コンテンツマーケティング
質の高い記事の背景には「強固な生産体制」があった!freeeのオウンドメディア「経営ハッカー」が何よりも大事にしている考え方とは?
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日本国内でNo.1のシェア率を誇る「クラウド会計ソフト freee」を提供するfreee株式会社。
同社は会計・経営に関する役立つ情報を発信する「経営ハッカー」というオウンドメディアを運営しています。現在は月間100万PVを超え、さらに伸び続けているそうです。

今回は同メディアの責任者兼編集長である渡辺 星矢 様、広報担当の前村 菜緒 様にメディアとして大事にしている運営方針や、コンテンツの企画・生産体制についてお話を伺いました。

運営サイト:経営ハッカー(http://keiei.freee.co.jp/
ご担当者:責任者兼編集長 渡辺 星矢 様、広報 前村 菜緒 様

 

テクノロジーで経営をハックするための情報を発信するメディア「経営ハッカー」

経営ハッカー|個人事業主・中小企業の経営・会計をクラウドで効率化-1024x565

会計・経理に関する情報を中心に、ビジネスに役立つノウハウや最新のWebサービスの紹介まで幅広く発信。メインのターゲットはフリーランスや個人事業主、中小企業の経営者。

 

指標は経営理念から落とし込む。
「質の高い記事を毎日発信できているか?」

―オウンドメディアの成功例として取り上げられることも増えていると思いますが、経営ハッカーではどのようなKPIを設定しているんですか?

渡辺:PVとか一般的なメディアが見ている指標は一応見ていますが、KPIとしてあまり重視していません。それよりも、どちらかと言うと毎日質の高い記事を継続的に配信できているかという視点の方が重要だと考えています。記事を読んだユーザーさんが満足しているかとか、カスタマーサポートに活用できたかとかですね。なかなか定量的に測りにくいですけどね。

前村:弊社では会計ソフトや給与計算ソフトのサポートを、チャットとメールで行っているのですが、弊社サービスの使い方の枠を越えた会計・給与計算に関する質問もお客様からいただきます。そういう時に「この記事のここ読んでください」と経営ハッカーの記事をご紹介したりもします。そういう時に使える記事は、価値があると考えています。

渡辺:もちろんソーシャルでのコメントなどで、どれくらい反響があったかも見ています。より多くシェアされている記事は、ユーザーさんにとって価値があったんだなと。じゃあ次はこういうコンテンツがいいかなと仮説を立てて発信していったりというのはありますね。

前村:人がちゃんと手をかけて作っているかとか、価値のある記事が毎日出てくるかとか…メディアとしてのブランディング的な面も大事にしています。

―サービス登録への導線とかもページに入れていると思うんですけど、CV(コンバージョン)などもKPIにはしていないんですか?

渡辺:もちろん数値として計測はしていますが、それを目的にはしていないです。というのも、CVは、まず価値を提供して、結果としてついてくるものだと思っているんですよね。実際にPVの増加と共にCVも増加傾向にあります。

一時期CVをKPIに設定していた時期があったのですが、うまくいきませんでした。
というのも、CVを伸ばす方法って質の高い記事を多く発信してPVを増やすこと以外にもたくさんあって、例えばCVのバナーを変えたりボタンの色を変えるとかなんですけど、結局それをやることでCVが劇的に増えるようなことはなく、さらに記事制作の効率も下がってしまいました。

そこで改めて、経営ハッカーで最も重視すべきKPIは「継続的に質の高い記事を発信し続けること」と決めました。これは結局弊社の価値観と同じなんですよね。

前村:弊社が大事にしている価値観のひとつに「マジ価値」()というものがあります。PVを稼ぐことを目的とした記事も書けるとは思うんですけど、ユーザーにとって本当に価値があるものでなければ、メディアの方針から外れてしまいます。だからKPIとしては置いてません。

マジ価値:ユーザーにとって、本質的に価値があると自信を持って言えるかどうか、ということを必ず考えるようにしています。「それって、マジで価値ある?」の合言葉から「マジ価値」が生まれました。

 

理念に共感してくれている専門家が主にライティング

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―珍しいKPI設定ですね!でも理由を伺うとものすごく納得です。質の高い記事を配信し続けるのは簡単では無いと思いますが、質はどのように担保しているんですか?

