参考にしたいコンテンツマーケティング事例を紹介する<このコンテンツマーケティングがすごい>シリーズも第四弾となりました。今回は旅行業界のオウンドメディア「TRiPORT(トリポート)」を取り上げます。
※現在は「Compathy Magazine」という名称で運営されています(2017/1/17現在)
TRiPORTは、株式会社ワンダーラストが運営する旅行者による旅情報の実名口コミ投稿サイト「Compathy(コンパシィ)」のオウンドメディアです。競合サイトがひしめく旅行業界で「TRiPORT」の立ち位置、さらには今後の展望について分析していきます。
目次
旅や海外に対する新しい価値観を届けたい。メディア立ち上げの背景
TRiPORTは株式会社ワンダーラストが2013年後半に立ち上げた、旅行に関する情報を発信するオウンドメディアです。
▼TRiPORT (http://blog.compathy.net/)
TRiPORTが担う役割は、同社が運営するサービスCompathyへのアクセス送客だと考えられます。
▼Compathy (https://www.compathy.net/)
Compathyは旅行者が旅の記録を共有する投稿型のサービスサイトですが、これまでの旅行業界のWebサービスにはなかった機能があります。それは、投稿写真の撮影日時・位置情報を利用することで、旅のルートや時間軸までも「ログブック」に自動的にまとめ、SNS上の友人やその他ユーザーと共有・交流できる点です。
実際に投稿されているタビの記録を見るとイメージが湧くかと思います。
▼Compathyでは旅行者が旅のルートを旅行記に記すことができる
TRiPORTの立ち上げ背景には、株式会社ワンダーラストが掲げているミッションがあります。
私達ワンダーラストは「世界中の「個人」をつなげる」ことをミッションとしています。
(中略)
私達はインターネットの力で「国境を越えたつながり」、
およびその礎となる「旅への渇望」(=”Wanderlust”)を生み出すことで、
個人の力で国同士の関係を変え、より良い世界の創出に貢献したいと考えています。
株式会社ワンダーラスト(Wanderlust Inc.)
メインサービスのCompathy、そしてTRiPORTを通して日本人の旅行や海外に対するイメージをポジティブに変えていきたいという想いがあるようです。このミッションを踏まえると、TRiPORTが何を目指して立ち上がったメディアなのかが理解できると思います。
「TRiPORT」は「タビ」や「カイガイ」への固定概念を超えて、新たな旅の魅力や価値観、それを実現する新しい旅の方法を届けたいという想いから生まれました。
About TRiPORT | TRiPORT – Compathy Travel Magazine
次に、旅行業界の一般的なマーケティング手法と比較しながらTRiPORTのマーケティング上の機能にフォーカスを当てていきたいと思います。
ユーザー動向と高騰するPPC単価を加味したオウンドメディア戦略
日本の旅行業界は、JTBや近畿日本ツーリストといった旅行代理店が移動手段と宿泊先がセットになったパッケージプランを、店頭に来店したお客様に接客販売するのが一般的でした。
そういった旅行代理店のマーケティング手法として、知名度を上げるためのマス向けの広告などが多く活用されてきました。
しかし、2000年以降インターネットの急速な普及により、ユーザーは旅行代理店へ足を運ぶのではなく、自らインターネットで検索し、より良い条件やお値打ちプランを比較検討するようになりました。楽天トラベル、じゃらん、フォートラベルといった旅行プラン比較サイトの台頭です。みなさんもこれまで旅行の際に一度は使ったことがあるのではないでしょうか。
