の場合、組織としては親会社の中に残るかもしれませんが、世間体としては法人格が失われ、会社が消滅したことになるため、培ってきたブランドなどは失われてしまいます。しかし三角株式交換の場合、資本上では子会社化したとしても、会社の名前はそのまま残るため、通常の株式交換と同様、会社の存続につながる手法となっています。

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株式交換のメリット

株式交換のメリット

事業承継やM&Aを検討する際、多様な選択肢が用意されている中、株式交換が選ばれているのはどういった理由があるからなのでしょうか。ここでは株式交換のメリットとして、期待されているものをご紹介します。

買収のための資金を必要としない

株式交換の最大のメリットでもあるのが、買収のための資金を必要としない点です。

株式交換による完全子会社化は、自社株式を対価に子会社を100%手中に収めるという手法であるため、買収のための資金調達は必要ありません。企業の買収を実行するためには、通常株主や投資家から買収のための資金調達を行い、新たに株を発行したり、自己株式を売却したりすることで現金を確保する必要があります。あるいは銀行からの融資を受けることで、まとまったお金を手に入れなければなりません。

資金調達を行った場合には、分配や返済の必要が出てくるため、これらの負担を後々になって処理しなければならなくなります。銀行から間接融資を受ける場合、そもそも審査に通過しなければ現金を調達できないので、そのために負担を強いられることにもなるでしょう。

あるいは、自社で蓄えてきた内部留保金を放出し、買取のための資金を用意する方法もあります。ただ、内部留保金は、深刻な経営危機に陥った際、虎の子として現金を迅速に確保するために用意しておくことが理想的であるため、よほど会社の命運がかかった企業買収でなければ、積極的に選ぶべき選択肢であるとはいえないでしょう。

このような事情を多くの会社が抱えているため、現金調達の必要が発生しないという株式交換のメリットは、非常に有意義であるといえます。親会社の株式価格が子会社と比べて高いようであれば、交付する必要のある自社株の割合も少なく抑えることができるため、非常に効率的です。

子会社が親会社の経営にコミットできる

2つ目のメリットは、傘下となった子会社も、親会社の経営にコミットできるという点です。

株式交換は、親会社に対して子会社側が自社株を100%渡すM&A手法であるため、支配権は親会社にあります。とはいえ、たいていの株式交換においては子会社が親会社の操り人形となるケースは少なく、どちらかというと前向きな協力関係として、親子関係が結ばれます。

子会社が親会社に対して一方的な命令が下されるというよりも、グループ会社同士として対等な関係が築かれ、お互いのさらなる利益追求に向けた、前向きなコミュニケーションが行われます。株式交換という仕組み上、支配権が親会社に親会社に移るため、その点を懸念事項と考えている方もいますが、株式交換という手法でのM&Aであればそのような心配も小さいのが強みです。

一方で吸収合併の場合、親会社と消滅会社の立場となってしまうため、非吸収会社は既存の組織体制を維持することは極めて難しくなります。株式交換は法人格の存続を実現できる手段である一方、吸収合併においては組織が1つ消滅することとなるので、対等な立場で親会社と向き合うのは難しくなるでしょう。子会社の存続が大きな意味を持つ場合、やはり株式交換による子会社化を検討することがおすすめです。

適格株式交換が適用されれば税対策となる

株式交換にもいくつかの種類がありますが、注目したいのは適格株式交換が認められるかどうかです。適格株式交換とは、株式交換の際に金銭が対価として発生しないなどの要件を満たした場合、子会社側に課税が行われないという制度です。

適格要件を満たさなかった場合、株式を子会社が売却した際などには課税対象となりますが、適格株式交換として認められることができれば、株式売却によって獲得した利益が課税対象から外れるようになります。株式交換にはこのような税対策の側面も持ち合わせているため、その点を踏まえた交換を実施できるのが理想的です。

株式を少数の株主から吸収することができる

株式交換は、100%親会社が子会社を傘下に収める方法であるため、親会社以外に子会社に対する株主が存在しないこととなります。

株式交換は、株主内で2/3以上の同意を集めることができれば実施が可能なM&Aです。そのため、株主の中に会社のやり方に対して否定的な意見を持つ人がいても、彼らの反対を押し切って子会社化を進めることができます。完全子会社化を実現できれば、親会社は子会社に対して強力な意思決定権を有することになるため、株主に対する説得は必要なくなります。敵対的な株主がいた場合でも、子会社化によって彼らを排除し、グループ企業としての一体感を維持し続けることができます。子会社が保有していた株式を整理し、一気にまとめ上げるチャンスであるといえるでしょう。

株式交換のデメリット

株式交換のデメリット

株式交換には多くのメリットが期待できる一方で、注意すべきデメリットも存在します。ここでは株式交換における懸念点について確認し、実施に際して冷静な意思決定ができるよう備えておきましょう。