渡辺:私の役目は編集がメインで、記事の原本は公認会計士や税理士などの専門家の方に書いていただいています。この生産体制を構築することで、記事数と質が担保できるようになりました。

メイン事業のクラウド会計ソフトの方では会計士さんや税理士さんと組んで色々なことをやらせていただいています。そういったアドバイザーの方々の中から、記事に協力してくださる方を見つけています。

前村:経営ハッカーが実現したいことや理念に共感してくださる方が多く、今は80人以上の専門家の方に実際に記事を書いていただいています。経理や会計という分野の特性上、間違ったことは書けないので、質を担保するという面では、専門家の方に書いていただいているのは重要なポイントかなと思います。

―確かに専門家による執筆であれば、記事の質の高さは担保しやすいですね。

前村:あとうちの生産体制で面白いのは社員が書いていることですかね。

渡辺:そうですね。私がそれぞれの社員さんの得意領域を把握しているので、記事のネタによって執筆をお願いすることもあります。社外の協力者の方ももちろんですが、社内にも公認会計士がいたり、あとはエンジニアが書いたほうがいい記事などもあるので、そういった場合は社内で執筆し、私が編集して発信しています。

 

企画も記事作りも社員全員で?!巻き込まれ力の高さがメディア運営にも活きている

―コンテンツを作る部分もですが、企画の部分でも苦労されている企業さんが多いと思います。企画やネタ作りは渡辺さんがお一人でやっているんですか?

渡辺:専任の担当は私だけですが、一人で企画という感じではないですね。社内のあらゆるところから私にネタが集まってくるので、それをまとめて、誰に執筆してもらうか決めて、お願いして書いていただく…という流れで進めています。

前村:会計とか、経営に関する部分は法改正もすごく多いので、そういった情報をキャッチしたら「これ記事のネタとしてどうかな?」みたいに渡辺のところに集まるんです。他にもカスタマーサポートのメンバーがお客様が困っていたことを共有したりして、そこから記事が生まれることもありますし。

―ネタ出しの部分を協力し合えるのは強いですね。

前村:会社の文化みたいな部分になりますが、勝手にメンバーみんながどんどん巻き込まれてくれるんです。

渡辺1人ですべての情報をキャッチアップするのは難しいってわかっているから、積極的に共有してくれる。責任者として渡辺がいるけど、社員全員が自分たちのメディアだと思って協力しあっています。

渡辺:私ももちろん巻き込んでいく努力はしていますが、周りの巻き込まれ力が本当に高くて助けられています。

また、私自身実家が自営業で、親が経理や会計で大変だったのを見ていたんです。実際に、社員も実家が自営業の人が多いのですが、私たちが解決しようとしている大きいミッション(理念)を小さいころから潜在的に受けていたから当事者意識を持ってできているんだと思います。

コンテンツ戦略の部分で言うと、季節性に合わせた記事配信は気をつけていて、一番盛り上がる時期に間に合うように記事を出すように設計しています。ただ、それもユーザーさんが求めているからであって、やはり求められている情報からネタ作りをしていくのが原則ですね。

 

ユーザー以外のファンのためにもSNSでは「些細な事でもこまめに発信」する

―SNSのフォロワーさんも多いですよね。増やすために何か施策していますか?

渡辺:フォロワーを増やすためにやっていることは特に無いです。現在、運用は私が担当していますが、自然と増えていって今の数字になっています。

―それはすごいですね。では運用面で気をつけていることはありますか?