このような市場の変化によって旅行業界のWebマーケティング競争は激化。大手旅行代理店からメディア企業まで、多くのプレーヤーが参入し、競合性が高まっています。
こうした背景を踏まえ、最近台頭している「トリップアドバイザー」「RETRIP」「タビジン」などの旅行サイトは口コミやブログ記事作成によるコンテンツマーケティングを実践し、顕在層だけでなく潜在層にアプローチする手法を取り始めています。
具体的には他メディアへの記事掲載からのトラフィックバックや、コンテンツへのナチュラルリンク獲得によってドメインを強化し自然検索で上位表示を狙うなどの手法で、CPAを抑えており、TRiPORTも同様の働きをすると考えられます。
旅行好きの方なら、具体的な予定がなくても、トリポートやCompathyを見ていれば楽しいと感じるはず。ユーザーとそういった関係性を築くことで、いざニーズが顕在化した時に選ばれる可能性が高まるのです。
TRiPORTのメインユーザーとカスタマージャーニー
次にTRiPORTの想定ユーザーのカスタマージャーニーを考えたいところですが、その前にワンダーラスト社がどのようにマネタイズしているかについて触れなければなりません。
Compathy及びTRiPORTはおそらく本記事執筆時点ではマネタイズしていません。
通常であればユーザーが購買に至るまでを想定して簡易的なカスタマージャーニーを作成しますが、今回はCompathyのダウンロードを最終目的とした場合のカスタマージャーニーを考えてみます。
そもそもCompathyを使うユーザーは旅行代理店でパッケージ商品買うタイプではなく、旅行プランを自分で組みたい、検索エンジンなどを活用して安く旅行を楽しみたいと考えるような人でしょう。ライター陣やCompathyの投稿者を見てみると、20代~30代がボリュームゾーンになっていそうです。
性別は問わず、旅行好きなユーザーが想定されていそうです。
おそらくCompathyの認知度はあまり高くないため、ユーザーに認知してもらうために記事を発信し、興味を持ってもらうことが重要です。
TRiPORTのコンテンツに触れて旅行熱が高まったユーザーにCompathyを認知してもらい、「行きたい場所を記録しておきたい」「自分もログブックを作りたい」というニーズを喚起、アプリダウンロードや会員登録をしてもらうというのが理想的なルートでしょう。
「Compathy」へのコンバージョン導線は、TRiPORTのサイドメニューやページ最下部に設置されているバナーです。また各記事の最後に、関連する「ログブック」へのリンクもあり、そこからCompathyのページに飛ぶこともできます。
旅行系ハウツーや現地情報、ストック型コンテンツが多めのコンテンツ構成
「旅行に行く前」「旅行の最中」「次の旅へ」の3つのカテゴリが用意されており、「旅の最中」という大カテゴリのコンテンツが最も多くなっています。
小カテゴリで見ると「場所」カテゴリの記事が最も多く、その次に「旅するアイデア」の記事が多くなっています。
主な記事タイプ
1.ハウツー記事
⇒それほど頻繁には旅行に行かない人向け(旅・旅行関連ワードで調べ物をする人)
例)
■荷物は最小限に抑えよう!旅先で洗濯する時の3つのコツ
■手荷物検査も恐くない!旅の荷物ワザ – 機内持ち込み編
2.現地情報(まとめ/コラム)
⇒海外旅行を計画・検討しているユーザー全般向け
例)
■Jacobオススメ!香港に来たら絶対に行ってほしい観光スポット
■あの珍味も体験できる!マカオではずせないグルメを一挙公開
3.インタビュー記事(コラム形式の記事もあり)
⇒新しい旅の視点を提案。普通の旅では飽き足らない旅行好きユーザー向け
例)
■「私たちはユーラシア人」ー渡辺真也がユーラシア大陸を横断して見えてきたもの
■最近よく聞くホステル・ゲストハウスの魅力と活用術をご紹介!