株価が大きく変動する懸念がある

株式交換における主なデメリットとなるのが、子会社が上場企業である場合、株価が大きく変動する可能性がある点です。株価が下落する理由は、まず上場企業の子会社化によって上場が廃止となるためです。株式交換は100%親会社が株式を取得するため、上場できなくなり、株価の流動性は著しく低下してしまいます。

2つ目の理由は、プレミアム支払いの実行です。プレミアム支払いとは、子会社側の時価総額に対して上乗せして買収価格を支払うというものですが、株式交換においては親会社側の比率を上乗せした形の交換比率が採用されるため、通常の株式市場よりも高い価格で株式がやり取りされることとなります。結果親会社への買いが集中し、株価上昇につながるケースがあります。

株式価格については、親会社の株価が上向きに傾く場合と、下向きに沈む場合の2つのパターンがあります。例えば子会社のブランド価値が高く、優良企業として認知されている場合、親元となる親会社の株価にも良い影響を与え、株価の上昇につながります。

一方で、子会社が赤字企業であった場合、親会社の業績が今後低下すると見込まれるケースが多く、たいていの場合は株価が下落する傾向にあります。財務状況の悪化によるリスクの懸念が広がると、株式売却が進むでしょう。上場企業にとって、一般的に株価は高い方が良いとされていますが、事業承継を念頭に置いた株式交換を実施する場合、株価は低い方が評価額を抑えられるため、贈与税や相続税を小さく済ませるうえで重要です。

株式交換にともなう株価の急激な変動を解消する方法としては、株式の発行による評価額の引き下げが有効です。どれだけ株を発行しても、親会社にとっての資産負債は変動しないため、株式発行によって評価額を下げることは、税対策に効果的です。

また、生命保険への加入も税対策を念頭に置いた場合には有効と考えられています。生命保険の価値は加入直後には、ゼロに等しいため、資産価値を大幅に引き下げることができます。そのため株価の下落を招き、評価額を下げて、税対策に貢献します。株式交換にともなう株価の変動に対して、どのように対処すれば良いのかも事前に検討しておくことが重要です。

株主構成に変動がある

2つ目のデメリットは、株主構成に変動が生まれてしまう可能性がある点です。

株主構成とは、株主と持株比率をわかりやすく表示したもので、持株比率の高い大株主や、もっとも株式を保有している筆頭株主を特定したり、株主を特定のカテゴリー別に分類し、どのカテゴリーに株主が分布しているかを明らかにしたりする役割を担います。

株主のカテゴリーというのは、金融機関なのか、そのほかの法人なのか、外国法人なのか、個人なのかといった分類です。持株比率は常に変動する割合であるため、会社の状況によってはその割合が大きく変動する可能性もあります。株式交換も、そんな親会社の株主構成を大きく変動させる手続きであるため、注意が必要です。

その理由は、完全な子会社として組み込んだ先の株主が、そのまま親会社の持株比率に影響を与えるため、株主総会時の議決権の割合が揺らぐ可能性を持っていることです。持株比率に応じて、株主は会社に対して行使できる手続きが増えます。会計帳簿の閲覧や、株主総会における議案の提示、10%以上の保有者が現れれば、株式会社の解散も要求することができるのです。

株式交換の結果、株主構成にどのような変動が生じ、その結果どんなシナリオが描かれることになるのか、という点にも配慮しておく必要があるでしょう。

煩雑な手続きをこなす必要がある

株式交換における3つ目のデメリットは、煩雑な手続きが発生するという点です。

具体的にどのような手続きが必要になるのかについては後述しますが、株式交換に際してはステップごとに相応の負担が発生するため、一朝一夕で手続きが終わらない点に注意しましょう。

スピーディな決裁を必要としている場合、株式交換では遅すぎるという場合もあるため、株式交換を行う際には余裕を持って手続きに臨むことが大切です。基本的に、株式交換は自社のみで手続きを完結させるのは難しく、専門家への相談、M&Aコンサルタントなどの手を借りながら進める必要があります。それにともなう手数料の発生なども踏まえ、株式交換から得られるメリットを勘案することが大切です。

株式交換の主な手続きの流れ

株式交換の主な手続きの流れ

それではここから、株式交換の主な手続きの流れについて見ていきましょう。株式交換の手続きは、ただ株式を取り替えるだけでなく、それにともなうさまざまな手続きが発生します。トラブルを回避し、効果的な株式交換を実現できるよう、それぞれのステップを丁寧に進めることが大切です。

取締役会決議から株式交換契約の締結

株式交換を会社法に基づいて進めていく場合、まず必要となるのが取締役会決議において、会社の経営陣の中で株式交換契約の内容を協議のうえ、合意形成を行うことです。社内で合意が取れた後、あるいは取締役会が存在しない場合は取締役による決議が行われた後、買い手となる企業と売り手となる企業同士で、株式交換契約を結びます。

株式交換契約において、契約書に明記しなければならない事項は会社法に基づいて定められており、株式交換をどのような目的のため実施するのか、契約を結ぶ当時会社がどのような組織なのか、株式の交換比率はどれくらいか、といったことを明記しておく必要があります。