渡辺:SNSは継続的に発信していくためのプラットフォームと捉えています。
記事更新の情報は都度発信しますし、それ以外には例えばtwitterで「freeeのここがわからなくて止まっちゃった」みたいなツイートがあったら役に立つ記事やヘルプページを送ったりもしています。

記事を拡散するためのテクニカルな使い方はあまりしていないですね。

前村:毎日しっかり発信して、人が手をかけて運用しているということを見せられるようにしています。

会計や経営の知識を求めている人にとっては、更新が長い間止まっているメディアって少し不安になる場合もあるかと思います。そういうことが無いように、結構細かい情報でもこまめに発信しています。

また、SNSのフォロワーにはfreeeを使ってないけど純粋にうちの会社のファンになってくださっている方もいますので、共有したいことがあれば些細なことでも発信するようにしています。

 

「一人が困ったことはみんな困っている」会社設立時に情報が少なくて困った体験が経営ハッカーを生んだ

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―経営ハッカーはどのようなきっかけで生まれたんですか?

渡辺:元々は代表の佐々木の個人ブログがきっかけでした。
会社を設立するにあたって「インターネットを活用して効率的にやりたい」と考えたものの、当時はそのための情報がほとんどなかったそうです。

そこで自分が欲しい情報や困ったことを調べてブログで発信してみたら、想像以上の反応があったそうです。やっぱりみんなも困ってるんだなって。

前村:それなら私たちが発信しようよ、ということが発端で発信し始め、コンテンツの量が多くなってきたところで経営ハッカーが生まれました。「オウンドメディアをやるぞ」という感じで始まったわけではないです。

そもそも会社として「スモールビジネスに携わるすべての人が、創造的な活動にフォーカスできる時間を増やしたい」という理念があります。
その上で、プロダクトだけでは賄えない部分の一部を、経営ハッカーを通して情報を発信していくことで補っている感覚です。

 

中小企業が困っていることがアーカイブされている場所はまだない

―最後に、経営ハッカーのこれからの展望を教えてください。

渡辺:今は困っていることを解決するための記事発信で手一杯ですが、これからは積極的にユーザーの声を集めて、「役に立つ」情報を新しい形で発信していきたいです。

というのも、中小企業の方が共通して持っている課題が見える形で提示されている場所って今は無いんですよね。そういうことをまとめて発信すれば、コンテンツとしても価値があるし、多くの方に興味を持っていただけると思うんですよね。

前村:大企業のデータは色々ありますが、中小企業のデータってじつは全然世に出てないんですよ。でもうちのユーザーさんはそういう人たちの縮図なので、データから課題やニーズを集めやすい状況にあると思っています。

渡辺:いま私たちが持っているリソースをさらに活用して、今以上に価値のある「マジ価値コンテンツ」を発信していきたいですね。

 

まとめ

とにかく記事の質、そしてユーザーへの提供価値を重視してコンテンツを発信している経営ハッカー。結果として多くの方に支持されPVも伸びていくというのは、オウンドメディアにとって理想的な流れと言えます。

また、お二人のお話の中には、少ない人数の中でオウンドメディアを運営するためのノウハウが詰まっています。例えば以下の様な点です。

  • 質の高いコンテンツを作り続けるための体制構築
  • コンテンツの企画のネタ提供に全社員が参加

質の高いコンテンツを作り続けるための体制作りをしっかりしているのは非常に参考になる部分です。専門性の高い分野でオウンドメディアを運営したい方は、まず協力者を見つける仕組みを作れるかがカギになるでしょう。

また、社員全員がメディアに対して関心を持ち、企画・生産に協力している点もポイントです。
オウンドメディアにネタ切れはつきものですが、じつは社内にコンテンツの種は多く眠っています。

実際の執筆までお願いできるかは会社の体制やオウンドメディアへの注力の度合いによりますが、ネタ提供の部分は比較的実践しやすいのではないでしょうか?

コンテンツのネタがなくて困っているという方は、ぜひ社内の別部署に目を向けてみてください。発信する価値のある情報がたくさん眠っているかもしれませんよ!

プロモニスタ編集部
プロモニスタ編集部
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