4.コラム
⇒海外志向が強い(≒海外旅行に行く可能性が高い人?)向け
例)
■真のグローバル人材とは?社会人層の留学が増えている3つの理由
■子供を世界へ飛び出させるために親ができる3つのこと
コンテンツを①バイラル性②商品(ユーザー)との関連性③ストックorフローという3つの観点からマトリクスで表現すると下記のようになります。
※コンテンツの形式だけでなく、扱うテーマによってバイラル性、ストック性が変わるため一概には言えません。あくまで目安としてプロットしたものです。
「Compathy」への送客への貢献度が高そうなユニークな現地情報の記事を中心に、バイラル性が高い記事もあり、バランスよく構成されているといえます。
今後の伸びが期待されるソーシャルメディアでの拡散
コンテンツ構成のバランスは良さそうなTRiPORT、コンテンツの拡散はどのようになっているのでしょうか。
SimilarWeb上では検索エンジンからの流入がもっとも多いと出ています。ストック性の高い記事が多かったのでそこは納得です。
旅行系のメディアであればソーシャルからの流入がもっと多そうですが、その他の経路と比較するとかなり少ないようです。
※Searchと書かれているのが検索エンジンからの流入割合
※あくまでSimilarWebでの調査であり参考値です。(調査日:2015年9月15日)
SEO状況:どんなキーワードを狙い検索エンジン上での露出はできているのか
「旅・海外旅行」関連のキーワードの上位表示状況を競合他社と比較してみました。
※自社開発のキーワード分析ツールを用いて分析。(調査日:2015年8月4日)
▼調査対象サイト
ターゲットが近しいと思われるサイトをメインで10サイト抽出
▼上位表示状況の競合比較
比較的検索回数が多い、旅行関連の情報収集系キーワードではあまり上位表示できていないようです。下図を見るとわかるように対象キーワードでの検索エンジンでの露出度は低い状況でした。
▼対象キーワードごとの検索結果順位詳細
性質としてはストック性の高い記事を保有しているものの、タイトルにキーワードが含まれていないなど、そのポテンシャルを発揮できていない可能性があります。
3語以上の掛け合わせキーワードであれば100位以内に入っている割合が上がるので、今後ドメインが強くなっていけば、ミドルキーワード、ビッグキーワードでも上位表示されていくかもしれません。
▼3語以上の掛け合わせキーワードでの上位表示状況の競合比較
ソーシャルメディア活用状況
Facebook、twitter、はてなブックマークでの拡散状況を図表にまとめました。
ソーシャルに強い競合サイトが多くいるため、そこと比較すると苦戦している様子が見受けられます。
具体例としてFacebookシェア数で競合比較してみると、TABILABOなどと比較するとかなり開きがあるようです。
▼Facebookシェア数TOP5のコンテンツ
※自社開発のコンテンツ分析ツールを用いて分析。(調査日:2015年8月4日)
FacebookページはCompathy名義で運営されているので、TRiPORTにいいね!したいというユーザーは戸惑うかもしれません。場合によっては媒体と同じ名義のFacebookページがあるといいでしょう。
また、ソーシャルに強い競合と比較するとページヘのいいね!数、twitterのフォロワー数が少ないです。拡散の地力を上げるためには、フォロワーを増やすための広告も有益でしょう。
メディア提携でトラフィックバックと被リンクを獲得
現在ハフィントンポスト、ガジェット通信、モデルプレスを始めとしたメディアに記事を配信しているようです。
同様に提携メディアの数を増やしていくことで、認知獲得やアクセス増加、ナチュラルリンク獲得の効果が見込めるでしょう。
今後のマネタイズポイントと追加施策の方向性
マネタイズの方法について、代表取締役社長の堀江健太郎氏は以下のように語っています。
収益面では、ユーザーが作成した旅行プランに対して、旅行代理店や旅行予約サイトから広告を掲載してもらい、送客に応じて手数料を徴収するビジネスモデルを構築する。
(中略)
現地のユーザーに旅行プランを作成してもらったり、現地でのガイドを依頼する「Meetrip」や「Voyagin」のようなサービスも盛り込んでいく。
出典:日本の実名旅行記サイト「Compathy」が増資、行きたい場所から旅行プランを自動作成へ | TechCrunch Japan
前者は一般的な手数料モデルです。「トリッピース」のようにユーザーが旅のプランを立案し、実際のプランとして採用された場合旅行代理店から企画料をもらうモデルでも成立しそうです。
後者は旅行先の現地ガイドを、旅行者が自由にアサインできるようなCtoC向けのサービスモデル。
いずれにせよ現状TRiPORTおよびCompathyで囲っているユーザー層を考えると実現可能性は高そうなので、今後の展開が気になります。
まとめ
ユーザー動向の変化から日本の旅行業界おけるマーケティング手法の変化は今後より一層加速していくことは間違いないでしょう。
そうした状況の中で、旅への新しい視点を提供する「TRiPORT」は、純粋にユーザー視点でみたときに面白いなと思います。
日本人の旅行や海外に対する固定概念をなくし、新しい旅の在り方に挑戦する「TRiPORT」に今後も注目です。
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