適時開示・事前開示

株式交換を行う会社が上場企業である場合には、取締役会において重要事項が決定された際、開示が求められます。これを適時開示と呼びます。株式交換の契約締結も、重要事項の決定とみなされるため、契約締結後直ちに適時開示を行う必要があります。

適時開示が必要な事項は、ほかにも組織の再編成や事業譲渡が行われた際、子会社の株式取得が行われた際などが挙げられます。

また、株式交換の情報を一般に公開するために、そのための書類をあらかじめ用意しておく必要があります。いわゆる事前開示書類と呼ばれるもので、株主や債権者が株式交換を支持するかどうかの判断材料を提示しなければなりません。これらの書類は総会前に作成し、本店に備置しておくことが義務づけられています。備置期間は、株式交換の効力が発生してから6カ月間です。交換が決まったからといって、すぐに破棄しないよう注意が必要です。

株主総会の招集と株式交換契約の承認要求

続いて、株主総会の収集を呼びかけなければいけません。株式交換を成立させるためには、株主総会において2/3以上の株主の同意を得る必要があり、そのための株主招集を通知します。

招集通知は上場企業の場合、総会の2週間前までと定められており、非上場企業の場合は1週間前までが原則とされています。また、株主総会における株主の同意を得るうえでは、株式交換の効力が発生する1日前までに実施することが必要です。株式交換の真を問う総会の場合、招集通知に株式交換の旨を記載しておきましょう。

総会がはじまると、株主総会における特別決議の枠組みで、議決権を持った株主からの同意を集める段階に入ります。この際、2/3以上の同意が必要なだけでなく、議決権を持った株主が過半数出席している必要もあるため注意しておきましょう。例外的に、簡易株式交換、および略式株式交換の適用条件に当てはまる場合、株主総会における同意がなくとも株式交換を成立させることができます。これについては後ほど詳しくご紹介します。

債権者保護の手続き

株式交換が公式に認められると、続いて債権者保護の手続きに進みます。親会社となる企業からの対価として、現金などが株式の代わりに交付される場合、債権者への不利益を回避するための手続きが必要です。

債権者には官報公告と個別通知の2通りで周知が行われ、株式交換を行うことや、株式交換によって資産にどのような変動があるのかなどを伝えます。また、100%の株式を持つ親会社から、完全な支配権を握られている子会社の新株予約権付き社債を承継した場合にも、債権者保護の手続きが必要になります。

完全子会社が株式発行会社の場合、株主に対して株券を提供するよう求めることになります。これを株券等提供公告と呼び、株式交換の効力発生日の1カ月前には行う必要があります。迅速に手続きを進めましょう。

反対株主からの買収

続いて、反対株主からの株式の買収を進めます。2/3以上の賛成で株式交換は成立しますが、反対者が一定数ある場合でも行使されるのです。株式交換に反対する株主は、株式交換によって不利益を被るため、企業には彼らの利益を守る必要があります。

反対株主から株式を買い取るよう要請があった場合、会社は買取に応じる義務が生じます。また、株式交換を行う会社は反対株主に対して、株式買取請求権があることを通告する義務もあります。この情報共有については、株主総会の開催通知と同じタイミングで通知しても問題はありません。また、簡易株式買取の場合、例外的に株式買取請求権が認められることはありません。

同時に、株式買取請求権を行使する場合、反対株主が事前に株式交換に反対する旨を伝えるとともに、いくつかの要件を満たす必要があります。そのため、いたずらに株式買取請求権が濫用されることはありません。

金融商品取引法に則った手続き

株式交換が認められた後、金融商品取引法に則った手続きの開始が必要です。金融商品取引法においては、株式交換をはじめとする組織再編があった場合、必要な情報を開示することが義務づけられています。あらかじめ会社ごとに事前開示書類が求められるのも、金融商品取引法において義務づけられたルールです。

また、株式の募集や売り出しが行われた場合、有価証券届出書(有価証券通知書)の提出が必要になります。発行(売出し)価格の総額が1,000万円以下の場合には不要ですが、1,000万円超から1億円未満の場合には有価証券通知書が、1億円以上の場合には有価証券届出書が求められます。

より詳しい金融商品取引法が定める有価証券届出書の条件については、以下の財務局のサイトからご確認ください。

参考:有価証券通知書:財務省関東財務局

参考:http://shikoku.mof.go.jp/disclosure/institution/summary.html

保有株式提出の手続き

子会社となる企業が株券を発行している、あるいは新株予約権証券を発行している場合には、株主に対してそれらの提出を求める必要があります。

株主は株式交換の効力発生日までに保有株券を提出しなければならず、万が一株券の提出を怠った場合、企業は対価を渡さなくても良いというルールが適用されます。紛失や盗難などのやむを得ない事情でない限り、提出手続きは必要です。

効力の発生と登記

株式交換の契約においては、効力の発生日を定めることが義務づけられています。契約に基づいて効力が発生すると、完全親会社は子会社の株式を正式に全て取得することとなります。

効力の発生以降、新しい株式の発行や新しい会社の設立などがあった場合、できるだけ迅速に登記を進めます。なお、株式を交換するだけの場合は資本金や発行済株式総数は変わらないため、登記の必要はありません。また、完全子会社も株式を交換するとはいえ、手続き上は株主が変わるだけであるため、登記の必要はありません。

公正取引委員会への手続き

株式交換を行う完全親会社と完全子会社の、市場に占めるシェアが大きい場合、株式交換がマーケットに与える影響も無視できないものになります。その場合、独占禁止法の規定に基づき、公正取引委員会への届出を行わなければなりません。

株式届出の条件としては、株式の取得を検討している会社、および取得を検討している会社が属している、企業結合集団の売上高が200億円を超える場合や、子会社の売上が50億円を超える場合などがあり、届出の基準について明確に指標が設けられています。詳しい届出要件については、公正取引委員会の公式サイトを参考にしてください。

参考:株式取得の届出制度:公正取引委員会

事後開示書類の備置と開示

株式交換の効力が発生してから6カ月間、当事会社は事後開示書類を本店に備え置いておくことが義務づけられています。事後開示書類とは、株式交換の結果、どのような手続きが行われたのか、買取請求の状況はどうなっているのか、異議申し立てが行われたのかなどの報告をまとめたものです。公に開示しておく必要があるため、手元に残しておきましょう。

株式交換無効訴えへの対応措置

株式交換ののち、株主および債権者などの保護の不履行が発覚したり、契約に不備があったりした場合、株主や当該会社の取締役は株式交換の無効を訴える権利があります。無効の訴えが効力を発揮するのは、株式交換から6カ月です。何らかの問題が発生した場合、期間内であれば株式交換の無効が発動できることを覚えておきましょう。

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簡易株式交換と略式株式交換

簡易株式交換と略式株式交換

株式交換には通常の手続きのほかに、簡易株式交換と略式株式交換と呼ばれる手続きも存在します。それぞれの手段の違いや特徴について、ここで確認しておきましょう。

簡易株式交換とは

簡易株式交換は、株式交換を実施する際に親会社が支払う対価、つまり完全子会社となる会社に渡される株式総額が、完全親会社となる企業の純資産において1/5以下となる場合の株式交換を指す言葉です。

簡易株式交換の要件に当てはまる場合、通常の株式交換と比べて親会社にとっての緊急性が小さいとみなされるため、株主総会決議を省略できます。通常の株式交換は2/3以上の議決権を持つ株主の賛成が株主総会において得られなければ、実行できません。しかし簡易株主交換とみなすことができれば、株主による反対決議が行われず、株主総会を開く負担を解消できるため、スムーズに株式交換を遂行できます。簡易株式交換は中小企業よりも、むしろ大企業の負担を軽減するために設けられている制度です。

一方で簡易株式交換には例外的に、親会社における株式総数の1/6を占める株主によって反対が表明されている場合や、株式交換によって損失が発生する場合などには、株主総会をスキップできないといった規定も存在します。一概に簡易株式交換であれば株主の都合を考える必要がなくなるというわけではなく、あくまで公正な手続きを遵守する必要がある点は覚えておきましょう。

略式株式交換とは

簡易株式交換と同じような用語として、略式株式交換と呼ばれる手続きが存在します。略式株式交換もまた、簡易株式交換と同様、株主総会を省略できる便利な制度です。

略式株式交換が適用される条件としては、完全親会社となる企業が完全子会社となる企業に対して、株式交換以前から90%を超える議決権を有していることが求められます。

簡易株式交換の場合は、子会社の資産に対して親会社がどれだけの資産を有しているか、ということが適用の条件とされていましたが、略式株式交換の場合、親会社が子会社に対してどれくらいの支配関係にあるのか、という点が重要視されています。つまり、資産の面で子会社に対して圧倒的なアドバンテージがある場合には、簡易株式交換が成立するようアプローチを考えれば良いですし、子会社に対して支配権においてアドバンテージがある場合には、略式株式交換を検討するのが良いでしょう。

ただし、簡易株式交換同様、略式株式交換においても、株主総会を省略できないケースが存在します。例えば、子会社が公開企業であり種類株式発行会社ではない場合に加え、譲渡制限株式が交付されているケースです。譲渡制限株式は、その名のとおり株式の譲渡において、何らかの制限が設けられている株式を指します。会社にとって不利益な人物に株式が行き渡らないようにするためであったり、株式の所有者を明らかにしておくためであったりといった理由から、会社法に基づいて交付されます。

この条件下で株式交換を行いたい場合は、株主総会を開いたうえ、特殊決議を行う必要が出てくるため、略式株式交換といえども手続きの簡略化ができない点に注意が必要です。特殊決議は、あらかじめ定められた要件を満たしたうえで決議を行わなければならない制度です。特殊決議が求められる事案としては、譲渡制限株式をともなう株式交換、定款の廃止や変更といったものが挙げられます。いずれにせよ、略式交換であれば確実に短期間で株式交換を実行できるわけではないことを覚えておきましょう。

簡易組織再編について

簡易株式交換にともない、よく議題に持ち上がるのが簡易組織再編です。組織再編に向けた行為には、株式交換のほかにも株式移転や吸収合併、スクイーズアウトなどさまざまな手法が挙げられます。これらはすべからく特別決議が求められる事案であるため、手続きを前進させるためには時間を要します。しかし、簡易株式交換の実現のような条件を満たすことで、株主総会を省略できる組織再編行為も存在します。これらは総称して簡易組織再編と呼ばれており、組織再編の際に純資産の1/5にあたる額が承継される際に適用可能な手続きとなっています。

簡易組織再編の主な手段には、簡易吸収合併などが挙げられます。簡易吸収合併は、合併の対価として吸収先に交付される資産総額が、吸収先会社の純資産額の1/5に当たる場合に適用されます。純資産額の1/5という割合は、簡易株式交換においても適用要件として定められていた数字です。あるいは、簡易吸収分割も似たような要件が適用されます。吸収分割の手続きを進める際、事業承継分割先の企業に渡る帳簿価額合計額が、分割会社の資産の1/5となる場合、株主総会を省略できます。

株式交換のようなM&A手法は、組織再編と似て非なる手続きではあるものの、株主総会の手続きを省略できるなどのメリットが活きてくる可能性があります。その場合には、M&Aではなく簡易組織再編を選ぶという手段も選択肢に挙げることができるかもしれません。

簡易株式交換に対する株式買取請求について

簡易株式交換を実施する場合、必ずしも全ての株主が交換に対して好意的な感情を抱くとは限りません。株式交換を実施する場合、反対を表明する株主には株式の買取りを申請できる権利が与えられますが、これは簡易株式交換を実施する場合でも同様です。

株式交換という企業活動に加担しないため、株式を会社に買い取らせることができる制度づくりが行われています。通常の株式交換の場合、株式交換に反対する株主は株主総会や株式交換の通知が会社から届いたのち、自身の反対意見を会社に通告する必要があります。株主総会においても反対意見を表明し、あくまで賛成できない立場であることを貫かなければなりません。

一方、株主総会が行われない簡易株式交換においてはどうなるのでしょうか。結論からいうと、株式交換に反対する株主は、会社と買取金額について直接交渉しなければなりません。

その理由は、反対株主は事前に反対を表明する場を与えられず、株式買取請求を直接伝えなければならないうえ、法的に買取金額が定められているわけでもないからです。そのため、両者が納得のいく金額で株式の買取りを進める必要があります。株式買取り金額の協議がどのくらいの密度で行われるかについてはケースバイケースですが、多くの株式買取が必要になる場合、交渉が難航する可能性もあります。それぞれが想定している価格設定に開きがある場合には、お互いに譲歩しながら金額を設定しなければなりませんが、場合によっては訴訟に発展するケースも見受けられます。

株式価格の交渉に会社側が勝訴すれば何の問題もないものの、株主側の勝訴となってしまうと、裁判費用に加え、想定よりも多くのコストが株式買取に発生する場合もあります。また、株主に投資ファンドが存在する場合、積極的に訴訟を起こされてしまい、株式価格を高く設定されて、交渉が難航する可能性も懸念されます。

このようなトラブルを回避するためにも、株式買取を実施する会社は、株主の利益をまずは尊重する姿勢の表明が重要になります。株式交換によるM&Aの実現は、会社にとって大きなチャンスが訪れる一方で、これまでにない窮地に立たされるリスクもあります。株主がそのようなリスクを恐れるのも無理はないため、彼らとうまく着地点を擦り合わせながら計画を立てる事が大切です。

株式交換の税務・税金

株式交換の税務・税金

続いて、株式交換における税務上の手続きについて、見ていきましょう。
株式交換における税務手続きを理解するうえで、ポイントになるのが以下の3つです。

1. 完全子会社における税務上の取扱い
2. 完全親会社における税務上の取扱い
3. 完全子会社の株主における税務上の取扱い

順に解説していきます。

適格株式交換と非適格株式交換について

そもそも株式交換における税金の額がどれくらいになるかというのは、その株式交換が的確株式交換にあたるのか、非的確株式交換にあたるのかによって変わります。

的確株式交換の要件を見極めるポイントとしては、親会社が子会社をどれだけ支配しているかによって要件が変動するという点です。例えば親会社と子会社が支配率100%の完全支配関係にある場合、完全支配関係の継続と、株式以外の交付を行わないことで、的確株式交換とみなされます。

一方、支配率が50%に及ばない、共同で事業を行うことに主眼を置いた株式交換の場合、完全支配関係の要件のクリアに合わせて、従業員の引き継ぎや事業の継続、事業の関連性や株式の継続保有なども条件に含まれます。自社の株式交換の要件がどれくらい当てはまりそうか、一度確認することをおすすめします。

1.完全子会社における税務上の取扱い

まずは、完全子会社となる会社の税務上の取り扱いについて見ていきましょう。

まず、株式交換が適格株式交換として認められる場合、完全子会社に課税は発生しないため、特別な税対策を施す必要はありません。まずは適格株式交換と認められるよう、アプローチを検討する必要があるでしょう。

非適格株式交換とみなされる場合は、子会社は何らかの課税対象となります。完全子会社が保有する資産に対して時価評価が行われ、評価額に応じた税金の支払いが発生します。課税対象となった場合、株式交換に含み損益が生まれる可能性があるため、そのリスクはあらかじめ想定しておきましょう。貸方科目として時価評価資産、借方金額として含み損益額、貸方科目として評価損益、貸方金額として含み損益額が当てはまります。

2.完全親会社における税務上の取扱い

完全親会社の場合においても、まず株式交換が適格株式交換として認められた場合は、特別な課税は発生しません。

問題となるのは、非適格株式交換として処理しなければならない場合です。株式交換完全子法人株式の時価を取得価額と定め、処理が必要です。借方科目を完全子法人株式、借方金額を時価、貸方科目を資本金等の額、貸方金額を左の金額とします。また、完全親会社と完全子会社の間に、株式交換の前に完全な支配関係が成立していた場合、適格株式交換として認められ、課税は発生しません。

3.完全子会社の株主における税務上の取扱い

完全子会社の株主における税務上の取扱いについても確認しておきましょう。

株主の税務上の扱いも、適格株式交換が適用される場合には課税対象となることはありません。非適格株式交換の場合は、交換対価が株式のみの場合・そうでない場合の2通りに支払いが分かれます。

まず交換対価が親会社の株式のみ、あるいは直接完全親会社株式のみの場合、株式交換完全子会社株式の、直前の帳簿価額を株主交換完全親法人株式に入れ替えることで対応します。借方科目は完全親法人株式、借方金額は簿価付替、貸方科目は完全子法人株式、貸方金額は簿価となります。上記の要件に当てはまらない交換対価が発生する場合、交換対価を時価で計上します。

この際、株式が混在している場合も、株式も時価で計上のうえ計算を行います。消滅する株式交換完全子会社株式と交換対価の差額を計上し、譲渡損益として扱います。借方科目は交換対価、借方金額は時価計上、貸方科目は完全子法人株式あるいは譲渡損益、貸方金額は簿価あるいは貸借差額となります。

株式交換の事例

株式交換の事例

ここで、実際に行われた株式交換の事例について見ていきましょう。株式交換は企業の大小を問わず実施されているM&A手法で、多くの業界の会社が実勢している様子がうかがえます。

川崎汽船株式会社

川崎汽船は2022年3月に両社の取締役会で、連結子会社の川崎近海汽船とともに、川崎汽船を株式交換完全親会社、川崎近海汽船を株式交換完全子会社とする株式交換を行うことを決議しました。すでに両者間で株式交換の契約締結は完了しており、2022年の6月1日を効力発生日としています。

今回の株式交換は、川崎汽船において株主総会の承認を受けずに行える方式を採用のうえ実施されており、迅速な株式交換の効力発生が促されています。子会社となる川崎近海汽船では、5月10日に開催予定の臨時株主総会の決議で承認を受けたうえで、株式交換が成立することとなっています。川崎近海汽船は上場企業ではありますが、株式交換の効力発生日を目前にした5月30日に、東京証券取引所市場第二部からの上場廃止を予定しています。

参考:https://www.nikkei.com/article/DGXZRSP628556_W2A310C2000000/

イオン株式会社

日本のスーパーマーケット業界において大きな転換点となったのが、2014年に行われたイオングループとダイエーによる株式交換の実現です。

株式交換とはいえダイエーはイオンの完全子会社となり、株式は100%イオンに譲渡される形となりました。業績不振が続いていたダイエーの早期再建を目指すことを目的とした株式交換で、当時低迷していたイオンのスーパーマーケット業務を刷新するためのテコ入れとしても、注目を集めていました。

これまで食料品店の代名詞でもあったダイエーですが、株式交換以降は首都圏・京阪神地域の食品スーパーの運営会社として存続され、一般消費者の間でダイエーの屋号が使われることはなくなりました。しかし完全子会社として親会社の傘下に入ることは、余計な株主の声を排除し、速やかに再編を遂行していくうえで非常に有効な戦略です。

特に当時のダイエーのように、経営不信に陥っていた状況では、一刻も早い再編を進めていくことが求められます。ダイエーは18年度に売上高5,000億円以上、営業利益率は3%の企業になることを目指すだけでなく、100億円をこえるシナジーが期待されていました。当時、首都圏および京阪神地区において、90%前後の店舗を有していたことから、都市圏の人間にとってはお馴染みのオレンジのロゴマークでしたが、これらが街並みから消滅するインパクトは大きいものがありました。消費者向けの事業を展開する企業にとって、株式交換にともなう屋号の消滅や経営体制の刷新は、売上やブランド認知も大きな影響を与えることを視野に入れておく必要があるでしょう。

参考:https://newspicks.com/news/631079/body/?ref=search

ふくおかフィナンシャルグループ

九州エリアで金融サービスを手がけているふくおかフィナンシャルグループは、2016年に長崎県の十八銀行との経営統合に向けて基本合意を形成しています。株式交換を経て完全子会社化するだけでなく同グループ傘下で長崎県を地盤とする親和銀行と合併させる計画のもとに計画が実行されました。

15年3月期の単純合算で統合後の総資産は18兆4,429億円に達しており、地銀グループとしては当時国内首位を誇っていました。地方銀行の経営不振が全国的に波及する中、ファイナンシャルグループによる地銀再編は、地域経済の復興においても重要な意味を持っています。

特に長崎県は九州地方において人口減少が著しい地域として懸念されており、統合による経営基盤の強化で経済規模の縮小に対応しました。店舗の統合といった効率化を図る一方で、リストラのような形式で人員削減を行うことはないとし、地域の活性化とICTツールを活用した業務効率化、及びサービスの刷新に努めるとしました。

ヤマダホールディングス

家電製品でお馴染みのヤマダホールディングスは、2021年6月に51%を超える株式を保有する大塚家具を、株式交換で完全子会社化すると発表しました。大塚家具は以前より親子対立によって経営不振が続いていましたが、100%の子会社化によって、本格的な経営再編が始まるとされています。

大塚家具は2020年4月期まで、4期連続で営業損益・営業キャッシュフローがマイナスとなっていたために、すでに上場廃止の猶予期間に差し掛かっていました。上場廃止を回避するためには2022年4月30日までの黒字化が求められていましたが、この度の株式交換にともない上場は廃止され、ヤマダホールディングスの子会社として経営が継続される見込みです。

ヤマダホールディングスは2019年の連結子会社化を実現し、2020年には前社長の大塚久美子氏が辞任したことで、ヤマダホールディングスの三嶋恒夫会長が社長を兼務する形となっていました。今回の100%子会社化にともない、大塚家具の動向がどのように変化していくのかに注目したいところです。

参考:https://newspicks.com/news/5920252/body/?ref=search

株式会社メルカリ

CtoCサービスを手掛けているメルカリは、IT分野における企業の買収や子会社化を進めています。

2018年10月、メルカリは「CARTUNE」を運営しているマイケルを完全子会社化すること発表しました。マイケルの子会社化は簡易株式交換によって実施され、株主総会における決議を省力する形で交換が行われました。マイケルの株主には普通株式1株に対して、メルカリの普通株式194.83株が割当てられ、39万2,582株をメルカリ株価3,820円で交付するとし、概算で約15億円の企業評価がマイケルに見込まれています。

メルカリはこれまで、個人間の取引を広く取り扱えるプラットフォームを形成してきましたが、マイケルが手がけてきた「CARTUNE」は、カスタムカーに特化したコミュニティに向けて提供されていた、CtoCのプラットフォームです。

メルカリでは専門性の高いプラットフォーム運営におけるノウハウ獲得や連携について積極的な模索を進めており、実際のCARTUNEにおける取引においてメルカリを活用するなどの新しいプランの策定にも動きはじめています。

参考:https://thebridge.jp/2018/10/mercari-acquired-cartune?utm_source=FeedBurner-Sd+Japan%28Japanese-New%29&utm_medium=feed&utm_campaign=Feed%3A+SdJapan+%28Bridge+%28Japanese%29%29

株式交換における注意点

株式交換における注意点

株式交換は、M&A手法の中ではポピュラーな選択肢として、企業規模を問わず採用されています。そんな株式交換を実現するうえでは、あらかじめ知っておくべき注意点も存在します。株式交換を検討するうえで参考にし、適切な判断を下せるよう備えましょう。

関係者とのコミュニケーションを怠らない

株式交換を実施する場合、親会社はもちろんのこと、完全子会社となる企業は経営のあり方に大きな変化が訪れます。株式交換を行う事実を、どの関係者に報告しなければならないのか、という点を確認しておく必要があるでしょう。

そもそも企業が完全子会社となること自体は、親会社となる企業との契約によって決められるため、M&Aそのものに法的な問題があるわけではありません。しかし、長い間契約を結んでいた関係企業からすれば、付き合いのあった会社が大手企業の子会社となることで、今後の契約が打ち切りとなったり、会社同士の交流が疎遠になったりという環境の変化が訪れる可能性も出てきます。その結果、間接的に自社と関連のあった企業に対して悪影響が及んだり、場合によっては経営のあり方を大きく左右する事態に発展したりする可能性もあります。

大手企業の企業再編の一環として株式交換が行われる場合、公正取引委員会に報告する義務があるのは、このような環境の変化がもたらす影響が中小企業に比べて非常に大きいためです。

しかし、株式交換によってそこまで大きな変化が訪れるケースはレアなものです。そのため、どちらかといえばモラルの観点から関係者への挨拶や同意を得ることが重要視されており、今後も良好な関係を継続するためにも、行っておいて損はないでしょう。

新規予約権の扱いに注意する

2つ目のポイントは、新規予約権の扱いについてです。株式交換に対して、反対意見を唱える株主が新規予約権を握っている場合、株式交換によって株を買い取ることができても、新規予約権を行使して自社株を手放してもらうことができないというケースに陥る可能性があります。

株式交換による完全子会社化は、株式の100%を親会社が握ることで成立するM&Aです。新規予約権を握っている株主をゼロにしなければ、完全な株式交換は望めません。こういった事態を避けるためにも、あらかじめ新規予約権を握っている株主がいないかどうか、確認しておく事が必要です。

あるいは、そもそもの新規予約権を停止することで、新たに株式が発行されてしまう事態を回避できます。新規予約権は株式を発行する会社が株主に向けて好意で提供しているものなので、いつでも予約権を無効化することはできます。新規予約権を見逃すことなく、株式交換の前に無効の手続きを進めておきましょう。株主総会において、抹消される新規予約権についての案内を提示するだけで、無効化の手続きは完了します。

ストックオプションの扱いに気をつける

3つ目のポイントは、ストックオプションです。ストックオプションは、株式会社の自社株式を、会社の経営者や従業員が、一定の価格で購入できるという権利の総称です。ストックオプションは会社によっては報奨金の代わりとして従業員に提供されるケースも多く、勤続年数が一定に達した社員などに対して配られていることがあります。

金銭の代わりに提供されているストックオプションですが、実は新規予約権と同様、会社経営者側の判断で、いつでもストックオプションを廃止できます。端的にいえば、いざというときにキープしておいたストックオプションも、会社の一存でその価値をゼロにできるということです。

ただ、いくら会社の一存でストックオプションをゼロにできるとはいえ、よほど経営状況が悪化してないのにもかかわらず、それを従業員に対してゼロにしてしまうというのはアンモラルな対応です。ストックオプションをいきなり廃止にしても法的な問題はないものの、ストックオプションを廃止する場合、それに変わる報償などを交換する権利を与えるのがベターな方法です。

余計なトラブルを回避するためにも、従業員の気持ちを思いやる手続きを進めることが大切です。ストックオプションそのものを買い取ったり、新しい親会社のストックオプションを付与したりするなどして、対応しましょう。

株式交換比率に配慮する

4つ目の注意点は、株式交換比率です。株式交換比率は、株式を現金と交換する際、どれくらいのレートで実現できるかというものを数値化したものですが、その交換比率は株主が誰であっても均等であることが理想的です。

例えば取締役の家族のみ交換比率が高かったり、株主によって交換比率がまちまちであったりするというのは、会社の評判を損ねかねない対応といえます。完全子会社化するとはいえ、会社の名前が残る以上、道徳的な対応が意思決定者には求められます。

企業買収・M&A相談ならウィルゲートM&A

企業買収・M&A相談ならウィルゲートM&A

株式交換は非常に有意義なM&A手法として注目を集めていますが、その手続きはいずれの手法であれ煩雑になる傾向が強く、当該企業間だけで手続きを遂行することは難しいものです。

ウィルゲートM&Aでは、15,100社を超える経営者ネットワークを活用し、ベストマッチングを提案します。Web・IT領域を中心に、幅広い業種のM&Aに対応しているのがウィルゲートM&Aの強みです。M&A成立までのサポートが手厚く、条件交渉の際にもアドバイスを受けられます。

一般的にM&Aの成約までは6ヶ月〜1年ほどの期間を要しますが、ウィルゲートでは平均で4ヶ月、最短1.5ヶ月での成約実績、40億円以上での成約実績もあります。完全成功報酬型で着手金無料なので、お気軽にご相談ください。

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株式交換 まとめ

株式交換 まとめ

今回は、株式交換の方法や株式移転との違い、そして具体的なメリットや手続きについて、網羅的にまとめてご紹介しました。

株式交換をM&Aの方法として選ぶ企業は後を絶たず、大手企業にも選ばれている確度の高いアプローチです。株式交換にも税対策となるもの、ならないものもあり、正しい手続きを踏む必要があるため、丁寧にステップを進めていくことが大切です。

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ウィルゲートが目指すのは、売り手様、買い手様、双方に納得感のあるM&Aです。M&Aがお客様の目的やご希望に合致しない場合、無理にM&Aをすすめることは絶対にありません。

M&Aで思わぬ失敗をしないためにも、まずは一度、ウィルゲートM&Aにご相談いただければ幸いです。
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成約実績は2年で50件以上、完全成功報酬型で着手金無料ですので、まずはお気軽にご相談ください!

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